(踏切の警報音)
(踏切の警報音)
(菜穂子)はあ…はあ…。
はあ…はあ…。
(荒い息遣い)う…うう…ああ〜…!
(山岸)はあはあ…菜穂子…?菜穂子菜穂子…!
(山岸のすすり泣く声)
SRI特殊科学捜査研究所
高度な科学犯罪が発生した場合それがいかに複雑怪奇な難事件であろうとも科学の力を駆使して立ち向かう組織の名称である
(飯田橋)運ばれた遺体見たらかまいたちにやられたみたいだったな。
(島田)かまいたち?
(飯田橋)ああ。
ガキの頃遊んでた友達の腕がいきなりぱっくり裂けた事があったんだ。
驚いて近くにいた大人に助けを求めたら「妖怪かまいたちにやられたな」そう言われたんだ。
(牧)妖怪ですか面白いですねえ。
(飯田橋)人が一人死んでる。
なのに楽しそうだな。
飯田橋さん。
ああ?ここだけ地面が乾いてるんですよ。
(飯田橋)あ?乾いてる?なぜここだけ乾いてるんでしょう。
街灯が壊れている事も気になりますがなかなかに興味深いとは思いませんか。
思わないね。
ガイシャは刀で袈裟懸けに体を斬られて死んだ。
犯人はあそこでうなだれてる。
何も謎はない。
SRIのお出ましもだから必要ない。
犯人が斬った…。
あの街灯も刀でですか?おいおい。
あんたも遺体の切り口見たろ。
あれは刀とみて間違いないんじゃないか。
おい!何やってる。
そこらに投げ捨てたに間違いない。
恐らく小ぶりの刀だ。
徹底的に捜せ。
(野村)でも変じゃないですか?凶器を川に捨てて自分は被害者を抱きしめたまま逮捕されたなんて…。
殺人事件が起こるたびに見慣れた風景が全く知らない場所に変わってしまう。
そんなふうには思わないか。
(さおり)ああ…この道を少し行くと精密機械を扱う工場ばかりですし牧さんはよく通われてるんですよね。
ここでしか手に入らない部品もあるからね。
・
(踏切の警報音)
(山岸)えい!えい!
(三沢)この男は被害者と喧嘩別れしたばかりの元恋人で居合道場の師範だそうです。
(さおり)教えていたのは合気道です。
彼は武道全般を現代風にした道場をやってて…。
野村君も何度も言ってましたけど私もやっぱり納得いかないんです。
凶器だけ隠して自分は遺体を抱きしめてたって。
普通は凶器を現場に残してでも犯人は逃げるものだ。
逮捕された居合抜きの先生が犯人だったとしても相当な自己矛盾の塊だな。
山岸は犯人じゃない。
SRIの結論はそれでよろしいですか?犯人はどうあれ凶器は何なのか。
それを解明しないと。
(的矢)島田さん。
はい。
SRIのような第3セクターが出しゃばりすぎる事に警察内部でも異論は根強いわよね。
あなたを板挟みにしてばかりで申し訳ないと思ってる。
進化する犯罪の手口に警察がついていけてないのが問題なんです。
私はその現状を的矢さんが変えてくれると期待してます。
ありがとう。
でも一つだけ間違ってる。
犯罪は進化なんかしてない。
時代に寄り添ってるだけ。
寄り添う?時代が狂えば犯罪も常軌を逸し始める。
凶器は日本刀じゃない。
それがSRIの出した結論です。
じゃあ何だというんだ。
それはまだ…調査中ですけど。
犯罪頭の中でこねくり回してそれで何が分かる。
すいません。
はい。
小川さん?凶器が分かった?凶器は風です。
地面を暖かく頭上を冷たく。
そこに暖かい風が横から吹く。
あ…。
(一同)わっ…!真っ二つ…。
それが被害者の身に起こった事です。
突風が彼女を殺した?ヒントは雨上がりの路面の一部が乾いていた事です。
(飯田橋)あの切り傷は刀傷じゃないという事か。
あとは飯田橋警部ご自身の言葉の中にもう一つのヒントがありました。
回想「妖怪かまいたちにやられたな」そう言われたんだ。
凶器が分かれば犯人は必ず割り出せます。
(友佳)うっ…。
ああ…!はあ…はあ…。
助けて!助けてえ…!助け…!ああ…!・
(踏切の警報音)
(友佳)ああ〜…!うっ…。
(鑑識官)この血の凝固は乾燥したものじゃないですね。
高温で熱せられたものです。
ひどい…。
牧。
はあ…。
何か?風の仕業じゃなさそうだな。
いや…風邪かもしれない。
せきのど鼻づまりの風邪です。
彼女は熱を出してた。
ふざけてるのか。
大真面目ですよ。
彼女の体温は異常なまでに上昇した。
そして…ドン。
・
(踏切の警報音)視線を感じないか?視線?・
(踏切の警報音)こっちを見てる。
こっちを見てる。
笑ってる…。
・
(踏切の警報音)
(島田)牧さんの言うとおりでした。
(島田)体内の水分が沸騰したと検視報告にあります。
(飯田橋)どういう現象ならこういう事が起こるんだ。
これが犯罪ならかまいたち殺人に便乗した模倣犯という線も考えられるがな。
いえ。
事件のたびに殺害方法を変える連続殺人犯かもしれません。
人間の体を瞬間的に高温化させるってどうやるんです?
