(テーマ音楽)
(江守徹)なんという悲劇だ。
最愛の后が若くして天に召された。
私は后の霊廟を白大理石に輝く地上の天国として造らせた。
私はムガル帝国第5代皇帝シャー・ジャハーン。
私の帝国は絶頂期を迎えていた。
ガンジスの支流ヤムナー川を挟んでタージ・マハルを臨む赤い城。
16世紀に築かれたアグラ城だ。
この堅牢な城壁を見てほしい。
アグラ城は私の祖父にあたる第3代皇帝アクバルが築いたものだ。
2.5kmにもわたる難攻不落の城壁。
それはムガル帝国の絶大な力を誇示していた。
さあ遠慮せずに中に入ってくれ。
城壁はすべて赤砂岩を積み上げたものだ。
赤い城力強さを感じるこの赤はムガル帝国を象徴するものだった。
祖父が城壁を築いて半世紀私は皇帝に即位した。
私は好きだった白大理石を使って城を華麗に仕上げていった。
ここで私は民の訴えを聞き裁定を下した。
大理石の玉座には美しいアーチを連ね私の姿が光り輝くよう演出した。
向こうに見えるモスクも私が作った。
美しいこのモスクは後に「真珠のモスク」と呼ばれるようになった。
白大理石造りの清楚な姿。
どうかな?真珠の首飾りのように見えないだろうか。
ここは寝殿。
私の居室である。
私はここで愛する后と濃密な時を送ったものだ。
部屋の壁や天井は豪華な金細工で飾った。
寝殿を取り囲む館には大勢の后たちを住まわせた。
庭園が広がるハーレムまるで楽園だったよ。
私のために美しさを競い合う后たち。
それを眺めるのも楽しかったよ。
このかわいらしいモスクはその后たちのためのもの。
宝石のモスク小さいけれど輝いていた。
白い色は后たちの心を清めてくれたに違いない。
突如夢は終わった。
私は自分が仕上げた城の一室に突然幽閉されてしまったのだ。
皇帝の座を狙った私の三男が兄弟を殺し私をもここに閉じ込めたのだ。
しかも愛する后のための部屋ジャスミンの館だった。
草花の装飾や宝石を散りばめた部屋。
私の好みで造ったこの部屋が皮肉にも私を閉じ込める牢獄となった。
66歳から死ぬまでの8年間をここで過ごした。
唯一の慰めはこの部屋からタージ・マハルが見えることだった。
后の霊廟を見つめる日々を送りながら私は息を引き取った。
私の柩は后の柩の横に並べられた。
2014/12/12(金) 04:15〜04:20
NHK総合1・神戸
シリーズ世界遺産100「アグラ城〜インド〜」[字]
赤い城の白い館 ▽文化遺産 【語り】江守徹 【テーマ音楽】久石譲
詳細情報
番組内容
赤い城の白い館 ▽文化遺産 【語り】江守徹 【テーマ音楽】久石譲
出演者
【語り】江守徹
音楽
【テーマ音楽】久石譲
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
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音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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