生字幕放送でお伝えします岩渕⇒こんにちは。
10時5分です。
「くらしきらり解説」きょうのテーマは、こちらです。
担当は二宮徹解説委員です。
二宮さん、最近建設業は人手不足だというふうに聞きますがどれくらい不足しているんでしょうか。
二宮⇒建設業はここ数年東日本大震災の被災地の復興や首都圏のオフィスビルやマンションの建設などで久しぶりに活況を呈しています。
そうした中で人手不足が問題になっています。
今の厳しい雇用状況の中で、それだけ人が足りないわけですか。
特に足りないのが技能労働者と呼ばれる人たちです。
柱などの鉄筋を組み上げる鉄筋工コンクリートを流し込む型を作る型枠工。
それに左官やとび職などいわゆる職人さんです。
9月の有効求人倍率は全業種では1.09倍ですが建設の技能労働者は6.99倍と圧倒的な高さでした。
こんなに足りないんですね。
どうしてでしょうか?ひと言で言えば建設業で働く人の数が減ったからです。
平成9年度は685万人でしたが昨年度はこのように3割近く減りました。
バブル崩壊以降、景気の低迷や公共事業の削減などで倒産やリストラ、転職する人が相次ぎました。
建設業で働く人たちの賃金が上がっていると聞きますがそれでも人が集まらないわけですか。
技能労働者の労務単価は3年前に比べ、およそ25%も上がっています。
こうしたことなどで今の人手不足というのは少しずつよくなる傾向も見えてきているんですが実は将来のほうがもっと心配なんです。
この先ですか。
建設業に入る若者が少ないつまり人気がないということが深刻な問題になっています。
建設業の関係者が最も頭を悩ませているデータです。
建設業で働く55歳以上と10代20代の割合を示しています。
昔は同じぐらいだったんですが差が広がり続けて昨年度は34%と10%になりました。
これは10代、20代が10人に1人しかいないということです。
深刻ですね。
なぜ若い人に人気がないんでしょうか。
イメージがよくないということが大きいです。
仕事がきつい、外での作業が暑い寒い給料が安いなどに加えて談合や汚職などによる公共事業への批判や景気に左右されやすいことへの不安もあります。
こうしたことから工業高校や大学で、建築や土木を学んでもほかの業界に就職してしまうという人が多いんです。
学んだのに、もったいないですね。
あとは若者本人だけでなく親や教師も建設業界によい印象を持っていないということも影響しています。
若い外国人を雇うという動きもあるんですがことばなどの問題から限界があります。
これだけ大変でしたら、業界としても何か手を打たなければいけないんじゃないですか。
業界を挙げて改革に乗り出しています。
ほかの業種に比べてまだ低い賃金をもっと上げる。
小さな会社や独立した職人の雇用保険や健康保険、年金などの加入を強化する。
あとは週休2日の実現です。
今は違うんですか?建設現場の多くで、休みは日曜日だけのところが多いんです。
これを増やそうとしています。
また女性用の更衣室やトイレを作って、女性の働きやすい職場や現場を目指しています。
例えば今になって週休2日を目指すとかちょっと若者を集めようとするには、まだ少し、もの足りない気もしますね。
特に週休2日が当たり前の業種や会社が増えた中でこれでは足りません。
一方で現状でも雨の日は休みのようなものだと反対の声も多いんです。
しかもこうした問題には建設業の構造や体質が大きく関わっています。
最大の障害ともいえる下請けの構造を改革しなければなりません。
下請けの構造は、どんなところに問題があるんですか。
大きな工事ではゼネコンが元請けとなり1次、2次、3次、4次へというふうに下請けに出していきます。
こんなにあるんですね。
これを重層下請けというんですが一般の住宅建築などでも、専門の業者や地元の中小業者が元請けとなって下請けに出すということもよくあります。
こうした中で丸投げや中抜きという形でマージンを取りまして現場の賃金が抑えられて休みも取りにくくなってきています。
こうした構造、これまでの構造ですとか下に負担を押しつけるという体質そのものを改善しなければ若い人はどんどん減って建設業全体が衰退してしまうおそれがあります。
建設業が衰退してしまうのは困りますよね。
建設業はこれまで、日本の基盤を築いてきた要の産業です。
実はもう1つ、建設業は重要な役割を果たしてきました。
地震や土砂崩れなどの災害の現場の被害の復旧なんです。
こちらはことし2月、山梨県で降った大雪です。
除雪をしたのは主に地元の建設業者でした。
1か月で延べ2万2000人が昼夜を問わず働き復旧させました。
ただ、昔と違って若く体力のある人手と除雪に使える重機が足りずにぎりぎりの作業だったそうです。
不況で廃業したり自前の重機を手放したりしてリースに出した会社も多かったといいます。
あらゆる災害の現場に、いち早く駆けつけて復旧させる日本の建設業の対応の力というのは私は世界一だと思っています。
しかし最近は、今のように、特に地方で、若い人や重機が足りないということで災害への対応力というものに危機感を持つようになりました。
復旧や除雪は地元の建設会社がやってくれているとなると、なおさら若い力が必要ですね。
そこで若手を育てる取り組みに期待が集まっています。
こちらは富士山のふもとにある建設業界の教育訓練センターです。
全国の建設会社から入社数年の若手が泊まり込みで研修を受けにきます。
長い人で4か月技術の基礎を学びます。
こうした鉄筋コンクリートの型枠を組むのも実際の現場と同じ作業です。
教官役の多くは地元のベテランの職人さんたちです。
職人といえば、かつては、技術は教わるものではない親方や先輩の技を目で盗めなどと言う人もいましたがここでは丁寧に基礎から教えています。
一から教えてもらえるとありがたいですよね。
こちらは内装の実習です。
壁紙や床材を張る実習です。
中小企業にはこうした実習用の設備がほとんどありません。
ここでは何度もやり直しながら技術を身につけられます。
練習の場があるのは非常にいいですね。
これはクレーンを動かす実習です。
実際の現場では事故の危険もありますので何度も初心者が練習するわけにはいきません。
こうやって何度も繰り返してやっています。
教官は手順や声のかけ方を教えています。
この施設では建設業の魅力ややりがいを実感してもらおうと工業高校の生徒や教師も受け入れていまして、受講生は年々増えています。
こうして若い人たちが生き生きと働ける現場や会社が増えるといいですね。
建設業はようやく活力を取り戻して、東京オリンピックを6年後に控える今が改革をする絶好の機会です。
鉄筋工などの技能労働者は熟練するには10年かかるといわれています。
忙しいときだけ臨時で雇って景気が悪くなればまた減らせばいいという、かつての姿勢では将来はありません。
どんな仕事に就こうかと考えている若者やその相談に乗る親や教師にもアピールできるよう早くしっかりとした改革が必要だと思います。
二宮徹解説委員でした。
2014/11/25(火) 10:05〜10:15
NHK総合1・神戸
くらし☆解説「建設業は変われるか?」[字]
NHK解説委員…二宮徹,【司会】岩渕梢
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出演者
【出演】NHK解説委員…二宮徹,【司会】岩渕梢
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ニュース/報道 – 解説
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい
情報/ワイドショー – 健康・医療
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