相棒 season7 2014.12.17


(亀山薫)おはようございます。
(杉下右京)おはようございます。
早いですね。
何見てるんすか?
(江口リポーター)「今日はここ青梅の寿々屋旅館で注目の一戦が始まろうとしています」「その緊張感はここにまで伝わってきています」りょうません?「龍馬戦」将棋のタイトル戦です。
えっ?右京さん将棋好きでしたっけ?チェスと通じるところがありますからね。
あなるほどね。
「…『竜王』『王座』そして現在対局中の『龍馬』の三冠」「対する挑戦者の西片名人は『名人』『王将』の二冠をすでに制しています」「本日行われる龍馬戦最終第七局を村田龍馬が制すれば19歳という史上最年少での防衛となります」「しかも現在まで三勝三敗という好勝負…」ふ〜ん三勝三敗…。
いい勝負してるみたいですね。
ええ。
しかも第一局から三局が村田龍馬の三連勝。
第四局から六局が西片名人の三連勝なんです。
へ〜そうなんすか。
とても珍しい。
(テレビの音量を上げる)「状況がまだよく…え〜とにかくどの取材陣も今旅館の裏の方へと走っています」「えっ倒れてるの!?人が倒れているそうです!」
(スタジオアナウンサー)「もしもし?江口さん?」「龍馬戦の関係者ですか?」「わかりません!え〜倒れている人を他のテレビクルーが見つけたそうで。
え〜我々…」人が倒れてる?「え〜こちら現場です!人が倒れているとの情報ですが今情報の確認が取れました!すいません映せません」「息をしていないとの事です。
倒れているのはやはり西片さんです!」西片…挑戦者です。
「…息をしていないとの事です!」「これは大変な事になりました。
今日龍馬戦で戦うはずだった西片二冠がこの場所で倒れているのが発見されまして現在息がない事が確認されました!」
(シャッター音)
(伊丹憲一)飛び降り自殺か?
(芹沢慶二)大事な対局の前にですか?
(米沢守)どうも。
(三浦信輔)どうも。
(米沢)屋上にあったゲソ痕です。
(米沢)被害者の靴と一致しました。
(三浦)被害者?殺しのような口ぶりだな。
屋上にゲソ痕がもう1つ。
屋上は一般に開放されていません。
従業員もめったに行かないようで砂ぼこりが堆積してました。
(伊丹)屋上にゲソ痕が2種類だけ…。
屋上に出るドアのノブに拭き取った跡がありました。
(三浦)つまり誰かが指紋を拭いた…?殺しの線だな…。
(パトカーのサイレン)
(畑一樹)酷い状態でしたね西片二冠のいぶきの間。
(山名悟)一体誰が荒らしたんですかね?ええ…。
あの掛け軸も盤も高価な物でしょうに。
(記者)この対局はどうなるんですかねぇ…。
あ!右京さん。
現場は裏庭ですけど?現場鑑識は優秀な方たちばかりです。
は…?あ〜本当だ。
屋上から落ちたのになんでこんなに部屋が乱れてるんですかね?どうも。
どうも。
どうも。
あぁあぁあぁあぁ…。
あーなるほど。
この花瓶が倒れた時にこの掛け軸や壁が濡れたと…。
あ…じゃあこれはもともとここにあった…?それを何者かが…。
ここへ移動させた。
なんでですかね?ここに置かれていたのならこれも濡れていたはず。
でももう乾いてるみたいですけど…。
ここは乾いてないのに。
(伊丹)カメ!てめえここで何してる!いやいや…なんか盗られた物でもないかなと思いましてね。
おめえの仕事じゃねえだろ。
じゃ一緒に調べますか?一緒には調べねえ!あそう。
ん?なんか…いい匂いがするぞ。
ん?あ〜これだ。
犬かお前は!誰かと違って鼻が利くんでね。
警察犬に推薦してやろうか?
(芹沢)あ!財布…。
お〜。
物盗りの線は消えたねえ?ねえ?お前まだいるつもりかよ!出て行けよ早く!
