(萌絵)《真賀田博士なぜご両親を殺害したんですか?》
前回の『すべてがFになる』
《動機は何ですか?》
(四季)《お外で遊びたかったのかしら》
(犀川)本当にその扉の向こうに真賀田四季博士はいるのかな?裁判の後15年間一度も外に出ていないみたいですよ。
その日15年間閉ざされていた真賀田四季の部屋の扉が突然開いた
そこから現れたのは…
(裕見子)四季さん…。
(弓永)真賀田博士は殺されたんだ。
博士の遺体は手足が切断されている。
そして研究所の屋上で第2の殺人が起こる
(犀川)大事なのは博士しかいないはずの部屋の中で殺人が起きたという事実だ。
あの部屋の中には真賀田博士以外の人間がいた。
それが最大の命題だよ。
ついに真賀田四季の部屋に足を踏み入れたがそこには謎のメッセージが
「すべてがFになる」
隠し扉の向こうに潜んでいたのは…
(萌絵)ロボット?
(望月)誰もいない。
(山根)何なんだ?このロボット。
あなたは誰?
(ミチル)私はミチルです。
「ミチル」って?
(ミチル)ミチルは孤独です。
孤独は7です。
(望月)「ナナ」って何だよ。
数字の7のことです。
真賀田博士が言っていました。
「7は孤独だ」って。
(弓永)どうしてそれをロボットが?人工知能です。
真賀田博士の声をサンプリングしたのでしょう。
(山根)このロボットが内側から鍵を掛けたのか。
(島田)P1を改造して造ったみたいですね。
新藤夫人ミチルとは誰ですか?ご存じですね?
(裕見子)ミチルは四季さんが大切にしてた人形です。
人形?真賀田博士が言っていました。
「お人形がご両親を殺害したんだ」って。
それがミチルですか?あなたは殺害現場にいた。
そうですね?15年前のあの惨劇はこの部屋で起こったんです。
教えていただけませんか?ここで何が起こったのか。
もともとこの部屋は真賀田夫妻のお部屋でした。
あのとき四季さんのお母さまの悲鳴が聞こえて慌てて部屋に入ったんです。
お母さまはすでに亡くなっていて四季さんのお父さま真賀田左千朗博士が刺されていました。
(左千朗)《ゆっ…許さんぞ!》《あっ…》
(四季の笑い声)
(裕見子)本当に恐ろしい光景でした。
そこにミチルが?
(裕見子)血だらけになって…。
四季さんは裁判の間もずっと「ミチルが両親を殺したんだ」と言い続けました。
何でその名前をロボットに?人形はどうしたのですか?私が捨てました!あんな…あんな恐ろしいもの…!
(弓永)奥さま!
(裕見子)私が捨てました…。
(弓永)奥さま!
(裕見子)私が…。
(弓永)奥さま。
犯人はどこへ消えてしまったんでしょう?そもそもどうやってここに入ったのか。
真賀田四季博士は自殺だったとは考えられませんか?誰が手足を切ったんだい?まさかミチルが?
(山根)駄目か…。
やっぱりデボラの通信システムはまだ?
(山根)ええ。
(島田)プログラムを改ざんした跡がないんです。
つまりデボラはどこも悪くない。
直せるわけないじゃないですか。
犀川先生が言っていたみたいに正常なソフトウエアを装ったトロイの木馬を所員の誰かが仕掛けた可能性は?
(山根)それも探ってみましたが全てのソフトに異常は見つかりませんでした。
打つ手なしです。
他に何か方法は?デボラを捨てる。
つまりOSを切り替えるしかありません。
えっ?だったらすぐに…。
駄目です。
リスクが高過ぎる。
リスク?
(島田)デボラのセキュリティーが切れれば今この建物の中にいる犯人が自由に動けるようになってしまいます。
それに研究データが危険にさらされる。
外部に流出でもしたらこの研究所の存在意義すらなくなってしまう。
他の研究員の方たちは事件のことを…。
(山根)まだ言ってません。
「絶対に部屋から出ないように」と通達だけはしました。
どうやって伝えればいいのか分かりませんよ。
真賀田未来さんには?
