(テーマ音楽)皆さんの毎日の健康に役立てて頂きましょう。
「きょうの健康」です。
今週はがんのチーム医療という事で初日はキャンサーボードについてお伝えしました。
2日目は緩和ケアのチーム。
そして昨日はリハビリのチームについてお伝えしましたね。
そうですね。
そして今日はこちら栄養サポートチームについて詳しくお伝えしていきます。
今日も専門家をお迎えしております。
それでは分かりやすく教えて頂きましょう。
ご紹介致します。
外科と緩和医療学がご専門で病院に栄養サポートチームを普及される活動に取り組んでこられました。
どうぞ今日はよろしくお願い致します。
今日取り上げる栄養サポートのチームというのはどういうものなんでしょうか?栄養サポートチームNSTとも申します。
がんにかかわらず入院してこられる患者さんの全ての患者さんに対して栄養を評価して最も適切な栄養管理法を提示提言するチームでございます。
2000年代に入りまして急速に増えてきたんですがそれまでは食事を提供するだけが栄養というふうに病院の中でいわれてたんですが…。
いわゆる病院食ですよね。
そうです。
それを治療として扱う事に…。
そういう事からだんだんと全国中に広がってきました。
治療として栄養を考えていくという特殊な専門的なチームが広がってきているという事なんですよね。
チームを構成しているのはどういう職種の方なんでしょう?まず医師でございますが主治医の方もおられますがより栄養的に専門性を持っておられる先生が栄養と代謝の知識を持ってチームをまとめるという役割を演じております。
これは主治医が担うという訳ではなくて別のドクターと考えればいいんですか?主治医の先生は治療を専門的にやっておられてこの医師は栄養を専門にやるという役割分担をしております。
そして看護師。
患者さんのそばにおりますので患者さんの体調や希望を把握してこれをチームリーダー等に伝える役割を演じております。
ほかにはどんな職種の方がいらっしゃるんでしょうか?たくさんいらっしゃいますね。
管理栄養士さん。
この方々は栄養を評価して栄養障害度をチェックしてそして主にカロリーとかを計算しながら食事の管理をされます。
また薬剤師さんは特に食べられない方十分食べられない方に対する点滴栄養の選択処方薬のチェック。
そして歯科衛生士さんたちはやはり口腔ケアですね。
口の中をきれいにしないと誤えん性肺炎という事が起こりますのでこれを予防するために必要です。
口の中を清潔にしておくという事ですね。
それと理学療法士作業療法士さんたちはやはりリハビリといいましても栄養をつけないと筋肉はよくなりません。
ですから常に体をよくするためにはリハビリの先生方も一緒にチームに入って頂いております。
なるほど。
筋肉のトレーニングなども栄養抜きにしては考えられないんだよという事で考慮しながらやっていくという事なんですね。
おっしゃるとおりです。
それでは実際の栄養サポートチームNSTと呼ばれているチームですね。
どんな活動をしているのか見ていきましょう。
メンバーはチームを率いる医師チーム専従の看護師病棟の看護師薬剤師管理栄養士歯科医歯科衛生士などです
チームは…
軟菜食のハーフが出てまして欠食量が大体ならすと40%ぐらいなので口からとってる量としては300から400キロカロリーという事と…。
この方入院時からの体重減少ですと3キロぐらいは減ってますね。
栄養状態を把握した上で実際に患者を訪ねます
今日は栄養の方でやって来ました。
こちらの女性は軟らかい物を少ししか食べられないため点滴で栄養を補っています。
チームはもっと食べてほしいと考えています
(医師)あとはだからどうやってもうちょっと食べれるようになってもらうかという事とかを考えなあかんですよね。
そこでチームは特別な食事を試食してもらう事にしました。
見た目は普通の魚普通の野菜ですが…
竹の子が本当軟らかくてもう口に入れた瞬間にトロッと溶けてしまうという感じですね。
びっくりしました。
実はこの食事食品を軟らかくする特殊な方法で作られているんです
味もすごい味が染みてておいしいです。
本当に…。
栄養サポートチームは多種多様な栄養補助食品を使います。
患者の病気と栄養の状態に合わせて選びます。
更にこの病院では管理栄養士が栄養補助食品を使って手作りのアイスクリームを作っています。
この日はたんぱく質や食物繊維の多い栄養飲料にバナナと蜂蜜を混ぜて凍らせます。
それを特殊なミキサーにかけるとクリーム状になります
バナナ味の特製アイスクリーム完成です
こちらの女性は食べる量が減ってきていて栄養飲料も飲み飽きてしまったためチームは手作りアイスクリームを試食してもらう事にしました
果物がお好きってこの間お話ししてもらったので食べやすいようにして作ってみたので…。
頂きます。
皆さんお先にごめんなさい。
おいしい。
よかった!
