(福島)皆さんおはようございます。
番組の案内役を担当いたしますMBSアナウンサーの福島暢啓です。
この「らくごのお時間」では毎月1回寄席にお邪魔し落語を一席お届けしております。
さて今回私は梅田・茶屋町にありますMBSの前にいます。
先日MBS1階のちゃやまちプラザのステージで番組の寄席を開きました。
これまで番組内に登場した私が書いたイラストなども展示しお客さんに落語を二席ご覧いただきました。
その中から…さあ本日は桂文華さんの落語をご覧いただきます。
(桂文華)大丈夫ですか?。
芸歴26年…。
文華さんは1988年に桂小文枝後の5代目桂文枝さんに入門。
これまで繁昌亭大賞など数々の賞を受賞してきました。
さあ演目は?ある日…。
それではどうぞ!
(出囃子「千金丹」)
(出囃子「千金丹」)
(拍手)ええ〜ありがとうございます。
場内割れんばかりの拍手をちょうだいしまして。
出てまいりましたら名前出していただいております。
桂文華と申しまして別名上方落語界の妖怪人間ベロでおつきあい願おうとこういうことでございますが。
まあ私も噺家になりましてもう25年あまり…中途半端ですね。
そないむちゃくちゃ長いわけでもなく短いわけでもなく中途半端に25年あまりさしてもうてますが最近気付きましたですね。
落語という舞台芸がどこで成り立ってんのか。
これは噺家の頑張り…まあこれもいりますけども何よりも大事なんはお客様方の歩み寄り。
これでございますね。
噺家の頑張りとお客様方の歩み寄り。
これが重なったところで初めて成り立つんですね。
ですから笑おうという気持ちで見てもらわんとね。
ちょいちょいありますよ出てきて…。
今日のはええ感じですけどね。
出てきたら客席で半分くらい腕組んでこう見とる…これね。
あれ心理学的にね拒絶のポーズらしいですねこれは。
笑ってやるもんかみたいなね。
うんそれを覆して笑わすほどの力は私にはないわけですから。
(観客たち)あははっ。
ええ。
だから皆さんはどこが面白いのかなと探しながら見ていただくと笑えるんですね。
ところが落語実は今日見んの初めてやどこで笑うてええか分からんという方いらっしゃいますがそういう方はお隣が笑ってたら一緒に笑うといてください。
だんだん楽しい気持ちになってくるんでございますけど。
まあ私こう見えましても嫁がおるんでございますがねもうすぐ丸18年になります結婚してね。
あの〜もちろん違う環境で育って一緒になるんですけどもうちの家内が割と田舎の方で育ってますんでねなんちゅうんですか戸締まりとかを割とええかげんにするんですね。
田舎のうちいうのはなんですかね割と表開けっ放しにしてたりとかね夏なんかもうずっとひと晩中夜中網戸にしてたりとかええかげんでございますわな。
もうとにかく結婚してからずっと「鍵を締めといてくれよ」というのをなんべんも言うてましてね。
ええ。
言うたんですよ。
「締めな泥棒入るやろ」って言うたら「何盗られんねん」って言われましてね。
返す言葉ないわけでございますが。
泥棒っちゅうのもいろいろございましてね手口がありますから。
ピッキングとかね。
それからポストの…郵便ポストの受け口から手をこう入れてサムターンを回すっちゅうの分かります?サムターンというのはサムは「親指」ですよ。
ターンは「回す」。
サムターン回しっちゅう盗人がおるんですね。
つまり日本語で全部言いますと「親指回し回し」でございますねこれ。
回しとるんですね。
ええありますわな。
あといちばん多いのが半分以上はガラスをパ〜ンと割って入るそうでございますね。
働く時間もございますいろいろとね。
だいたい夜中もありますけども今多いのはお昼ですね。
子供は学校行ってるとかねご主人は働きに行ってる奥さんの方はパートかなんかに行ってる。
いきなりは入らないそうですね。
今入ったろって入らないそうです。
ちゃんと下調べするんですな。
このおうちは何時に子供が学校行って何時頃学校から帰って来るなご主人は会社行って何時頃帰って来るなっていうのを曜日曜日でやっていって電話とか掛けてそのうちにね。
確実におれへんって分かったところで入っていくんでございますよね。
うん。
中には招待券を配って…。
いろんな映画とかまあ今日みたいな落語会とか。
招待券を配って家族全員分贈りまして家族全員行ってるのでその時間帯に行くとか。
皆さん大丈夫ですか?
