足かけ16年…
2014年秋に平成の修理が終わった世界遺産京都・宇治平等院の鳳凰堂です
鮮やかな赤に整然と並んだ瓦
金色の金具が朝日に照り映えます
羽ばたく鳳凰
平安時代の金色の姿をしのばせます
本尊・阿弥陀如来
仏師・定朝が制作の指揮を執ったこの仏像は平安時代の最高傑作です
阿弥陀如来とともに雲間からこの世に現れる菩薩たちが壁に飾られています
平安時代西暦1053年
時の関白・藤原頼通が山城の国・宇治川の岸辺に築いたこの世の浄土が平成の時代によみがえりました
鳳凰堂が建立されて960年あまり
幾度となく本尊も建物も修理を重ねながら平安の美を21世紀に伝えてきました
その建物が創建された当時の彩りを取り戻しました
これは京都・宇治の世界遺産・平等院で行われた平成の修理の記録です
宇治川の春
平成修理前の鳳凰堂です
浄土の庭では四季は緩やかに移ろいます
平成の大修理前の本尊・阿弥陀如来
昭和の大修理から半世紀…
そこかしこに疲れが目立ってきました
金箔が剥がれ地の漆が黒く見える部分が多くなりました
顔の中央には寄せ木造りの木の合わせ目に沿って縦にひびが入っています
金箔の下地の漆もひび割れ浮きが目立つようになりました
本尊が前回の修理を受けたのは1950年から7年かけて行われた鳳凰堂の昭和大修理の時でした
本尊が近所の子どもや大人に見守られ池を渡るところです
この時阿字池の対岸の修理所までの往復にはいかだが使われました
本尊の平成修理はこの時から半世紀ぶりの事業でした
木でできたわが国の建造物や彫刻は数十年ごとに修理を繰り返しながら命を未来につないでいきます
2005年本尊のひび割れ浮いた部分に注射器で糊をさし…
そっと押さえます
これは阿弥陀如来の魂です
月輪といいます
本尊・阿弥陀如来の胎内に置かれていました
仏師の定朝が本尊を制作した時に納め平安時代そのままの色と形をとどめています
これも平等院で分解され修理を受けました
初夏浄土の庭で藤棚の花が地面まで垂れます
本尊や光背を移したお堂の中で修理のため天井を飾る四角い天蓋と呼ぶかさのような飾りが外されました
鉄製のピンが引き抜かれ降ろされるのは垂板です
天蓋から垂れる24枚の透かし彫りのカーテンのような飾りです
解体された垂板は工房で1点1点修理を受けました
天蓋の中心を飾る円蓋も外されました
修理をする人と比べるとその大きさが分かります
平安時代の人々は汚れたこの世に別れを告げ阿弥陀如来の住むという入り日のかなた西方阿弥陀浄土へ生まれ変わることをひたすら願いました
11世紀時の最高権力者・藤原頼通はみずからの別荘を改築し寺院としました
これが平等院の始まりです
鳳凰堂は藤原頼通が生きているうちから目で見たいとこの世に作り上げた阿弥陀浄土です
いわばたった1人のための極楽のテーマパークです
阿字池に咲く平等院蓮
先端がほの赤い白い花を咲かせます
阿字池の底の泥から1000年前のサルスベリの花粉が見つかりました
王朝の貴族たちが中国から苗を取り寄せ浄土の庭を演出していたのでしょう
仮設の通路を作り本尊を鳳凰堂に戻します
厳重な梱包を取り除き薄様を外すと額の白毫を水晶に戻したお顔が現れました
2005年8月本尊・阿弥陀如来の修理が終わりました
平成の大修理を終えた本尊をご紹介しましょう
繊細・華麗な天蓋が元に戻されました
阿弥陀如来は穏やかな姿を取り戻しました
水晶に戻された白毫が透明な輝きを内に秘めています
いたわしかったお顔は落ち着きひびは消え輝きを戻しました
そのお姿は浄土の根本経典観無量寿経が描く阿弥陀如来そのものです
西のかなたにおられる阿弥陀如来のお体は金色にまばゆく輝いているのです
その眼は4つの海のように広く清らかで澄み渡っています
眉間の白毫から放たれた金色に輝く阿弥陀如来の光明は広くすべての世界を照らし仏を念じる人々を残らず救うのです
堂内の柱や梁には平安時代に描かれた色がいまだ残っています
横笛を吹く極楽浄土の菩薩
リズムを取る童子
蓮の花の上で舞う菩薩がいます
浄土に鳳凰が飛び交います
