グルメが集う街です。
今回のイッピンリサーチャーは一色紗英さん。
料理が大好きで調理器具や食器にもこだわっています。
人気の食器店があると聞いてやってきたのがこちら。
わ〜すごい。
いろんな器やお鍋で。
伊賀焼の土鍋専門店です。
土鍋は伊賀焼を代表する製品。
用途に応じて様々な種類が作られているんです。
きょうはですね…よろしくお願いします。
楽しみにしてます。
実はこのお店では土鍋を使った料理教室も開かれています。
定番の鍋料理以外にもいろいろな料理が楽しめるんです。
煮物だってこのとおり。
蒸し野菜も!
(一同)わ〜!すご〜い!なんとくん製まで!そして今一番人気がこちらのごはん炊き専用土鍋。
「きのこご飯」に挑戦です。
ところで皆さん土鍋でご飯を炊くと火加減ふきこぼれなど大変だと思っていませんか?でもこの土鍋は中火に10分かけ火を止めて20分蒸らすだけ。
火加減いらずふきこぼれなし。
これが人気の秘密なんです。
おいしそうなきのこご飯が簡単に炊きあがりました。
う〜んおいしい。
きのこがプリプリであとおこげ。
お鍋で炊いたならではのおこげが香ばしいですよねご飯が。
すっごいおいしい。
きょうのイッピン。
伊賀焼のごはん炊き土鍋。
これまでに55万個以上売れている大人気製品です。
魔法のようにおいしさを生み出すその秘密に迫ります。
三重県伊賀市。
四方を山々に囲まれた隠れ里のような佇まいです。
古くから焼き物を生産し伊賀焼の名で知られてきました。
現在も30を超える窯が操業しています。
一色さん料理教室で出会った土鍋の工房を訪ねることに。
こちらは江戸時代天保年間に開業。
180年の歴史を持つ窯元です。
こんにちは。
わぁ〜。
全部不ぞろいでかわいい。
ギャラリーに並ぶ土鍋はひとつひとつ違った大きさや形をしています。
煮込み用や蒸し料理用。
一人用から大勢で楽しむものまで100種類にも及びます。
あっこれが先日お料理教室で使ったごはん炊き鍋ですね。
ほかの土鍋に比べて底が丸くてこうやって見るとフグみたいじゃない?フフフ。
かわいいすごく。
実はこの土鍋愛らしい外見からは想像もつかないほど開発には苦労がありました。
(2人)こんにちは。
はじめまして。
ごはん炊き土鍋の開発者…私も実際三合炊きを使わせて頂いていて…はい。
本当に手間暇かけずおいしいご飯が炊けるのでまるで来たお客さんは私が料理がじょうずみたいな感じで。
ホントお鍋のおかげなんですけど。
長谷さんが目指したのはかまどと同じようにおいしくご飯が炊ける土鍋でした。
昔から手間暇かけてかまどで炊いたご飯はおいしいとされてきました。
その秘密はかまどの中の温度の変化にあります。
まず強火で火をつけ一気に沸騰させます。
火加減を調整しながら沸騰状態をしばらく保ち火を止め蒸らせば炊きあがり。
この温度のラインがおいしさの秘密です。
では長谷さんのごはん炊き土鍋ではどんな温度変化になるのか実験しました。
特殊な温度計を土鍋の中に設置してご飯を炊きながらその温度変化を見ていきます。
中火で炊き始めます。
すると3分で一気に温度が上昇。
そして中火のままでも10分で100℃に達しました。
ここで火を止めます。
そしてその後の温度変化を見ていくとおよそ20分後温度はほとんど変わっていません。
土鍋の温度変化をグラフにしました。
10分で沸騰しすぐ火を止めて20分たってもほぼ同じです。
かまどのグラフを重ねるとごはん炊き土鍋のラインはかまどのラインとほぼ一致していました。
かまどのようにおいしくご飯が炊ける土鍋。
長谷さんはそもそも2つの点に焦点を絞って開発に取り組んだといいます。
そこを追求されたわけですか。
そういうことです。
完成するまでは4年半。
その間に1,000個もの試作品を作らなければなりませんでした。
では「火加減いらず」「ふきこぼれなし」を実現した驚きの技とは?まずは火加減いらずの技から。
一色さんを工房に案内してくれたのは社長の…こんにちは。
火加減いらずのポイントは土鍋の形にあります。
型で成形した後鍋の内側を「こて」と呼ばれるヘラで削っていきます。
重要なのはこのカーブ。
一般的な土鍋に比べ内側が強めのカーブを描くようにしていきます。
すると鍋を火にかけた時…。
カーブに沿って対流が促され熱がむらなく伝わります。
中火でも急激に温度が上昇する秘密がここにあります。
実はこのカーブ外側でも大きな効果を発揮。
炎がしっかりとまとわりつくように当たるのです。
鍋底にはもうひとつ工夫がありました。