(観客たち)あははっ。
そんなんもあるそうですよね。
ほんで盗人でも分かりにくい形がございますね。
漫画に出てくるような唐草模様の風呂敷をね大きなやつをこう掛けましてほんでこの口の周りにひげをぐるっと生やしてね抜き足差し足忍び足で歩いてくれてたら盗人やって分かりやすいんでございますけども今はそうやないんですね。
なんならスーツ着てネクタイ締めて泥棒する。
サラリーマンに見えるわけですな。
あと宅配業者とかそれとか引っ越し業者のああいうユニホームを仕入れてきましてそれでやるとかね。
そんな感じで気をつけないかんわけでございますが。
昔の泥棒の働きます時間と申しますのはもう芝居や講談でもおなじみでございますな。
屋の棟は三寸下がろうか流れる水もしわしわ止まろうかというね。
遠くの方でお風呂屋さんが湯を落とす音がタッタッタッタッと聞こえるという丑三つ時やそうでございますけどもそんな時分に働くんでございますな。
日照りが続きましたかげんか戸がはっしゃいでよったかげんか表をこじます音がやたらとやかましい。
ベリバリ!ベリバリ!ベリバリ!道頓堀立売堀。
そんな音はしませんけどもね。
こんな音したらなんぼよう寝てても目が覚めますわな。
夜中に不意に起こされたときは大概することが一緒でございましてねハトが豆鉄砲を食うたってな顔をしましてあむにゃむにゃむという味の分からんもんぎょうさん食べていろんなとこかゆくなってきてせんど鼻をこすって身震いしていちばんしまいにションベンがしとうなるという。
この人もこのバリバリバリで目覚ましよった。
「ああ…あぁ〜…」。
ゴーン
(鐘の音)「ううっションベンしたい」。
(観客たち)あははっ。
「うちはかなわんなもう〜。
ネズミが多いさかいにそないしてバリバリバリともう…。
しゃいしゃいしゃい!しゃい!寝てられへんがなもう。
しゃい!向こう行ってくれ」。
「ベリバリ!ベリバリボリ!」。
「しつこいのうほんまにもう。
しゃいしゃいしゃいしゃいしゃいっちゅうのに」。
「ベリバリ!ベリバリボリバリ!」。
「しゃい!」。
「バリバリ!」。
「しゃいしゃい!」。
「ボリボリ!」。
「掛け合いやそれでは」。
(観客たち)あははっ。
「なんや?これ。
ネズミや思うたらせやないな。
誰ぞ表の戸こじてよんねんな。
あの…どちらさんでっか?表の戸こじてなはるのどちらさんでっか?その戸開きまへんねん。
その戸ねはめ殺しにしてまんねん。
開けなはんねやったら一枚西の戸にしておくんなはれ。
その戸開きまへん。
ああ〜おっとっと!外してしもたなこれ。
誰か入ってきなはったな。
あっあんたどちらさんでっか?あんたどちらさんでんの?」。
「じゃかましいわい!」。
「えっ?やかましいですか?」。
(観客たち)あははっ。
「やかましいのそちらでしょ?私静かにしとりまんねんけども。
あんたどちらさんでんの?」。
「夜中に無断で入ってくる俺は盗人やわい!」。
「ああ〜盗人屋さんでっか。
知らんさかいに。
まあお入り」。
「おっ?落ち着いとんなこいつは。
おのれ何さらしとんのんじゃい」。
「何さらしとんのんじゃいって寝てまんねんけどね」。
「ちっ…明かりつけぇ」。
「えっ?」。
「明かりつけぇっちゅうねん」。
「いや明かりつけぇってねわたい寝てますさかいに暗い方が寝やすおまんねん。
つけるんやったらどうぞ勝手におつけなすっておくれやす」。
「スイッチはどこや?」。
「えっ?」。
「スイッチはどこや?っちゅうねん」。
