(影山)結婚パーティー用のドレスでございますか。
(麗子)ちょっと入るときはノックぐらいしなさいよ。
(影山)固い信頼関係で結ばれてる執事はあるじの部屋にノックなしで入るのが常識でございます。
(麗子)そういえば今まで一回もノックされてない。
それよりお嬢さまそろそろお時間で。
分かってるけど。
困っちゃうのよね華があり過ぎる顔っていうのも。
だって花嫁より目立っちゃ悪いでしょ。
しかも花嫁があの有里さんじゃね。
どうしても私の方が。
にしてもあの有里さんがこの私よりも早く結婚するなんてね。
・お気持ちはお察しいたしますお嬢さま。
要するにお嬢さまはお友達がご自分より先にご結婚なさるのがどうしても納得いかないと。
そんなことないわよ。
《大財閥宝生グループの会長宝生清太郎を父に持つ私は世界屈指のお嬢さま》《一方沢村有里さんはどこにでもいるそこそこのお嬢さま》《どう考えても私の方がモテるはず》《なのになぜ?あっちが先に結婚する?》
(男性)《Heybaby》《確かに向こうは海外留学の後家事手伝い》《お手伝いさんがいるくせに何を手伝う?》《きっとはやりのツイッターやらフェイスブックやらで出会いまくりでしょ》《でこっちといえば出会う相手はだいたいすでに死んでるし周りの男は成り金主義の御曹司とかぱっとしない連中ばかり》《そのくせ無駄に色っぽい女子が多いし》《残るはこの執事影山》《お嬢さまアホでらっしゃいますか?》《お嬢さまの目は節穴でございますか?》《お嬢さまはいらない存在となりつつありました》《しばらくの間引っ込んでおいてくださいますか》《だけどお嬢さまであり刑事である私のプライドをずたずたに切り裂くこの男に誰が》沢村さまの邸宅に到着いたしました。
《そうだ今日の結婚パーティーよ》《こんなときこそ白馬の王子様を見つけなくっちゃ》・
(風祭)パカリパカリパカリ。
初めまして白馬の王子が参上いたしました。
えっ。
(風祭)やはりあなたでしたか。
どちらさまですか?何度かお会いしています。
その後ろ姿よもや見まごうことはございません。
《マイスイートハニー》ここでお会いできるとはまさにデステニーのいたずら。
お名前をお聞かせ願えますか?《言えない。
本当はあなたの部下宝生麗子ですなんて絶対に言えない》参りましょう。
ええそうね。
はいはいはいはいはい。
夜空に星カレーに福神漬け恋にライバル大いに結構。
どうして風祭警部がここに?おそらく今日の祝いの席のゲストでございましょう。
どうしよう風祭警部は私が宝生家の令嬢だってこと知らないのよ。
そうでございますね。
ていうかどうして執事のあなたがここまで来てるのよ。
もういいから外で待ってなさい。
かしこまりました。
・
(有里)麗子さん。
来てくださったんですね?有里さん?
(有里)あっ!大丈夫でございますか?
(有里)あっええ。
お久しぶり。
相変わらずね。
麗子さんいつの間にこんなすてきな彼氏が?あっいや。
でもごめんなさい。
ブーケは違う人にあげようと思ってたんです。
何だその上から目線。
影山と申します。
本日はおめでとうございます。
(有里)ありがとうございます。
お二人とも楽しんでってくださいね。
はい。
いっいえ有里さん影山はね。
吉田さん。
(吉田)あっはい。
お二人を会場へ。
(吉田)ああはいはい。
あの在園寺家の執事吉田と申します。
(吉田)何ともお似合いのお二人でございますね。
さあどうぞこちらへ。
ありがとうございます。
あのいえですからねあの影山というのはですね。
でホントに来ちゃう。
なかなか盛大なパーティーでございますね。
服装とか普通にマッチしちゃってるし。
(細山)おお風祭。
どうも先輩おめでとうございます。
(細山)ありがとう。
後輩の風祭と申します。
にしてもあの新郎ずいぶん年配よね。
・
(佑介)だまされてんだよ姉貴は。
(美幸)ちょっとお兄ちゃん突然失礼よ。
有里さんの弟さん?