(島田)裕見子さんと弓永先生がお話しに行ってます。
先生どうされたんですか?んっ?犯人が地上と屋上を行き来した可能性を確かめにね。
デボラの管理が及ばないのはここだけだ。
高さ15mぐらいでしょうか?さすがに飛び降りることはできませんね。
ん〜…。
ロープを使った痕跡もないしまあ現実的ではないね。
じゃあ犯人は?研究所の内部の人間だよ。
そしてその人物はまだこの建物の中にいる。
犯人は裕見子さんではないでしょうか?ハハ。
またずいぶん思考が飛躍するね。
理由は?屋上に出るためにはエレベーターを使うしかありません。
でも所長が戻ってから遺体で発見されるまでの30分間エレベーターは地下1階に停止したままでした。
つまり犯人はヘリが到着する前から屋上に隠れていて所長を殺害した後もそのまま屋上にいたとしか考えられません。
うん。
遺体を発見したあのとき私たちは山根さんと3人で屋上に行きましたよね。
でもその場に裕見子さんもいた。
裕見子さんは屋上に隠れていてあたかも今来たかのように私たちの背後に現れたのではないでしょうか?なるほど。
ユニークな仮説だ。
検証してみよう。
(長谷部)これが屋上の出口に設置された監視カメラの映像です。
ここがヘリが到着して未来さんを迎えに行ったときです。
(望月)ここが所長の遺体が発見されたときだな。
あっ…。
僕らの1分後新藤夫人が屋上に出ている。
つまりそれまで彼女は建物の中にいたということだ。
いい線いってると思ったのに。
(望月)おいおいまさか奥さまを疑ってたのか?・
(島田)ちょっと!これ見てください!何か手掛かりがないかと思って新藤所長のメールサーバー見ていたらこれが…。
(望月)所長に取材?あしたの10時に船が来る。
(長谷部)そのとき港に行けば外と連絡がつきます。
(島田)副所長!明日10時に船が来ることが分かりました。
新藤所長が取材を受けることになってたんです。
そうか。
分かった。
(弓永)山根さんどうしました?皆さんに大事なお話があります。
(デボラ)西之園萌絵さま犀川創平さま101にお越しください。
山根副所長がお呼びです。
(山根)まだ通信システムが復旧する見通しは立っていません。
そこで最終手段をとることにしました。
最終手段?デボラを捨てて別のOSに切り替えます。
えっ?でもデボラを捨てたら「犯人が自由に動けるようになるから危険だ」って言ってましたよね?8時に切り替えるようすでに指示を出しました。
どうしたんですか?急に。
10時には船が来るんですよ?もうそんなこと言ってる場合じゃないんです。
業務に支障が出ているためもう限界だと判断しました。
じゃあすぐにでも警察に連絡を…。
実はそこで2人にお願いがあります。
警察には真賀田四季博士が殺されたことを黙っていていただけませんか?殺されたのは新藤所長だけだと。
いや何を言ってるんですか?真賀田博士の死はこの研究所の死を意味します。
認めるわけにはいかないのです。
この研究所を守るために博士の死を隠蔽しろと?これは新藤夫人や弓永先生とも議論した結果です。
いやそんなこと隠し通せるわけ…。
隠せます。
生きてることにすれば。
妹の未来さんを真賀田博士の代役に使うのですか。
でもそんなの未来さんが了承するわけ…。
同意していただきました。
この研究所は各国の政府や有力企業からの莫大な出資によって成り立ってます。
つぶすわけにはいかない。
いやそんなめちゃくちゃな…。
島田さんや望月さん長谷部君も同意しました。
所員たちは博士の死を知らない。
あとはお二人だけです。
新藤所長が生きていたらきっと同じ判断をしたはずです。
なるほど。
そういった人格のない力が真賀田四季博士を地下に閉じ込めていたのですね。
(デボラ)正面ゲートにお客さまがいらっしゃいました。
(山根)10時の船で帰るように指示してください。
博士のことはくれぐれも内密に。
(浜中)あっ!犀川先生。
西之園さんも。
何やってたんですか?心配したんですよ?
(国枝)朝帰りの先生たちを迎えに来ました。
すまなかった。
実は事件に巻き込まれてしまってここを離れるわけにはいかなかった。
何ですか?事件って。
この研究所の所長が殺された。
(浜中)えっ!?えっホントですか?国枝君10時に船が来るからみんなを連れて帰ってくれるかな?先生たちは?これから警察が来る。
僕たちは目撃者としてここを離れるわけにはいかないんだ。
後で必ず連絡するから。
分かりました。
行くよ。
いやでも…!
