突如現れた巨大なヘビ!恐ろしい天敵に群れで立ち向かうのはクロザルです。
名前のとおり全身真っ黒。
絶滅が心配されている貴重なサルです。
赤道直下インドネシアスラウェシ島の森に暮らしています。
巨大なヘビにもひるまない群れの固い絆を育んでいるのが顔。
愛嬌たっぷりの顔から怖い顔とぼけたような顔など人間顔負けのとっても豊かな表情を見せます。
顔で気持ちを伝え合う独特のコミュニケーション術で群れの結束を高めるんです。
群れ同士の争いでも切り札はやはり顔。
表情を巧みに使った駆け引きが勝負の行方を決します。
クロザルの新伝説です。
(テーマ音楽)スラウェシ島の北東部自然保護区に指定された豊かな森が広がります。
今日の主人公クロザルのすむ森です。
8年前からクロザルの調査を続けている研究チームに同行しました。
オ〜。
仲間の声のした方に向かいます。
でもこんな大声を出して平気なんでしょうか?あ〜いました。
クロザルです。
研究員が近づいても逃げようとしません。
長年の調査で人になれているんです。
穏やかな顔をしていますね。
クロザルはニホンザルに近い種類です。
スラウェシ島と周辺の島だけに暮らしています。
頭には長〜い毛。
まるでモヒカン刈りのようです。
でも長い毛の役割はよく分かっていません。
オスの体長は60センチメスは45センチほどです。
普通40〜50匹ほどの群れで暮らしています。
研究者たちは群れの後をついて回りメンバー同士の関係やコミュニケーションの方法などを観察します。
毛繕いを受けているのは群れで一番順位の高いオス。
「ヒロ」と名付けられています。
精悍な顔をしていますね。
う〜ん貫禄たっぷり。
うわぁかわいい!ハートマークのお尻を見せて遊んでいるのは1歳前後の子どもたちです。
そこへ年上の子どもがやって来てだっこ。
仲がいいんですね。
クロザルは果実やキノコ昆虫など何でも食べる雑食性です。
ヒロがつかんでいるのは大きなカブトムシ。
ガブリと豪快な食べっぷりです。
クロザルたちの群れは至って平和。
その秘訣が顔にあるというんですが…。
おや?「ニッ」とまるで笑ったような表情を見せました。
この顔は相手に対し敵意がないことを示す表情でクロザルの「あいさつ」なんだそうです。
私たち人間で言えば「やあ」「よろしく」という感じでしょうか。
仲間同士で毛繕いをする前などにこの顔をよく見せます。
友好的な関係を作るきっかけとなる大切なあいさつなんです。
もう一つクロザルに欠かせない顔があります。
左のクロザルにご注目。
口をパクパクさせています。
これは親しみや愛情を伝える表情。
群れの仲間に「仲良くしよう」と伝えているんです。
お母さん同士が口をパクパク。
何だか仲のいいママ友のよう。
おやおや真ん中のお母さんよその赤ちゃんまで一緒にだっこしちゃいました。
クロザルは自分の子どもでなくても面倒を見るんです。
こちらでもよその赤ちゃんに口をパクパク。
愛情たっぷりにあやしています。
おや?赤ちゃんに近づいた蚊をそっと取ってやりました。
みんなに見守られているんですね。
子どものサルたちも赤ちゃんの世話をしたがります。
口をパクパク。
あやしているつもりなんでしょうね。
おっと!赤ちゃんがびっくり。
するとお母さん子どもにかみつきました。
よく見ると子どもが赤ちゃんの体に触れていました。
くすぐったかったのか赤ちゃんが嫌がるとお母さんいたずらされたと勘違いして子どもを叱りつけたんです。
再び赤ちゃんのそばに子どもが近づくとお母さんまたもかみつきます。
するとそこへ別のメスがやって来ました。
大きく口を開け歯茎を見せています。
これは怒った時の表情。
「いいかげんにしなさい」と注意しているんです。
注意されたお母さん気が落ち着いたのか表情が穏やかになりました。
そして驚きの行動に出ます。
あの子どものもとへ向かいぎゅっと抱き締めました。
お互いに口をパクパク。
仲直りをしているんです。
お母さん怒り過ぎたことを謝っているんでしょうか。
子どもも毛繕いで応えます。
クロザルは顔で気持ちを伝え合い群れの平和を築いているんです。
いや〜なんとも心温まる光景ですな。
でしょヒゲじい。
でもちょっと待った。
ホントにいつも顔だけでもめ事が収まるもんですかねぇ?うちの妻なんて一度怒らせたら何やったってなかなか許してくれませんぞ。
あららヒゲじいも大変ですね。
はい。
確かにクロザルといえども顔だけで争い事は防げません。
あやっぱり。
クロザルの群れには順位があり時にはその順位をめぐって激しく争うこともあるんです。
あホントだ。
そこで顔だけでなく別な方法も使って争いを最小限に抑える努力をしています。
こちらをご覧下さい。
順位の高い格上のオスが格下のオスのお尻に乗りました。
「マウンティング」です。
上下関係を確認するための行為で群れの秩序を保つ働きがあります。