(佑介)沢村佑介。
でこいつが妹の美幸。
であちらの新しいお兄さまが細山照也42歳。
てことは有里さんの18歳も年上ってこと?
(佑介)財産狙いだよ。
(美幸)ちょっと。
どういうことですか?この屋敷はもともと在園寺家の物なんだ。
在園寺家。
明治時代から続く名家さ。
まあその在園寺家もすっかり没落して今じゃ名前を継ぐのは50過ぎても独り身のばばあだけ。
屋敷を維持することすらできなくなって遠い親戚のおふくろに泣き付いてきたんだ。
お母さまに。
あっあれが母です。
(佑介)でそのばばあに援助する代わりに俺たち沢村家がこの屋敷に住むことになったんだ。
でもその在園寺家と有里さんとの結婚に何の関係が?
(佑介)3年くらい前に細山は財産狙いで在園寺家の顧問弁護士になったんだ。
でも在園寺家に金がないと分かると今度は沢村家に近づいてきてあれよあれよという間に姉貴と結婚だよ。
なるほどねだから有里さんは私より早く結婚を。
お嬢さまお顔が喜びにあふれております。
(佑介)あれが噂の在園寺家最後の当主琴江おばさん。
ほほう。
また時代遅れのドレス着ちゃって。
(佑介)色とかあせちゃってるだろ?ああはなりたくねえよな。
いえいえあれはチュールエンブロイダリー。
めったにお目にかかれる代物ではございません。
(有里)おばさま。
(琴江)おめでとうとても奇麗だわ。
(有里)ありがとう。
(佑介)姉貴だけは懐いてんだよな。
(有里)友達の麗子さんが来てくださったの。
そう。
有里のご友人だそうですね。
お越しいただきありがとうございます。
本日はおめでとうございます。
おめでとうございます。
スズランの香りですか奥ゆかしい。
(琴江)あっ。
(司会者)ではここでちょっとしたサプライズ。
新郎新婦が選んだベストカップルにダンスを披露していただきます。
決まりました。
サプライズダンスはあそこのすてきなカップルにお願いします。
私たち?それではお願いします。
・
(一同の拍手)《ヤバい》《私が唯一苦手とするダンス》《無理無理無理無理無理》へっ?あっあっ。
(一同の笑い声)
(女性)カワイイ。
・
(一同の拍手)
(有里)あっちょっと私飲み過ぎちゃったみたいなんでお部屋に戻ってます。
(吉田)大丈夫ですか何かお薬でも?
(有里)大丈夫大丈夫。
(吉田)えっ。
・お嬢さま。
あっではごゆっくり。
先ほどは失礼いたしました。
レイディーに名前を聞くときにはまず自ら名乗るのがジェントルメンの習わしでしたね。
申し遅れました私あの風祭モータースの御曹司で警視庁国立署の警部風祭京一郎と申します。
はいはいはいそうです。
結婚すれば玉のこし間違いなし。
(店員)《お待たせいたしました》警察力を駆使して大人気店を貸し切ることでさえ可能です。
それはまずいんじゃ。
してあなたのお名前は。
えっ。
教えてくださいあなたのお名前を。
そっそれは。
ほ。
ほ。
う?う?・ホウ・ショウレイ。
ホウ・ショウレイ。
ええ彼女はホウ・ショウレイ。
香港の財閥グループのご令嬢で私のフィアンセですがそれが何か。
ホウホウホウ。
ウエルカムトゥーカザマツリ。
この広い地球であなたに出会えたことに感謝します。
(司会者)それではここで新郎のご友人である風祭京一郎さまよりご挨拶を頂戴したいと思います。
(一同の拍手)残念ですがでは後ほど。
・
(一同の拍手)何とか切り抜けたようでございますね。
(ため息)ただ今ご紹介にあずかりました新郎の後輩風祭です。
あっやめてくださいよ何か面白いことやれっていう空気は。
ではリクエストにお応えして得意の物まねを。
私ちょっとお手洗い行ってくるわね。
風祭警部の物まね私見飽きてるから。
どうせ時代遅れのケント・デリカットよ。
かしこまりました。
ちょっと失礼。
ではどなたか眼鏡を貸していただけますか?ホウ・ショウレイです。
・
(女性の悲鳴)
(吉田)あっ有里さまのお部屋ですね。
有里さま有里さまどうなさいました。
有里さん開けるわよ。
おかしいなあの少し休むとおっしゃってお部屋にお戻りになったんですが。
合鍵を取ってまいります。
お願いします。
有里さん有里さん。
はいケント・デリカット。
目が大きくなるよ。
ユタは田舎じゃないよ。
(吉田)お願いします。
有里さん。
有里さん。
(吉田)おっお嬢さまどうなさいました。
大丈夫生きてる。
有里さん?しっかりして。
有里さん?有里さん?・
(佑介)何だよ今の悲鳴。
・
(孝子)ちょっとどうしたの?あっ!救急車を。
あっあっはいはい。
ねえ何の騒ぎ?琴江おばさんに何かあったの?
