ご機嫌いかがですか?「NHK短歌」司会の濱中博久です。
第二週の選者斉藤斎藤さんです。
今日もよろしくお願い致します。
この歌では斉藤さん何を言いたかったんですか?何を言いたかったのか自分でもよく分からなくなっちゃいました。
読者に丸投げしてしまおうというそういう時もありますね。
そういう時もあるというそういう歌ですね。
なかなか意表を突く歌が多いですね。
斉藤斎藤作品は。
驚きました。
はい。
さあそれでは今日の「NHK短歌」お迎えしたゲストをご紹介致します。
作家の柴崎友香さんでございます。
ようこそお越し下さいました。
よろしくお願いします。
柴崎さんは芥川賞を今年受賞されました。
第151回の受賞でございます。
本当におめでとうございました。
さて受賞作品こちらです。
「春の庭」という作品ですがさてどんな作品なんでしょう?東京の片隅のアパートとその周りの家を舞台にした話なんですが書いている間その場所の事をずっと想像しながら書いていたので私にとっても懐かしい友達の家みたいな感じでずっと自分にとっては近い場所であり続けるようなそんな小説になりました。
斉藤さんは柴崎さんの本当に愛読者でいらっしゃるそうですね。
とても面白くて風景の描き方がすごく面白いんですよね。
描写がすごい立っているしいろんな層があるような積み重なっていくようなとても面白く読ませて頂いてます。
風景描写がすばらしいと思っていらっしゃるんですね。
柴崎さんは短歌とのご縁はどうですか?最初の出会いは小学生の頃にかるたの百人一首で負けたくなくて覚えたというのが。
負けず嫌いの柴崎さん。
暗記物が好きだったんですけど最初はそこでいくつか覚えてそのあと高校の夏休みで全部覚えてくるっていう宿題があってその時に一応全部覚えました。
覚えたはずなんですけど今は全部は覚えてないですね。
無理やりとはいえいっぺん全部覚えてしまうといろいろ下地になるでしょうね。
今でも見ると思い出したりして覚えておいてよかったなとこの年になってから全部覚えるってなかなか難しいので。
長くいいなと思っておられる歌があるんですか?いくつか百人一首の中で恋の歌で3つ好きなのがあるんですけどその中で今はこれかなと。
これが一番の歌?そうですね。
今強いて言うなら。
どういうご心境なんですか?これがお好きだという事は。
百人一首会えなくてつらかったり寂しい歌が多いんですけどこれは長くも命がもう少し長生きしたいなという歌なのでその生命力みたいなものが好きだなと思って選びました。
さてゲストにはいつも短歌のイメージを短い言葉にして頂いてますが柴崎さんはどんな言葉になりましたかご披露下さい。
こういう側面は確かにございますが柴崎さんがどうお考えなのか後ほどゆっくりお聞かせ頂きます。
よろしくお願いします。
さあそれでは入選歌のご紹介でございます。
今日は題が「ねじれ」です。
斉藤斎藤選入選九首です。
一首目。
まず早速柴崎さん伺いましょう。
ひとりで背中とか後ろ側に湿布貼るの難しいんですけど「くの字くの字」というところが悪戦苦闘しながら体を動かしている動きが見えるようでとても面白いと思いました。
「ねじれ」を「よじれ」という言葉で表現されてますけれどもおっしゃるように下の句が生き物みたいでかわいらしいというのと。
上の句「腰痛のひとりにて貼る」というこの言葉の並びがなかなか巧みなんじゃないかなという感じがしますよね。
では次が二首目です。
レトルト食品とかの温めるタイプの料理を「ふくろ味」と表現されてるんですけどね。
下の句が何とも言えない味があって「トンよりチンのねじれの食事」と。
トントントンと包丁で刻むんじゃなくてレンジでチンする感じなんですかね。
「トンよりチン」というリズムとここに「ねじれ」を見いだすのがなかなか面白かったですよね。
三首目です。
小さい頃やった事ある方も多いんじゃないかと思うんですけれどもオルゴールねじっておかずに取っ手を持ったままぐるぐるっとオルゴールが回ってたんですよね。
その音の鳴る感じ手触りを「身悶へ」と表現したところがとても巧みな歌だと思います。
ここを歌にするかっていうね目の付けどころですね。
次四首目です。
まず「ふわふわのねじり揚げパン」というねねじって揚げるみたいな料理の過程みたいで出来たて感がすごくあるんですね。