(米沢)おや?ここにもありました。
はい?指紋を拭き取った痕跡です。
「ここにも」という事は他にも?ええ屋上にも何者かが指紋を拭き取った跡が…。
警部殿もそろそろ出て行ってください。
…というわけで殺害現場の屋上にも荒らされた被害者の部屋にも指紋を拭き取った跡がありしかも屋上には何者かの足跡がありました。
つまり殺人の可能性が高いんです。
そう考えると…。
疑問が1つ。
警部殿〜。
なぜ被害者の部屋は荒らされていたのでしょう?犯人とガイ者が揉めたんでしょう。
だとすれば部屋の様子から見てかなり激しく揉めた事になります。
死亡推定時刻は?
(芹沢)昨夜の零時から2時です。
(伊丹)お前!教えてんじゃねーよ!その時間皆さんは?
(山名)寝てますよ。
翌日は大事な対局ですから。
昨夜被害者の部屋から大きな物音を聞いた方いらっしゃいますか?だとすればその犯人らしき人物は本当に被害者と揉めたのでしょうか?部屋で揉めたあとわざわざ屋上から突き落とすでしょうか?例えば荒らしたんではなくて何かを探していた…。
財布は無事だったろ?だから財布以外のなんかだよ!ハイハイ!その線も調べるからお前とっとと出て行けよほら!警部殿も捜査が進みませんから…。
これは失礼!ちょっと気になったものですから。
亀山君行きましょう。
はい。
うらぁ!押すなよ。
えー。
で部屋を荒らしたのはきっとこの人です。
でこの足跡はこれでした。
(女将)それうちの…。
そうです。
犯人は旅館のスリッパを履いてたんです。
つまり宿泊者か従業員の可能性が高いと思われます。
(畑)宿泊者って…。
今は龍馬戦の関係者しかいませんよ。
(里見二三一)私たちが西片君を殺したと言うんですか?
(女将)うちの従業員がそんな事するはずありません。
それを証明するために皆さん指紋をとらせてください。
それと防犯カメラの映像も提供してください。
失礼。
(米沢)あっどうも。
この将棋盤に拭いた痕跡はありませんでしたか?おやよくご存知で。
本来あるべき所にあるはずの指紋がありませんでした。
この将棋盤はかなり貴重な物?今では値がつけられないそうです。
なんでもすでに他界した名工による物だとか…。
見る人が見ればわかるでしょうね。
でしょうねぇ…。
つまり何者かがこの部屋を荒らしていて…。
この将棋盤を濡らしてしまった時床の間から離し拭いたんです。
犯人はこの盤の価値がわかる人物…。
かもしれません。
これはなんですかね?図面用紙です。
駒の配置を書く時に使います。
あ〜。
えっとじゃあこれは…?便箋と封筒です。
手紙を書く時に使います。
いやそれは知ってますけども…。
あれ?この匂い…ちょっとすいません。
確か…。
あやっぱ同じ匂いだ。
これ?お香でしょうかね?調べます。
それからこれも。
使われた形跡があります。
5枚入りとありますが4枚しかありません。
便箋も少し使った痕跡がありますね。
封筒を1枚使ったって事は手紙を1通出した?その手紙いつどこへ出されたのでしょうね?
(三浦)ストップ!おいちょっと見てくれ。

(芹沢)こんな男関係者にいませんよ?大野木亮真剣師です。
真剣師?
(伊丹)てめえまた勝手に来やがって!真剣師とは賭け将棋で生活をしている人ですよ。
ええ。
それで素人を食い物にしている奴です。
大野木は一応奨励会の出身なんですが奨励会の恥ですよ。
奨励会とはプロの養成機関の事です。
そんな男がゆうべなんでこの旅館に…。
(女将)あの…この人…。
(芹沢)え知ってるんですか?ゆうべ突然訪ねて来て西片さんに取り次いで欲しいって。
それで昨日前夜祭を抜け出したのか…。
前夜祭?対局の前日にそういうレセプションをするんです。
(山名)ちょうど前夜祭の最中です。
つまり西片さんは前夜祭を抜け出して大野木さんに会っていた可能性が高いというわけですね。
怪しいな。
この先流してくれ。
(三浦)ストップ!