(佑介)バカおばさんじゃねえ姉貴の方だ。
はいはいはいはいはいはい。
現場保全のため皆さん外へ。
(サイレン)
(雷鳴)
(孝子)誰が警察呼んだんです。
あんなに多くのお客さまの前で沢村家の恥もいいところです。
(三浦のせきばらい)
(三浦)そう言われましてもね。
一応形式上近所の交番からペーペーを僕が呼びました。
なに花嫁の命に別条はございません。
ちょっとした傷害事件です。
後は数々の難事件を解決してきたこの私にお任せいただければ悪いようにはいたしません。
あのやはり署に連絡した方が。
それは僕の捜査が終わってからで十分だよ。
ですが警部。
君名前は?三浦です。
じゃ三浦君しばらく黙ってメモを取っていてくれたまえ。
はい。
では早速ですが事件発見の経緯についてご説明いただきましょう。
まず最初に有里さんの部屋に駆け付けた方はどなたですか。
何とショウレイさんでしたか。
私は階段の下で悲鳴を聞いて駆け付けたんです。
(吉田)私は自分の部屋へ帰る途中悲鳴を聞きまして。
鍵が掛かっていたので吉田さんが合鍵を取りに。
《おかしいな》それで私が鍵を開けて中に入ったら。
(吉田)《おっお嬢さまどうなさいました》
(佑介)《何だよ今の悲鳴》
(孝子)《ちょっとどうしたの?》《あっ!》振り返ったらすでに皆さんがいてそこに影山が来て最後に。
(美幸)《ねえ何の騒ぎ?琴江おばさんに何かあったの?》
(佑介)《バカおばさんじゃねえ姉貴の方だ》なるほど隣の部屋にいたのは美幸さんですね?はい。
君はなぜ最後に顔を出したのかな?隣の部屋にいたのならもっと早く騒動に気付いてもよかったはずですが。
音楽を聴いていたんで。
そうですかでは他の皆さんはどうしてあの場所へ?私は少し疲れたので奥にある自室で横になっていたんですが途中で物音がしたので外へ。
ではあなた方は。
(佑介)俺と母さんはパーティー会場から外に出たときに騒ぎに気付いて一緒に。
私もお二人と同じでございます。
会場を出たときに声が聞こえましたので。
どうも怪しいですな。
(孝子)何ですの?同じタイミングで3人が会場から出たというのは都合が良過ぎる。
もしかして示し合わせて外へ出たのではありませんかアリバイづくりのために。
違います。
何だかお寒い物まねが始まったから外へ出ただけです。
(佑介)そうだよケント・デリカットなんて俺知らねえし。
あのこの中に1人だけ有里さんを刺すことができた人がいると思うのですが。
何と誰だいそれは。
私?何を言うんだ僕の恋人に。
恋人じゃないですから。
ですが警部彼女が嘘をついていると考えればこの密室状態を説明することができます。
どういうことかね。
(三浦)まず彼女が有里さんを刺す。
部屋から飛び出した彼女は執事の吉田さんが駆け付けるのを見て階段から来たふりをする。
さらにドアが開かないと嘘をついた。
《あれ開かないな》
(三浦)そして吉田さんが持ってきた鍵を受け取りいかにも今開けましたというそぶりで部屋の中へ入った。
つまりドアの鍵は締まっていなかった。
違いますか?違います。
それにどうして私が有里さんを?