(国枝)いいから。
(浜中)いってえ!山根さん言われたとおり秘密は守ります。
先生!ご協力に感謝します。
行こう西之園君。
ちょっと待ってください!先生!ちょっとどういうつもりですか?この研究所の行く末を考えるのは僕らの仕事ではない。
犯人が誰か…そんなことも警察に任せればいいと思ってる。
でも西之園君僕らはあれを見たんだ。
誰もいないはずの部屋から手足が切断された遺体が出てきた。
犯人はあの部屋にどうやって入ってどうやって外に出たのか。
その答えは出さなければならない。
はい。
あっ先生これ見てください。
博士の遺体が出てきたときの映像です。
(裕見子の悲鳴)エレベーターの階数表示。
ここB1になってますよね。
でも強制再起動の後屋上に変わってます。
確かに事件の後エレベーターは屋上にあった。
(デボラ)最終連絡。
間もなく館内の全ての機能が停止します。
OSが切り替わるんですね。
あれ?8時からって言ってたのにずいぶん遅れましたね。
やっぱり強制再起動の最中に犯人はあの扉から出てエレベーターで屋上に行ったとしか思えません。
ああ。
でも犯人の姿は監視カメラの映像には残っていなかった。
(長谷部)あっOSがちゃんと切り替わってる。
(望月)通信は?
(長谷部)はい。
電話もメールもつながります。
(望月)警察に連絡。
あのすいません。
(呼び出し音)
(警察官)神奈川県警です。
妃真加島にある真賀田研究所で殺人事件が起きました。
至急捜査員を派遣してください。
私は西之園萌絵と申します。
・
(島田の悲鳴)島田さんどうしたんですか?山根さん?
(望月)ふっ副所長!副所長!副所長!副所長!副所長!
(浜中)足気を付けて。
(記者)すいません。
私デルタサイエンス出版の者ですが真賀田研究所への行き方分かりますか?あっ取材ですか?
(記者)はい。
あっいやでも何か所長さんが殺されたらしいですよ。
えっ?殺された?ホントですか?
(浜中)いや…ここだけの話なんですけどね僕もけさ研究所に…いった!早く乗って。
すいません。
いった…。
・
(ヘリのローター音)弓永先生。
(弓永)真賀田博士のことも全て話しました。
山根君も殺されたんだ。
もう隠してる場合じゃない。
何で山根さんまで…。
・
(鵜飼)いやいやいやいや…またとんでもない事件に巻き込まれてしまいましたね。
鵜飼さん…。
(鵜飼)いやちょっと犀川先生。
分かってますよ。
分かってますけどもこうも何度も現場にいるとさすがに疑っちゃいますよ。
(片桐)すぐにヘリを回しますのでお二人はもうお帰りください。
あっ先生どうしたんですか?これだ。
(島田)何で時刻に関するプログラムなんか…。
時刻?望月さん。
(望月)んっ?監視カメラのシステムはデボラと独立してるんですよね?
(望月)うん。
ではそのシステムの時計は?それはデボラが管理してます。
だから研究所内の時計は全て一致してるんです。
先生時計がどうかしたんですか?デボラの時計が1分遅れていた。
それがOSを切り替えたことで正しい時刻に戻った。
デボラの時計はずっと間違ってたってことか?いえ。
真賀田博士の遺体が出てきたとき1分遅れるように犯人によってプログラムされていたんです。
何でそんなこと…。
犯人が映ってる映像を消すためだよ。
あのとき研究所内の全ての時計の針が1分戻された。
映像データは時間の経過とともに蓄積されていく。
ところがそこで1分間時計の針が戻されるとどうなるか。
同じ時刻の映像ファイルが2つ存在することになってしまう。
だから2つのうち最初にあった映像ファイルは上書きされ消される。
犯人はその1分の間に博士の部屋から出てエレベーターで屋上に上がった。
(長谷部)だから犯人が映った映像がなかったのか。
お嬢ちゃんの言ってたとおりだってわけだ。
確かにこれで犯人が部屋から出た方法は説明できました。
でも命題はまだ半分しか証明されていません。
15年間監視され続けてきたあの部屋にどうやって入ったのか。
確かに犯人は部屋の中にいた。
《自由意思ではない》《手足を切断》《ウエディングドレス》《ミチル》《ブロック》《トロイの木馬》《デボラバージョン6》《14歳》《7は孤独》《全てがFになる》《嘘だ…。
あり得ない》《そんなことできるはずがない》《認めるしかない》
(犀川たち)《命題は証明された》先生。
どうしたんですか?犀川先生!ねえ大丈夫ですか?先生。
ああ…。
分かったんですね?教えてください。
あの部屋に入ることなんてできない。
えっ?方法はもう1つしかないんだよ。
そんな…。
嘘です。
信じられません。
もしそれが本当なら悲し過ぎます。
(鵜飼)あの…ちょっとどういうことですか?