(芹沢)被害者の死亡時刻よりずっと前ですよ。
まだ前夜祭をやってる時間ですね。
このあとまた旅館に入ったんじゃねえのか?早回してくれ。
(伊丹)出入りしてる形跡はねえな〜。
(三浦)この男の線はないか…。
今回の龍馬戦では記録係を務めていました。
先ほど西片さんが前夜祭を抜け出したとおっしゃいました。
ええ。
でもまさか大野木と会ってたなんて…。
その後西片さんに何か変わった様子はありませんでしたか?さあ…彼は前夜祭に戻らなかったんで。
戻らなかった?西片二冠の場合部屋で翌日の手を練る習慣があるんですよ。
なるほど。
どうもありがとうございました。
ありがとうございました。
つまり西片さんが最後に会った人物が大野木さんだった。
その時大野木さんが殺した。
死亡推定時刻は深夜零時から2時ですよ?あそっか。
部屋を荒らす事も屋上から突き落とす事も時間的には無理ですよね?しかし被害者が最後に会った人物ですからね。
それにここならその気になれば忍び込む事は可能でしょうし。
ああ…なるほど。
どうぞ。
今回の龍馬戦では立会人を務めております。
ところで西片さんですが…。
前夜祭を抜け出したきり戻らなかったとか?ああ…部屋に戻って手でも練っていたんでしょう。
しかし見たところ駒はしまわれていました。
手を練ったあとしまったんでしょうなぁ。
もしくはゆうべに限って練らなかった?かもしれません。
だとしたらなぜゆうべに限って。
ゆうべに限って起きた事と言えば?大野木さんが訪ねて来た。
それが西片さんの習慣を変えた。
とは考えられませんか?ああ考えすぎでしょ。
そうでしょうかね。
そういえば今回の龍馬戦は変わった事だらけだ。
とおっしゃいますと?前半は西片くんの三連敗。
後半は村田君の三連敗だ。
確かに珍しいタイトル戦ですね。
何より第一局の負け方が酷かった。
あっ!あの最初の対局。
あれには僕も驚きました。
なんかあったんですか?西片君は初日早々に反則負けをしたんですよ。

(里見)それも二歩という極めて初歩的な反則でね。
(西片幸男)申し訳ありません。
私の負けです。
みっともない事をしました。
その負け方にはみんなも驚きました。
反則をしたら自分から言わなきゃいけないんですか?いやそんなルールはないが…。
将棋の道は武士の道と同じです。
ルールはなくとも武士なら恥ずべき事はしない。
素晴らしいお考えですね。
西片君はそういう道徳に厳格な棋士でした。
それだけにその負け方が尾を引いて三連敗してしまった…。
そうかもしれません。
神経の細かい男でしたから。
対局中に人が部屋に出入りするのも気にしてましたからね。
そりゃ相当神経質そうですね。
だから大変なマスコミ嫌いで畑君以外の取材はめったに受けなかった。
畑君?将棋新聞の記者でね。
なぜ畑さんの取材だけは受けるのでしょう?同期でしてね奨励会の。
ああ…では畑さんもかつてはプロを目指していた?そういう人間が将棋の観戦記者には多いですよ。
亡くなった西片さんとは同期で仲が良かったとか…?ええまあ…。
お気持ち察します…。
あの〜大野木さんについて何か聞いてませんか?大野木の事?ええ。
前夜祭の時に西片さんを訪ねて来たらしくて。
そうなんですか…。
今呼び捨てなさいましたね?大野木と。
まあ彼も同期なんで…。
えっ?ではあなたと西片さんと大野木さんは奨励会の同期?ええ。
ま中でも僕ら3人は特殊でした。
特殊とおっしゃいますと?本来奨励会にいられるのは26歳までですが僕ら3人は29歳までいました。
ああ!プロになるための対局に勝ち越すと29歳まで延長出来ると聞いた事があります。
ええ。
でも29歳までに四段。
つまりプロになれなければ奨励会は退会です。
それで僕も大野木も退会しました。
で西片さんだけがプロになりあなたは記者に。
ええ。
僕は運良く将棋新聞に採用されたので。
大野木さんは真剣師に。
ええ…。
あいつは将棋を指す事にこだわり続けた。
なるほど。
西片二冠を殺して得する人物?そんな人この中にいませんよ!