「あっスーちゃんですか?スーちゃんはありません。
私一人さみしぃ寝ております」。
「何を言うとんねん。
電気のスイッチはどこや?っちゅうてんねん!」。
「ああ〜電気のスーちゃん。
私職人でんねん。
そんなね英語使われたらどうにもならん。
電気のネジでっしゃろ?ネジ。
それやったらねこっちこっち。
もうちょい前もうちょい前。
ああ〜そうそうそうそう。
あんたの頭の真上におますわ」。
「ぎゃあぎゃあぬかすなあほんだらほんま。
ここか?ここか?えっ?あったあったあったあった!」。
「なんや?これ。
かさも球もなんにもあれへんやないかい」。
「へい。
こないだね電力会社とささいなことでもめましてね」。
(観客たち)あははっ。
「そないしてかさも球も外して持っていきはったあとに紙貼ってありまんねん。
あっさりしてるわ」。
「ほな何かい?おのれ暗がりで暮らしてんのかい」。
「ぶるるる…。
暗がりで暮らしたら人間危のうおます。
ろうそく使うてます」。
「ろうそくや?ぜいたくさらしやがって。
えっ?んん〜マッチ出せ」。
「えっ?」。
「マッチを出せっちゅうんじゃい」。
「ああ〜マッチ。
あんた夜中に偉そうにマッチ出せって…。
いんねやったら貸してあげますけどもね。
あんたの左側にね棚がつってまんねん。
その上にぎょうさんのってますさかい勝手に使うて。
あっにいさん言うときまっせ。
このうち妙なとこに柱おまんねん。
ちょっと…」。
「あっ!」。
「くぐるようにって言おうと思ったのにガン!っと頭打ちなはった。
痛かったやろ?痛かったやろ?そら痛いわ。
なあ。
わたいもね…こんな柱おまへん普通は。
せやさかいねわたいここへ宿替えしてもう3べん頭打ってまんねんそれで。
けどそんな今みたいな音してまへんわ。
コン!ぐらい。
あんた今ゴ〜ン!っちゅうたんや。
痛かったやろ?そら痛いわ。
わてはコン!ぐらい。
あんた今ゴ〜ン!っちゅうた。
そら痛い痛い痛い。
あんたど不器用な盗人でんな」。
「ああ〜痛っ!ああ〜痛ぁ!思いっ切り打たしやがった。
ああ〜痛ぁ!気ぃつけぇあほんだら!目から火ぃ出たわ」。
「目から火ぃ出ましたん?ほなもうマッチはいりまへんか?」。
「いるわあほんだらお前は。
こんなもんでつくかい。
あったあったあった。
ろうそくそこ置いとけろうそく。
もう!ええっ?俺は今までな人のもんすったこともあるけども仕事に入った先でマッチ擦ったってなことは初めてじゃ!」。
「うわ〜えらい癇立てて擦ってなはんな。
マッチってなもんねそんな癇立てて擦ったかてつかしまへん。
軽うにス〜ッといきなはれ。
軽うにス〜ッと」。
「軽うにス〜ッとってやかましいあほんだら。
ついたついた。
そこ置いとけ。
ふっ!さあ…おのれ暗がりや最初茶利みたいに思うてけつかった。
明かりがついたらこっちのもんや。
目に物見せたるさかいな」。
「おいこら。
おいこら!二尺八寸だてには差さんぞ」。
「抜きましたなぁ。
二尺八寸だてには差さんっちゅうてねよう芝居で役者がそんなこと言うてまっけどもあんたこれ二尺八寸おまっか?ないないないない。
私職人でんねん。
目は差し金。
何分何厘まで分かれへんけど大体分かります。
ちょっとじっとしてなはれ。
こっからでっしゃろ?うんうん…。
ほれ見てみなはれ。
二尺八寸あるどころかこれ二尺おまへんで。
二尺ないもん持って二尺八寸あるってなうそついたらあきまへん。
うそつきなはんなや。
うそつきは泥棒の始まり…」。
