(テーマ音楽)山梨県八ヶ岳の麓。
棚田と森が一つながりになった豊かな里山が残ります。
雑木林は昆虫の宝庫です。
その中でひときわ輝きを放つのが瑠璃色の羽。
日本の国の蝶オオムラサキ。
ここは国内最大級の生息地です。
雑木林で生き抜く珍しい蝶。
その生涯は不思議に満ちています。
国蝶が舞う里山を訪ねます。
山梨県の北部北杜市。
八ヶ岳の伏流水に恵まれ稲やそばが栽培されてきました。
棚田に沿って雑木林が広がっています。
古くから炭にするために育てられたクヌギなどの落葉樹の森。
ここは生き物たちの宝庫です。
春オオルリが渡って来ると森がにぎわい始めます。
冬眠から目覚めたのは日本固有種のヘビジムグリ。
その名のとおり地面に潜りネズミや昆虫を狙います。
火山灰の上の森を好む珍しいスミレ。
清楚な淡い紫が里山の春を彩ります。
5月中旬田植えが終わる頃森の木々の緑が色濃くなっていきます。
こちらは高さ20mになる高木エノキ。
よく燃える事から炭を焼くための燃料として里山で重宝され数を増やしてきました。
エノキの葉の上にこの里山を代表する蝶の幼虫がいました。
冬の間落ち葉の下で冬眠し芽吹きに合わせて木を登ってきました。
卵で冬を越す蝶も多くいますがオオムラサキは幼虫で越冬します。
春唯一の食べ物であるこのエノキの仲間の葉をいち早く食べるためです。
この地域では明治時代炭焼きが暮らしを支える産業になりエノキが数多く育てられました。
その密度は今も日本有数です。
八ヶ岳の伏流水もエノキを育みます。
高木のエノキには大量の水が必要です。
人々の営みと伏流水がオオムラサキの日本最大級の生息地を生みました。
幼虫が不思議な行動を始めました。
上半身を反らしています。
実はこれ暑さ対策です。
太陽に向かって体を伸ばすと…。
背中は日陰になり体温を下げる事ができるのです。
この時期幼虫の天敵も活発に活動を始めます。
こちらではカメムシが別の蝶の幼虫を捕らえています。
オオムラサキの幼虫にもカメムシが近づいてきました。
幼虫の多くは成虫になる前に天敵にやられてしまいます。
無事に羽化できるのは1,000匹に1匹と言われます。
この幼虫は大丈夫でしょうか?もう逃げる時間はありません。
その時です。
幼虫が反撃。
カメムシはストローのような口を伸ばし突き刺そうとします。
ところが…。
カメムシの口にかみつき払いのけました。
小さな体で里山の試練と闘うオオムラサキです。
初夏の日ざしを受け棚田は緑に染まっていきます。
雑木林の中背伸びするのは…菌類と共生して木立の陰でも生きていける珍しい植物です。
こちらは…飛び交うホタルを花に入れたのでこの名が付いたと言われています。
この時期オオムラサキに変化が訪れます。
幼虫がさなぎになりそして羽化を迎えます。
美しいブルーがあらわになっていきます。
羽に張り巡らされた筋に体液を送り込み伸ばしていきます。
鮮やかな瑠璃色の羽。
大きさは10cm大型の蝶です。
羽の鱗粉が光を反射して輝きます。
オオムラサキはその美しさと風格から20世紀半ばに日本の国の蝶に指定されました。
古くから日本各地の里山を彩った瑠璃色の舞。
江戸時代その羽はアサガオの花の色に例えられ称賛されました。
飛び立ったオオムラサキはエノキとは別の木を目指します。
炭にするために育てられてきたクヌギです。
オオムラサキは他の蝶と違いほとんど花の蜜を吸いません。
栄養はクヌギの表面から湧き出す樹液からとります。
豊富に樹液が出る場所では特等席を巡って力比べが始まります。
樹液以外の食べ物が少ない里山ではこの力比べに勝たなければ子孫を残す事はできません。
角も毒針も持たないオオムラサキはどうやって戦うのでしょうか。
襲ってきたハチに羽を一振り。
こちらでも狙い澄まして一撃。
オオムラサキは樹液を手に入れるため羽で戦います。
大きな羽で羽ばたくと小鳥ほどの羽音がするといいます。
スズメバチが相手ならその強さは互角です。
夏の盛り。
メスのオオムラサキが姿を現します。
メスの羽は瑠璃色ではなく黄色い模様。
オスに比べて一回り大きいのが特徴です。
メスが雑木林に舞い始めるといよいよ恋の季節。
成虫として生きられるのは僅か2週間です。
オスはヒラヒラと向きを変えるメスを追いかけます。
求愛行動です。
メスはこうして逃げながら自分についてこられる強いオスを探します。
こちらでは別のオスが横入り。
成虫の僅かな期間で相手を見つけようと飛び回ります。
ペアが出来始めました。
オスはメスの前で全力で羽ばたき自分の羽の美しさをアピールします。
無事に結ばれたオオムラサキ。
多くの試練を乗り越えつなぐ命です。
8月下旬。
秋が近づく里山に静けさが戻ります。
オオムラサキの幼虫が春に食べていたエノキの葉。
その葉を選んで産卵するメスの姿がありました。
山梨県八ヶ岳山麓。
人々の営みが育てた里山で瑠璃色の命が巡っています。
2014/11/24(月) 04:30〜04:45
NHK総合1・神戸
さわやか自然百景「八ヶ岳山麓 国蝶(ちょう)舞う里山」[字]
山梨県北杜市の里山。カブトムシやスズメバチなどがクヌギに集まって樹液をなめる。そこへ国蝶(ちょう)オオムラサキが現れ、力強い羽ばたきで虫たちを追い払う。
詳細情報
番組内容
八ヶ岳南麓に広がる山梨県北杜市の里山。春、棚田を囲む林で若葉が輝く頃、動き始めるのが国蝶(ちょう)オオムラサキの幼虫だ。エノキの葉が幼虫の食べ物になるのだ。夏、青々とした稲の苗が風にそよぐ頃、カブトムシやスズメバチなどがクヌギに集まって樹液をなめる。そこへ成虫となったオオムラサキも現れ、力強い羽ばたきで虫たちを追い払う。オオムラサキの営みを、季節とともに移ろう里山の自然の中で見つめる。
出演者
【語り】古野晶子
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
趣味/教育 – 旅・釣り・アウトドア
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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