木曜時代劇 ぼんくら(9)「土の中で眠る女」 2014.12.11


鉄瓶長屋での一連の出来事を陰で操る湊屋総右衛門の女房おふじが一時信心に凝っていた事を探り出した平四郎。
盗みのとがで裁きを待つふぶきという巫女の話を聞き出すべく牢屋敷に目を光らせている岡っ引きの仁平の目をかすめて烏の官九郎を使っての連絡方法を思いついた。
だがちょうどそのころ太助殺しの正次郎が死体となって発見されたのである
(烏の鳴き声)
(平四郎)ああ〜!
(鳴き声)ん…うう〜。
(志乃)朝のすがすがしい時節となりましたこと。
もう秋でございますね。
うう〜つら…。
ご酒が過ぎたようでございますね。
もともとお強くないのですから。
何かあったのでございますか?驚いたぜ弓之助には。
えっ?土左衛門が揚がってな。
殺されたのは正次郎というんだが水につかったせいもあるんだろうが冬瓜のようにいびつに膨れて目鼻立ちさえはっきりしないありさまでな。
あげくに爪が剥がされてたり。
つまりはさんざんなぶられたあとに生きて簀巻きにされたらしい。
うへぇ〜…。
するとだ弓之助のやつがどうもその正次郎の口の中が気になると言いだした。
口の中でございますか?溺れて死ぬと汚れた川の水をさんざん飲むから口の中が汚れるのは当たり前なんだがそうじゃなくて血の汚れじゃねえかとな。
(弓之助)叔父上うどん粉ありますか?うん?うどん粉?弓之助は死体の口の中にうどん粉を突っ込んでこうやってこうやって歯型を取ったんだ。
歯型。
うへぇ〜…。
叔父上叔母上おはようございます。
弓之助。
今旦那様があなたの事を褒めておいででした。
あなたも旦那様のお役に立てているようで私もうれしく思います。
何のお話でしょうか?え?ああ歯型の事だ。
ああこれですか?いや〜お役に立てるかどうか分かりませんが。
う〜いいいい…。
二日酔いですか?ああ。
あのあと政五郎と飲んでこれからの事をいろいろとな。
随分昔に済んじまった事と新しい死人が出るのとでは訳が違う。
今度の一件はそろそろ幕引きといきたいところだからな。
正次郎さんはさんざん痛めつけられていました。
相手は拷問してでも吐かせたい事があったと思われます。
(烏の鳴き声)ああ旦那。
旦那旦那旦那。
(3人)ああ〜!巫女がいる牢屋敷からの返事ですね。
ご苦労だったな伝書烏の官九郎。
ごちそうさん。
・ありがとうございました!お〜旦那お待たせしました。
このままず〜っと待ちぼうけの方が楽なんだがな。
えっ?どうやら17年の間鉄瓶長屋の地べたの下でぐっすり眠ってる女を掘り起こさなきゃならねえらしい。
やはりそういう事でしたか。
牢屋敷からの返事です。
「くさればばあ」だとよ。
例のふぶきがおふじを「くさればばあ」と言ったそうだ。
(ふぶき)あのくさればばあ!あの女の事を思い出すと腹が立つ。
あれは2年と半年ほど前の事。
私が日本橋の大店で迷える霊を鎮めたうわさを聞きつけて湊屋に呼びつけたあの女は初めて会った時こう言いおった。
「この家について仇をなしている悪い女の霊を祓ってほしい」とな。
だがそんな気配はどこにもなかった。
おかみさんその女とはどういう…。
(おふじ)そんな事はどうでもいい。
お前はこの家に取りついてる霊を祓い清めればそれでいいんだ。
しかし迷える御霊に呼びかけるにはいろいろと段取りというものが…。
ぐずぐず言うのなら帰るといい!できないならできないと言わないか。
できるのか?できないのか!?あのくさればばあ最初のうちは話にも何もなりゃせん。
だがこちらも商売。
いろいろと尋ねるうちに悪い女というのはあるじ総右衛門の隠し女であるらしい事。