(観客たち)あははっ。
「はははっ。
あんたやなうそつく人」。
「やかましいわ!あほらしぃてドスら抜いてられるかい。
おのれ若いのに胆の据わったガキやなぁ。
あのな落ち着いてんのはええけどもな人をバカにするんじゃないでほんま。
ふぅ〜。
仕事入ったけどなお前みたいに…ふぅ〜。
落ち着いたやつは初めてじゃほんまにもう!」。
「うわ〜にいさんそれタバコを吸うてなはんの?つらいなぁ。
わたいも実はねタバコ吸いでんねん。
どうでっしゃろ?タバコ吸いの気持ち分かりまんがな。
一服よんでもらえまへんやろか?」。
(笑い)「だいぶに変わっとんなお前は。
ふっ!確かにタバコ吸いの気持ち分かるわい。
ほらくらえ!」。
「えらいすんまへん。
頂きます頂きます。
火ぃちょっとこっち貸してくだされ。
すんまへんな。
ええええ。
すみません頂きます。
ええ…。
すぅ〜〜…ひゅひゅひゅひゅ…」。
(観客たち)あははっ。
「すぅ〜〜…ひゅひゅひゅひゅ…。
うまいですわ。
うまいですわ。
えらいすんまへん。
おおきにおおきに。
いや〜しかしながらこれええタバコでんなぁ。
上等でっせこれ。
うん。
ふぅ〜。
これキセルは銀の延べやおまへんかいな。
安いことおまへんでなぁ。
このタバコ入れも上等やし。
このタバコ入れといいキセルといいタバコといいええもんばっかり使うてなはるな。
やっぱり気のいらん銭で買うだけにね」。
(笑い)「ふぅ〜。
おたくらよろしいな。
今ね世間が不景気や不景気や働く場所がない職場がないっちゅうてんのにねあんたらよろしいな。
入ったとこが職場になりまんねやさかいね。
へへっ。
ええ商売があったもんでんなぁ。
うんうんうんうん。
すぅ〜…ふぅ〜。
あんたら税金っちゅうのはなんぼほど払うてなはんの?」。
「やかましいほんまにもう!こっちへ貸せこっちへお前は。
だいぶに変わって…。
おい」。
「へい」。
「へいやあるかい。
お前なんや?これ」。
「何が?」。
「何が?と違うがな。
俺だいぶ前からお前のとこめっこつけてたんや。
だいぶにぎょうさん道具並べてたのになんにもあれへん。
すっからかんやないかい」。
「へいそうでんねん。
実はわたいね嬶があるわけやなし子供があるわけやなし働いたら働いた分だけ道具並べてね喜んでた。
この近所で評判男でしたけどな友達っちゅうのはええ友達持たなあきまへんな。
悪い友達に誘われて一晩行ったんが癖になり二晩三晩四日五日と…。
あきまへんなあのバクチっちゅうやつ。
へい。
僅かの間にすっからかん。
何もかも皆質入れてしもてあとに残ったんはこのメリヤスのシャツとパッチと命だけ。
もうあとお迎え待つよりしょうがおまへん」。
「えっ?ほたら何かい?ほたら何かい?お前勝負事さらしたんかい!?」。
「へい」。
「へいやないぞ。
へいやないぞこら!バクチするやつはな人間のカスやぞ!」。
(笑い)「盗人するよりましやろ」。
「やかましいお前は。
お迎え待つよりしょうがないってそんな年やあるまいがな。
手に職はないのんかい?」。
「大工!」。
「大工というたら職頭。
なんで働かへんねん!?」。
「わても働きたい。
働きたいねんけど今も言いました話ね何もかも皆質入れてしもて道具箱まで質に入れてしもた。
僅か10円の話だんねんけどもなその10円の金があったら道具箱質受けして明日からまた一生懸命働いて一からやり直して真人間になってみたいなと思ってな今日も朝から友達や親類のうちへその10円の金を無心に行ったんだけどもしたことが悪うおましたな。