(三浦)実はあなたが有里さんの結婚を腹立たしく思っていたようだという証言が。
誰がそんな…。
あなたって人はこの裏切り者。
とにかくそれ以外に説明のしようがないのです。
違いますホントに違います。
信じてください私やってないです。
はいはいはいはいはいはいはい。
いいですかショウレイさん。
これはあなたの無実を勝ち取るための闘いです。
絶対に負けられない闘いがここにある。
警部。
いいんです。
ご安心くださいあなたの無実を晴らすべく今ここに舞い降りました白馬の騎士が。
《何?何なの?風祭警部がこんなに頼もしく見えるなんて》《でも今はもうあなたに頼るしかない》警部私を助けてください。
アイアムアホワイツナイツ。
僕には分かっているよ君が真犯人だということがね。
そう犯人は君だ沢村美幸君。
えっ?君は沢村家の財産が細山に渡るのが許せなかった。
だからお姉さんを殺害し結婚を破談にしようとした。
待ってよ私は隣の部屋にいたんだよ。
はい有里さんを刺した後君は窓から外へ出たんだからね。
(三浦)しかし警部窓の下には何も跡が残っていませんでした。
はい彼女は飛び降りたのではない。
窓から出て隣の部屋のベランダに飛び移ったのさ。
そして彼女は何食わぬ顔をして廊下から戻ってきた。
タイムラグを補うためにわざわざヘッドホンを片手に音楽を聴いていたなどという嘘のアリバイまで用意してね。
《いける今回の警部はホントにさえてる》正直に白状しなさい。
さあ見たまえ。
君はこの窓から出て隣の部屋のベランダに。
ベッベランダがないってことはそれは無理。
こんなことってあるかい?出会ったばかりだというのに。
えっ?ショウレイさんあなたを逮捕します。
ちょっと待ってください。
認めたくはない。
だがそれ以外にこの密室を説明することはできないんだ。
違いますホントに私やってないんです。
《影山影山》
(時計の鐘の音)ティータイム。
(三浦)とにかく有里さんの意識が戻るまで皆さんはこの屋敷から出ないように。
シャー!カー!もうこうなったらお父さまに電話してありとあらゆる手段を使って無罪を。
どうやらお嬢さまにおかれましては大変お困りのご様子。
いったいどうされたのでございますか。
何とぼけたこと言ってんのよ。
あなたが余計な証言するから私が容疑者になっちゃったんじゃない。
おやまさかお嬢さまは真犯人の目星が付いてらっしゃらないと?じゃあなたは目星が付いてるの?当然でございます。
先ほどまでの証言をまとめれば犯人は理詰めで浮かび上がってくるかと。
えっ?それがよもやプロの刑事であらせられるお嬢さまがお分かりにならないわけございませんよね。
分かるわよ。
ちゃんと考えればね。
ではちゃんとお考えくださいませ。
う〜ん部屋は密室。
庭には飛び降りた跡がなかったってことでしょ?そっか犯人はベランダから屋根に登ったのよ。
そんなことができるのは犯人は佑介さんね。
もうこれしかない。
どう?影山私の推理正解でしょ?ああどうやら何にも言うことがないみたいね。
あ〜よかったこれで逮捕されずに済む。
失礼ながらお嬢さま。
このまま逮捕あそばされ少々反省していただけますか?この私に向かって逮捕されろですって?ていうかあなたこそ公務執行妨害いいえ麗子お嬢さま侮辱罪で逮捕だっつうの!お気に障ること申し上げたのならばおわびいたします。
しかし麗子お嬢さま侮辱罪などという罪は日本の法律にございません。
んなこと知ってるわ。
そして何より今回の事件でもお嬢さまの観察力不足は否めません。
観察力不足?はい。
私は宝生麗子。
世界屈指のお嬢さまそして正真正銘の刑事。
こんな男にお願いして犯人の正体聞くなんて絶対にプライドが許さない。
だけど今回はもう教えてよ〜。
かしこまりましたお嬢さま。
ただし謎解きはこちらをお召し上がりになった後にいたしましょう。
今回の事件の謎を解く鍵は犯人がどのようにして密室状態をつくり出したのか。
やはりこれに尽きます。
そうそこよ。
私が考えますにあのとき密室状態をつくり出すことができた人物はおそらく3人いらっしゃると思われます。
