昔むかし山奥にたいそう腕のいい木こりがおりました。
子供の頃から山へ入り大人に混じって木を切り続けてきたので誰よりも山を知り尽くしていました。
山の中にある蟹が淵と呼ばれる淵の周辺には見事な杉林がありました。
しかし木こりたちは決して近づこうとはしませんでした。
淵には恐ろしい主がいて人を引き込むと信じられていたからです。
木こりの切り出した杉の木は庄屋の蔵の建て増しに使われ重宝されました。
おじちゃん。
お〜。
きれいな花嫁じゃのう。
ハハハ。
お前さんも大きくなったらきれいな花嫁さんになるんじゃろうな。
ご精が出ますな。
ん?な〜に木を切ることしか知らねえもんでの。
おじちゃん!おおお前さんか。
どこへ行きなさる。
ばあやと山菜採りに。
くれぐれも蟹が淵には近づかんようにな。
うん。
(悲鳴)あの声は…まさか!?《まさか…まさか!》お〜いお嬢様を返しておくれ〜。
返しておくれ〜。
(泣き声)〜それから幾度も季節が巡って蟹が淵で庄屋の娘がいなくなったことは誰も語らなくなりました。
山の杉の木は評判も上々で大勢の木こりが山に入り杉の木を切るようになりました。
やがて山には木がなくなってしまいました。
残った杉が大きな木に育つまでには何十年もかかります。
そんなある日木こりの家を久々に庄屋が訪ねてきました。
杉の木が欲しい?せがれが商いを始めることになってな。
庄屋はせがれのために家を建ててやりたくて来たのでした。
う〜ん…。
2人ともこの辺りにはもういい杉の木のないことを知っていました。
ただひとところを除いては…。
〜《堅い。
こいつはいい大黒柱になる》あっ!チッ。
あぁ〜!か…蟹が淵の主か?うぅ〜。
待っておじちゃん!ん?あっ!お嬢さん。
これさっき飛んできたとき化け蟹のハサミを切ったんだよ。
今度は狙いをつけてもう片方のハサミも切って。
化け蟹は手出しできなくなるから。
うん。
来たぞ。
だがどうやって?そうだ!おじちゃん。
あっ。
ありがとう!あぁお嬢さん待ってくれ!木こりは蟹が淵の杉林から立派な杉の木を切り出し庄屋に届けました。
あんたに何とお礼を言っていいか。
礼など無用ですじゃ。
村の衆もよく淵の主を退治してくれたとみんな感謝してる。
お嬢さんが助けてくれたんじゃ。
杉の木にはきっとお嬢さんの魂が宿ってまさぁ。
うん。
娘もあんたのおかげで成仏できたに違いない。
その後木こりは蟹が淵の周りで杉を切ることはありませんでした。
それから長い間杉林は二度と化け蟹が現れないように淵を見守り続けたということです。
〜
(伍作)ここだ。
昔むかしあるところに人使いの荒い旦那が…。
お前か!新しい使用人というのは。
伍作と申しますだ。
今日はまぁ来たばかりだ。
たいした用はないが。
そうじゃな薪でも割ってきておくれ。
え?さっさとしねえか!
(伍作)へえ!終わったら炭を切って庭の草むしり。
ついでに井戸の掃除!終わったら大急ぎでお使いがあるからな!へぇ〜。
お寺にお布施を届けたら親戚に手紙を届けておくれ!