鳳凰堂内を創建当初の姿に再現する試みは以前から続けられてきました
平成の修理事業では色の剥落部分の模写も行われました
残りのよい部分に透明なシートを置き絵を写していきます
彩色は塗料の成分などの科学調査が行われその結果を元に復元されます
色は調査で分かった1000年前と同じ絵の具を使います
柱の絵を創建当時に戻してみました
絵には絵の具だけではなく金箔や銀箔も使われています
金銀は灯明に照らされるとひときわ輝き菩薩たちの姿をあでやかにします
昭和と平成
2回の修理と研究を経て分かった鳳凰堂の内部をコンピューターグラフィックスで再現する試みが行われました
創建当時建物の内部は隙間なく極彩色の壁画で彩られていたといいます
CGで再現した鳳凰堂の内部です
金色に輝く阿弥陀如来
阿弥陀如来の螺髪は当初は瑠璃色でした
小壁は天に向かいだんだん濃くなる雲繝彩色に復元されました
天井に貼り付けた小さな鏡
天蓋の中心にあるひときわ大きな鏡
仏の世界がすべての鏡に映ります
これは平成の大修理の機会に美術院が隅の部分を実寸で復元した天蓋の内部です
夜光貝をチョウや花の形に切り貼り付けた螺鈿細工
丸くすずの粉をまいた唐草の透かし模様
金色の金具
すべてが光を反射しきらめきます
豪華絢爛
平安の殿上人の美意識の結晶です
雲中供養菩薩像
なげしの上の小壁に置かれた像は52体が1000年の時の流れを渡ってきました
その1体が元の色に再現されました
截金技法で装飾された金箔の模様が明かりに映えます
一方こちらは国宝の菩薩像の立体データをレーザー光線を使って測る様子です
こうした手法でとられたデータをもとにコンピューターで色を再現した雲中供養菩薩像です
優しい心を持ちむやみに生き物を殺さず節度を守れた人が浄土に生まれ変わる時金色の光を放つ阿弥陀如来は数限りない仏と菩薩たちを連れその菩薩たちは7つの宝でできた宮殿とともに迎えに来るのです
そのお姿を目の当たりにした人がふと見ると自分は観音菩薩がささげる蓮の花に座り極楽浄土に生まれ変わっているのです
瑠璃色の空
そこには蓮の花びらが舞い奏でる人もいないのに楽器が音楽を奏でます
そして菩薩たちは舞い演奏し阿弥陀如来とともにこの世に別れを告げようという人を瑠璃色の空から迎えに来るのです
須弥壇は平安時代から大きな修理を経ずにきました
漆の中から研ぎ出した純金の粗い粉が今も光ります
階段に残る無数のへこみはここに夜光貝を貼り付けた螺鈿細工を施した跡です
この須弥壇もいにしえの姿に戻してみました
金の粉と螺鈿細工で覆われた様子はまるで宝物を入れる玉手箱のようです
本尊・阿弥陀如来の修復の機会に台座も解体修理を受けました
分厚い底板を外したところその中はまるでタイムカプセルでした
平安時代の創建時までさかのぼる品々が見つかったのです
400点を超すガラス玉
中には奈良時代にさかのぼるものも見つかりました
そのガラス玉を組み合わせた装飾品もありました
また大きな夜光貝から切り出した螺鈿細工の断片もありました
これらは何に使われたのか…
手がかりがありました
台座の蓮弁に今は埋めてありますがX線写真で小さな丸い穴の痕跡が見つかったのです
この穴から飾りをつるしたのに違いありません
その飾り・瓔珞の復元が2010年行われました
当時と同じ製造法でガラス玉が数百個作られました
それらを夜光貝と一緒に金銅の鎖でつないでいきます
完成された平安時代の飾り
堂内に注ぐ日の光そして灯明の明かりに瓔珞の瑠璃色のガラス玉と夜光貝がきらめきます
恐らく創建当時は瓔珞が蓮弁の先端からつるされ阿弥陀如来を一層引き立てていたのでしょう
鳳凰堂の平成の修理では西の扉を復元し創建以来のものと置き換えることも決まりました
金沢美術工芸大学の荒木准教授が赤外線カメラで調査したところ波そして水平線に沈む太陽が見えました
扉に残る絵の具は紫根という植物から採った赤紫の色が使われていたことが分かりました
あかね色の海に沈む金色の太陽が明かりに揺らめきます
実は扉にはお経の中の物語が描かれています
仏像が置かれた建物はお寺でしょうか?
