大阪市立大:がん細胞自身の物質で、がん増殖抑制に成功
毎日新聞 2014年12月25日 21時20分(最終更新 12月25日 22時06分)
◇がん細胞細胞膜から作られる物質「PGD2」に注目
大阪市立大は25日、がん細胞自身が出す物質を利用して、がんの増殖を抑えることに成功したと発表した。マウスを使った実験で胃がんが広がるのを抑える効果を確認したという。小野薬品工業との共同研究。新たな治療法の開発につながる成果で、国際的ながん専門誌「インターナショナル・ジャーナル・オブ・キャンサー」に掲載された。
がん細胞の細胞膜から作られる物質「プロスタグランジンD2(PGD2)」には、がん細胞の増殖を抑える作用があることが知られている。しかし人に投与しても血液中で分解されやすく、がんに届かないため、治療薬として利用するのは困難とされていた。
大阪市立大の八代正和准教授(腫瘍外科学)らは、体内でがん細胞に働きかけてPGD2を作らせる酵素に注目。この酵素を人工的に胃がんの状態にしたマウス19匹に2週間で計6回投与したところ、投与していないマウス27匹の胃がんは平均で約3倍になったが、投与したグループは胃がんの大きさがほぼ変わらなかった。副作用も確認されなかった。
八代准教授らはこの酵素が胃がんの新薬になりうるとしている。多くのがんの治療薬はがん細胞が出す物質を減少させるが、逆にがん細胞に多くの物質を出させて増殖を止める治療法は珍しいという。八代准教授は「膵臓(すいぞう)がんや食道がんでも効果が期待できる」と話している。
胃がんでは国内で年間約5万人が亡くなっている。主な治療法は外科手術だが、手術ができない患者を対象にした治療法は限られている。【斎藤広子】