(着信音)
(島田)真賀田博士。
(鵜飼)死んだはずじゃ…。
(着信音)
(鵜飼)会議室ってどこですか?バーチャル空間の会議室ですね。
お願いします。
真賀田四季博士…。
(四季)西之園さんまたお会いできましたね。
それも犀川先生とご一緒に。
こんな窮屈な所からは出ましょう。
こうやってお外で遊びたかったのです。
あなたは…。
あなたが用いた手法は全て分かりました。
僕が命題を証明することも計算済みだった。
さすがは犀川先生。
想像したとおりの方ね。
僕はあなたが本当のことを話してくれると信じています。
だからここに現れた。
いいでしょう。
もうゲームは終わったのですから。
3人を殺したのはあなたですね?そうです。
なぜです?そうすることを決めていたからです。
15年前から。
あなたは真賀田四季博士じゃないんですよね?あなたは真賀田四季博士のお嬢さんなんでしょ?あなたは研究所の地下で生まれた。
ずっとずっとあの部屋で生きてきた。
でもお母さんを殺して外に…。
そしてお父さんも殺した。
新藤所長のこと…。
ある意味ではあなたのおっしゃるとおりです。
西之園さん。
ある意味?確かに真賀田四季は14歳のときに身ごもった。
子供の父親は新藤清二です。
(四季)真賀田四季はそれを両親に報告しました。
一緒に喜んでくれると思ったからです。
四季は叔父さまのことが大好きでしたから。
なのに両親は彼女を罵倒し殴りました。
彼女がどれだけ驚いたか想像できますか?誰も教えてくれなかったそんなルールがあるなんて。
理不尽なのは両親の方です。
それで真賀田四季博士は両親を殺したのですか。
いいえ。
2人を殺害したのは新藤清二です。
えっ?
(四季)ナイフを取り出したのは真賀田四季でした。
その瞬間彼女は動けなくなってしまった。
新藤清二は四季の腕を取り真賀田左千朗と美千代夫妻を刺す手助けをしたのです。
真賀田四季はただ見ているだけのお人形でした。
《ゆっ…許さんぞ!》《あっ…》
(四季の悲鳴)
(四季の笑い声)
(四季)《全て私がやって叔父さまは止めたのです》《分かりましたか?》
(新藤)《四季》
(新藤)《僕を殺してくれ》《私の産むこの子が大きくなれば私と叔父さまをきっと殺すでしょう》《お約束します》《いつか必ず…》
(四季)真賀田四季はあの部屋で娘を産みました。
医師であった新藤清二の手を借りて。
それがあなたですね。
あなたは今14歳。
真賀田四季博士がご両親を殺したときと同じ年。
真賀田四季はその娘に14歳になったら自分と同じように両親を殺すのだと教えこみました。
そのときが来たら母親を殺し部屋の外に出て父親の新藤清二も殺す。
真賀田四季は娘に何度も何度もそう教えこんだの。
どうしてそんな…。
自由のためですか?それが最も美しいプログラムだから。
真賀田四季博士はデボラのバージョン4に時限装置を仕掛けそのときが来たらシステムの暴走が始まるよう最初から設計していた。
そう。
真賀田四季自身がトロイの木馬だったのです。
でもなぜ山根さんまで?彼は優秀なエンジニアでした。
デボラの時計が1分遅れていることに気付いてしまったの。
それが少し早かったのでしかたがなかった。
そんな簡単な…。
西之園さんあなたも一緒です。
えっ?人の死に対する感情が欠落している。
だからあなたはどんな陰惨な事件でも恐れずに追求してしまう。
私は…。
感情をやみくもに遮断しているのね。
両親の死という破滅的な記憶を封印するために。
博士直接会って話をしましょう。
そろそろ時間です。
先生に会えてよかった。
いつかまたあなたの所に行きます。
先生。
犯人の所へ行きます。
えっ?犀川です。
開けてください。
ゲストルーム?真賀田未来が犯人だというんですか?未来さんは偽者です。
この中にいるのは…。
(着信音)どういうこと?