そんなにいるの?まず1人目。
最初に確認しておきたいのですがお嬢さまは本当に犯人ではございませんよね。
だから違うって言ってるでしょうが。
いったいあなたは誰の味方なのよ。
もちろん私はお嬢さま…。
何で一瞬考える。
もういいあなたには頼らない。
お待ちください一応確認しただけでございます。
お嬢さまが犯人でないのであればあの密室状態をつくることができた人物はあと2人に絞られます。
誰。
分かった追い込まれた私って強い。
犯人は執事の吉田さんよ。
ほう。
《あっ》吉田さんは犯行後部屋の外に出て鍵を掛けた。
そして私が来たところで再びドアの前に姿を現す。
《有里さまのお部屋でございますよ》で鍵を部屋まで取りに行くふりをした。
ねっ?鍵を持っている吉田さんなら密室をつくるなんてちょちょいのちょいってわけよ。
確かにお嬢さまのおっしゃるとおり吉田さんは残る2人の容疑者の1人でございます。
やっぱりね。
しかしそれは不可能なのでございます。
どうしてよ。
お嬢さま吉田さんは鍵を持ってくるときご自分ではドアを開けずなぜお嬢さまに鍵をお渡しになったのかお分かりですか?おそらく鍵の束の中から有里さんの部屋の鍵を捜すのに手間取るとお考えになったからでございます。
手間取る?どうして?あのときの吉田さんは眼鏡を掛けていなかったことに気付かれましたか?あっしてなかった。
実は風祭警部が物まねで使うと言いだしまして吉田さんが貸していたのです。
デリカット?そういえばいつも宴会で誰かから借りてやってる。
《救急車を》《あっあっはいはい》あのとき吉田さんはボタンを少し離して確認しておりました。
おそらく老眼でございましょう。
《お待たせしました》故に一刻を争うあの状況の中で鍵を捜すという作業をお嬢さまに託したのでございます。
つまりお嬢さまが現場に駆け付けるまでのわずかな間に眼鏡をしていない吉田さんが鍵を掛け物陰に隠れるのは不可能だということになります。
となると残る容疑者は1人だけでございます。
誰よ。
誰がどうやって外から鍵を?いいえ実は犯人は外から鍵をしたのではないのです。
どういうこと?犯人は部屋の中にいたのでございます。
はっ?犯人は逃げようとしたところでドアの外にお嬢さまの足音を聞きとっさに鍵を締めたのでしょう。
そしてドアの陰に隠れるなりしていた。
だからお嬢さまは気付かなかった。
でも待って。
吉田さんはドアの前にいて部屋全体を見ていたのよ。
犯人の存在に気付いたんじゃない?はい気付かれました。
だから叫んだのです。
(吉田)《おっお嬢さまどうなさいました》あれは有里さんを見て叫んだだけでしょ?いいえ吉田さんにとって有里さんはお嬢さまではございません。
はっ?・
(有里の悲鳴)ご自分に置き換えてお考えください。
もしもお嬢さまが有里さんの執事だとしたら部屋の中から悲鳴が聞こえたときお嬢さまならどうされますか?どうって。
有里さんどうしたの?って聞くわよ。
ブブーそれではプロの執事失格でございます。
じゃ影山ならどうするのよ。
もしもお嬢さまの部屋から悲鳴が聞こえたら私ならこういたします。
いきなり入るの?でも一大事じゃなかったら。
お忘れでございますか?お嬢さま。
執事はあるじの部屋に入るときノックをしないということを。
あっそっか。
《有里さま》あれ?でも吉田さんはノックしてたわよ。
はいしかも有里さまと叫んでいました。
つまりお嬢さまと呼ばれる本当のあるじは別にいるということでございます。
そしてその相手こそ有里さんの部屋に潜んでいた人物つまり真犯人でございます。
お嬢さまと呼んでいる相手でしょ?妹の美幸ちゃん。
まさか孝子さん?じゃ誰よ。
琴江さまでございます。
えっ!あの年でお嬢さまはないでしょ。
美幸さんの証言を思い出してみてください。
《ねえ何の騒ぎ?琴江おばさんに何かあったの?》《バカおばさんじゃねえ姉貴の方だ》あの発言に何か違和感を覚えませんでしたか?確かに何で琴江おばさんのことだと思ったのかしら。
吉田さんがお嬢さまと叫んだからです。
それを聞いた美幸さんが琴江おばさんの身に何かが起きたと考えたのでございます。