飲み飽きた栄養飲料もアイスクリームなら完食
ありがとうございます。
ありがとう。
おいしかった。
よかったです。
いや〜おいしかったとおっしゃってた笑顔がいいですね。
そうですね。
また作った栄養士の方もとてもうれしそうでしたね。
そういうふうに言ってもらえるとうれしいですよね。
今見ましたようにやはり食べるしかも口から食べるという事とても大切にしているという事を感じましたがこれはどうしてなんでしょうか?がんと闘うためには腸を使うという事が非常に大切です。
腸を使う…?はい。
口から食べるとそういう食べた物が消化管として腸の中に入りますがその時に腸生き生きとしてまいります。
腸の周りには体の免疫の約半分の担当する細胞があるといわれています。
ですから免疫力を上げてそしてまたなおかつ腸を使わないとその他の臓器も障害を及ぼしたりしますのでがんと闘うためにはこの腸をいかに使うかという事が大切になります。
腸を十分に使う。
そのためにそこに食べ物が入っていっておいしい物が入っていかなきゃいけないという事なんですよね。
ただ病気の状態によっては口から食べる事が困難という方がいらっしゃいますね。
どうするんでしょうか?こちらに図がございますが全く食べられない方あるいは食べる事が少ない場合にはやはり点滴を使って静脈内に栄養を投与する方法がございます。
また鼻のチューブ鼻からチューブですね。
経鼻チューブを消化管胃の中まであるいは腸の中まで通したりあるいはおなかに小さい孔を開けて胃とか腸とかにろう孔を作ります。
胃ろう腸ろうといいます。
こういったものから栄養を消化管の中へ投与するという方法がございます。
これらいろんな方法をうまく駆使する事が栄養管理をうまく実行するコツだと思います。
ここで大事な事は口から食べる事が最上だと。
最もいい訳ですよね。
はい。
それが困難な場合でも経鼻あるいは胃ろう腸ろうを使って消化管の中に食べ物を入れようという。
そういう事ですね。
なるべく腸は働いて下さいという事なんですね。
こうした食べ物の管理をちょっと伺いましたが多くのほかの病気の方に比べてがん患者特有の栄養管理の難しさというのは何かあるんでしょうか?はい。
とても難しいものでございます。
この図ですが健康な方のエネルギーの消費よりも明らかに1〜2割がんの患者さんの消費量は増えます。
その理由というのがやはりがんが成長するためにエネルギーを使っちゃいます。
そういう事でエネルギーを消費していきますと食べる量が少なかったり栄養補給を十分しないと患者さん自身がお痩せになってしまいます。
うまくこういうエネルギーを投与してあげないとやはり免疫力をはじめとしていろんな体力が衰えるという事になります。
ただその栄養をしっかりとりますとその栄養によってがんが大きくなってしまうというそういう心配というのはないんですか?基本的にはがんは栄養状態がよい人も悪い人もかかわらず自分の体を壊しながら大きく成長していきます。
従いまして大事な事はがん以外の健常な細胞組織に栄養を十分与えてあげる事ががんと闘う力を得る事になります。
そうなんですね。
ただどこのがんなのかどんながんなのかによってもとるべき栄養素というのは違ってくるんでしょうか?もちろん違います。
例えば肺がんの患者さんですとやはり呼吸が苦しくなったりします。
その時に代謝されて炭酸ガスCOを排泄しにくいその量が少ない脂肪を多めに投与して頂けると苦しさを緩和する事ができます。