急流が連山の間を流れます
西に向かって両手を合わせる女性
阿弥陀如来は入り日に包まれてこの世に現れるという観無量寿経が説く日想観の世界です
美しい夕景の絵を描いた扉
創建当初は連子窓が三方に開き黄金色に輝く入り日が差し込んだ西裳階の間
絵画の入り日と本当の西日が重なるこの空間には藤原頼通の特別な思い入れがあったのでしょう
堂内の北の壁には巨大な絵が描かれています
今は色あせてほとんど分からなくなっているこの絵画は実は現存する平安時代最大のものなのです
テーマは人の命が絶える時阿弥陀如来が迎えに来るという鳳凰堂の絵画に共通したものです
2014年荒木准教授はこの絵画の復元にも取り組んでいました
詳細な調査をもとにかつて描かれていた絵を元に戻すとともにもう失われてしまった部分を新たに描き加える作業が進められています
これは原画をもとに研究室でトレースする様子です
揺れる海原の繊細な波頭の1本1本までを丁寧に写し取っていきます
2014年秋復元作品ができあがりました
調査の結果絵は桜の咲く春の風景だったことが分かりました
春らんまんの頃
阿弥陀如来がまさに命絶えようとする人を屋敷まで迎えに来る様子が金色の光とともによみがえりました
その大画面の壁画を創建当時の堂内に置いてみました
壁画は西日を受けさらに灯明に照らされて金銀の細密な表現が輝き揺らめきます
これが日々藤原頼通が祈りをささげた空間なのです
実は鳳凰堂は建物でも問題が起きていました
1950年代に塗り直した時に使われた鉛丹という塗料が50年足らずではげ落ちてまだらになりほとんどの所で素木がむき出しになっていたのです
2012年からはこうした建物外部の塗装修理とともに屋根の瓦の葺き替えを平成事業として行うことになりました
2012年9月修理に先立ち鳳凰堂の外観を覆う素屋根の組み立てが始まりました
京都の歴史的文化財の修理にはこうした木組みの素屋根で工事現場を覆うのが一般的です
今から56年前に行われた昭和の大修理でも鳳凰堂は木組みの素屋根で覆われました
素屋根が完成し瓦の取り外しが行われます
鬼瓦
そして竜頭も慎重に外していきます
この竜頭は室町時代のものであることが分かりました
瓦を外していくと下地の板が腐っている部分が各所にあることが確認されました
平安・鎌倉時代の瓦は今もしっかりと役割を果たしている一方近代になって焼かれた瓦の具合が悪く雨が降ると土居葺きと呼ぶ下地が湿気で蒸れて腐っていたのです
竜頭と鬼瓦のうち傷みが激しいものは複製を作り置き換えることが決まりました
・鬼瓦の補修と新調を変更してお願いしてるんです・・でその中で鬼瓦は…・
明治・昭和の瓦はすべて新しい瓦に替わりました
平成の修理では発掘された平安時代後期の軒先瓦の文様が採用されました
昭和の大修理の際は瓦の裏に土を込める葺き土という伝統技法が使われましたが平成の瓦葺きでは屋根の重さを軽減するために葺き土はやめました
こうして合わせて全体のおよそ9割の瓦が新調されました
さて塗り替えることになった建物ですが調査の結果創建当時丹土と呼ばれる鉄を原料にした赤い塗料が使われていたことが分かり建物全体にこの丹土を塗ることが決まりました
丹土は鳳凰堂の近くの作業場で毎日使う量だけをこねます
この赤い塗料の丹土は鉄分を多く含む黄土を焼いたものが使われました
建物の木材の木口を塞ぐ塗料の黄土も同じように練って使う1日分だけを作ります
連子窓の格子は鮮やかな緑に塗られました
また南北の翼廊の屋根を飾る露盤と宝珠の一部は平安時代のものであることが分かりました
傷みが激しかった部分は保管しオリジナルと同じ鋳造方法で復元されたものが作られました
新しい露盤と宝珠には金が施され翼廊に取り付けられます
・そうですそうです…・・センターで…・・いいですか?・・はいこの位置です・・これは収まったか?・
軒の下を飾る支輪板には極彩色の唐草文が新たに描き直されることになりました