それに。
・《お嬢さま》あのとき琴江さまはまるで自分が呼ばれたかのようにすんなりと振り向かれていました。
そういえば。
《有里さん》つまり琴江さまはお嬢さまが有里さんを診ている隙に部屋に出た。
《大丈夫生きてる》そこに孝子さんと佑介さんが合流。
全員が今この場にやって来たように見えたのです。
これがこの事件の真相でございます。
ただしこのままで終わればよいのですが。
はいはいはいはいはい。
沢村有里さんが意識を取り戻したそうですよ。
それで何て?うん付き添っていた細山さんが聞いた話ですとう〜ん犯人は見ていない。
ただ男のようだったと証言しているそうです。
男?これでショウレイさんの疑いは晴れましたねええええええええ。
では三浦君早速沢村有里さんの話を聞きに行こうじゃないか。
はい。
あなたのために必ず真犯人を見つけてみせましょう。
ツァイチェン。
男ってどういうこと?これは私が予想していた最悪の展開でございます。
このままではもう一つ事件が起きてしまうやもしれません。
・
(男性)うわ〜!吉田さん。
近づかないでください。
やっぱりあなたが。
(吉田)はい全て私がやったことでございます。
何で。
私はお嬢さまをだましたこの男がどうしても許せなかったのでございます。
(細山)《いい天気ですね》《そうですね》《あっすいません》《あまりにも奇麗だったものですから》
(吉田)細山はお嬢さまに歯の浮くような言葉を並べて近づいてまいりました。
しかし在園寺家に財産がないことが分かるとあっさり有里さまに乗り換えた。
そのためにお嬢さまがどれほど傷つきお心をお痛めになられたことか。
だから私はこの男の肩に頬をうずめる有里さまとこの細山がどうしても許すことができなかったんです。
そんな。
しかしもう終わりです。
せめてもの償いに。
吉田さんあなたは琴江お嬢さまの罪をかぶろうとしている。
そうではありませんか?《おっお嬢さまどうなさいました》あなたあのとき部屋の中に隠れていた琴江さまを見つけ全てを悟った。
・
(足音)《何もおっしゃらず全て吉田にお任せください》さらにこの場で細山さんを殺害するふりをして全ての罪をかぶり自ら命を絶つおつもりなのでしょう。
違う違う違う違う違う違う。
初めてお会いしたときあなたは在園寺家の執事だと誇りを持っておっしゃっておりました。
つまり全てはお嬢さまのため。
そして在園寺家のため。
・
(琴江)もういいわ吉田。
おっしゃるとおりでございます。
有里を刺したのは私です。
おっおっお嬢さま。
どうして。
有里は1年前に留学先から帰国しました。
それまで細山さんと私に何があったのかは知りません。
ですから今日も無邪気に。
《おばさま》《おめでとうとても奇麗だわ》《ありがとう》
(琴江)それがかえって私には苦しくて。
年がいもなく嫉妬して。
(琴江)気付いたらとんでもないことを。
本当にバカなことをしてしまいました。
申し訳ございませんでした。
おそらく有里さんは琴江さまが犯人だということに気付かれていると思います。
でも有里さんは犯人を見ていないって。
ええ見ておりません。
ただし香りに気が付いた。
琴江さまのスズランの香りに。
《スズランの香りですか奥ゆかしい》じゃ何で言わなかったの?吉田さんと同じです。
琴江さまを守ろうとしているのです。
思い出してくださいお嬢さま。
あれは部屋に残るスズランの香りを消すため有里さんが必死に香水の瓶を割ったのでございましょう。
有里は本当の娘のように育てた掛け替えのない存在だったのに。
それを私は。
有里さんはスズランのブーケをご用意されておりました。
琴江さまの大好きなお花です。
おそらく琴江さまにお渡しするつもりだったのでございましょう。
これからの人生を幸せに暮らしてほしい。
きっとそのような思いが込められていたと私には思えてなりません。
お嬢さまは私の人生の全てでございました。
今回のことお止めできなかったのはひとえに執事であるこの私の責任でございます。
本当に申し訳ございませんでした。
(琴江)吉田。
(吉田)はい。