(伍作)へ〜い!家から隣村を抜け山の上のお寺へ。
ほんとに人使いが荒いこと。
ハァ…ハァ…ハァ…。
(鶏の鳴き声)暇が欲しい?へぇ。
旦那みてえに人使いの荒い人はいねえ。
とてもじゃないが辛抱なりかねます。
しようがねえな。
ああ暇やる暇やる。
代わりはいくらでもいるんだ。
とっとと出てけ!《まったく》口入れ屋では旦那の人使いの荒さが知れわたっていました。
こりゃまずい。
誰でもいいから使用人探さなきゃな。
ったくどいつもこいつも俺なんざ若え頃はずいぶん働いたもんだ。
あ〜化け物でもなんでも出てくりゃ…。
ぶる…。
うわ背筋がぞくっとくるよ。
なんだ気持が悪い。
障子がひとりでに!フフフフ…。
ひょっとしてお前は雪女!?フフフフ…。
雪女ってのは器量よしだと聞いてたが…。
まあいい。
お膳を片づけとくれ。
えっ…はあ。
この家のあるじは私なんだからね!早くしねえか!皿や茶碗をきれいに洗って布巾をちゃんと洗ってあと台所に雑巾をかけて井戸から水をくんできておくれ。
桶に2杯だよ!はあ〜。
ハァハァ…。
次は床を敷いておくれ。
はあ〜嫌嫌!何!?嫌だと?つべこべ言わねえでさっさとやらねえと!おいそれからな!化け物ってのも使いようだな。
日が昇り西に傾き夜になる。
(足音)化け物め夜しか出ねえもんだから仕事がたまってしようがねえ。
ぶる…おっと来やがった。
ぞくっとするよ。
どうも気味が悪い風だね。
出てくれるのはありがたいが気味の悪い風はやめとくれよ。
うお〜ん!大入道か。
うん。
じゃあまず水くみから始めておくれ。
ゆんべ雪女が倒れちまって。
うお…う…。
聞こえてんのかい!早くやっとくれ!水はたっぷりくんどいておくれよ。
あと屋根の上のペンペン草むしって終わったらちょっと肩もんでおくれ。
えっ…。
それじゃ痛いよ!もっとそっとやっとくれ!あ〜いい気持だ。
もういいから今度は床を敷いておくれ。
嫌だってのか?どうしてそう化け物ってものは布団敷きを嫌がるのかね。
やらねえと…。
フフフフ。
今夜は針仕事のできるやつがいいな。
ぶる…その風だけはやめておくれと言ってるだろ。
今日は誰だい?また汚ねえのが来たな。
山姥か?はい。
足袋繕えるだろ。
洗濯物がたまってるんだ。
あとぬか漬けの手入れと仏壇のほこりを払って豆をつけといてくれるかい。
それに玄関に花なんてあるといいな。
若い女もいいが家の仕事はやっぱり…。
ハァハァ…。
あぁじゃあ布団をね…。
嫌とは言わせませんよ。
フフフ。
《化け物を使うというのは我ながらいい考えだね。
給金払わなくてもいいし》やっとあの風をやめたね。
なんだタヌキじゃねえか。
なに恐縮してやがんで。
イヒヒヒ。
あっそれじゃあの化け物たちはお前が化けていたのか。
どうりで雪女の器量が…まあいいや。
それで今夜はお前が働くのか?ヘヘヘ。
なに暇が欲しい!?こう人使いの荒い家には金輪際いられねえと。
こういうわけだな?暇はやるがその前に玄関だけ掃除してってくれ!さっさとやらねえか!ヒャ〜!あ〜っ!何してやがんだい!こう化け物の使いが荒くちゃ辛抱なりかねますとさ。
昔むかしあるところにじいさまとばあさまが住んでおりました。
働き者のじいさまはばあさまが作ってくれたおむすびを持って芝刈りに出かけました。
朝早く出たのですが思うようにとれず気がつくと来たことのない山奥まで入り込んでいました。
昼近くになってやっと背負い子いっぱいの芝が取れたのでおむすびを食べることにしました。
包みを開けて食べようとしたときおむすびが1つポトリと落ちました。
コロコロ転がり茂みの手前で止まったのでじいさまが拾おうとしたときネズミが出てきてなんとおむすびを食べ始めました。
驚いたじいさまでしたがうまそうに食べる姿を見てよほど腹が空いていたのだろうと黙って見ておりました。
あっという間に平らげてしまったので残ったおむすびをみ〜んなネズミに食べさせてやりました。
おかげで腹を空かしたまま重い芝を担ぎ遠い道のりを帰ることになったのです。
しばらく歩いているとさっきのネズミがまたやってきました。
じいさまさっきはご馳走になったで今度はおらがご馳走しよ。
ついてらっしゃい。
ついて行くと小さな穴の前で立ち止まりました。
ここからは人間は通ることができんのでおらの尻尾をつかんで目つぶってくらっさい。