それがこの技!このままでも土鍋にはなるんです。
この工程を入れる訳っていうのが実はありまして…。
はい。
あ〜本当だ。
増やしてるんだ。
そうなんです。
削る前と後を比較すると違いがよく分かります。
ここはごはん炊き土鍋の要となる部分。
だから職人がひとつひとつ手作業で行います。
職人歴45年の…どれぐらい削ってるんですか?全体的に1ミリ2ミリ削るんですか。
そうです。
ああ。
カーブですか?福谷さんはカンナを当てる深さ角度を目と指先の感覚で判断しながら削っていきます。
ハイスピードカメラで見ると右手の角度を微妙に変えながら削っていくのが分かります。
全体を均一に削るのがコツ。
少しでも削りすぎた部分ができるとそこに火が集中して熱が伝わりにくくなります。
カンナにもこだわりがありました。
普通は直角ですが福谷さんは僅かな丸みをつけたのです。
カンナに丸みがあることによって土鍋のカーブにピタッと当たり手元がブレずに削っていけるんです。
すばらしいですね。
「火加減いらず」の秘密。
それは道具を自在に操って絶妙な形を作り出す職人の技にありました。
次にふきこぼれない土鍋の技を見てみましょう。
開発にあたって最後に苦労したのがふきこぼれないようにすることだったといいます。
それを解決したのがこの中蓋。
ほかの土鍋にはない重めの中蓋をあえて取り付けたのです。
更に蓋に開けた穴の数もポイント。
上蓋に1個中蓋に2個あけました。
それは蓋の置き方とも関連しています。
上蓋の穴と中蓋の穴の位置が二等辺三角形になるように置くと中蓋から出た蒸気が均等に対流して中蓋にしっかりと圧力がかかりふきこぼれないのです。
一方穴の位置がずれると均等に圧力がかからず中蓋が開いてふきこぼれてしまいます。
こうして「火加減いらず」「ふきこぼれなし」の土鍋が誕生しました。
うわっツヤツヤに炊けてます。
誰でも簡単に土鍋でおいしいご飯を味わってほしい。
そんな思いが4年半の歳月の果てに結晶した伊賀焼。
シンプルな中にも強い存在感を放っています。
最初に伊賀焼が花開いたのは桃山時代のこと。
茶の湯が盛んになる中個性的な茶道具として愛されました。
その後一度途絶えますが18世紀半ばに生活雑器として復活します。
土鍋や食器作りが盛んになり全国に広まっていったのです。
伊賀で焼き物が発展していったのには理由がありました。
焼き物に適した土が地元で採れるのです。
伊賀焼の土は400万年前の生物の死骸や植物類が多く含まれる「古琵琶湖層」という土の層から採れます。
この土を高温で焼くと死骸の部分が燃え尽きて細かな穴が出来ます。
「多孔質」になるのです。
電子顕微鏡で見ると確かに穴がたくさんあいているのが分かります。
ではこの穴はどんな働きをしているんでしょうか?この穴があることによってまずひとつはより耐熱性が上がると。
熱衝撃によってヒビが入るわけです。
そのヒビがですね止まると。
そこで止まってしまうと。
これ全部均一ですとそのヒビが一気にいってしまうんですけどだからかえって割れにくくなるということがあります。
またあとこういう穴があることによって熱を伝えるのが若干ここで止まるわけですね空気層が入りますので。
それによってまた蓄熱性も上がるといわれていますね。
耐熱性と蓄熱性。
2つを兼ね備えた土が伊賀焼を優れた焼き物にしていました。
伊賀の土を使ったもう一つのイッピンがあると聞いてギャラリーを訪れました。
あ〜すてき!伊賀焼を中心に暮らしに密着した様々な作品を展示しています。
こんにちは!なんか面白いデザインのものが。
これは何でしょうか?これは兄が作ってるめしびつです。
おひつですか?はい。
へぇ〜。
丸いフォルムのこの器。
ご飯がおいしく保存できる大人気のおひつです。
製作者の兄です。
はい。
一目瞭然です。
私もおひつ持ってるんですけど普通木製じゃないですか。
陶器のおひつ初めて見ました。
このおひつどれくらい優れものかというと…。
山本さんのお宅におじゃましました。
これなんですけど…。
はい。
このまま電子レンジに?はい。
まだすごくご飯の香りがします。
おひつのご飯は子どもたちにも大好評!ご飯をおいしく保存できるおひつ。
その秘密とは?山本さんの工房を見せてもらうことに。
こっちが伊賀の粗いほうの土です。
はい。
こっちが伊賀の細かいほうの土です。
色も違いますね。
そうです。
もう手で。
肌で感じるぐらいザラザラ。
分かります。
これ特徴的ですね伊賀の土は。
そうです。
はい。
あ〜そういうことなんだ。