そのパンを楽しみに三キロも歩いてしまうという結構な距離ですよね。
確かに遠いですね。
わくわくしながら歩く朝の散歩の感じがとても出ていていい歌だと思いましたね。
よほどおいしいねじり揚げパンなんでしょう。
では次です。
柴崎さんどう読まれましたか?上の句で飴を舌で転がしてる感じが自分の感覚のように伝わってきますよね。
動きと形の似てるブルドーザーと飴という小さいものと大きいもののギャップが「ブルドーザーが好きだったころ」という子供の頃の思い出への距離感をうまく表現しているなと思いました。
斉藤さんブルドーザー力強い動きをするのは子供の頃私も好きでしたね。
私は今でも大好きです働く車が。
口の中の飴と昔のブルドーザーがねじれてつながってる感じって非常に巧みな取り合わせの歌ですね。
では次六首目です。
「叩き直すぞ」なんていう人は最初から相手の根性がねじれてると決めつけてるわけですよね。
非常にその把握というかことわざみたいな歌としても面白いんですがその根性を叩き直してやるというふうに自分もちょっと思っている。
この批判している対象に自分もちょっと含まれてるような感じがするんですよね。
そこがちょっと深みがあっていいなと思いました。
柴崎さんどう読みました?後半の「捻れて居る」「決めつけている」は重なっている事でらせん状に響き合うというかそこもねじれにつながっているようで…。
余計ねじれ感が…。
そうですね。
はいでは次にまいりましょう。
七首目です。
柴崎さんどう読まれましたか?これまず読んですぐにあれ?スカイツリーってねじれてるのかなと。
確かに。
どうだっけ?と思いましたね。
まだスカイツリーってパッと頭にはっきり形が浮かばないのでそこでどうなってたかなって気になるのと「ひと筋にねじれて誇る」というのと後半の「三度の転職」というところでひと筋を誇っててうらやましいと思っているのかそれとも自分も三度の転職いろいろあったけどひと筋にやって来たという事で共感しているのかその辺りもいろいろ想像の余地がある歌だなと思いました。
どういう思いで見上ぐるんでしょうね。
どっちともとれるところが面白いですよね。
上の句がとても好きで「ひと筋にねじれて誇る」って下から見上げるとちょっとねじれてる感じするんですよね。
東京タワーと比べるとちょっと親近感が湧きにくいというか若干感じ悪いところあるじゃないですか?これは個人の印象ですけど。
その「ねじれて誇る」という感じがちょっと冷たい感じをすごく捉えてるかなという感じがしますかね。
東京タワーの姿は万人に愛されてるところがありますからね。
さて次が八首目です。
琳派というのは尾形光琳の絵の一派なんですけれどもちょっとねじれたような屋根の独特のデザインの教会があってキラキラ光が反射するところが琳派の水のようだというふうに捉えたところがとてもね何というんですかねちょっとゴテゴテしたというか詰め込んだ感じの言葉の運びが建築に対する違和感というか何かあれ?というその違和感みたいなものも捉えている感じがして面白い歌だと思いましたね。
では次がおしまいの歌九首目です。
柴崎さん伺いましょう。
これまず読んでパッと情景が浮かびますよね。
書かれてはいないんですけどきっといいお天気で山の緑なんかもきれいでそこにSLが走ってきて最後の「捩向く」というふだんはあまり使わない言葉だと思うんですけどこれがとても効いていてSLの動きに合わせてみんな一斉に動くという。
自分も思わず一緒に首をねじりたくなってしまうようなそんなところがとても面白いと思いました。
おっしゃったように「捩向く」なんですよね。
みんな動いているし私も体をひねっているというひねってる自分の体の動きの感じも両方表れてるみたいで結句がとてもいいと思いましたね。
以上入選九首でした。
ではこの中から斉藤斎藤さんの選んだ特選三首の発表です。
まず三席です。
青木志津子さんの歌です。
では二席です。
板坂壽一さんの歌です。
いよいよ一席の発表です。
金子重治さんの歌です。
「みんな揃い捩向く」という下の句すばらしいですし上の句のSLの煙からすっと引いていってそれを見ている人たちにカメラを映していくという動き流れみたいなものもとてもよくできている歌だと思いました。
