「NHK俳句」第2週の選者は小澤實さんでいらっしゃいます。
どうぞよろしくお願い致します。
よろしくお願いします。
今日の兼題は「マスク」。
これ冬の季語ですね。
風邪を予防するものですね。
顔が隠れるものですから逆に何と言うか感情が表れる面白い季語ですね。
冒頭の小澤さんの句は?若い時に夜学の教師をしておりましてその帰りの事などを思い出して作ってみました。
そうすると帰り相当疲れ疲労もあったり…。
疲れをマスクに隠してという感じですね。
そういうものも表れるんですね。
ええ。
今日もよろしくお願いします。
よろしくお願いします。
ゲストをご紹介致します。
今日は建築家の中村好文さんにお越し頂きました。
よろしくお願い致します。
よろしくお願いします。
中村さんは居心地のいい住宅を作り続けてらっしゃるという事ですけども究極は小屋なんだそうですね。
そうですね。
子どもの頃から割合居心地のいい場所にいるのが好きで例えば昔の足踏みミシンのフラップの下に体育座りしていたりとか。
そういう子どもだったんですね。
秘密基地みたいなの作ったりして。
自分の好きな場所を作って。
それが多分高じて人様の家を住宅を作る建築家になったんだと思いますけど。
作品をちょっとここでご紹介頂けますか?これは今年金沢の美術館で展示した21世紀美術館で展示した小屋なんですけども1人暮らしの小屋なんですね。
エネルギー自給自足できるようにソーラーパネルとか風力で電気を起こしたりそして必要十分なものがこの小さな小屋の中に詰まってる小屋なんですけども。
台所もトイレもシャワー室もある。
全てこの小さな中に。
畳のサイズでいうと7畳ちょっとなんですけれどもそこに全部のものが詰まってる小屋なんです。
この居心地のよさというのは?結局エネルギーの事もそうですし何かに頼ってないって事ですかね。
ほかのものに頼らずに孤立してるっていうか自分で満足していられるという事ですかね。
自然も感じますしね。
そうですね。
空気風…。
いい空間ですよね。
ええ。
俳句にとっても小屋というのは大変大事なものと思ってまして芭蕉の「古池や蛙飛こむ水のおと」という句があるんですけれども大きなお屋敷に芭蕉が住んでたらカエルが飛び込む音は聞こえなかったと思うんですよね。
最も自然に近い建築だと思うんですけども。
何か僕は人間にとっての巣ですかね動物の巣と同じように人間にとっての巣が小屋のような気がしますけどもね。
僕は「住まい」っていう言葉に「す」の字が入ってるのも何か暗示的でいいなというふうに思いますけどもね。
また後ほどご自身俳句もお作りになるんですよね。
ご紹介頂きます。
よろしくお願い致します。
それでは入選句ご紹介してまいります。
まず1番です。
マスクの本質をよく詠まれたと思います。
冬の厳しい気候の中でも会いたい人には会いに行くと。
この「マスクして」という事で会いたい思いの深さというようなものまで出てるような気がします。
2番です。
これは小澤さんどういう感じなんですかね?情景としては。
道で商ってる方の風景だと思って。
人通りがない時にはマスクをちゃんとしてるんですよね。
人が出てくると外して顎に持っていってやってる訳ですね。
あ〜なるほど。
楽しい歳末の感じ…。
何となく歳末のというか年の瀬の感じ街のにぎわいみたいなものがありますね。
寅さんなんかがやってそうですけど。
今度は3番です。
エレベーターの狭い空間の中で四人いて四人マスクしてるとちょっと緊張しますよね。
どんな怪しい人かもしれないというような。
そんなところが面白いですね。
四人が四人マスクしてるの。
ぎっちりとした感じが楽しいです。
でもありえますもん最近はね。
ありえますね。
ドアが開くと途端に全員マスクしてじっと見られてたりそういう事もありますしね。
ありますね。
今度は4番です。
これは外したマスクですね。
マスクを外したあとの2本の線をよくご覧になっている。
凝視の句ですねこれは。
僕ねこの句は若い女性というか女子高校生とか中学生とか憧れの先生がいてそれが教壇まで来るとマスクの痕があったって句だと思ってたんですけど男の人だったんですね。
太田正樹さんですからね。
そうですね。
対象は美女の先生かもしれませんね。
でも年齢のいった私たちにとってひと事ではないといいましょうか。