その女が不幸な死に方をしたらしい事が分かった。
だがお店に何か事が起こる訳でもなく仇なすとまで言われる訳が分からない。
しかしある時その謎が解けた。
(唱える声)
(障子が開く音)何をしている?巫女さんがいるって聞いたから。
何で?何でお前がここに顔を出す?私に近寄るんじゃないと何度言ったら分かるんだ!出てけ。
出てけ!おっ母さん?お前なぞ娘じゃない!おっ母さん!出てけ!お前たちも早く出ていけ!出ていけ〜!あの女が悪い。
死んだくせに娘について娘の体を乗っ取って私に災いを振りかけようとしてるんだ。
恐ろしい…恐ろしい。
みすずの顔が年々歳々あの女そっくりになってくのが恐ろしい!落ち着きなされ。
…であの女とは一体誰の事かな?名は何という?それは…。
お前のような女の言う事などもう聞かぬ!汚らわしい。
二度とこの家に踏み込むな!金ならいくらでもやるから出てけ!出ていけ〜!あのくさればばあ。
あいつがきっと湊屋と懇ろになったその女を殺めているんだ。
だから仕返しを怖がっているんだ。
だからその女に顔が似てきた実の娘を化け物みたいに扱ってるんだ。
あのくさればばあ!20年前湊屋総右衛門のもとを姪の葵が佐吉を連れて現れた。
母子はすぐ総右衛門のお気に入りとなった。
総右衛門は姪を愛し姪の一人息子を愛した。
まるで湊屋の跡取りのようにな。
だが総右衛門にとって葵は姪とはいえ美形でそれにふさわしい色香を漂わせた一人前の女として見えたんでござんすね。
葵にとってもそうだろう。
最初は親戚の叔父だと思って頼りにしていったはずだ。
だがそこから先は「魚心あれば水心」。
葵にはおふじが邪魔だった。
おふじには葵が目障りだった。
女同士のいさかいがどうだったのか。
ただ言えるのはお店の者の大半が「葵さんはお内儀さんにいびり出された」。
…とうわさしていたって事だ。
おふじはお嬢様育ちだからな。
お店の者の前で葵をなじったり手を上げたり。
あからさまに総右衛門の機嫌を損ねるようなまねをしたんだろうよ。
ひっくり返してみりゃあ葵は少なくとも人目に立つ場所では常に受け身でいたって事だ。
総右衛門に好かれている事を承知でおふじには逆らわなかった。
となると陰じゃ話は…全く違ってたって事でござんすか?よくは知らねえが女ってのはそういう事にたけている生き物なんだろう。
目くばせ一つで「私はあんたが嫌いだ。
旦那様はあんたより私の方を愛しく思っている」とちゃ〜んと伝えるものだ。
(政五郎)旦那はどっちかってえとおふじを気の毒がっておられるようでござんすね。
う〜んどうかねえ?命を絶たれた葵も不憫だし佐吉だって哀れだ。
けどおふじもよ。
だとしても17年前おふじは葵を手にかけた。
提灯屋の中でな。
提灯屋?ああ鉄瓶長屋が建つ前にあの場所にあったお店ですね。
そうだ。
先に話した黒豆がな調べ上げてきたんだがその提灯屋の正体はおふじの母方のいとこで藤太郎というんだそうだ。
いとこ同士の間柄ながら周りはおふじと藤太郎の2人をゆくゆくは添わせようかというほど昔から仲が良かったらしい。
なるほど。
10年前にその藤太郎の目が悪くなり仕事が傾いてからは女房と共におふじの実家の料理屋に住み込み今は親戚扱いながらも奉公人のような暮らしをしているんだそうだ。
親戚で幼なじみとなりゃおふじは当てにはできたって訳だ。
そういう事でござんすか。
そこでだな。
おいお前たちちょいと向こう行ってろ。
あ…はい。
そこでだ。
葵の事がどうしても我慢できなくなったおふじは直談判する場所におふじの味方であるその提灯屋を選んだ。
…でそこで話がこじれた。
うあ〜!