今日ご紹介しました入選歌とその他の佳作の作品はこちら「NHK短歌」のテキストにも掲載されます。
是非テキストもご覧下さい。
それでは「うた人のことば」です。
運河の横浜ちょうど運河の上に高速路がずっと曲がりながら続いているんですね。
そこに海から帰ってきている小さな船そういうのの上にカバーがかかってたり筵がかかってたりしてその上に雪が積んでるんですね。
古めかしい船の雪の風景なのに上に都市の道路があるという。
いかにも今風そういう風景があるというのも近代都市の一つの形かなと思って面白かったんです。
私は歌を作る時に電車に乗ってる時によく作るもんですから雪だけがちょっと残ってる残雪ですから春なんですけどもう仕事でヘトヘトになった時の歌。
「うた人のことば」ご覧頂きました。
それでは次に皆さんから頂戴する投稿のご案内を致しましょう。
では選者のお話斉藤斎藤さんの「初心者のための短歌入門」今日は「氷山の一角を書く」です。
今日は「氷山の一角を書く」というお話なんですけれども「氷山」ですね。
私絵が駄目なので柴崎さんに描いて頂いたんですけれどもこれが海面ですね。
短歌って今更ですけどすごい短いじゃないですか。
短歌は短くて世界というのは巨大なので全部描こうとするとうまくいかない事がよくあると。
なので氷山で言えばこの水面から顔をのぞかせているここだけを…。
ちょっとしか見えてないけど実はこんなに大きいんだと。
このちょっとの部分をいかに丁寧に書くかとちょっとの部分だけを書くかという事が大事になってくるというお話なんですね。
それは一首単位でもそうですし連作でもそうだというお話がありまして「ヴォツェック」岡井さんの連作なんです。
これは「ヴォツェック」というオペラを見ながら自らの離婚の体験を思い出しながら書いていくという連作で非常に部分的な引用なんですが「申し立て室にばらばらに置かれゐし椅子の残像」と。
椅子の残像を描いていてそこから調停室具体的な話し合いをする部屋に入っていくんですが「椅子立ちて調停室に行くまでの数十秒の蹉たる意識」と。
これから調停室に入りますよというところと「椅子引きて調停室を出でむとす」と。
調停室でいろいろ話し合ったけれどもそこの話し合いの内容を書かずにその調停室を出るところを次は書いているわけですね。
つまり特に離婚なんていうのは相手のある事なのでプライバシーとかいろいろあって書けない部分もたくさんあるわけじゃないですか。
離婚以外も例えばいろいろな災害であったり戦争であったりとても事実をちょっと言葉にはできにくい部分というのがたくさんあると思うんですよね。
その書けない部分をいかに書かずに書ける部分の氷山の一角をその輪郭…特に海面ギリギリのところを丁寧に書いていくかという事で水面下の氷山の巨大さというものをほのめかすっていうこういう方法もありますよと。
短歌の短さを生かすために氷山の一角だけを丁寧に書くという事を意識して頂けるといいかなという今日はそういうお話でした。
今日の選者のお話「氷山の一角を書く」でした。
それではゲストにお迎えしている作家柴崎友香さんにもいろいろお話を伺ってまいりますがまずは先ほどの短歌のイメージを短い言葉にして頂いたんですがそれをもう一度お見せ頂きます。
「感情とストーリー」ですねこれはどういうお考えでしょう?短歌って短いんですけど短い中に複数の要素があって写真に例えると1枚じゃなくて2枚とか3枚あるという感じなんですけどあると必ずそこには要素の間に関係性が発生してそこに何かしら感情が喜怒哀楽というはっきりしたものでなくても寂しいような感じとか懐かしいような感じとか何か心がさざ波が立つようなものが発生するというのといくつか要素があると人ってそこにストーリーを想像してしまうというつながりを例えば道で言うならまっすぐ行くか右に曲がるか左に曲がるかみたいな事が発生するのが短歌でそれはちょっと短編小説に似ているなとも思いました。
短編に通じるところがあるわけですね。
ところで柴崎さんは写真も大変お好きでパノラマ写真なども発表されていますがこれはどういう事なんでしょう?風景がお好きなんですか?そうですね。