(浜中)足大丈夫か?
(学生)大丈夫。
(浜中)じゃあ行けるか。
(国枝)はい。
犀川です。
今どこ?藤浦港です。
君たち以外に同じ船に誰か乗ってた?
(国枝)はい。
研究所の方が1人。
その人は美人だったろう?はい。
犀川先生の論文を読んだことがあると言っていました。
分かった。
先生…。
(鵜飼)先生真賀田未来はどこに…。
もう島にはいません。
藤浦港で姿を消しました。
えっ?警察が研究所に来る前に船で脱出していたんです。
緊急配備だ。
急げ!
(警察官たち)はい!ハハハ…。
天才だ。
まさに天才だ。
かなうはずがない。
最初から勝負になってない。
先生未来さんは変装した真賀田四季博士のお嬢さんだったんですよね?いいや。
彼女こそが真賀田四季博士なんだよ。
犀川先生の言ったとおり本物の真賀田未来はアメリカにいました。
(片桐)本人と話しましたので間違いありません。
先生逃げた女は誰なんですか?真賀田四季博士です。
えっ?いやでも彼女は殺されたはずでは…。
あの手足を切断された遺体は真賀田四季博士と新藤所長の間に生まれたお嬢さんです。
娘?ええ。
えっじゃあ真賀田博士は自分のお嬢さんを…。
(鵜飼)ちょちょっ…ちょっと待ってください。
あのさっぱり意味が分からない。
真賀田四季に娘がいたなんて記録はありませんよ。
(鵜飼)あの犀川先生われわれにも分かるようにこう丁寧に説明してもらえませんか?先生。
事件は手足が切断された遺体が出てきたことから始まりました。
つまりあの部屋の中には遺体以外の人間がもう1人いた。
それが今回の最大の命題です。
(片桐)しかしあの部屋には真賀田四季以外誰も入っていないはずですよね?15年前1人の少女が部屋に閉じ込められた。
それ以来誰も中に入っていない。
荷物は厳重にチェックされ抜け道もない。
しかし最終的に死体の切断が行われている以上部屋の中に2人の人間が存在しなくてはならない。
(鵜飼)まあそうなりますよね。
これらの条件から科学的に再現可能な答えは1つしかありません。
すなわち真賀田四季博士は部屋の中で子供を産んだ。
そう結論せざるを得ないのです。
(鵜飼)いや…ちょっちょっと待ってください。
そんなバカげた話…。
わずかですが痕跡は残っていました。
ミチルというロボットがいましたね。
ドアの開け閉めができるあのロボットは何のために造られたのでしょう?おそらく子供が母親に抵抗し部屋の鍵をしめたときのため博士は子供が眠ってからロボットに鍵を開けさせたのです。
その他にも子供の存在を感じさせるものが幾つかあった。
(鵜飼)でも何で真賀田四季は娘を殺したんですか?当初は真賀田四季博士がお嬢さんに殺されるはずでした。
なのにどうして?お嬢さんは天才ではなかったからだよ。
彼女は母の思想を理解できなかった。
じゃあ真賀田博士はお嬢さんを殺して自分が外に出たっていうんですか?ああ。
そして遺体の腕を切断した本当の理由は自分以外の指紋を持った手を隠すためだった。
何て恐ろしい女だ。
今回の計画は真賀田博士がデボラを開発した段階から決まっていました。
そのときが来たら黄色い扉が開かなくなるようプログラムしていたんです。
そして照明を消しノイズ音を流してから黄色い扉を開けた。
遺体をP1に載せ通路まで走らせたのは前室にいた人間たちを引き付けて廊下に出すため。
(山根)《エマージェンシーリセット!》そして強制再起動の後時計の針を1分戻し監視カメラの映像を消した。
その隙に博士はエレベーターに乗り屋上に出る。
ヘリが戻ってくると博士は後部座席に乗り込み新藤所長を刺し無線機を破壊した。
じゃあ私たちが行ったときに新藤所長は刺されていたんですか?