(葵)キャ〜!やってしまってから我に返ったおふじは藤太郎に相談したんでござんしょうね。
死骸ってのは存外重い。
戸板で運ぶか荷車で運ぶか。
どちらにしても木戸番の目をごまかすのは容易じゃねえ。
提灯屋もおふじも素っ堅気だ。
後始末ににっちもさっちもいかずとうとう…。
家の中のどこかの畳を上げて床下の地べたを掘って埋めちまった。
提灯屋にすりゃ迷惑な話でござんすね。
おふじは言ったはずだ。
「ここでかばってくれれば後で悪いようにはしねえ」とな。
とどのつまり後ろ盾が湊屋だからな。
提灯屋も損得勘定が働いたって不思議じゃねえ。
湊屋では騒ぎになったでござんしょう。
葵が帰ってこないと。
総右衛門はどうしたんだと思う?その事を告げられたかどうか。
(政五郎)葵が埋められている提灯屋の地所は総右衛門にとって息の根を止めかねない場所でござんす。
知っていたら手ずから長屋なんぞは建てねえってか?葵の埋まってる場所だけを上手に手付かずにして何か別のものを建てるとかいろいろとやりようがあったはずでござんす。
つまりは総右衛門は何も知らなかった。
おふじの立ち回りがよほどうまかったんだろうな。
叔父上佐吉さんが言ってました。
俺のおふくろは湊屋を飛び出す時にお店の金を盗んでます。
しかも湊屋の旦那が将来を見込んでいた若い手代と手に手を取って駆け落ちしたんです。
折よく金を持って飛び出した手代がいた事も幸いしておふじの細工がうまくはまった。
総右衛門も多少は怪しんだかもしれねえがそのまま受け入れた。
7年後目を悪くした提灯屋はおふじに泣きを入れて地所を買い取ってもらった。
何にも知らない総右衛門はそこに長屋を建てた。
長屋の普請は土台からひっくり返す訳じゃねえ。
普請のついでに骨が見つかる事なく鉄瓶長屋の中でそのまま秘密は暴かれず眠り続けた。
だがおふじの中で綻びが出てきた。
みすずだ。
おっ母さん?お前なぞ娘ではない。
出ていけ!
(政五郎)葵をその手で殺めたおふじの目にはたたりと映った。
そこでようやく総右衛門は事実を知ったのかそれ以前におふじから聞かされていたのかどうかそれはさておき総右衛門は秘密を守り通すために何らかの手を打たなきゃならなくなった。
仁平にも気付かれず誰にも悟られずそいつが総右衛門にとって肝心要な事になったんでござんしょうね。
面倒くせえだろうになあ。
えっ?えっ?
(笑い声)
(せきばらい)とにもかくにもそういうあれこれがあって総右衛門は店子を追い出すはめに陥った。
…で一連のおかしな出来事になった。
1年半前総右衛門は頭をひねって久兵衛が正次郎に逆恨みをされて襲われるという筋書きをでっちあげた。
ところが八百富の太助の働きで正次郎はし損じた。
太助はこの時の久兵衛の様子がおかしい事に気付いた。
久兵衛もまた太助の様子に気付かれた事を悟った。
久兵衛は総右衛門に相談した。
そこで思い切って八百富の連中には打ち明けたんじゃねえか?