マスクした痕がなかなか取れないんですよね。
ずっとついている…。
そうですか。
ちょっとそういうふうに思いましたけど。
でもこの先生は若いからすぐ取れる。
はいすいません。
今度は5番です。
お化粧をしない顔を隠すためにマスクをするというのがたくさんありましたその類句が。
いやそうですよ。
すっぴんでね顔隠せますからマスクしますよ。
その中でこの方は外出する時はいつも口紅がたしなみであってマスクをして隠れている時も口紅はしているんだという美意識を俳句にされてるんですね。
そういう方いらっしゃるんですね。
何かマスクの内側に口紅がつくと嫌だって人もいるんでしょ?それも類句でありました。
結構ありました。
今度は6番です。
面白い句またがりの句ですね。
マスクをする事によってちょっと感覚が鈍くなるような感じ。
それをアンケートに答えてると思うんですけれども「どちらとも言へないに丸」で表現しています。
現代の気分っていうものも表しているんじゃないでしょうか。
何かどっちか決められない。
そういう時代的な気分というものも捉えてるような気がします。
「マスク」が表して…。
象徴的なんですかね。
なるほど。
今度は7番です。
これもマスクの本質をよく捉えてる句だと思います。
マスクをするって事は命を惜しむ事なんだっていう…。
教わりましたね。
そして「少々」ってつけられたのも実感ですよね。
マスクのど真ん中の句になるんじゃないでしょうかね。
どうですか?中村さん。
僕はあんまりマスクしないから惜しんでないです。
曇ったりしますからね眼鏡かけてらっしゃると。
眼鏡をかけてるせいなんだけど。
そうですよね。
眼鏡が曇るんで。
今度は8番です。
マスクをした事によって美人になったという句もたくさんありましたね。
それが一番多かったかもしれません。
その中でこれは男の子を出してきました。
美男子ですよね。
そのまつ毛の長さに注目してるのも面白いですよね。
顔半分隠れちゃうからあとは表情っていうと目でしょうけどもそれがマスクしてなかったら気が付かなかったかもしれないですよね。
マスクしてるからまつ毛の長さが際立ったんでしょうね。
よく見てますよね。
よく見てる。
今度は9番です。
これは神前ですね。
敬けんな思いでマスクを取って二礼二拍手一礼をしているという。
しっかり神前での作法を書かれてるところがいいですよね。
僕はこれはよく分かる。
地鎮祭をするんでね。
地鎮祭の時にさすがにマスクして出ていく人はいないですからね。
やっぱり外して居ずまいを正すという感じがありますよね。
東北の方ですから復興を願ってという事もあるでしょうけどね。
あるでしょうね。
以上が入選句でした。
では特選三句をご紹介する前に「俳人のことば」をご覧下さい。
馬がカンカン照りの真っ昼間の暑い盛りの時に何にもかぶせてもらえなくて木につながれて主人の出てくるのを待ってる。
それを見てる私も家から出てってどういうつもりだかくしを持って馬の前へ行って真っ正面へ行ってこうやって髪を梳ったんですね。
自分もちゃんとあんたのみたいにたてがみもあるし尻尾も長いし…みたいにあるよっていうのを見せびらかしたかったのかもしれないんですけど。
初鰹ははるかな沖から連れてこられて競りに乗ってるんですけどとても新しくてピチピチしてきれいな縞模様をしている。
波の模様です。
縞になって流れてる。
もう沖に帰る事はできない初鰹がやっぱり名残惜しいせいか沖の縞模様を着ているというそういうイメージがある訳です。
それでは特選句です。
まず三席はどちらでしょう?大網健治さんの句です。
二席の句です。
小野豊さんの句です。
一席はどちらでしょう?大久保文子さんの句です。
この句は響きの明るさがすばらしかったと思います。
上五中七下五の語頭がア音で統一されていましてそれがとても明るい。
「マスク」という陰影のある季語でこれまで明るい句が出来るというのがすばらしかったです。
以上が今週の特選でした。
ご紹介しました入選句とそのほかの佳作の作品はこちらの「NHK俳句」テキストに掲載されます。
俳句作りのためになる情報も参考になさって下さい。
続きまして…入選までのあと一歩を教えて頂きます。
今日は俳句の中の時間の流れについてお話ししてみたいと思います。