あいよ。
目開けてええぞ。
(2人)「百になっても二百になっても」「にゃんごの声は聞きたくない」何じゃここは…まるで話に聞いた浄土のようじゃ。
浄土とは何の心配事もない穏やかな世界のことを言います。
「にゃんごの声は聞きたくない」「とんかんとんかんとんかんかん」間違いない…この穏やかな気持この景色。
浄土に来たんじゃ…。
そのとおりここは浄土じゃ。
もっともネズミの浄土だがな。
今日はうちのもんがえらい世話になったでなんでも欲しいものがあれば言っとくれ。
ただしにゃんご言うたらいかんぞおらおっかなくなるから。
ネズミの長老は約束を守ってくれたらお礼に金銀財宝の山から欲しいものを持って帰るように言いました。
欲のないじいさまは食事を済ませると土産には手に持てる程度のお宝でよいと小さな袋を1つもらい礼を言って帰っていきました。
驚いて出迎えたばあさまに今日一日のことを話し始めました。
その一部始終を盗み聞きしたのが隣に住むじいさん。
この男怠け者で欲張り。
おまけにケチという困り者。
何やらよからぬことを思いつきました。
ばあさんにおむすびを作らせ夜明けとともに飛び出してゆきました。
(足音)ゆうべ聞いた山奥まで来たもののなかなかネズミは現れません。
イライラしながら待っていると昼近くになってやっと顔を出しました。
じいさんはしめしめと持ってきたおむすびをほら食えほら食えとみ〜んなあげてしまいました。
盗み聞きしたとおり今度はネズミがお返しにご馳走してくれると言ったのであとはついてゆき言うとおりにすればお宝が手に入るぞとにんまり。
目開けてええぞ。
「百になっても二百になっても」「にゃんごの声は聞きたくない」ネズミの村などどうでもいいじいさんはお宝を探してキョロキョロ。
わしらの村へようこそ。
今日はうちの者がえろう世話になったでお礼をせんとな。
欲しいものがあれば言っとくれ。
うわ〜これほどのお宝とは…。
何を言ってもかまわんがただ一つにゃんごと言ってはいかんぞ。
え?にゃんご?おうおらたちゃおっかなくなるからな。
《ヘヘヘネズミだけににゃんごが怖いか》欲張りなじいさんはにゃんごと言えばネズミは逃げ出しこのお宝はみんな自分のものになると考えました。
にゃんご!ネズミたちは一目散に逃げ去りお宝だけが残りました。
じいさんは大喜び。
ところが何やらもやがかかると次々とお宝が消えてゆきとうとう全部なくなってしまいました。
お宝だけではありません。
ネズミの浄土のすべてが消えてしまいました。
そして最後にはじいさんも。
隣のじいさんどうしたんじゃろうかの?ほんとに心配なこって。
隣のじいさんはなんとか戻ってきたものの夜中になると「にゃんご!」とうなされたように叫び続けたそうです。
何事も欲張らずほどほどにということですね。
2014/11/23(日) 09:00〜09:30
テレビ大阪1
ふるさと再生 日本の昔ばなし[字][デ]
「木こりと化け蟹」
「化け物使い」
「おむすびころりん」
の3本です。みんな見てね!!
詳細情報
番組内容
私たちの現在ある生活・文化は、昔から代々人々が築き上げてきたものの進化の上にあります。日本・ふるさと再生へ私たちが一歩を踏みだそうというこの時にこそ、日本を築いた原点に一度立ち返ってみることは、日本再生への新たなヒントになるのではないでしょうか。
この番組は、日本各地に伝わる民話、祭事の由来や、神話・伝説など、庶民の文化を底辺で支えてきたお話を楽しく伝えます。
語り手
柄本明
松金よね子
テーマ曲
『一人のキミが生まれたとさ』
作詞・作曲:大倉智之(INSPi)
編曲:吉田圭介(INSPi)、貞国公洋
歌:中川翔子
コーラス:INSPi(Sony Music Records)
監督・演出
【企画】沼田かずみ
【監修】中田実紀雄
【監督】鈴木卓夫
制作
【アニメーション制作】トマソン
ホームページ
http://ani.tv/mukashibanashi
ジャンル :
アニメ/特撮 – 国内アニメ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
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