ほうほうほうほう。
このマウンティング自体は他の多くのサルでも行われています。
クロザルの場合は更に特別な仕組みを持っているんですよ。
えっ特別って何ですかそれは?それがこちら。
格上のオスが体の小さな格下の若者にマウンティングをされているでしょ?あホントだ。
あらららら。
実はこれ格上のオスがわざとマウンティングさせたんですよ。
わざと?若者に格上気分を味わわせて自分への敵意を減らし争いの種を極力減らしているんです。
う〜ん力だけで押さえ込むわけじゃないんだ。
はい。
クロザルはさまざまなコミュニケーション手段を駆使して群れの平和を築いているんです。
へえ〜!クロザル流コミュニケーション術で争い事の「苦労去る」なんてね。
平和な群れを築くクロザル。
その秘密がクロザル自身の性質にもあるといいます。
それを調べるために私たちはある実験を行うことにしました。
用意したのは小型カメラを中に隠したマジックミラー付きの箱。
鏡に映る自分の姿にクロザルたちがどんな反応をするのか観察します。
こちらはチンパンジーに鏡を見せた実験です。
初めて見る自分の姿を他のチンパンジーだと思い込み威嚇しています。
ほとんどのサルが鏡に対してこのように反応します。
ではクロザルはどうでしょう?好奇心旺盛な若者が近寄ってきましたよ。
口をパクパクさせました。
「仲良くしよう」という顔です。
威嚇する様子はありません。
あ!ニッとあいさつもしましたよ初対面の相手に対する振る舞いからクロザルには友好的な性質があるようだと研究者は言います。
詳しいことはまだ分かりませんがこのフレンドリーな性格こそ平和の秘訣なのかもしれませんね。
第2章では巨大なヘビが急接近。
クロザル大ピンチ!更に群れ同士の争いが勃発。
前代未聞の「顔バトル」必見です。
絶滅危惧種クロザルの数はわずか5,000匹ほど。
数を減らした原因は私たち人間です。
島の発展とともに生息地の森は急速に失われていきました。
また人々の食料として乱獲もされてきたのです。
狩猟が禁止された今でも密猟は後を絶ちません。
ある日のことです。
自然保護区の森の中でクロザルたちが騒いでいました。
1匹の子どもの足に何かが絡まって動けないようです。
仲間が助け出そうとします。
しかし外れません。
指に糸が巻きついていました。
鳥を捕まえるためのワナに誤って掛かってしまったんです。
研究員が急いで救出に入ります。
ようやく外れました。
研究者たちの地道な保護活動のおかげでこの森ではクロザルが少しずつ数を増やしつつあります。
朝クロザルの1日の始まりです。
赤ちゃんを連れたお母さんも動きだしました。
群れのみんなで食事に出かけます。
クロザルたちが突然甲高い声を上げ始めました。
(鳴き声)その先には…巨大なヘビ!6メートルほどもあるニシキヘビです。
クロザルにとって最大の天敵です。
ヘビが降りてきました。
お母さんたちは赤ちゃんを連れて安全な場所へと避難します。
ヘビがクロザルに向かっていきます。
距離を取り様子をうかがうクロザルたち。
ヘビが再び木に登り始めるとなんと若者たちが追いかけていきます。
どうするつもりなんでしょうか。
うかつに近づけばあっという間に絞め殺されてしまいます。
クロザルたちがヘビのいる木の枝を引っ張り始めました。
ヘビを揺さぶり威嚇しているんです。
この場所から追い出すつもりのようです。
その時木が折れました。
地面に落ちたヘビ。
すっかりおじけづいてしまったようです。
やぶの中へと逃げていきました。
日頃から培ってきた群れの絆の勝利です。
クロザルたちが口をパクパクさせながらお互いの体に触れ合います。
こうして高まった緊張をほぐしているんです。
昼下がり群れはお昼寝中。
落ち着きを取り戻したようです。
何とも大胆!食べ物を求めて群れが再び移動を始めました。
貫禄たっぷりに先頭を歩くのは一番順位の高いヒロです。
ヒロが突然立ち止まると牙をむきました。
行く手に隣の群れが現れたんです。
巨大な牙をはっきり見せるのは激しく威嚇する時の表情。
隣の群れとは食べ物をめぐるライバル同士。
仲良くとはいかないようです。
争いが始まりました。
奥の2匹がヒロの群れの若者。
手前が隣の群れです。
群れと群れの争いはまず血気盛んな若者たちから始まります。
ヒロの群れの若者が隣の群れに乗り込んできます。
たった2匹ですが牙をむいた顔は迫力満点。
おっと取っ組み合いが始まりました。
でもなぜかすぐに離れます。
そしてヒロの群れの若者が相手に近づきマウンティング。
いつの間にか2匹の間で勝負がついていたようです。
その手前では敵の2匹の若者が威嚇しています。
再び戦いが起こるかと思いきや…逃げていきました。
それをきっかけに隣の群れ全員が去っていきます。
一体何が勝負を決めたんでしょうか。
もう一度振り返ってみましょう。
血気盛んな若者同士によるこの取っ組み合い。