(三浦)まあまあ手続き的な質問ですから。
ちなみに龍馬戦はどうなるんでしょう?
(山名)どうなるって何が?対局者が亡くなった場合どうなるかという事です。
村田三冠の勝ちになりますが…。
まさか村田三冠を疑うんですか?そんな事で殺しませんよ!まあまあ手続き的な質問ですから。
(米沢)失礼します!お取り込み中のとこすいません。
被害者の客室の指紋を調べてたんですが…。
えっ?だって拭き取られてたんじゃ…?拭き残しがありました。
その中にこの指紋が…。
(三浦)すいません。
対局者が相手の部屋を訪ねる事はあるんですか?通常はありませんが…。
村田三冠は今自分の部屋ですね?
(村田隆)西片さんの部屋に?ええあなたの指紋がありました。
行きましたよ。
扇子をやめてくれって…。
扇子?あおぐ度に年寄り臭い匂いがして気が散るんです。
被害者匂いのする扇子を持っていた。
まったくあんな盤外戦術仕掛けてくるなんて…。
盤外戦術?戦いは将棋盤の上だけじゃなく盤の外でも戦術があります。
西片さんの扇子がそうだったと?将棋は人間と人間の戦いです。
相手の手を読むと同時に心理も読む必要があるんです。
将棋は心理戦でもあると?
(芹沢)だから扇子をやめてくれと言いに行った?ええ。
せめて最終日くらい。
最終日ぐらい?つまり行ったのは昨日の夜?前夜祭の前ですよ。
なぜ今までそれを黙ってたんでしょう?もちろん疑われるからですよ。
(大野木亮)真剣師なんてもう今はいないよ。
しかし皆さんあなたをそうおしゃってますよ。
どうやらお金かけてるみたいですしねぇ。
違法行為ですよ。
パクる気?まあこの金に手をつけなければ現行犯にはなりませんから。
灰が落ちますよ。
俺に西片の事聞いても無駄だよ。
俺は場末の賭け将棋師。
西片はタイトルを2つも持ったお偉い先生。
住む世界が違う。
昨夜西片さんとお会いになりましたよね?龍馬戦最終対局の前夜に。
6年ぶりにちょっと会っただけだ。
突然お会いになられた理由は?突然じゃない。
西片には電話した。
電話。
いつでしょう?第一局の…初日。
第七局まで勝負がもつれたら会いに行くと。
何しに?西片は…俺が残した希望だ。
はい?そんなあいつが二冠になって龍馬戦の挑戦者になって三冠をとろうとしてる。
そう思ったらどうしても会いたくなった。
会って何を話されたのでしょう。
話してない。
話してない?6年ぶりに西片の顔見たら言葉が出なかった。
6年前西片さんと何かあったんですか?別に何も…。
はぁー…負けたよ投了だ。
毎度あり。
またどうぞ。
あ…あああああ。
んー…なんかありそうですね6年前に。
彼らが29歳の時奨励会にいた頃ですね。
その後西片さんはプロに大野木さんは真剣師に。
明日将棋連盟へ行ってみましょう。
はい。
奨励会時代の西片二冠の成績です。
意外と黒星が多いですね。
彼が頭角を現したのはプロになってからですよ。
(職員)トップになる棋士っていうのは大抵奨励会時代にはもう注目されてるものなんです。
(職員の声)多くの棋士は小学生の頃に奨励会に入って一流の棋士は二十歳前後にはプロになりますから。
29歳でプロになるっていうのは遅い方なんですか?奇跡ですよ。
しかも西片二冠はプロになった途端人が変わったように勝ち星を挙げてすぐにトップ棋士になった。
確かプロになるための対局がありましたね。
三段リーグですね。
西片二冠が29歳の時の三段リーグです。
あっ右京さん。
西片さんが…勝ってますね。
6年前2人はプロをかけた対局をしてたんですね。
そこで大野木さんは西片さんに引導を渡された。
畑は取材に出てますが…これですねぇ。
6年前9月の三段リーグの棋譜です。
恐縮です。
でえー…西片さんと大野木さんの対局は…。
ありました。
あっ…。
どうなんですか?酷い対局です。
え?大野木さんが二歩で反則負けしています。
ん…二歩?ええ。
同じですね。
今回の龍馬戦第一局。
(里見の声)第一局の負け方が酷かった。
西片君は初日早々に反則負けをしたんですよ。