(片桐)しかし助けを求めてこなかったんですよね?所長は自分の娘が地下にいることを知っていました。
ずっと真賀田博士にコントロールされていた。
いつかはこんなことになると覚悟していたはずです。
(鵜飼)山根副所長を殺害したのも真賀田四季ですか?ええ。
未来さんに成り済ました真賀田博士は翌日10時の船で島を脱出するつもりでした。
そのために新藤所長に取材の約束をさせておいたのです。
ところが山根さんがデボラの時計が1分遅れるようにプログラムされていた可能性に気付いてしまった。
だから彼はデボラを捨てることを決断した。
時間が本当にずれているのか確かめるために。
しかし真賀田博士に気付かれ殺害されてしまった。
そのとき博士は山根さんに成り済ましOSを切り替える時間を遅らせるよう指示を出したはずです。
だからシャットダウンの時間が遅れたんですね。
船の到着より先に警察を呼ばれるのを阻止するためだよ。
そしてデボラがシャットダウンされ館内の機能が停止したあのとき真賀田四季博士はついに研究所の外に出た。
彼女は孤島の監獄からの脱出に成功したのです。
15年ぶりに太陽の光を浴び海の香りを吸い込んだとき彼女は何を思ったんだろう。
(鵜飼)いやでも犀川先生さすがに娘がいたっていうのは…。
・
(捷輔)もういいだろ鵜飼。
(捷輔)あとはわれわれの仕事だ。
(鵜飼)ご苦労さまです西之園本部長。
叔父さま。
心配したぞ萌絵。
無事でよかった。
大丈夫です。
先生がずっと一緒にいてくれましたから。
犀川先生また萌絵がご迷惑を掛けてしまったようですね。
いえ。
真賀田四季博士に会いたいと言ったのは僕の方なんです。
あっそんなことより司法解剖の結果教えてください。
本当にあの遺体は真賀田四季博士ではなく…。
(捷輔)いいかげんにしなさい。
素人の探偵ごっこは終わりだ。
上でヘリが待ってる。
行きなさい。
はい。
(鵜飼)さあ。
さあさあ。
さあ。
先生真賀田四季のことを聞かせてもらえませんか?僕は素人ですよ?ですがあなた誰よりも真賀田四季を理解している。
・
(四季)こんにちは犀川先生。
真賀田四季博士…。
またお会いするってお約束したでしょう?
(四季)何もおっしゃらないの?ちゅうちょしています。
あまりに根拠のない仮説をあなたに確かめるかどうかを。
(四季)時間は限られています。
検証するならお早めに。
あなたの当初の計画はご自身がお嬢さんに殺されることだったはず。
なぜそれを変更したのですか?
(四季)デボラと一緒です。
プログラムを書き換えシステムのバージョンアップを図った。
ただそれだけのことです。
それはつまり前のシステムに不具合が生じた。
不具合?ええ。
思わぬエラーが起きた。
過酷な計画に耐えられなくなったお嬢さんは自殺したのではありませんか?いいえ。
私が殺したのです。
確かにこの仮説を検証する方法はありません。
でも最後に彼女にドレスを着せ化粧を施したのはそれがお嬢さんへの最後のはなむけだったと僕は信じています。
そもそも生きていることの方が異常なのです。
だって神のつくったプログラムのエラーそれが人間でしょ?真賀田博士あなたは泣きましたか?いいえ。
私の精神がそんな矛盾を許すと思われますの?残念です。
僕はあなたの才能には感動を覚えますがあなたという人間は理解できない。
そうかしら?あなたは幾つもの自分を持っている。
あなたの構造は私によく似ています。
それに西之園萌絵さん。
彼女はとても興味深い存在です。
これから自首するのですか?その必要はありません。
なら僕が警察に連絡します。
それも無用です。
私はこの後あなたを尾行している警察の方に捕まるはずです。
僕は尾行されていたのですか?ええ。
それを分かっていてあなたは…。
最後に先生にキスでもしていただこうかと思っていましたのよ。
でもあなたはそんなことはしない。
ええしません。
西之園さんにはされるの?博士余計なお世話です。
えっ?犀川先生気付いてたんですか?警察から尾行されてること。
まあ正確に言うとさっきだけどね。