ではこちらの句です。
これはテレビドラマの一場面のような印象的な句ですね。
「緑のマスク」というのも珍しいマスクが出てきましたね。
ただ調子が悪いですね。
破調という事になってますね。
これのリズムを整えたい。
そしてずらずらっと言葉が並んでいるんで切れを入れたいですね。
それなんでまず「緑のマスク外す」というところを最初に持ってきて「手術終へきて」という方を後にしましょう。
印象的な部分を時間的には後なんだけれども先に持ってくるという事ですね。
それで「緑いろのマスク外しぬ」というふうにまず上五中七を定めます。
「マスク外しぬ」というところで「ぬ」で切れ字を使ってしっかり切ります。
「緑いろの」というのは上五は字余りは許されるんで1音字余りにしてそして最後に「手術終へ」というものを置きます。
そうすると非常に確かになりますね。
切れも出来ますし「緑いろのマスク」というものもとても印象的な光景が強調されます先に持ってくる事によって。
時間経過で並べていくと説明的になってしまうと。
説明的散文的になるんですけれどもまず印象的なものを時間とは関わりなく先に出すというのが一つのコツになるんじゃないでしょうか。
どうぞ参考になさって下さい。
それでは皆さんからの投稿のご案内です。
これ春の季語なんですね。
そうですね。
地中から草が萌え出る事をこの季語で言いますね。
大きな季語ですね。
では小澤さんの年間のテーマですね「季語について考えておきたいこと」今日は「マスク」です。
今日は季語の歴史についてお話ししたいと思います。
たくさんの季語がありますけれどもそれぞれの季語にそれぞれの歴史があるんですね。
非常に古い句からの「雪」なんていう「万葉集」以来の歴史のある季語もありますし今日の「マスク」という季語は大正時代の「俳句歳時記」に載っている季語なんですね。
そこに載っている句を見ますと…こんな句が見られるんですね。
この芸妓ですね芸妓のしているマスク。
そして役者のしているマスクという。
どうしても風邪をひいてはいけない職業の人が使っているものとしてマスクは使われて…。
当時?大正当時使われてきました。
それが現代になってきますとだいぶ変わってきまして…別れの場面ですね。
人と別れてきた。
そして振り返ってもう一度挨拶しようとしてるんですが振り返るにはちょっと来過ぎてしまった。
それで最後の別れをし損ねてしまったという。
マスクをした事によって感覚が鈍ってしまったというそういう感情を表す季語として使われるようになってきています。
感情内面的なものも。
内面的なものも出せるようになってきたという事ですね。
それはやはり「マスク」という季語が成長してきた成熟してきた事なんじゃないでしょうか。
一つ一つの季語がそのように使われる事によって本意を育ててくるという事ですね。
その違いを味わいながらさまざまな季語のさまざまな重さの違いを味わいながら俳句を作って頂きたいと思います。
ありがとうございました。
ここで今度は中村さんの俳句作品をご紹介頂けますか?書いてきて頂きました。
小澤さんのそばで恥ずかしいんですけれども…。
窮鼠というのが俳号なんですね。
そうです。
友人が付けてくれたんですけども追い込まれると力を出すという。
僕がねずみ年なんでそれにちなんでの事でもあるんです。
これはどういう情景ですか?これはですね私の父親がお酒が好きな人でよくこたつでお酒飲んでましたけどもある程度飲むと眠くなってしまう人でバタンと座布団を折って枕にして寝るような感じなんです。
「ああ寝ちゃったね」って言ってみんながちょっと席を外してまた戻るとすやすやと気持ちよさそうに寝てると。
机の上にはこたつの台の上にはまだお酒の残った杯がありそこにうっすらほこりも浮かんでるという句なんですけど。
いい世界で…。
「こたつねや」っていう入り方にまずびっくりしましたね。
こたつの句は割と多いんですけども「こたつね」っていうのはうまく使ったなと思いました。
そして「こさかづき」というのも杯はすぐ出てくるんですが「こさかづき」で下五に置いたというのはうまいなと思いますしそして「ほこり」の中にも「こ」が隠されていて「こ」「こ」「こ」と来る訳ですよね。
その調子のよさたまらないですね。
ありがとうございます。