風景というものが私はとても好きでその時にその場所にしかないものにとても心惹かれて自分がなぜこの場所にいるんだろうという不思議さをとても感じさせてくれるものなんですけどそれがパノラマ写真ってカメラを動かしながらデジタルカメラの中で合成して撮るので人間が見えてるよりももっと広い角度で写ったりするんですけどこれがその場所の全体の感じだったりその場所に自分がなぜここにいるんだろうっていう不思議さみたいなものをより普通の写真よりも表している面白さがあって最近パノラマ写真をよく撮っています。
風景への関心といえば作品をお読みになってもそういう事をお感じになったんですよね?やっぱり柴崎さんの作品って自分が見た風景というだけじゃなくてその風景の中に折り畳まれている時間とかそこにいたであろうさまざまな人々みたいなものがいろいろ層を成している感じがするんですよね。
今のパノラマ写真でいうと例えば普通の写真ってどうしても私が見た世界っていう感じなんですけどパノラマでいろんな人が写っていてしかもウニョーンってゆがんでいるので中心が私だけじゃなくてここに写っているこの人もこの世界にいるしこの人もこの世界にいるみたいな中心がたくさんあるみたいな感じがしてすごいね層がたくさんある感じで風景面白いんですよね柴崎さんが描かれるものは。
やっぱり私は小説の中で風景をどういうふうに書くかというのをいつも考えていてその時にその場所にしかない一瞬の一瞬なんだけどそこから過去とか未来につながっていったりその場にいるいろんな人の思いとか存在が交錯するような場所を書きたいなと思っているんですけどそこで風景というものは自分の感情を代弁するものではなくて自分もその中の一つの点というか…にすぎなくてそっけなくそこに世界が存在しているという感じが私にとってはその方がとても安心できるというか何かそこにそっけなく世界が存在しているという事が自分の存在の支えになっているというような気がしてその感じを小説の中で書きたいなと思っているんですけど。
それは何かすごく私も近いような共感するところがあって短歌でもこの風景が私の気持ちを代弁しているみたいなものってちょっと気持ち悪く感じるんですよ。
風景がここにあると。
この風景はここにある。
まあそれは置いといて私もいるみたいなその何ていうかな「…で」っていう感じがちょっとないと風景は風景そのものとして描きたいというのがちょっとあるんですよね。
私は斉藤斎藤さんの短歌を読ませて頂いてこういう距離感の短歌は面白いなととっても思いました。
風景がただそこにあるものを書いているだけでもほんとそこに置かれる事によってやっぱりそこで伝わってくるものとか何かしら波立つものがあるように感じました。
さっきのストーリーで言えば風景をただ書いて一行空白があってまた風景をただ書いただけの歌風景を書いた歌が二首並んでいるだけでもその間に何かやっぱり気持ちって動くところがあるのでそういう意味でのストーリーべたなストーリーじゃなくて何か淡いものが立ち上がってくるんですよね。
そこがとても面白いし心惹かれるところだなと思います。
短編の方がしかしやや長いですが斉藤さんの冒頭の歌にもありましたが三十一文字でそれを表現する大変な作業ですね。
そうですね。
短い中に凝縮されてますね。
何を言いたいかという事言わなきゃいけないですね。
今日は作家の柴崎友香さんをお迎えして楽しいお話伺いました。
どうもありがとうございました。
ありがとうございました。
斉藤斎藤さん来月もどうぞよろしくお願い致します。
では「NHK短歌」時間でございます。
2014/12/16(火) 15:00〜15:25
NHKEテレ1大阪
NHK短歌 題「ねじれ」[字]
選者は斉藤斎藤さん。ゲストは作家の柴崎友香さん。短歌と短編小説は似ているという柴崎さん。印象的な1シーンがまず頭に浮かび、そこからストーリーが生まれてくる。
詳細情報
番組内容
選者は斉藤斎藤さん。ゲストは作家の柴崎友香さん。短歌と短編小説は似ているという柴崎さん。印象的な1シーンがまず頭に浮かび、そこからストーリーが生まれてくる。【司会】濱中博久アナウンサー
出演者
【出演】柴崎友香,斉藤斎藤,【司会】濱中博久
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 文学・文芸
趣味/教育 – 生涯教育・資格
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