(久兵衛)実はねよんどころのない事情があって店子たちを追い出したいんだよ。
金を積んでの話し合いだ。
だが俺が知ってる富平なら受け取らねえ。
ほかならぬ差配さんの頼みだ。
秘密は守るとな。
しかし…。
これっぽっちで黙ってろっていうんですかい?叔父上。
太助さんは金を受け取りたがった。
富平は寝たきりだ。
八百富の中は太助の言う事が幅を利かせるようになっていた。
(荒い息遣い)おでこ!ちょいと休め。
へい。
旦那。
この春の久兵衛が消える引き金になった太助殺しには2つのねらいがあったんでござんしょうね。
(政五郎)一つは佐吉という不慣れな若者を送り込み店子が減ってもおかしくないようにお膳立てをする事。
いまひとつはゆくゆくやっかいのもとになりそうな八百富の太助を始末してしまう事。
お露は事情を知っていて片棒を担いだんだろうな。
太助が寝たきりの富平を疎んじた事は実際にあったんでしょう。
お露にしてみりゃ親父の命を取るか金に目がくらんだ兄貴を取るのか。
分かれ目だったのかもしれませんね。
しかも久兵衛に説得されて。
分かったね。
(戸をたたく音)・
(お徳)ごめんください。
差配さん?久兵衛さん!久兵衛さん!?お徳さんかい。
(お露)殺し屋が来て兄さんを殺していったんです。
あの〜太助さんを殺したのは誰なんでしょう?んな事はいつか分かる。
だがお徳はまだだまされてる。
それはさておき先にも言ったが鉄瓶長屋の地べたの下でぐっすり眠ってる葵を掘り起こさなきゃならねえ。
葵さんが眠っているのは鉄瓶長屋のどの辺りなのか叔父上には当てがおありなんでしょうか?ねえよ。
まるっきり。
坊ちゃんはおありなんで?はい!佐々木先生の所にあった切り絵図に…。
いやいやいやあ〜あのな弓之助の知り合いに測る事が大好きな先生がいてなまあ遊び事だから大目に見てる。
まあまあようござんす。
それでその先生の切り絵図が何か?今から15年前に作られた提灯屋のあった土地一帯の切り絵図に提灯屋の建物についての添え書きがあったのです。
それによると提灯屋には離れがあったのです。
その離れは6畳間と4畳半をつなげたような広さで今の鉄瓶長屋ではちょうど八百富さんの家のある場所になります。
坊ちゃんその切り絵図借り出す事ができますかい?政五郎さんがお上の御用で入り用なのだとおっしゃってくれれば先生も承知して下さるかもしれません。
分かりました。
旦那掘り返す準備はあっしの方でやります。
任しておくんなせい。
ああ…。
叔父上?掘る時にな長屋に残ってる連中には知られたくねえと思ってな。
特にお徳さんには…ですね。
いやこう地べたを掘ると…。
はあ〜…ああっ…。
何やってんだ?行ってこいほらもう。
おでこ。
(おでこ)ああよかった。
ああたいも…。
えっ?厠は?厠はこちらでござんす。
何だよおい。
(笑い声)俺はよ政五郎。
へい。
お徳だけじゃねえ弓之助にもそんなものは見せたくねえぜ。
ですがこれからはのんびりしちゃいられません。
正次郎と同じように今度の一件の切れっ端を知ってる人間がまたぞろ川に放り込まれるかもしれませんから。
ああそうだな。
鉄瓶長屋から目が離せねえな。
だがそれからしばらくの間秋雨が続いた
その間に次々と店子たちが長屋を後にした
みんな出てくね。
どうすんだい?お徳さん。
何してんだよ?何か変だよ。
えっ?お徳さん何か変になっちゃったよ私。
おくめさん!ちょっ…。
佐吉さん!佐吉さ〜ん!
