サイエンスZERO「おめでとう!ノーベル物理学賞 青色LED徹底解説」 2014.12.16


今回は今年のノーベル物理学賞に選ばれた…「サイエンスZERO」ノーベル賞特集。
赤の発光ダイオードLEDが発明されました。
すぐに緑色なども現れましたが…不可能とまでいわれた青色LEDを実現したのがこの3人!光の三原色がそろい今や世界を照らす省エネルギーのLED。
その技術は光だけにとどまらずあらゆる分野の省エネに貢献しようとしています。
青色LEDの開発秘話から今最も熱い研究まで天野浩さんにとことん伺います!いよいよ今日は青色LEDの特集ですね。
来ましたね。
ノーベル物理学賞に選ばれたお三方ご紹介しましょう。
この青色LEDができた事によってLEDで光の三原色がそろったんですね。
お〜!それによって照明などの幅広い応用ができるようになったと。
なるほど。
いろんな所で見ますもんね。
ただこれ作るのはそんなに簡単ではなかったんですよ。
そうだったみたいですね。
どれぐらい難しかったのかご本人に伺いましょう。
名古屋大学の天野浩さんにお越し頂きました。
天野さんおめでとうございます!ありがとうございます。
ノーベル賞を受賞されてどんなお気持ちですか?本当にびっくりしてます。
赤先生はずっと候補といわれてたんで当然だと思いますし中村先生も非常にすばらしい成果を学会で発表されてたんで当然だと思ったんですけどまさか自分が入るとは思ってなかったです。
でも実際にこの青色LEDのもとになる窒化ガリウムの高品質な結晶を世界で初めて作られたのは天野さんですよね?それではもうお二方の主な功績ご紹介しましょう。
赤勇さんは天野さんの先生で窒化ガリウムという物質から青色LEDを作ろうと長年研究してこられました。
そして中村修二さんは量産化する技術を開発した。
これが受賞につながった訳です。
青色LEDのもとは窒化ガリウムという物質なんですね。
これは半導体の性質を使って青く光らせてるんですよ。
まずは代表的な半導体の一つシリコン
(ケイ素)の結晶で見てみましょう。
半導体が光る仕組みは超ミクロ原子の世界にあります。
その主役は原子核の周りにある14個の電子です。
電子が存在する軌道を電子殻といいます。
シリコンの場合一番内側の電子殻には2つ。
その外側の電子殻には8つ。
更に外側に4つの電子があります。
電子は電子殻上にしか存在できないというのがポイント。
その外側にも電子殻はありますがそこには通常電子はいません。
電子殻を更に模式化すると…縦軸は原子核からの距離。
電子が持つエネルギーは原子核から離れるほど高くなります。
電子はこの線上にしかいられない訳ですが原子が増えて団体になると少し変わります。
2つの原子がくっつくと線も2本に。
3つになると3本に。
原子が規則正しく結び付いた結晶ではたくさんの線が重なって帯のようになります。
電子が存在できるこの帯はエネルギーバンドと呼ばれます。
半導体の結晶が光るために重要なのは一番高いエネルギーバンドです。
普通この電子はギュウギュウに詰まっているために動けませんが…この状態は安定しないので…この元に戻る時に持っていたエネルギーを電磁波光として放出するのです。
何色に光るかは結晶の種類ごとに違うこの幅で決まります。
エネルギーの低い目に見えない光です。
バンドギャップがもう少し広い元素ならば赤い光。
更に広がると緑色。
そしてもっと広い元素だと青い光を出すのです。
つまり…しかしそんな都合のいい元素はなかなかありません。
そこで…ふ〜ん。
こういう仕組みで光るんですね。
知りませんでした。
物質によって光の色は決まっちゃうんですよね。
そうですね。
窒化ガリウム自体は実は青ではなくてもっとエネルギーの大きい…でもこれ窒化ガリウムを青く光らせる事が分かったとしても作るのはめちゃめちゃ大変なんですよね?ええ。
実際は非常に難しかったですね。
ただしサファイアというのを基板にして作るんですけどそれが非常に難しかったんですね。
これがサファイアの結晶です。