(琴江)あの日あなたがこの屋敷にやって来た日のことをまるで昨日のことのように覚えています。
お嬢さま。
在園寺家が没落しこの屋敷を沢村の家に乗っ取られてからはあなたにも苦労掛けましたね。
よくここまで仕えてくれました。
50年間本当にありがとう。
もったいないお言葉。
やっぱり僕が見立てたとおり犯人はあの没落マダムでし…アウチ。
いずれ君とは闘うことになりそうだ。
言っておくが。
言っておくぞもう一度。
夜空に星カレーに福神漬け恋…。
どうして分かったの?もう一つ事件が起きるかもしれないって。
吉田さんが琴江さんの罪をかぶろうとしていることがあなたには分かってたってことでしょ?執事たるものであれば誰もが思い付くことでございます。
じゃ何で嘘暴いちゃったの?同じ執事であれば吉田さんの気持ちが。
お嬢さま確かに大切な誰かを守ろうとする嘘は時として美しいものでございます。
吉田さんの嘘は執事として称賛に値するかもしれません。
しかししょせん嘘は嘘。
真実にはかないません。
お嬢さまにおかれましてはどんなときでも真実を見詰める目を持つことをお忘れなきよう。
ところでお嬢さまちょうどよい機会ですので1つ確認を。
何?私はお嬢さまのことを何歳くらいまでお嬢さまとお呼びすればよいのでございましょうか。
ちょっと待って影山。
あなたひょっとして私が50すぎのお嬢さまになると思ってるわけ?大丈夫よそのうち奥さまって呼ばせてあげるから安心して。
そう願いたいものでございますお嬢さま。
それまでに私もダンスを覚えておきます故そのときこそ1曲お付き合いいただければ。
(琴江)《いつか分かるときが来るわあなたにもね》2014/12/11(木) 15:53〜16:48
関西テレビ1
謎解きはディナーのあとで #04[再][字]
「花嫁は密室の中でございます!!」
櫻井翔 北川景子 椎名桔平
詳細情報
番組内容
影山(櫻井翔)は、友人の沢村有里(小林涼子)の結婚パーティーに招かれた宝生麗子(北川景子)のお供。沢村家の屋敷で行われるパーティーには風祭京一郎警部(椎名桔平)も招かれていた。しかし、風祭はメガネを外したお嬢様姿の麗子が自分の部下だと気付くこともなく、恋をしてしまう始末。
有里の結婚相手、細山照也(湯江健幸)は花嫁よりずいぶん年上。麗子がこのギャップに疑問を感じていると有里の弟、佑介
番組内容2
(若葉竜也)が妹、美幸(村崎真彩)の制止も聞かず、沢村家の財産目当てだと話しかけてきた。佑介によると、もともとこの屋敷は西園寺家のものだったが没落してしまい、琴江(手塚理美)という老齢の当主では維持できず、遠い親戚である有里の母親、孝子(栗田よう子)に援助を求めてきた。細山は西園寺家の財産狙いで顧問弁護士をしていたが、金がないと分かると沢村家に近づき、有里との結婚までこぎつけたと佑介は続けた。
番組内容3
パーティーの最中、有里の部屋から悲鳴が。屋敷の執事、吉田(森本レオ)が合鍵でドアを開けると背中にナイフが刺さった有里が倒れていた。幸い命に別状はなかったのだが…。麗子は未だに部下だと気付かない風祭の迷推理で容疑者とされてしまう。
「失礼ながらお嬢様、このまま逮捕あそばされ、少々反省していただけますか?」
主人のピンチに影山が毒舌とともに解く謎とは?
出演者
影山: 櫻井翔
宝生麗子: 北川景子
並木誠一: 野間口徹
山繁悟: 中村靖日
宗森あずみ: 岡本杏理
江尻由香: 田中こなつ
風祭京一郎: 椎名桔平
西園寺琴江: 手塚理美
吉田: 森本レオ
ほか
原作・脚本
【原作】
東川篤哉「謎解きはディナーのあとで」(小学館刊)
【脚本】
黒岩勉
監督・演出
【演出】
石川淳一
【プロデュース】
永井麗子
音楽
菅野祐悟
【主題歌】
嵐「迷宮ラブソング」
【オープニングテーマ】
倖田來未「Love Me Back」
制作
フジテレビ
【制作著作】
共同テレビ
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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