(佐吉)お徳さんどうしたんです…おくめさん!ねっ幸庵先生早く早く。
はい!お前が鉄瓶長屋の絵図を作っていたとはな。
(弓之助)そのうち入り用になるかと思いまして。
どうやら八百富で当たりのようですね。
そうか。
旦那。
政五郎親分は悪い知らせを持ってきたのですか?おくめの病がよくないらしい。
えっ?ちょいと長屋に行ってくる。
ああでは私も。
いや俺一人でいい。
お徳に話さなきゃならねえしな。
お見回りですか?ならお供します。
ああお前は別を回ってくれ。
そんな事おっしゃってまた岡っ引きの所なんじゃねえでしょうねえ?ああもうじゃあ途中まで一緒に行こう。
途中?へ〜い。
これも下さい。
(友兵衛)へいどうも毎度ありがとうございます。
ありがとう!旦那!また腰でも痛めなすったんですかい?お見回りとんとご無沙汰だったじゃありませんか?いやいや雨だったからよ。
面倒な事は先送りしたかったんだ。
ええ?どうも俺は役人向きじゃねえっつう話よ。
ヘッ。
ええ〜?ハハハハッ。
旦那。
よう。
寂しくなっちまったな長屋も。
湊屋の旦那には久兵衛さんがあんな形で出ていっちまったあとなのだから誰がやったって駄目だったろうと慰めて頂きましたけど。
うん俺もそう思う。
お前はよくやった。
この長屋も壊すおつもりのようです。
じゃあお前は元どおり植木職に戻るか。
その前にお徳さんたちの落ち着き先を探さなきゃいけません。
俺の事はどうとでもなりますから。
どうぞ旦那。
ありがとよ。
長坊お前に茶を入れてもらえるとはな。
お前この後長坊どうする?育て続ける気か?はい。
いけませんか?長坊お徳さん所に行ってな「今日はお手伝いする事はありませんか?」と聞いてくるんだ。
あ〜い。
おくめさんが寝込んじまって。
実はな佐吉。
今日邪魔したのはそのおくめの事なんだが。
ちょいと始末に負えない病だ。
お徳さんの心配が当たっちまいましたね。
お徳のやつお前にも打ち明けてたのか?倒れるちょっと前に。
そうか…お徳がな。
でなそっちの病に詳しい医者が千駄ヶ谷にいるんだが…。
俺でお役に立てるなら千駄ヶ谷でもどこでも行きますよ。
かなり吹っかけられるかもしれねえんだが…。
俺は貧乏ですが長屋には金があります。
この半年蓄えた金はびた一文使っちゃいませんから。
お前は堅いなあ。
あんまり堅いと嫁の来手がいなくなるぜ。
ハッハッハッハッ。
旦那ご機嫌ですね今日は。
ご機嫌にならなきゃやってられねえってな。
ハッハッハッハッ。
えっ?湊屋総右衛門ってのはどんな男だ?どんなって…。
立派な商人です。
だが女好きだ。
まっいいか。
どれお徳のとこにでも行くか。
・おくめさんのあせもだけど昨日今日始まった事じゃないらしいんだよ旦那。
だから怒ったんだよ。
どうしてもっと早く白状しなかったんだ!私んとこは食い物屋だからね。
そしたらあの人ったら自分でも気にしてなかった。
気付いてなかったって困ったような顔してさ。
「ごめんなさい」なんてったくはた迷惑な話だよ。
体売っていいものばっかり食べてふらふら生きてきたから罰が当たったんだよ。
自業自得なんだ。
だからあんな事になっちまう!ああっ…!旦那〜。
私の何がいけないんだろうねえ…!私と一緒に暮らすとみんな病にかかってつらい思いして死ぬんだよ。
亭主の時だって舅や姑だってそうだったよ!みんな身動きできないで寝てんのにさ私は元気でおまんま食べるんだよ風邪一つひかないんだ。
今度だってそうさ。
おくめさんが訳の分かんないうわごと言ってんのにさ私は芋の皮むいてる…。
ああ〜!おかしいだろう〜!ねえ旦那おかしいだろう〜!
(お徳の泣き声)おい。
千駄ヶ谷にいい先生がいるんだ。
佐吉と一緒におくめを連れて行ってこい。
佐吉が万端やる事になってる。
何日泊まったっていい。
留守の間は俺が仕切るからよ。
旦那が差配するってのかい?やめときなよ。
佐吉さんの半分も務まりゃしないよ。
違えねえ。
だから深川の大親分茂七の一の手下岡っ引きの政五郎に頼んであるんだ。
へえ〜旦那が岡っ引きとつきあう事もあるんだねえ。
お前だっておくめみてえな女とつきあう事があるじゃねえか。
ああ本当だね。
お互いさまだね。
(笑い声)
(殴る音)ああ〜!