何か青っぽい宝石のものを想像してたんですけど違うんですね。
ええ。
純粋なサファイアっていうのはこのように透明なんですね。
それに窒化ガリウムを成長させるのが難しかったっていうのはどうしてなんですか?この結晶自体は原子の並び方がそれぞれ決まっていてサファイアの並び方と窒化ガリウムの並び方が実は16%も違ってたんですね。
形としては似てるんですけどその大きさが全然違ってたという事ですね。
16%っていうのはもういい結晶を作るっていうのはほとんど不可能だというふうに考えられていました。
そしたら窒化ガリウムは諦めてほかの物質で代わりにやるっていう事は考えられなかったんですか?1980年当時はこの青色LEDの候補っていくつかあったんですね。
そのうち一番可能性が高いっていわれてたのはセレン化亜鉛という結晶だったんです。
だけどセレン化亜鉛っていうのが実用化されなかったという事ですか?はい。
作りやすい反面非常にもろい結晶で確かに青くはよく光るんですけど電流を流していくとどんどんどんどん結晶が壊れていってしまうという事があったんで実用化には至らなかったんですね。
それで窒化ガリウムをずっと研究されてたんですね。
すごい!これはやっぱり研究者の直感としか言いようがないんですけど実用化させるためにはこの材料でなければならないというのが多分赤先生は分かっておられたんじゃないかと思います。
大学4年の時に赤研究室に入る事を選んだ天野さん。
その直後から奮闘が始まりました。
赤さんから「窒化ガリウムの結晶化」という研究テーマが与えられたのです。
これが当時…サファイアの基板をこの台に置いて上から原料のガスを流します。
原料はトリメチルガリウムと窒素原子を含むアンモニア。
これが基板表面で化学反応し窒化ガリウムの結晶が成長する仕組みです。
この実験を天野さんは2年近く繰り返しました。
原料のガスの量や温度などを変えて実験した回数はなんと1,500回以上!え〜すごいな!しかし基板の上に…半導体結晶として使うには鏡のようにきれいでなければいけません。
実験が成功しないまま冬を迎え大学院の修士課程も終わりが近づいていました。
悩んでいた天野さんにアドバイスを与えたのは…簡単に表すとこういう事。
サファイア基板の上に窒化ガリウムがうまく成長しないのは結晶の大きさが全く違うからです。
赤さんはこの間にクッションになるような別の物質を入れたら窒化ガリウムの結晶が成長するのではないかと考えたのでした。
天野さんはクッションに窒化アルミニウムを選びました。
そこでまずアルミニウムの入ったガスを流す事にしました。
通常結晶を作る時の温度は1,200度。
ところがこの時装置の調子が悪かったため天野さんは700度で実験を行いました。
実はこの偶然がブレークスルーを生んだのです。
実験が終わり結晶を取り出してみると…なんと鏡のようにピッカピカ!サファイア基板の上に窒化ガリウムのきれいな結晶が成長していたんです。
世界初の快挙でした!ああ実験を1,500回以上も繰り返してついに結晶化成功という事で。
いや途中でもう無理って嫌にならなかったですか?いやそれが不思議な事に全然嫌にならなくて…。
やっててもう楽しくて楽しくてしょうがなかったんですね。
できなくてでも?はい。
今から考えると不思議なんですけどまあ失敗は失敗なんですけどただいろいろ工夫して結晶を作ると工夫したなりに変化が起きてくるんですね。
そういった事を見るのがすごく楽しかったんですね。
それで少しずつ目標に近づいてるような感じは受けてましたね。
修士課程が終わりに近づいてきた。
結構できませんと。
低温なんだけどやっちゃえとかそんなのはあったんですか?いや一応考えてはみました。
一縷の望みはあったんですけど…。
何もついてないような結晶だったんであっ原料を流し忘れたと思って。
それでいろいろ調べてみたんですけど顕微鏡でのぞいてみると端の方を見ると窒化ガリウム特有のこのギザギザの模様が見えてようやくあっついにできたんだというような感動でしたね。