バクチするやつは相手にならんっちゅうて誰も話も聞いてくれまへん。
一日歩いてくたびれ損。
ようよう家へ帰って来て横になってウトウトとしぃかけたら表の戸がバリバリバリ!なんじゃいなと思ったらにいさん…あんさんですわ。
なあ。
こないして無断で入ってきたあんさんに何もかも事を分けて話をせんならんというのもこらなんぞの縁ですわな。
この縁を大事にして10円なんとかなりまへんやろか?」。
(笑い)「お前上手に物ぬかすなお前は。
ええっ?10円あったらまた明日から一からやり直して真人間になってみたい?はっ!かわいらしいことぬかしやがったな。
せやお前の言うとおりやな。
人間おぎゃあと生まれたときからなバクチ打ちでもなけりゃ盗人でもないわい。
俺ももともとは職人や。
欲が手伝うてこんなことしぃだしたけどもな。
うんそうか。
明日からまた一からやり直して真人間か。
今のお前の言葉心打たれたな。
よっしゃ。
こないしよう。
俺もな今日かぎり足洗う。
うん明日から真面目に働くわ。
でな今度会うときはお互いにきれいな体で会おうやないかい。
うんそんだけの金でお前がやり直せるなら安いもんや。
ちょっと待ってぇ」。
「持っていけ」。
「ほなにいさんなんでっか?この10円わたいに恵んでおくんなはる?恵んでおくんなはる?おおきに。
わたいの言うたことがにいさん気に入りました?うれしいことでんなぁ。
ええ…友達も親類も話も聞いてくれなんだ。
見ず知らずのあんたがこんな時刻に勝手に入ってきて持っていけ。
あんたええ人でんな。
おおきに。
助かります。
おおきに。
助かります助かります。
ははははっ。
へてな…」。
(観客たち)あははっ。
「なんや?そのへてなっちゅうのは」。
「大阪の言葉でそれからな」。
「分かってるわお前は。
へてからどないしたっちゅうねん!」。
「あのね最前も言いましたやろ。
このメリヤスのシャツとパッチしかおまへんねん。
こんなんで往来したら警察がやかましい。
法被や腹掛けを手ぬぐいでぐっと縛っておんなじ質屋に5円で入ってまんねんけども明日道具出しに行ったついでにそれも出しときまひょか?」。
(笑い)「まあまあ確かになそないな格好で往来したら警察やかましいわ。
えっ何?5円かい?5円かい?待ってぇ待ってぇ待ってぇ」。
「これこれ5円あるさかいこれでお前なんとかしとけ」。
「えらいすんまへん。
おおきにおおきにおおきに。
えらいすんまへん。
助かります。
へへっ。
へてな…」。
(観客たち)あははっ。
「まだなんぞあんのんかい?」。
「いや今言いました10円と5円は元金でんねん。
行ってある先が質屋やさかいね利子なしでは出さんと思いまんねんが…」。
「いっぺんに言えいっぺんにお前は。
俺はお前の言葉にうかうかとかかってんねんほんまに。
なんぼの利子や知らんけどな2円あるさかいこの2円でなんとか話つけとけ!」。
「えらいすんまへん。
頂きます。
やっぱりあんたあっさりおくんなはるね。
人のもんただ盗るだけに」。
「いらんことぬかすなお前はほんまにもう…」。
「へてな…」。
「まだかお前は!あと何があんねん?」。
「ちゃいまんねん。
わたいね3日前からなんにも食べてしまへんねん。
おなかペコペコでんねや。
明日仕事行くとなったら弁当もいりますさかいなどうでっしゃろ?米の5合ほどなんとかなりまへんやろか?」。
「ちょっと待ってやおい」。
「あのな俺お前と所帯してんの違うぞお前は。