(ふぶき)ああ…。
殺すぞこらきりきり白状しやがれ!
その翌日。
佐吉とお徳はおくめを連れて早速千駄ヶ谷の医者のもとに向かう事となった
おお官九郎。
おとなしくしてるんだぞ。
(鳴き声)長助。
官九郎を頼んだぞ。
にいさん早く帰ってきてね。
おう。
親分ご面倒だとは思いますがよろしくお頼み致します。
いやうちにはこいつがいますから。
任せておくんなせい。
任せておくんなせい。
はい。
おくめ。
ああ旦那。
ちゃんと治して戻ってくるんだぞ。
いいな?はい。
佐吉さん。
はい。
ぐずぐずしてると日が暮れちまうよ。

こうして鉄瓶長屋に店子は一人としていなくなったのである
ああ旦那。
よう頼むわ。
(2人)へい。
(弓之助)叔父上!叔父上!お前…。
叔父上やはりこちらでしたか。
この方は牢屋医師の相馬登先生です。
ああ若先生か。
(相馬)初めてお目にかかります。
叔父上牢屋敷において巫女のふぶきが袋だたきにされて大けがを負ったそうなのです。
えっ?
(相馬)明け方水桶に沈められてるのが発見されました。
(相馬)あと少し発見が遅かったら危なかった。
旦那急ぎましょう。
ふぶきを痛めつけた者が何をどこまでつかんだか分かりませんが早くかかるにこした事はありません。
始めるか。
へい。
弓之助あのな…。
叔父上このような事を私が見てはいけないとお考えなのは承知しています。
それでも私はもう見てしまったも同様なのです。
私にもお手伝いさせて下さい。

平四郎たちは掘り続けた。
土間から始めて畳を上げた床の下を一寸刻みで掘り広げた
だが…
どういう事だ?ええ…。
ここじゃないって事なんですかねえ?そんなはずありません。
ここしかないのです!いやだがもうこれだけ掘っても掘っても掘っても何も出てこねえんじゃあよ…。
提灯屋さんはもっと深く掘ったのかもしれません!湊屋がここを建てた時に葵の骨も掘り出して…。
それならどうして今になって店子を追い出しにかかるのですか!?筋が通りません!葵さんはここにいるのです!必ずここにいるのです!分かった分かった分かった。
そうムキになるな。
はい食べるか?これは…。
顎の骨。
いやご苦労さんでござんすねご一党さん。
見つからねえんじゃねえかと気をもみましたよ。
おや?若先生奇遇だねえ。
若先生は井筒の旦那とお知り合いなんで?…でそいつは何ですか?骨ですかい?いやいやひょっとするとその骨は湊屋総右衛門の姪17年前に行き方知れずになったきりの葵とかいう女の骨だよねえ?いや井筒の旦那お楽しみはこれからだ。
総右衛門とおふじの悪行が暴かれるんだ。
何から何まですっかりね。
いやしかし…。
黙ってろ若先生。
井筒の旦那は先刻ご承知だ。
ねえ旦那。
お前はどこまで知ってんだ?旦那と同じぐらいよ〜く知ってますよ。
ですが…。
黙ってろってのが分かんねえのか!若先生。
しかし!何だい?これは人の骨じゃない!何だだ…。
ご覧なさいこれは確かに下顎の骨だがここに牙がある。
牙!?先が折れているが確かに牙です。
牙…。
犬の骨ですよ。
え…?確かな事は言えませんが20年は昔のものです。
犬の骨かよ。
こいつは恐れ入ったぜ。
(笑い声)ごまかすなこら!人をなめんのも大概にしろよこら!この野郎!あ…。
(仁平)犬の骨?これは人の骨だろう!よせよせ仁平。
その人は医師だ。
人間の骨と犬の骨を間違える訳ねえだろう。
何?何だよ?何ですかこれ!何の傷痕ですか〜!仁平よい。
手ひどい拷問を受けて殺された土左衛門が先に一ツ目橋の所に揚がってな。
そいつが痛めつけた下手人をかみついたんじゃねえかってな歯型を取ってあるんだよ。
これです。
お前のその傷とちょいと比べさせてくれねえか?どうだい?仁平!この野郎〜!ハハハハッ離すなよ!これで総右衛門も終わりだぜ!