周りにほかの人もいたんですか?いやもう2年生の最後でほかの同級生は卒業旅行に行っちゃってて一人寂しく実験してたんですね。
え〜そうだったんですか。
へえ。
きれいな結晶を見たその感動を誰に最初に伝えたんですか?いやできたと思って赤先生のところに持っていきました。
何ておっしゃってました?赤先生は非常に冷静に…冷静!すごい。
何かちょっと意外ですよね。
何か飛び上がって喜ぶような感じじゃないんですね。
ええ。
赤先生はそれまでにもう十何年もこの材料の結晶成長の研究をやっていたんで見た目だけきれいな結晶っていうのも実はご覧になった事があったんじゃないかと思うんです。
それでそのご経験からご指導頂いたんだと思うんですね。
こうして赤さん天野さんは高品質の窒化ガリウムの結晶化に成功されました。
ですが結晶ができただけではまだ十分光らないんです。
えっそうなんですか?そうなんですよ。
半導体の電子が動いて光るという話がありましたがこのままだとまだ効率が悪いんですね。
LEDの構造を見てみましょう。
(竹内)この層が明るく光るための工夫なんですね。
下は電子が多いんですよ。
そして上は電子が少ないんですね。
ここをつないで電気を通すと明るく光る。
今下は電子が多いんですけれども窒化ガリウムにシリコンを少し混ぜるとこうなるんですね。
ガリウムというのは一番外側に電子が3つあるんですよ。
それに対してシリコンは電子が4つあるんですよ。
だからシリコンを混ぜると結果として電子が増える。
マイナスの電荷ネガティブという事でこれをn型半導体というんです。
それに対して電子が2つのマグネシウムを混ぜると…
(竹内)ポジティブという事でこれをp型半導体といいます。
このn型とp型を組み合わせて電気を通すと何が起こるか。
これn型の方は電子が多いんですね。
そして上のエネルギーバンドにいる。
そしてp型というのは電子の空席があるんですよ。
電流を流すとn型からp型に電子が移動をして座る訳ですね。
これエネルギーギャップを落ちます。
その時にそのエネルギーが光として放出されると。
これが連続的に起きるので明るく光る。
ああなるほど。
LEDってこういう仕組みで光ってるんですね。
さあこちらが世界で初めて光ったpn接合の青色LEDです。
うわ〜やっぱりきれいですね。
(竹内)これ最初見たらやっぱり感動するでしょうね。
これはいつごろできたんですか?え〜っ!結晶できたら何かすぐ光るんじゃないかって思ってたんですけど4年もかかるんですね。
n型っていうのは比較的すぐにできたんですけど…p型はどうして難しかったんですか?それが原因は当時はよく分からなかったんですね。
それで何か起きてるんではないかと思って…電子顕微鏡で見たらなったという事ですか?そうです。
え〜!その後どうしてマグネシウムを加えただけではp型にならないのか。
それを解明したのが中村修二さんなんですよね。
そこに余分な元素水素が入ってたんですね。
水素っていうのは電子が1個あってそれが邪魔をして…現在天野さんはどんな研究をされてるんですか?パワー半導体の研究をしてます。
パワー半導体…。
こちらで説明しましょうか。
このパワー半導体というのはエアコンとか電車のモーターの回転数を微調整するためのインバーターに使われてるんですね。
お〜!エネルギーロスがあるんですよ。
LEDで使われてる窒化ガリウムですとかあるいはシリコンカーバイドといったものでそれによって更なる省エネが見込めるという事ですね。
お〜!これは次世代パワー半導体の一つシリコンカーバイド。
こちらは板状のウエハーが既に製品化されています。
実はシリコンの一部をシリコンカーバイドに代えた電車が既に走っているんです。
シリコンカーバイドを使ったインバーターはここ。
使われているのは一部だけですが…その窒化ガリウムをパワー半導体として使う研究をしている天野さん。
そのためには結晶の品質を更に高める必要があると考えています。
実は従来の窒化ガリウムでは結晶のミクロの乱れ欠陥が多すぎるのです。