最初におっしゃっていた居心地のよさというか気持ちのよさですか?そのお父様のね。
本当にそれが伝わってまいりますね。
「ほこりうかべる」でちょっとわびさびのにおいもしますね。
とても好きな句で。
ありがとうございます。
そういう居心地のいいものを作る時に欠かせないのがやっぱり木材材木木だという事ですよね。
そうですね。
僕は住宅の設計がほとんどですけども大体木造住宅なんですよ。
そこにあるそこの住宅で使う家具類もデザインしてるんですけども椅子とかテーブルとか。
そういう大物も木で作りますし手触りがいいとか時間がたつと風合いがよくなるとかっていう事で。
それでその大物もそうですし小物も同時にデザインして例えばこれ今日お持ちしたんですけどもこれはごますりなんですね。
ごますり!どう使うんですか?これここを開けてこの中にごまを…。
中に入ってるんですね。
入ってるんですね。
そしてこれをこうしてあとはこうする。
(ごまをする音)ほらいい音するでしょ?それでこうやるといい香りが立ち昇ってくるんです。
しかもごますりしてるみたいな格好ができるというところもこれの特徴なんですけど。
それで本当にすれてる?もうこんななんですよ。
まあ見て下さい。
あっという間ですね。
今何すりかしかしてませんけどもこれでもうかなり細かく…。
確かにいい香りが。
ごまの香りが。
うっかりするとちょっとやり過ぎちゃうんです。
だから適当なところで止めるんですけど。
ごますりもし過ぎてはいけないという事ですね。
そうなんです。
そういう教えも入ってるという。
…で小澤さん。
ええ。
それで私も対抗しましてごますり俳句を作ってみました。
ごますりの句です。
実はこのごますり器を以前頂戴しましてこれはもう本当にそのまま俳句だなと思って。
楽しいし味わいも深まるし。
俳句そのものの世界だと。
俳句そのものの世界だなと思ったんですよね。
それで作ってみたんですけれども。
ありがとうございます。
お恥ずかしい事なんですけれども。
何かこうこういう小さな道具にすぎませんけども暮らしの中にこういうものがあると何となく薬味的な生活の楽しさというか機微というかそういうものが際立つような気がするんですけどね。
スパイスとして際立つような気がするんですけども。
機微っていう言葉もいい言葉ですよね。
そういう日々の機微を詠む。
それもまた俳句。
そうですね。
まさしく。
それから私木と生きるという事を…。
俳句というのは昔から人間は木の下にいて木と共に生きてきたという縄文以来の歴史みたいな事を考えてるんですけれどもやはり中村さんの建築の木を大事にするという事はそういうところともつながってるような気がしますね。
僕は全然無意識でしたけども今言われてみると何かその…大樹の下にいると心落ち着くっていうのと通じてるのかもしれませんね。
縄文人も栗の木を建築材に使ってきたっていうんですが中村さんも床に栗使われますよね。
栗の木は好きなんです。
今日は建築家の中村好文さんにお越し頂いてお話を伺いました。
本当にどうもありがとうございました。
ありがとうございました。
小澤さんまた次回どうぞよろしくお願い致します。
よろしくお願いします。
今日はこの辺で失礼致します。
ごめんください。
2014/12/17(水) 15:00〜15:25
NHKEテレ1大阪
NHK俳句 題「マスク」[字]
選者は小澤實さん。ゲストは建築家の中村好文さん。居心地のよさを追求している中村さん。建築における理想は「小屋」。子どもの頃に作った秘密基地にその源があるという。
詳細情報
番組内容
選者は小澤實さん。ゲストは建築家の中村好文さん。居心地のよさを追求している中村さん。建築における理想は「小屋」。子どもの頃に作った秘密基地にその源があるという。【司会】桜井洋子アナウンサー
出演者
【出演】中村好文,小澤實,【司会】桜井洋子
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 文学・文芸
趣味/教育 – 生涯教育・資格
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サンプリングレート : 48kHz
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