なんで米の…。
ああ〜まあしかしな腹が減っては戦はできへん…世の例えがあるわい。
ここにこんだけあるさかいなこれでなんとか弁当でもなんでも米の段取りしとけ!」。
「えらいすんまへん。
おおきにおおきに。
へてな…」。
「まだかお前は!あと何があんねん?」。
「ちゃいまんねん。
このうちね家賃がたまってまんねん3つだけ。
こないだも家主が来てな家賃の催促でんねんけどもな実はこうこうこうでえらいことしてしまいましたって話をしたらよう物の分かった家主でしてしもたことはしょうがないけどもお前も職人や。
ちょっとずつ働いて僅かずつでも入れてくれって機嫌よう帰ってくれてまんねん。
それで夜にいさんに道具から衣装からね弁当まで段取りしてもうて明日仕事行くとき家主の家の前通ってなんでそんだけのことができんのやったら家賃の半分でも入れへんねん?と弁当取られたら困りまんがな。
せやさかいに家賃の半分なんとかなりまへんやろか?」。
(笑い)「もうあれへんがなこれ!なんぼのやつか知らんけどこれでなんとか話つけとけ!」。
「えらいすんまへん。
頂きます頂きます。
へてな…」。
「もうないっちゅうてんねん!ほんまにええかげんにせぇ!」。
「もうしまいでっか?今日は割と稼ぎが少のうおましたな」。
(観客たち)あははっ。
「今度はいつ来てくれはる?」。
「もう来ぇへんわあほんだら!しっかり働けよ」。
「へい」。
盗人はぽいっと表へ出ますと片っぽの方何を思いよったか後ろから…。
「お〜い盗人屋はん盗人屋はん!お〜い泥棒屋は〜ん!おい盗人!泥棒!」。
「こらこらこらこら!このガキが!このガキが!」。
「痛い痛い痛い…」。
「このガキが!このガキが!」。
「にいさん何しなはる?」。
「何しなはる?やあるかい。
お前という男は悪い男やな。
ええっ?人にさんざんへてなへてな言うて持ってる金全部取りやがってまだ大きな声で盗人!泥棒!と呼び立ててその道へ突き出す気か!?」。
「にいさんわてそんな悪い人間と違いまっせ。
ちゃいまんがな。
ねっ。
わてにいさんに用事がおましてんけど名前聞いてやしまへんやろ?名前聞いてなかったら商売で呼ばなしょうがない。
八百屋やったら八百屋はん。
魚屋やったら魚屋はん。
炭屋やったら炭屋はん。
あんた盗人やさかい盗人屋はん盗人屋はん」。
「やかましいわこら!大きな声で盗人!泥棒!と呼び立てて一体なんの用事や?」。
「へい空の財布が忘れておました」。
(拍手)
(受け囃子)桂文華さんの落語をお聴きいただきました。
文華さんどうして落語家になろうと思われたんでしょう?そのきっかけはなんだったんでしょうか?中学1年生のときに市民フェスティバルみたいなのがあって近所の河原でね屋外にステージ組んでたぶん素人さんやと思うんですが落語やってはったんですよ。
面白いんですよ。
ほとんど見てないんですよ。
そのネタがね「道具屋」っちゅう噺で仁鶴師匠のレコード…当時出てたんでそれを母親にねだって買ってもらってそればっかり聴いてたら覚えてしまうんですねえらいもんで中学1年2年ぐらいの間にね。
耳で覚えちゃうという。
体育館で全校生徒の前でやったんですよ600人ぐらい体育館で。
結構これがウケましてね。
ほんで1人でしゃべってんのに600人いてて笑うてくれるってのが楽しくて。
ほんでたまたま高校にも落研があった。
あんまないでしょ高校の落研って。
珍しいですよね。
あって大学も落研があって入ってるうちにまあ流れですね。