それも二歩という初歩的な反則でね。
6年前も二歩今回も二歩。
偶然ですかね?どちらも大野木さんが関わっています。
いや…今回の二歩は西片さんと村田さんの第一局ですよ。
その日大野木さんが西片さんに電話をしています。
あっ…。
西片には電話した。
電話。
いつでしょう?第一局の…初日。
気が動転したんですかね。
はい?いや大野木さんから6年ぶりに電話もらって。
だから西片さんが初歩的な反則負けを…。
あ…しませんよねそんな電話くらいで。
そうかもしれません。
え?大野木さんの接触に激しく動揺する理由があった。
理由?それも三連敗するほど尾を引く理由が。
ええ。
この棋譜は僕が取材したものです。
しかしあなたもこの三段リーグで戦っていたはずですが?はい。
でもまあ…僕は早々と負け越しました。
つまり奨励会退会が決まってしまった。
ええ。
まあそれで早く手が空いたんで西片と大野木の対局を見ていたんです。
(畑の声)そしたら将棋新聞の記者に棋譜を書いといてくれと頼まれて。
それが僕の初めての取材でした。
その時思ったんです。
棋士として将棋に関わる事が出来ないならこれからは記者として関わる道があるかもしれないと。
それが観戦記者になったきっかけです。
その時あなたは西片さんと大野木さんのこの対局をご覧になったわけですね。
はい。
この対局大野木さんが二歩で負けていますね。
それをどう思われましたか?まあこれを見ればわかってしまう事なんですが大野木も僕と同様に早々と負け越しています。
大野木さんも奨励会退会が決まっていた。
ええ。
西片との対局の前に。
(畑の声)つまりあの時プロを狙える位置にいたのは西片だけだったんです。
それも大野木に勝てばプロになれる。
西片にはプロになってもらいたい。
彼と同じく29歳まで奨励会にしがみついた者としてあの時僕はそう思いました。
もしかしたら…いやきっと…大野木も…。
だからわざと二歩を指した。
西片は…俺が残した希望だ。
刑事さんお願いですこの事は…。
もちろん他言はしません。
西片の名誉のためにも。
はい。
お忙しいところありがとうございました。
いや…じゃあ失礼します。
(ため息)なんか気持ちはわかりますよね。
はい?いや大野木さんがわざと負けた気持ちです。
それが今回の事件に暗い影を落としているのかもしれませんね。
大野木さんが西片さんに会った理由ですか?それも…最終第七局の前夜に。
まさか6年前の八百長をネタに強請った?でも今さらそんな事バラされても大したスキャンダルにはならないと思いますよ。
心の問題かもしれません。
心?それを今公にされて潔癖な西片さんが耐えられるかどうか…。
そういう問題かもしれません。
確かに大野木さんはちょっといけすかない人でしたけどでも言ってましたよね西片さんは自分の希望だって。
あの言葉だけは俺信じられる気がするんですよね。
(米沢)旅館のスリッパを全て調べてみたんですが屋上の砂埃が付着しているものはありませんでした。
これは…お香ですね。
はい。
ああこれですね。
扇子と便箋についてたのと同じ匂いです。
龍脳という芳香性の結晶粉末だそうです。
龍の脳と書きます。
龍馬戦にはもってこいですな。
これは…財布の中身?いいえ被害者の死体のそばに。
死体のそばに10円玉が2枚…。
ええ。
事件とは無関係だとは思ったんですが気になりまして。
気になるとは?指紋が一切ないんです2枚とも。
(亀山美和子)いつも前夜祭を抜けて手を練っていた。
手を練っていたっていうのは翌日の作戦を練っていたって事ですよね?ええ将棋を指しつつ。
右京さんが将棋に詳しくて助かります。
いえいえそれほど詳しいわけではありません。
いや私全然将棋って知らなくって。
(宮部たまき)知らないのに大変ですね。
本当…突然こんな追悼記事任されちゃって。
えー…で他に何か西片さんの面白エピソードってあります?はいダメ。
はあっ!?マスコミさんに話せるのはここまででーす。
美和子さんの方は何か面白い取材が出来ましたか?
