関西電力がおととい、来年4月からの電気料金の再値上げを申請した。昨年5月に値上げしたばかりだが、原発の代わりに動かしている火力発電のコストが想定以上に膨らんだ。

 値上げ幅は家庭向けで10%、企業向けは13%を超す。中小企業からは「これ以上の節電は無理だ」との悲鳴が相次ぐ。

 値上げの大前提は、徹底的な経営効率化だ。関電は「聖域なく取り組んでいる」と強調するが、人件費を中心に切り込み不足との指摘がある。国は認可前に厳しく点検すべきだ。

 もっとも、赤字の最大の要因は、福島第一原発事故前に発電量の5割を占めていた原発がほとんど動いていないことだ。

 関電は前回の値上げ時、複数の原発の再稼働を見込んだが思い通りにいかず、再値上げに追い込まれた。社長はそれでも「早期再稼働に努める」と繰り返す。認識が甘くないか。

 事故後、原発の安全性への疑問が広がった。関電は対策に巨費を投じているが、原子力規制委員会の審査をクリアし、再稼働への社会の理解を得るのは容易ではない。

 関電が持つ原発11基のうち9基は来年で運転開始から30年を超す。建て替えや新設は相当に困難だろう。原発頼みでは、どのみち先行きは厳しい。

 一方、値上げすれば、企業や自治体が、関電以外から電力を買う動きが強まるのは確実だ。すでに1万を超す事業所が、割安な新電力に切り替えた。

 節電の定着で、家庭が使う電力も減少傾向だ。16年に家庭向け電力販売が自由化されれば、関電離れは加速しかねない。

 関電は岐路に立っている。原発に依存せず生き残るにはどうすればいいか。長期的な戦略を示すべきだ。それこそが利用者の理解を得る最良の道だろう。

 関西地域は70年代以降、福井県に集中立地した原発にエネルギーの多くを頼ってきた。だが原発事故を経て、原発を消費地外に押しつけてよしとしてきた考え方は反省を迫られている。

 原発から他の電源に切り替える過程で、値上げはある程度避けがたい。せめてあるべきエネルギー社会を地域でいま一度深く考える機会にしたい。

 7府県と4指定市でつくる関西広域連合は今年、再生可能エネルギーの導入量を20年度には今の3倍にするとの目標を掲げた。だが原発依存度を下げていく道筋はほぼ手つかずだ。

 国任せにしていても物事は進まない。関西から率先して声を上げ、関電や福井県とともにビジョンを練っていくべきだ。