基板1平方センチ辺りになんと10万個から1億個!こうした欠陥は…LEDのような3ボルト程度の低い電圧ではそれほど問題はないのですが一般的な電車を制御するためには1,500ボルトもの大きな電圧がかかります。
すると電力をロスするだけでなく…欠陥ができる原因の一つはサファイアの基板にありました。
現在ほとんどの窒化ガリウムの結晶は高温に加熱したサファイア基板に成長させていきます。
問題が起きるのはこれを冷ました時。
この時たくさんの欠陥が入るのです。
これまでの方法をとる限り欠陥の少ない結晶を作る事はできません。
そこで全く別の方法で結晶を作ろうとしているのが大阪大学の森勇介さんです。
森さんは液体の中でならサファイア基板を使わなくても結晶が成長するのではないかと考えました。
そのための装置がこれ。
中は900度50気圧の高温高圧です。
この中にガリウムと触媒のナトリウムを入れて溶かし窒素のガスを吹きつければ結晶ができるはずです。
しかし欠陥の少ない結晶はできたものの1ミリ程度までしか大きくなりません。
森さんはこの小さな結晶をうまく合体させる方法はないか考えました。
そこで考え出したのが六角形に模様がついた特殊な基板です。
模様の部分を電子顕微鏡で見ると無数の丸い粒が見えます。
実はこれサファイア基板についたミクロの窒化ガリウム結晶なんです。
窒化ガリウムの小さな粒があればこれを起点にして結晶が規則正しく成長しやがてきれいに合体するはず。
そして合体した結晶と基板の間には隙間があるため…そうすれば欠陥ができにくいだろうと森さんは考えたのです。
早速粒がついた基板をセラミックの器に入れそこにガリウムとナトリウムを入れました。
これを高温高圧の炉の中で溶かして装置を揺すりながら窒素と反応させました。
その結果できたのがこの4インチ近くある窒化ガリウムの結晶です。
結晶はサファイア基板が縮んだ時に外れたためゆがみはありません。
一見ざらざらに見えますがそれは下の粒々の跡が薄く残っているから。
表側は何も見えないほどピカピカです。
電子顕微鏡で見ると基板に近い方には欠陥が多いものの表側は1平方センチ辺り数百個程度。
従来の10万分の1以下に減らす事ができたのです。
天野さんたちはこれをもとに高品質な結晶を効率的に生産する方法を研究しています。
これが実現できると世の中は大きく変わりそうですか?そうですね。
LEDでも省エネがすごく進みましたけど電力の割合を見てみますと…そんなに!これだけこの世界を変える発見につながるんだというような予感はあったんですか?いや全くありませんでした。
我々はあくまでトリガーというか最初の事をやっただけでたくさんの人が集まってこの材料をよくしようよくしようという事で築き上げられた事だと思うんですね。
ですから多くの方々の努力が結集したんだという事で非常にうれしく思いますね。
これから科学に入ってこようという人たちもいると思うんですが何かメッセージとかありますか?自分が子どもの頃考えてみますと本当に勉強が嫌いで小学校中学校の時も理科が嫌いで高校の時も物理がすごく苦手だったんですよね。
全然できなかったんです。
でもそうした私でもこんな形で少しは貢献できるという事で小さい頃に理科とかサイエンス物理に興味を持ってる子どもたちがいたらもうそれはすごくすばらしい事だし頼もしいし是非今のうちに頑張ってほしいなと。
私も今になって小さい頃もうちょっと理科とか物理とか勉強しとけばよかったなと思ってますんで…。
勇気づけられますよね。
かなり。
それでは「サイエンスZERO」。
次回もお楽しみに!2014/12/16(火) 00:15〜00:45
NHK総合1・神戸
サイエンスZERO「おめでとう!ノーベル物理学賞 青色LED徹底解説」[字][再]

ノーベル賞を受賞した天野浩さんがZEROのバーチャルスタジオに登場。青色LEDの原理から、本人だから語れる開発秘話、さらに今後の研究までたっぷり伺います。

詳細情報
番組内容
青色LEDの開発で、赤

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