(破裂音)
(さおり)あっ!彼女は工場の鉄壁に追い込まれ頭上から強烈なマイクロ波を照射された。
遺体は急速に細胞分子が振動し高温化。
体内の水分が蒸発したんぱく質が凝固した。
ならば凶器は電子レンジだ。
いや…すごいな。
路上で電子レンジが人を殺したなんて普通は考えませんもんね。
(ブレーキ音)・
(踏切の警報音)
(ミホ)ああ…ああ〜…!・
(踏切の警報音)かまいたち…。
発熱…。
今度の凶器は何?イソップ童話。
風が吹いて体が震えた。
次に太陽の光で暖められた。
(さおり)「北風と太陽」?つまり太陽を凶器に使ったと言いたいの?どうやって?実際に使われたのは凹面鏡だと思われます。
太陽の光は一点に集めると7,000度にまでなる。
人間の体など一瞬で炭化させられます。
純炭素に還元されられた人間の体は風に吹き飛ばされる。
美しいが…あとに何も残らないのは味気ない。
(さおり)美しいけれど味気ない…。
風では美しくない。
風圧でゆがんだ死に顔は醜い。
細胞分子を振動させて発熱させてもやはりその死に方は美しくない。
今回はきれいに殺す事ができた。
だがあまりに一瞬すぎて楽しむ余裕がなかった。
牧史郎。
署にご同行願いたい。
は…?あんたは何であんな異常な犯行手口をたちどころに暴いてみせられるんだ。
なるほど。
手口が解明できるのは自分で殺したから…ですか。
飯田橋警部その逮捕状はいつ請求なさったんです?犯行現場で牧史郎を目撃したという情報がいくつもありましてね。
連行しろ。
(刑事)はい。
(飯田橋)ここも家宅捜索させて頂きます。
え…。
ちょ…。
(島田)はあ…はあ…。
(さおり)島田さんも牧さんが犯人だと本気で?
(島田)私も今聞いて慌てて走ってきたの。
どういう事ですか?仕事してるだけだ。
はあ…。
(飯田橋)相次ぐ事件は模倣犯でなく同一犯だと言い張ってた。
当然だよな。
でないと最初の事件でアリバイがないあんたは潔白を主張できない。
私は捜査官である前に研究者です。
だから分かる気がするんです。
犯人は自分の理想の結果を求めて最良の方法を探しているんじゃないかと。
なぜ女性ばかり狙う。
女への憎悪か?社会への挑戦か?子供みたいに電子レンジで遊んでみたり…虫眼鏡でアリを焼き殺してみたかっただけなのか?子供みたいに…。
子供は純粋だ。
なぜ純粋なんだ。
自分にしか興味がないからか。
(飯田橋)あんたの部屋にあるのは過去の事件の資料と殺人機械の試作品だけ。
まるで生活感がないと報告がきてる。
余分なものは純粋な思考の妨げになりますから。
違うだろ!あんたは目障りなもの全て自分の前から消し去りたいんじゃないか。
もお…。
ん〜!牧さん複雑なセキュリティー組み込んでんなあ。
はあ〜…。
立ち入り禁止だ。
SRIです。
なおさら駄目だな。
え?立ち入り禁止だ。
いやいや…お願いしますよ。
そこを何とか…。
駄目だ!駄目だ!いやいや何にも邪魔しませんから。
何も触りません。
駄目だ!お願いします。
邪魔もしませんしいやいや…。
所長。
捜査妨害は許可できない。
いや…でもこのままだと牧さんが…。
無実を信じてるなら慌てる必要はないでしょ。
ああ…気になるんですよ。
この事件は牧さんを間違いなく動揺させていたから。
はあ…。
所長…いいですか?何勝手な事してんの!?ごめんなさい。
(さおり)「三沢さんここが牧さんの部屋なんですけど牧さん自宅で凶器のモデルを作ってたみたいです」。
所長?所長!係長。
(飯田橋)的矢さん…。
はあ…お前ら席外せ。
在宅で聴取は続けさせてもらいますよ。
彼に聞きたい事が山程あるんですよ。
ええ。
彼には話を聞く必要がある。
恐らく彼だけだから犯人の心理をおぼろげにでもつかんでいるのは。
取り調べ中にやつが言ったんです。
「自分が犯人だったかもしれない」って…。
一体どういう意味です?はあ…。
私には一連の事件は全く理解不能だ。
けど彼は…あの牧という男は事件の本質を見抜いてる気がする。
ええ恐らく。
そしてその事におびえてる。
おびえてる?誰よりも。
(的矢)まずこれだけは正直に答えて。
あなたが殺したの?「お前は楽しんでる」と飯田橋さんに言われました。
言われて気が付いたんです。
俺は…確かに楽しんでる。
牧君!俺たちは…いや我々は皆他人の悲劇を楽しんでる。
俺は面白がってるんです。
事件の手口を解明して同じ事が再現できるのかどうか確認してる。
遊んでる。
そんな自分がどうして犯人じゃないんだろう。
そう思って鏡を見ると…生きてるのが申し訳ない。
そんな目をした男が鏡に映ってる。
踏みとどまりなさい牧史郎。