おっしゃってるのは食べ物をとると炭酸ガスが体の中に発生する訳ですね?はい。
それで息苦しさが出てくると…。
脂肪という栄養素は炭酸ガスがあまり出ないという…?そうです。
こういう配慮が必要な訳ですね。
はい。
そして肝がん。
肝がんの患者さんは多く肝障害を合併しておられます。
そういう患者さんにこの分岐鎖アミノ酸BCAAといいますがこういう特殊なアミノ酸をとって頂きますと肝障害に伴う意識障害というのを防いだりまたたんぱく合成を増加させる作用もございますので非常に体の調子がよくなります。
そうですか。
がんの治療では手術がたくさんありますが胃がん食道がんこうした方の手術した場合は…?最近は免疫栄養療法といいまして栄養素で免疫をアップさせようというものがございます。
特に手術の前にグルタミンアルギニンあるいはEPADHAといいます特殊な脂肪酸や亜鉛核酸とこういったものをおとり頂く事によって術後の感染症を減らす事が可能だと報告されています。
あらかじめこういう栄養素を配慮しておくという事も大事なんですね。
ほかにがん共通に栄養素で何か考えなきゃいけない事というのはどういう事でしょうか?やはりたんぱくですね。
どうしてもたんぱくの摂取量が減りますと体が弱って自分でいろんな事をする力を失ってしまいます。
一方がんが勝手にたんぱくを壊してエネルギーを取っていってしまいますからどんどん弱ってしまいますから是非ともたんぱくあるいはたんぱくの構成成分のアミノ酸を十分おとり頂く事ががんと闘う力を得るコツだと思います。
伺っておりますとがんと闘っていくためにさまざまな栄養的なサポート治療の効果をねらった配慮が必要なんだと。
これがチームの目的なんですね?そうです。
本当に最新の栄養学とか代謝学を駆使して一人一人の患者さんに一番適した栄養管理を提供するのがこのNSTの仕事です。
この栄養サポートチームですが全国のがん診療連携拠点病院のほとんどには今あります。
そして日本静脈経腸栄養学会のホームページからも探す事ができます。
こういうところで情報を探してみて下さい。
さて入院していて例えば栄養サポートチームのケアを受けたいんだという事は患者自身が希望を述べていい訳ですね?はい。
もちろんご自分の栄養状態が悪いなとかあるいは食べられないという方は是非とも主治医あるいは担当の看護師にその旨を伝えて下さい。
NSTは必ず力になると思います。
はい。
がんの治療にはしっかりした栄養も大事だというお話でしたね。
今日はお話ありがとうございました。
(2人)ありがとうございました。
2014/12/18(木) 13:35〜13:50
NHKEテレ1大阪
きょうの健康 がんのチーム医療「栄養サポートチーム」[解][字]
栄養サポートチームは、患者のもとに行き、必要な栄養素やエネルギー量を検討し、食べられるものを個別に提供するなど多様な方法を駆使して、患者の栄養状態を改善に導く。
詳細情報
番組内容
栄養を十分にとって体力を維持することはがんと闘う上で最も重要なことのひとつだ。しかし、抗がん剤、放射線、手術の影響で、食欲がなくなったり、食べられなくなることが多い。こうした場合、栄養サポートチームが患者のもとに行き、必要な栄養素やエネルギー量を検討し、病院食を変更したり、食べられるものを個別に提供したり、点滴、胃ろうで栄養を補うなど、多様な方法を駆使して、患者の栄養状態を改善に導く。
出演者
【講師】藤田保健衛生大学教授…東口