(美和子)そうですね。
かなり神経質な人だったみたいですね。
対局中は人の出入りも気にしていたようですね。
やっぱりそれだけ集中する人だったんですかね。
心理戦を重要視する人で顔色やしぐさで相手の心理を読み取ろうとするんだって。
なんか右京さんみたいですね。
神経質になるはずですね。
でもそれって自分との戦いかもね。
お香を愛用していたのも自らの気持ちを落ち着かせるためだったのでしょうね。
そうそう。
匂いに敏感で10円玉で匂い消しとかしてたって。
10円玉?靴にね入れてたんですって。
なるほど。
銅には雑菌を抑える効果がありますからね。
それ聞いた事あります。
美和子さんお手柄です。
これで全てがつながりました。
え?
(電話の呼び出し音)杉下です。
至急調べて頂きたいものがあります。
西片さんの靴です。
死亡時に履いていた靴。
西片さんがここから落ちて亡くなられた夜何者かが西片さんの部屋を荒らしました。
ええ僕も見ました。
その朝あなたはこうおっしゃいましたね。
酷い状態でしたね西片二冠のいぶきの間。
一体誰が荒らしたんですかね?ええあの掛け軸も盤も高価な物でしょうに。
そうまるで将棋盤も濡れたようにおっしゃった。
確かに花器が倒れ掛け軸が濡れていましたが将棋盤は床の間から少し離れた所にあり濡れた形跡はありませんでした。
しかし将棋盤が何者かに移動させられている事がわかりそれが気になって調べたところ盤に拭き取られた跡がある事が鑑識の調べでわかりました。
そうあなたのおっしゃるように盤は濡れていたんです。
問題はなぜそれをあなたが知っていたかです。
あの盤は見る人が見ればわかる貴重品だそうですね。
それを思いがけず濡らしてしまったあなたは反射的に床の間から離し慌てて拭いた。
違いますか?なんで僕が盤を濡らすんです?部屋を荒らしたのがあなただからです。
僕が西片を殺したって言うんですか?いいえ。
あなたは偽装しただけです。
じゃあ誰が殺したんだ?西片さんは…自殺です。
西片さんのご遺体のそばに10円玉が2枚落ちてました。
西片さんの靴に入っていたものです。
靴に?だから指紋はついてませんでした。
ではいつこれが靴から落ちたのでしょう?あなたが死体に靴を履かせた時です。
つまり西片さんは屋上で靴を脱ぎ飛び降りたんです。
脱いだ靴に遺書を入れてから。
遺書…。
靴の片方から西片さん愛用のお香が検出されました。
彼封筒にもお香をつけてたんですよ。
手紙の送り先がわからないはずです。
手紙じゃなくて遺書だったんですからね。
話して頂けますね?西片さんが飛び降り自殺をした夜一体何があったのか…。
あの夜僕は翌日の最終対局に備えて夜遅くまで棋譜の整理をしてました。
(携帯電話)
(畑の声)そんな時電話があったんです西片から。
おお西片?どうした。
(畑の声)見てほしい物がある。
屋上にいる。
そんな電話でした。
お前それどういう意味だよ?おい!おい!
(畑の声)嫌な予感がして部屋を飛び出しました。

(畑の声)その場で遺書を読みました。
(西片の声)私の将棋人生は奨励会に入った時ではなく6年前三段リーグで大野木と対局した時に始まりました。
その時私はすでに29歳。
彼との対局に勝たねばプロにはなれず奨励会を退会しなければならぬ状況でした。
その対局は大野木が二歩の反則負けをし早々と決着がつきました。
そう私は彼に星を譲られたのです。
その時の私は屈辱よりも喜びを感じていました。
苦しみがやって来たのはプロになってからです。
(西片の声)あれは大野木が勝手にやった事。
その分プロとして真摯に打ち込めばいい。
そう思い打ち込めば打ち込むほど自分は偽りのプロだという思いに苛まれました。
負けました。
(西片の声)私と大野木の対局を見届けた畑が観戦記者となり私の周りで目を光らせていた事も重圧でした。
勝ちはどの辺りで意識されましたか?