深淵を覗くものは深淵からも見つめられ闇に引きずり込まれる。
光の側に…無理やりにでも踏みとどまりなさい。
持ってきてもらいたいものがあるんです。
はあ…ったく。
俺は使いっ走りか。
(飯田橋)ご要望のものだ。
これで無実が証明できるのか。
部屋を出てもらえますか。
純粋な思考の邪魔です。
牧さん牧さん。
牧さん。
ん?あれ。
あの車なら凶器をいつでも積んでおけますね。
それに発電機も。
発電機?かまいたちになるようなつむじ風を起こしたり人間を焼き殺せるような電子レンジを稼働させるには大出力の発電機が必要だ。
それに発電機は…大きな音を立てる。
音…。
ああ…それで踏切。
ここなら思う存分音を出せるし実験もできる。
本当はこんな所に住みたかった。
おとり作戦だなんて…僕にやらせてほしかったのに。
野村君には無理よ。
ペーペーだからですか。
違う。
この毎回手口の違う連続殺人にも共通点はある。
それは?え〜…。
(牧)「被害者が女性だ」。
だからあんたじゃ駄目なのよ。
だったら島田さんに頼めば。
あの人警察の人なんだし。
(さおり)「警察の人だから牧さんの直感なんてものじゃ動けないの」。
でも何で女性なんですかねえ。
脂肪が多いから。
え?ふふ…。
とにかくあいつを外におびき出して凶器を見つけないと。
よし。
じゃあさおりちゃん頼んだよ。
はい。
二の腕気をつけて。
(さおり)うるさい。
(大音量のラジオ音楽)建物内にも階段があります。
危険だなあ…外階段を上って。
了解。
(大音量のラジオ音楽)
(大音量のラジオ音楽)
(大音量のラジオ音楽)
(さおり)「地震?」。
地震なんて起きてないぞ。
(大音量のラジオ音楽)
(さおり)「部屋の中で何かやってるみたいです」。
さおりちゃん気をつけろ。
(さおり)「はい」。
(大音量のラジオ音楽)すいません。
すいません。
すいませ〜ん!あ…えっとこんにちは。
突然にお邪魔してすみません。
(さおり)「あの…この界わいで連続してる…」女性殺人事件の事はご存じですよね?私その事件で科学捜査を請け負うチームの者なんですけど私…。
「全ての現場でこちらのようなトラックを見てるんです」。
それでその事をチームに報告するかどうか迷ってて一応車両の持ち主を確認して…。
ああの…!すいません!すいません!
(さおり)「こんな感じでいいですか?」。
本番はここからだ。
あの男さおりちゃん追ってきますかね。
あいつだって人間だ。
小川さん気をつけて。
(さおり)「うるさいわね」。
小川さん?さおりちゃん?おい!聞こえるかさおりちゃん!おい!小川さん!?野村…やめろ!小川さん…!小川さん!あっ…。
おい!野村!さおりちゃん!さおりちゃん!・ノム!・さおりちゃん!・おい!・野村!さおりちゃん!くっそ〜…。
・おい!返事しろ!ノム!ああっ!
(さおり)嫌!嫌だ!離して!さおりちゃん!
(さおり)離して…!牧さん…!牧さん牧さんこれで。
(さおり)助けて嫌…嫌〜…!ん〜…!野村…。
・
(さおり)キャー…!牧さん三沢さん…!さおりちゃん良かった…。
(物音)
(足音)やつは?牧さん。
うわ…。
きれいだ…。
自殺か。
自分の死を演出したのか。
まるでフェニックス。
死んでもよみがえる不死鳥。
・
(踏切の警報音)お前なのか…。
2014/12/17(水) 03:00〜03:45
NHK総合1・神戸
怪奇大作戦 ミステリー・ファイル「第4話 深淵(えん)を覗(のぞ)く者」[字]
女性がけさがけに切られて死亡。SRIは人工的に作られたつむじ風が凶器と推測する。だが、第2の事件は手口が全く違っていた。上川隆也 原田泰造 田畑智子・原田美枝子
詳細情報
番組内容
雨上がりの路上で女性がけさがけに切られて死亡。警察は鋭利な刃物による殺人と断定する。だが、SRIの見解は、凶器は人工的に作られたつむじ風というものだった。その矢先、第二の事件が発生。手口は、第一の事件と全く違っていた。遺体のタンパク質が、高熱により短時間で急速に凝固していたのだ。そして、第三の事件が。【レギュラー】上川隆也 原田泰造 田畑智子 村井良大 高橋真唯・原田美枝子【ゲスト】永島敏行ほか
出演者
【出演】上川隆也,原田泰造,村井良大,高橋真唯,原田美枝子,田畑智子,永島敏行,山中アラタ,桜井ユキ,嶋崎亜美,駒木宏美,和泉崇司
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
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