それでまあ噺家にということですね。
そうですか。
あれですよねお若いときといいますか…お若いときに大きな病気をされたそうですね。
23やと思います。
23のときに舌がん…舌の…ベロのがんになりまして。
ええ。
克服といいますか…。
克服できてるかどうか分かんないんですけどもね今ねこうやってしゃべる商売させてもうてるんでもうただただ感謝ですね。
そうですか。
それがプロの道に進む一つ後押しになった部分ってのはあるんでしょうかね?いうたらほっときゃ死ぬ…確実に死ぬ病気やと思うと死ぬねんないずれはというのを実感したんでそれならまあ好きに生きようということですね。
生きてる間にあんまり後悔せんようにいつ死んでも…みたいなこと。
まあ当時22〜23の僕は落語をやってるときがいちばん楽しかったんで。
それこそほんとに毎日お風呂入ったらネタ一席二席稽古して…。
へえ〜。
別に誰に言われて…「しなさい」言われるわけやなしにね。
やってることが楽しい。
その中でばぁ〜っとしゃべりながら自分の中で落語の世界が広がっていくのを自分で楽しんでるみたいな。
へえ〜。
まあでも文華さんというお名前は師匠の字をひと文字もらってということですよね?「文枝」。
当時「小文枝」でしたけどもね「文」の字頂いて。
この「華」の字ですけれどもこれ何か意味があるそうですね。
だから今の話です。
やっぱり病気もして思い詰めてなってるところがあるんですよ。
俺はこれだみたいなところがあって思い詰めていたので地味な陰気な新弟子なわけですよ。
で師匠は…華を持ちなさい華やかにもっとなりなさいということで「華」という字をくれはったんですね。
あとありがたいのはそのときに東京の噺家さんもみんな調べて当時この「華」という字を使うてる噺家が一人もいてないという。
そこまで考えてくれはったのでうれしかったですね。
へえ〜。
しかしまあ今年は50歳に…。
はいなりました。
節目の年でもあるというふうに思いますけれども今後何かこういうことをしたいというような目標みたいなものありますか?落語会にやっぱりお客さんってありがたいもんで何度もお越しいただいたりするんですよ。
また来てくれてはるわ。
あの人もまた来てくれてはるわ。
ありがたい。
今日でもいうたら何人かの方お顔存じ上げてるわけですよ。
だからそういう方々に飽きられないようにネタ数は少し増やしたいなというふうには思ってますけどもね。
ということで桂文華さんにお話を伺いました。
どうもありがとうございました。
ありがとうございました。
来月は28日放送です。
2014/11/23(日) 05:00〜05:30
MBS毎日放送
らくごのお時間[字]【桂文華◆「打飼盗人」】
<第14回>桂文華◆「打飼盗人」▽月1回、第4日曜の朝に本格的な落語を一席。
詳細情報
お知らせ
月に1回、寄席小屋を訪れて、脂の乗った落語家の落語を1席お届けします。
番組内容
今回の噺家は5代目桂文枝さんの16番弟子・桂文華さん。演目は「打飼盗人」をお届けいたします。
出演者
【落語】
桂文華
【案内人】
福島暢啓(MBSアナウンサー)
ジャンル :
劇場/公演 – 落語・演芸
バラエティ – お笑い・コメディ
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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