でもけさ名古屋で真賀田博士がコンピューターにアクセスしていたことが分かったんです。
それで今日は刑事さんたち全員名古屋に行っちゃってるみたいですね。
んっ?じゃあ僕の尾行は?えっ今日はいないです。
だから先生と会っていいって叔父さまが。
ハハ!ハハハハ…。
えっ?どうしたんですか?人は完全なる敗北を味わうと笑ってしまうらしい。
ハハハハ…。
何ですかそれ。
あっそうだ先生。
問題解けちゃいました。
えっ?「全てがFになる」の意味です。
ああそれね。
ハハ。
「F」はフィフティーン…15のことですね。
うん。
コンピューターでは16進法を使うから10から15の数をAから…BCDE…Fで表します。
この場合10進法のときの9と同じでFは16進法で一番大きな数となる。
デボラのタイムカウンターはシステム開始から4桁の最大値FFFF時間後10進法でいえば6万5,535時間後に時限装置が作動するようになっていた。
つまり全てがFになったときあの計画が実行されたのですね。
うん。
デボラのバージョン6が完成しているのに使われなかったのはその時限装置を残しておくためだったんだよ。
あっでも先生もう1つ「F」があるんです。
んっ?たぶんあの日お嬢さんは誕生日だったんじゃないでしょうか?真賀田博士はお嬢さんに自由をプレゼントしようとした。
フリーの「F」それも含めて「全てがFになる」だったんですねきっと。
なるほど。
検証するのは不可能だが僕もその仮説を支持しよう。
ヘヘ。
抽選当てちゃいますか?2014/11/25(火) 21:00〜21:54
関西テレビ1
すべてがFになる #06[字]【美しき狂気の殺人者】
残された暗号の謎…仕組まれた時限装置!?襲い掛かる新たな悲劇!絶海の孤島の研究所を舞台にした美しき狂気の殺人者の罠は? 武井咲 綾野剛 早見あかり
詳細情報
番組内容
西之園萌絵(武井咲)と犀川創平(綾野剛)は、真賀田四季(早見あかり)を殺害した犯人がコンピュータシステムで厳重に監視されている研究所の中にどうやって侵入しどこへ消えたのか、手がかりをつかめずにいた。
そんな折、主任プログラマーの島田文子(山田真歩)が、翌朝10時に記者が所長の新藤清二(冨家規政)を訪ねて来る約束になっていることを突き止める。記者は船で来るためその時間に港に行けば外部と連絡を取る
番組内容2
ことができる。しかし、副所長の山根幸宏(利重剛)は明日を待たずにコンピュータのオペレーションを別のシステムに切り替え通信を復旧させることを決めた。そうすればすぐに警察にも通報できるが、山根は萌絵と犀川に四季が殺害されたことは黙っていてほしいと頼む。四季の死は研究所の死を意味するから、四季の妹の未来(早見あかり)を代役に仕立てることで研究所を維持するつもりだと言う。
その後、監視室のモニターで監視
番組内容3
カメラの映像を見ていた萌絵があることに気づく。四季の遺体が台車ロボットに乗って現われた時、エレベーターの階数表示は萌絵らがいた地下の「B1」になっていたが、その直後、システムの強制再起動が行われた時の映像では屋上を示す「R」になっていた。それはつまり、あの場にいた全員がパニックに陥るなか、誰かが四季の部屋を出て屋上へと向かった可能性を示していた。しかし映像には誰も映っていない。そのことに萌絵は…。
出演者
武井咲
綾野剛
小澤征悦
早見あかり
戸次重幸
水沢エレナ
/
吉田鋼太郎
ほか
スタッフ
【原作】
森博嗣「すべてがFになる」他S&Mシリーズ作品(講談社文庫)
【脚本】
黒岩勉
小山正太
【音楽】
川井憲次
【主題歌】
ゲスの極み乙女。「デジタルモグラ」(ワーナーミュージック・ジャパン/unBORDE)
【編成企画】
成河広明
加藤達也
【プロデュース】
小椋久雄
貸川聡子
【演出】
城宝秀則
小椋久雄
小林義則
【制作】
フジテレビ
スタッフ2
【制作著作】
共同テレビ
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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