・これで仮留め・はい
鳳凰堂中堂は垂木や枡組などほとんどの木製部材の木口が唐草文様の金具で飾られています
こうした金具も回収し金色に戻しました
初代の鳳凰は分析により当初はメッキが施され金色に輝いていたことが分かったので現在取り付けられている二代目には金箔を施すことが決まりました
この冬は幾度となく雪が降り積もりました
降りしきる雪の中素屋根がいよいよ取り払われます
素屋根が取り払われた鳳凰堂の屋根のてっぺんに鳳凰が戻ってきました
金色の鳳凰が午後の日ざしに燦然と輝きます
最後に残っていた尾廊の修理
ここでは主に江戸時代以前の古い瓦が再利用されました
2014年秋鳳凰堂の平成の大修理が完了しました
(読経)
2014年10月鳳凰堂で平成の修理が終わったことを本尊の阿弥陀如来に報告する法要が営まれました
力を合わせ…名付けて鳳凰堂平成修理を発願し…
いにしえの姿を伝える声明も披露されました
西暦1053年
鳳凰堂で営まれた落慶法要もさぞかし厳かだったことでしょう
姿を現した鳳凰堂
21世紀によみがえった鳳凰が飛び立つ姿です
いぶし仕上げをしない古色の瓦
丹土の木組みと白い壁
浄土の世界を再現したという平等院ですが建物の内部だけでなく外観や庭園も今と昔ではずいぶん違うことが60年あまりにわたる調査と研究で分かってきました
ここからは平成修理が終わった鳳凰堂と960年あまり前の創建当時の鳳凰堂とをコンピューターグラフィックスで再現して現在と過去を比較しながら見てみましょう
翼廊と呼ばれる本堂左右の楼閣は創建当時は池の中に大きくせり出し柱は池の中から立っていました
建物の前に置かれた灯籠も当初は金色に輝いていました
鳳凰が翼を広げてまさに飛び立とうという姿を思わせる鳳凰堂
庭園の発掘で中の島と鳳凰堂に入る平たい橋と太鼓橋2つの橋が確認され復元されました
千年前宇治川と鳳凰堂を隔てる植え込みもなく宇治川には堤もないので壮大な広がりがあったようです
創建当時池には岬がせり出し山桜が咲いていました
21世紀の今も夏には平安時代と同じサルスベリが咲きます
丹色に塗り直された鳳凰堂はまさに1000年前の平安の姿そのものといってもよいでしょう
鳳凰の尾っぽに当たる尾廊も美しくよみがえりました
屋根の上の鳳凰が入り日の空に飛び立ちます
風雨にさらされできてからほとんどの歳月がくすんだブロンズ色だった鳳凰
1000年の時を超えて金色の姿に戻ったのです
平成の修理を終えた翼廊の楼閣で新たに作られた2代目の宝珠も金色に戻りました
鳳凰についてはさらに新しい調査が行われました
実はこの鳳凰像の頭部には32の穴が開いていますが何のための穴かこれまでよく分かっていませんでした
今年これについてある試みが行われました
この穴を「鳳凰の羽毛の痕跡だった」として平等院は五色の糸を植毛した姿の新しい鳳凰像を作ったのです
満月の夜王朝人はこのような鳳凰の姿を見ていたのかもしれません
現代に生きている私たちだけが見ることができる特別の鳳凰堂をお見せしましょう
照明に赤く輝く鳳凰堂
灯明の明かりしかなかった平安時代夜のとばりにすべては覆われてしまいます
この光景は関白・藤原頼通もこの世を満月に例えた父・道長も想像さえできなかった光景です
国宝の建物をいにしえの姿に再現し現代によみがえらせる大事業は足かけ16年にわたりました
世界遺産京都の宇治・平等院鳳凰堂
次の大修理を行うのは1世紀以上後のことでしょう
2014/11/24(月) 09:58〜10:53
ABCテレビ1
金色の翼広げて〜平等院は浄土の輝き〜[字]
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
OriginalNetworkID:32723(0x7FD3)
TransportStreamID:32723(0x7FD3)
ServiceID:2072(0x0818)
EventID:15956(0x3E54)