実は本気で戦っていたのではなくお互いの力関係を探るためのものでした。
でも相手の若者は一回りも体が小さく力の差は明らか。
ヒロの群れの若者が勝ち誇った威嚇の顔でマウンティング。
一方相手は口をパクパクさせ「仲良くしよう」の顔。
つまり降参の意思表示です。
仲間の負けを認めず威嚇する2匹に若者が鬼のような形相で詰め寄ると…。
「あまずい」。
かなわないと見たのか固まった表情のまま逃げ出します。
この一連のやり取りで勝ち目がないと判断した隣の群れは諦めて去っていったんです。
群れ同士の争いも顔で一件落着。
平和を好むクロザルらしいやり方ですね。
(鳴き声)ある日1匹でたたずむクロザルに出会いました。
名前は「ラジャ」。
ヒロの群れのオスですがなぜか群れからどんどん離れていきます。
研究者によると他の群れに入ろうとしているのだといいます。
クロザルのオスは順位争いに負けた時などに群れを移動することがあるんです。
とうとう他の群れの縄張りまでやって来ました。
心細いんでしょうかそわそわと辺りを見ています。
突然たくさんのクロザルがラジャに向かってきました。
敵対していた隣の群れです。
なんとラジャはこの群れに入ろうとしているんです。
しかし追い払われてしまいました。
ラジャが群れに入ればメスをめぐるライバルが増えます。
それを嫌がる群れのオスたちがラジャを追い出したんです。
独りぼっちのラジャ。
この後どうするんでしょうか。
すると驚きの行動に出ました。
(鳴き声)大きな声を上げたんです。
(鳴き声)どういうわけか自分の居場所を知らせています。
その声を聞きつけ群れの外れにいたメスや若者たちが寄ってきました。
ラジャのねらいはこれだったんです。
さあ顔にご注目!ニッとあいさつ。
そして口をパクパク。
「仲良くしよう」。
ラジャは何度も何度も繰り返します。
すると若者が近づいてきてマウンティング。
ラジャの作戦成功です。
実はこの時ラジャは巧みな駆け引きをしていました。
初め若者はラジャを怖がります。
それを見てラジャは自らお尻を出してマウンティングをさせたんです。
あえて下手に出ることで相手を安心させ友好的な関係を結ぶことに成功しました。
心を開いた若者はラジャに毛繕いをします。
ラジャもお返しで毛繕い。
おや?誰かにあいさつしましたよ。
近くに別の若者です。
こうして親しい仲間を徐々に増やし群れの一員になっていくんです。
顔で生きるクロザル。
自らの運命を顔で切り開いていきます。
こちらはヒロの群れです。
今日も大人たちが赤ちゃんに愛情たっぷりの顔を見せます。
赤ちゃんはまだ表情がうまく作れないみたいですね。
赤ちゃんがお母さんのもとを離れて枝に登り始めました。
まだちょっとおぼつかない動きです。
危ない!大丈夫でしょうか?心配した大人たちが駆け寄ってきます。
そんな心配をよそに赤ちゃんはまた登り始めます。
おっとっと!慌てて近づく別のお母さん。
怒った顔で「ほら危ないわよ」。
大人たちが見せる愛情あふれるたくさんの顔に囲まれ子どもたちは成長していきます。
そんなある日。
あっ赤ちゃんが口をパクパクさせました。
群れの一員として生きていくための大切な表情です。
こうして少しずつ豊かな表情を身に付けていくんです。
インドネシアスラウェシ島に暮らすクロザル。
群れの強い絆を作る秘訣は顔と顔を突き合わせた親密なコミュニケーションにありました。
争い事も表情巧みに丸く収めるクロザルの生き方に私たちも見習うところがあるのかもしれませんね。
2014/11/23(日) 19:30〜20:00
NHK総合1・神戸
ダーウィンが来た!「クロザル 顔は口ほどにモノを言う!」[字]
インドネシアにすむクロザルは“顔”が命!豊かな表情で気持ちを伝え合い、仲間との絆を育む。群れ同士の争いでは“顔バトル”が勃発。表情を巧みに使った駆け引きに仰天!
詳細情報
番組内容
インドネシアのスラウェシ島にすむクロザルは“顔”が命!口をニッと開き「よろしく」、口をパクパクさせ「仲よくしよう」、歯茎を見せ「怒ったぞ」など、人間顔負けの多彩な表情で群れの仲間と気持ちを伝え合う。敵対する群れとの縄張り争いでは“顔バトル”が勃発。顔を巧みに使った駆け引きが勝負の行方を左右する。さらに、全長6mもある巨大なヘビに対し、クロザルは仲間と力を合わせ、驚きの秘策に打って出る。歌:平原綾香
出演者
【語り】首藤奈知子,龍田直樹,豊嶋真千子
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
趣味/教育 – 旅・釣り・アウトドア
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
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