実は多孔質の伊賀の土にはもうひとつ「吸水性」という特性があります。
山本さんはこの吸水性を生かしておひつを作っているのです。
更に山本さんがこだわっているものそれは釉薬。
釉薬はガラス質の成分を含んでいてザラつきを抑え丈夫にするために塗ります。
しかし釉薬を濃く塗ると水をはじいて土の吸水性は失われてしまいます。
釉薬の濃度で。
濃度で?山本さんは試行錯誤を重ね土の吸水性を損ねない濃度の釉薬を開発しました。
では濃度の違いでどれだけ吸水性が違うんでしょうか。
おひつに用いた釉薬と濃いめの釉薬の吸水性の違いを見てみると。
おひつのほうは適度に吸収されています。
一方濃いめのほうはほとんど吸収されていません。
このおひつにはもうひとつの工夫が。
あれ裏側は付いていません。
どうして釉薬が付かないんでしょうか?何塗ってあるんですか?ここ。
ろうです。
塗ってあるんだ。
はじいてるんだ。
このろうはのちに焼くと溶けてなくなります。
釉薬を蓋の裏側に塗らない理由。
それはご飯を入れた時最も水分がたまりやすい場所で伊賀の土の吸水性を最大限生かすためでした。
伊賀で採れる土と土の特徴を生かすために開発した釉薬。
両者の絶妙なバランスによってご飯のおいしさが保たれていました。
まさに呼吸するおひつです。
今伊賀では新しい土鍋が次々と生まれています。
こんにちは。
一色さん話題の工房を訪れました。
窯元5代目で…従来の伊賀の土鍋にはなかった多彩な色合い。
全て稲葉さんの手作りひとつひとつ形も違います。
白とか落ち着いた渋い色はよく見るんですけどすごいきれいですね。
すごい華やかですね。
軽いですね。
そうですよね。
テーブルに置いて料理を作ってる間30分ないし見て頂く場合もあるし。
食卓を華やかにし料理の意欲をかきたてる土鍋。
この独特の色合いはどうやって生み出されているんでしょうか?そこには稲葉さんならではの技がありました。
一度焼いて白い釉薬をかけた土鍋にナイフで模様を付けていきます。
場所によって彫る深さを微妙に変えています。
そして彫った後に色を付けていくのですが…。
私も本当に濃い…。
うん。
濃度の釉薬で描いているのかなぁと思ったんですけど。
なるほど。
はい。
そう…。
厚みが…。
そういうことか。
普通にハケで塗るぐらいじゃあんなにきれいな色出ませんものね。
彫った時の深さの違いで釉薬の乗る量が変わってきます。
のちに焼くとあらかじめ塗った白との混ざり具合が変わり独特のにじみとなって現れます。
匠の技が生み出した新たな風合いのイッピンです。
わぁ!伊賀で様々な土鍋に出会った一色さん。
いろんな秘密とかテクニックを見せて頂いて土鍋だからではなくて厚さとかその釉薬の厚さで器が呼吸をするようにとか緻密な計算の結果だったんだなって。
お鍋も蓋を開けた時の感動とかそういったひとつひとつの楽しさとかがその瞬間瞬間の積み重ねが本来の豊かさではないのかなと思ってすごく大切にしていきたいです。
人々を幸せな気持ちにするためにはどんな技でも編み出してみせよう!そんな職人たちの熱い思いが折り重なって伊賀焼は今も進化し続けています。
2014/12/14(日) 04:30〜05:00
NHK総合1・神戸
イッピン「おいしさ生みだす 魔法の土鍋〜三重 伊賀焼〜」[字]
今回は魔法のようにごはんがおいしく炊ける伊賀焼きの土鍋。「火加減いらず・ふきこぼれなし」のイッピンだ。さらに、ごはんをおいしく保存できるおひつも一色紗英が紹介。
詳細情報
番組内容
今回は三重県伊賀市の『伊賀焼の土鍋』。“火加減いらず”、“ふきこぼれなし”で、おいしく炊けると大人気の「ごはん用土鍋」や、余ったごはんをおいしく保存できる「呼吸するおひつ」など、伊賀で採れる良質な土とさまざまな工夫によって、新しい製品が続々に作られている。土鍋を削る驚くべきカンナのワザ、独特の色合いを生み出す意外な釉薬掛けの仕方とは?食卓においしさを運ぶ伊賀の土鍋の魅力に、女優・一色紗英が迫る。
出演者
【リポーター】一色紗英,【語り】平野義和
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
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音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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