(西片の声)それでも懸命に将棋を指し続ければいつか罪悪感も消える。
そう信じてタイトルを重ね念願の三冠目に挑もうとした矢先…。
参りました。
(西片の声)第四六期龍馬戦第一局の前夜。
大野木から6年ぶりに連絡がありました。
(電話)はい西片です。
(西片の声)その電話で彼から俺の事を覚えているか?と問われ私は怯えました。
やはり大野木も覚えていた。
6年前の事を忘れてはいなかった。
そう思った瞬間頭が真っ白になりそのあとの言葉は一切耳に入りませんでした。
同時に私は決心しました。
この龍馬戦を私の最後の対局にしようと。
この対局を終えたら潔く棋士を辞め全てを公表しようと。
しかしその龍馬戦最終局の前夜である今夜大野木が私の前に現れました。
彼は何も言いませんでしたが私は察しました。
私はこれまでも棋士でいてはいけない人間だったのです。
彼を目の前にしてやっと私はそれに気づきました。
私にはもう最後の一手ですら指す資格はないと。
(西片の声)これまで将棋を愛してくれた多くの人々を裏切り続けていた事を命をもってここに謝罪します。
最後に畑へ。
6年前の事を知る君にこれを公表してほしい。
6年前我々の対局を見届けてくれたように。
(嗚咽)そんな…それくらいの事でなんで自殺なんて…。
それくらいの事じゃない!勝負の世界に生きる棋士にとって一度でもした不正がそのあとどれほどの傷になるか。
ましてそれがプロのなるきっかけとなった対局だったらどれほどの…。
それでも…僕にとって西片は希望だった。
(畑の声)彼の終盤を汚したくなかった絶対に。
そのためにも自殺だと思われてはいけない。

(畑の声)西片の部屋が荒らされていたら事件だと思ってもらえるかもしれない。
そのまま犯人がわからず迷宮入りになってくれれば…そう思って…。
あっ!それであんな偽装を…。
なんで今さら西片を追い詰めるような事をした?追い詰めるなんてそんなつもりは…。
あの時は本当に胸がいっぱいで何も言えなかったそれだけだ。
6年前八百長したやつがこんなタイミングで現れれば棋士なら誰だって追い詰められる。
八百長なんかしてない!6年前確かに俺はあの対局の前に負け越してクビが決定してた。
(大野木の声)そのショックは大きかった。
でも西片はプロかクビかの瀬戸際。
だからこそ俺は気持ちを切り替えて対局し手を緩めちゃいけないと思った。
だが…そう気負いすぎたのかもしれない。
それで思わずあんな初歩的なミスを…。
それが真実だ。
6年前の真実だ。
そんな…。
じゃあ西片は6年もの間何に怯え何と戦ってたんだ…。
西片さんは自殺でした。
しかし畑さん現場を偽装し捜査を混乱させた事は立派な公務執行妨害です。
全てを彼らに話してください。
遺書は公開されるんでしょうか?遺書を公開しなければならないという義務はありません。
あとはよろしくお願いします。
おお。
こんなやつらでもね西片さんの名誉は最大限守ってくれると思いますよ。
うるせぇよ俺たちをなんだと思ってんだよ!さあ話を聞かせてもらいましょうか。
あなたもお願いします。
でもやっぱり俺にはわかりませんよ彼らの気持ちが。
棋士は皆純粋なのでしょう。
あまりに純粋すぎたのかもしれません。
それでも自殺なんかすべきじゃなかった。
そのとおりですね。
自分の人生を読みすぎて読み違ってしまったのかもしれません。
2014/12/17(水) 16:00〜16:58
ABCテレビ1
相棒 season7[再][字]

「希望の終盤」

詳細情報
◇出演者
水谷豊・寺脇康文・鈴木砂羽・益戸育江
川原和久・大谷亮介・山中崇史・六角精児
【ゲスト】蟹江一平・水橋研二・松田賢二

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz

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