(かじる音)イテテテテ…。
おい!うりゃ〜!弓之助大丈夫か?雑魚!離せおら〜!離せおら〜!よしよしよしよし。
叔父上!怖かった怖かった〜!怖かったな。
ああそうか。
おいおい昼間からお前夢見ておねしょしちまったなおい。
ああよしよし。
いやあんま抱きつくな。
(総右衛門)そうかい。
鉄瓶長屋をね。
どうなさいますか?そうだねえどうしたものかねえ。
房吉。
(房吉)へい。
(泣き声)旦那じゃあ行ってきます。
ああ気を付けてな。
おいおいおいこけんじゃねえぞ。
(弓之助の泣き声)失礼します!坊ちゃんうへぇ〜。
おら〜!あれはよ犬の骨なんかじゃねえ!人の骨なんだよ!このぼんくら同心!あれはよ人の骨なんだよ!葵の骨なんだよ!人間の骨なんだよ!おいおいおい静かにしろよ仁平。
政五郎手前に言ってんじゃねえ!やかましい!静かに。
それにしても死んだ葵の骨はどこにあるのか。
さてこの結末いかに相成る事やら
あれは人間の骨なんだよ!湊屋さん葵はどこに埋まってる?私にとって葵の命は何より大切なのです。
死んだ者は死んだんだ。
世の中分かんないもんだね。
俺は諦めねえからな!必ず湊屋の悪事をばらしてやる!あそこに埋まってるんだよ!本当の事なんてどこにあるんだよ。
薄気味悪い幽霊みたいな女ですよ。
幽霊ねえ…。
2014/12/11(木) 20:00〜20:43
NHK総合1・神戸
木曜時代劇 ぼんくら(9)「土の中で眠る女」[解][字]

宮部みゆきの傑作時代劇人情ミステリーをドラマ化。江戸深川の鉄瓶長屋から次々と店子が姿を消してゆく。この不可解な事件を、“ぼんくら”同心・井筒平四郎が暴いてゆく。

詳細情報
番組内容
湊屋総右衛門(鶴見辰吾)の女房・おふじ(遊井亮子)が信心に凝っていたいきさつから、鉄瓶長屋の八百富があった場所に総右衛門のめい・葵(佐藤江梨子)の遺体が埋まっていると考えた平四郎(岸谷五朗)は、おくめ(須藤理沙)の病を理由に長屋に残っていた佐吉(風間俊介)やお徳(松坂慶子)を千駄ヶ谷の医者のもとへと送り出し、政五郎(大杉漣)らの力を借りて八百富の床下を掘ってみた。が、出てきたのは犬の顎の骨だった。
出演者
【出演】岸谷五朗,奥貫薫,風間俊介,加部亜門,秋野太作,志賀廣太郎,松坂慶子,六平直政,須藤理彩,大杉漣,鶴見辰吾,佐藤江梨子,【語り】寺田農
原作・脚本
【原作】宮部みゆき,【脚本】尾西兼一
音楽
【音楽】沢田完

ジャンル :
ドラマ – 時代劇
ドラマ – 国内ドラマ

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
サンプリングレート : 48kHz

OriginalNetworkID:32080(0x7D50)
TransportStreamID:32080(0x7D50)
ServiceID:43008(0xA800)
EventID:24758(0x60B6)

カテゴリー: 未分類 | 投稿日: | 投稿者: