事件14 2014.12.11


(黒沢良雄)ハルちゃん!車取ってきた。
リュウちゃんは?
(相田晴美)あなたクロちゃんが病院連れてってくれるって!
(相田隆二のうめき声)
(晴美)大丈夫?
(相田のうめき声)
(晴美)危ないから気をつけて。
(相田のうめき声)
(三須)どうしたの?ご主人。
(石川)えっまた発作?お騒がせしてすいません。
(黒沢)ニトログリセリンは?
(晴美)もう2錠飲んでる。
(相田)早くしろ!リュウちゃん。
大丈夫!うん大丈夫よ。
ごめんね。
歌ってて!足元気をつけてよ!
(岡野)大丈夫かね?あの人結構飲んでたぞ。
(晴美)病院へは電話しておくから。
(黒沢)うん。
クロちゃんあとよろしくね。
(うめき声)クロ!まだか…?
(相田)クロ…!ママね顔色はねそんな悪くなかった。
ね?うんうん。
もうすぐさケロッとした顔をして帰ってくるよ。
なあ?ありがとう。
はいどうぞ。
元気出してねママ。
(三須)「元気出して」じゃないよ。

(店員)お待ちどおさま!
(伊丹弁護士)加瀬君よく執行猶予を取り付けたね。
ご苦労さん!
(本多和美)お疲れ〜!
(加瀬弁護士)ありがとうございます!ああ〜!う〜ん!なんかやっと弁護士になったって感じです。
伊丹先生に感謝しなさいよ。
もちろんしてますよ。
先生のアドバイスがなかったら執行猶予なんてとてもとても。
そんな事はないよ。
加瀬君の力だよ。
いえ。
今後ともご指導よろしくお願いいたします。
じゃあ加瀬君のおごりね。
えっ!?そう来ますか?いいじゃない本多さん。
今日は加瀬君の慰労会なんだから事務所持ち。
じゃあ3人で5000円でお願いします。
もうひと声。
(和美)先生がまた国選をお引き受けくださったので5000円が限界です。
ここんとこ立て続けですね。
ねぇ〜。
それも飲酒運転よ。
危険運転致死罪。
よく引き受けましたね。
絶対やっちゃいけない飲酒運転で事故を起こすなんて。
言語道断。
飲酒運転は絶対ダメ。
(加瀬)じゃあどうして?いや法テラスと国選弁護人の契約をしてるわけだから選任されればむげには断れないさ。
僕結構断っちゃってますけど。
いいんだよ。
加瀬君には加瀬君のやり方があるんだから。
あっ先生。
今度から名刺に「国選弁護人専門」って書いておいたらいかがですか?加瀬君おつまみ何にするか?あそうですね。
えー刺身の盛り合わせと焼き鳥の盛り合わせもらいましょうか。
いいじゃない。
ブブー。
予算オーバー。
(加瀬)えっ!?もう?うん。
(加瀬)わかりましたよ。
足りない分は僕が出しますから。
ありがとう〜。
すいませんお願いします!
(和美)泡盛の古酒ボトルで。
(店員)ボトルで。
(和美)あとアワビのお刺身も。
(店員)アワビも。
ありがとうございます!確かに事情はわからないじゃないが…。
自分でも飲酒運転になるという事はわかっていたんですよね?わかっていました。
ああいう事故が起こる事は想像しなかったんですか?しませんでした。
とにかく早く病院に連れて行ってやりたくて。
こういう事を言うのはあなたに酷だがそれは救急車に任せるべきだった。
亡くなった相田隆二さんは狭心症の発作を起こしていたんでしょ?あの発作はニトログリセリンを飲めば治まるもんじゃないんですか?あの晩は2錠飲んだのに治まらなかったんです。
もしかしたら心筋梗塞を起こしてる事もあるってハルちゃんが言うんで。
だとしたらなおさら救急車を呼ぶべきだったでしょ。
以前にも飲酒運転をした事があるんですか?それはありません。
あの時が初めてです。
本当に?本当です。
信じてください。
(志摩裁判長)続いて弁護側の冒頭陳述をお願いします。
メモは取らなくて結構です。
私の話を聞いてください。
本件は被告人である黒沢さんが飲酒運転をした揚げ句運転を誤り車ごと海に転落。
その結果同乗者を死なせてしまったという事件です。
言うまでもなく飲酒運転は絶対にしてはならない行為です。
しかし黒沢さんの場合はやむを得なかった面もあります。
つまり狭心症の発作を起こしていた同乗者を一刻も早く病院に連れて行きたかったからです。
弁護人はこれからの裁判で黒沢さんが飲酒運転をした事を深く反省している事そして必要以上に黒沢さんの罪を重くする必要はない事それらを明らかにしていくつもりです。
(金森検察官)本牧署に出頭してきた直後に検査した時の数値はどのくらいでしたか?
(二宮警察官)はい。
呼気中アルコール濃度は0.25ミリグラムでありました。
酒酔い運転酒気帯び運転で言うと?
(二宮)真っすぐ歩かせるとふらつきろれつも回っておりませんでしたので酒気帯びではなく酒酔い運転と判断いたしました。
(金森)事故を起こしたのは出頭してきた3時間前ですが3時間前はどうだったと推測されますか?当然酒酔い運転だったと推測されます。
質問を終わります。
おかえり。
(相田理沙)ただいま。
(晴美)今日クロちゃんの裁判に行ってきたの。
ここは大事なのでもう一度確認しますよ。
ご主人を車で病院に連れてってほしいとあなたのほうから黒沢さんに頼んだんですね?そうです。
どうして救急車を呼ばなかったんですか?1か月ぐらい前に同じような発作を起こした事があってその時は救急車を呼んだんです。
そしたら運ばれる途中で隊員の方に暴力をふるってしまって。
ご主人がですか?はい。
自分の思いどおりにならないとすぐ手が出る人で。
そんな事があって主人のほうがもう救急車は嫌だって。
タクシーを呼ぶという方法もあったんじゃないですか?呼びました。
そしたらちょうど混んでる時間で30分以上かかるって言われて。
それで黒沢さんがお酒を飲んでいる事を知っていながら頼んでしまった。
主人があんまりにも苦しがるんでもしかしたら心筋梗塞になってるんじゃないかと思って。
それで悪い事だとはわかってたんですけど…。
黒沢さんは悪くないんです。
悪いのは頼んだ私なんです!どうかそのところわかってください。
お願いします。
飲酒運転したのは初めてだった。
(黒沢)そうです。
今回初めて飲酒運転をしてしまってたまたま事故を起こしてしまったという事ですか?はい。
(金森)そんな事は普通考えられないでしょう。
今までも飲酒運転をしていたけどたまたま見つかっていなかっただけじゃないんですか?違います。
(金森)いつもやっていたから気軽に運転を引き受けたんじゃないですか?異議あり!検察官は黒沢さんに意見を押しつけています。
(志摩)異議を認めます。
検察官は質問の仕方に注意してください。
(金森)質問を変えます。
あなたが事故を起こしてから横浜本牧署に自首するまで3時間以上かかっていますね。
その間何をしていたんですか?車から脱出して岸壁に這い上がってタクシーを見つけようと思って…。
助手席にいた相田隆二さんを助けようとは思わなかったんですか?自分が脱出するのが精いっぱいで…。
岸壁に這い上がった時にはもう車は完全に沈んでいたんです。
それでも助けを呼ぼうとは思わなかったんですか?携帯は海に落としてしまったし周りは倉庫しかなかったし…。
タクシーはすぐに拾えたんですか?大通りまで出てタクシーをつかまえましたがずぶ濡れだったんで乗せてもらえなくて。
それで歩いてハルちゃんの…相田晴美さんの店に帰りました。
(金森)タクシーの運転手に事故の事を話さなかったんですか?話しませんでした。
話していればすぐに警察に通報して相田さんの救出が出来たかもしれませんよね?事情を話せばタクシーも最寄りの警察署まで乗せていってくれたんじゃないですか?そうかもしれません。
それをせずわざわざ歩いてスナックまで戻ったのはアルコールをさますためだったんじゃないですか?そんなつもりはありませんでした。
だったら歩いて真っ先に警察に行けばよかったでしょう。
どうしてそうしなかったんですか?やはりアルコールをさますためだったんじゃないですか?異議あり!検察官は威圧的な質問を繰り返しています。
(志摩)異議を認めます。
繰り返しますが検察官は質問の仕方に注意してください。
質問を終わります。

(河野裁判員)実は私の友人のお父さんも飲酒運転の車にはねられて亡くなりました。
その時の友人の悲しみ怒りはとても言葉に表せないほどのものでした。
あれから10年以上経ちますけど友人の悲しみはいまだに癒える事がありません。
飲酒運転はもうしませんか?はい。
もう絶対にしません。
本当ですか?はい。
お酒ももう飲みません。
どうか…。
すみません。
どうか絶対にそうしてください。
お願いします。
はい。
飲酒運転は絶対に許されない重大な犯罪です。
ましてやその事によって事故を起こし人の命を奪う事など絶対にあってはならない事です。
しかしながら目の前で発作に苦しんでいる人を放っておけなかった黒沢さんの事情もわかっていただきたいと思います。
先ほど黒沢さんが自ら言ったとおり黒沢さんは今自分が犯してしまった重大な罪を心から後悔し反省しています。
二度と飲酒運転はしないお酒も飲まないと誓っています。
更生する可能性は十分にあります。
どうか寛大な処罰が下される事を弁護人は心から願っています。

(晴美)あっ理沙?今日塾の日でしょう?チャーハン作っておいたからチンして食べてから行きなさい。
(理沙)「いい。
お腹すいてないから」でも…。
(不通音)ご苦労さまでした。
お疲れさまでした。
あの明日の判決執行猶予付きそうですか?うーん…それは難しいですねぇ。
じゃあクロちゃん…。
(志摩)被告人は証言台へ。
裁判員6人と裁判官3人で評議を尽くした判決です。
被告人を懲役4年とします。
(晴美の声)懲役4年なんて長すぎます!お店でお酒を飲ませた罪で私は罰金払って済んだけど。
クロちゃんが懲役4年なんてそんな…!控訴してください。
すぐに控訴してください!控訴は黒沢さんの同意がなければ出来ないんですよ。
クロちゃんだって控訴するに決まってます!懲役4年なんてひどすぎるわ!ハルちゃんが…?どうします?私も懲役4年は厳しい判決だとは思います。
ハルちゃんがそう言ってるんだったら…。
わかりました。
ありがとう。
いえ。
じゃあ頼むね。
はい。
すいません。
黒沢良雄さんと同級生だって伺って来たんですけど。
(清水)はい。
(清水)相田とクロ…。
まあ俺もなんだけど生まれたのもこの横浜で幼稚園の時からずーっと一緒。
まあ相田は悪ガキだったね。
黒沢良雄と亡くなった相田隆二は幼稚園の時からの幼なじみだった
相田は幼い頃からガキ大将で黒沢は子分のような存在だったらしい
相田晴美は中学1年の時ここ横浜に転校してきた
すると相田隆二はすぐに晴美に目を付け自分の彼女にしたという
そんな2人の後を黒沢はいつもくっついていた
それは黒沢が望んでそうしたわけではなく相田隆二に無理やりそうさせられていたようだ
(清水)あいつは昔からバカだったから。
どうしてですか?高2の時相田がハルちゃんはらませちゃってね。
そしたら相田の奴さっさと逃げやがって。
ガキの頃からあいつはそういう奴なんですよ。
結局ハルちゃんがおろす事になったらクロが金の工面全部してやって病院にも付き合ってやって。
今度の件だってそうでしょ?相田はさんざん悪い事やってきたんだ。
いい死に方するわけないって思ってたけど。
クロはまったくバカですよ。
(大下茂)黒沢君は普段ほとんど飲みません。
飲まないんですか?
(大下)いやあ弱いんですよ。
ああまあどうぞ…。
あすいません。
飲むとすぐ寝ちゃう人いるでしょ?あのタイプですよ黒沢君は。
仕事柄飲酒運転するような事も…。
うちは飲酒運転したら即クビですから。
ね?ほらいっぱい張ってあるでしょ?いやましてや黒沢君に限ってありえませんよ。
だから「なんで?」ってみんなで言ってたんですよ。
なあ?
(磯部)やっぱりあれじゃないですか?ああ…。
なんですか?あれって。
スナックのママにいいところを見せたかったんじゃないですか?ここのところ毎晩のようにあのスナックに通ってたようだから。
(田宮)2人とも再婚同士。
理沙っていう娘さんは?
(田宮)リュウちゃんの連れ子よ。
結婚して大阪で板前やってたんだけど奥さんに逃げられちゃったらしいわ。
晴美さんとはどうやってまた…。
リュウちゃんが理沙ちゃん連れて横浜に戻ってきたのよ。
その頃ハルちゃんも離婚してて。
腐れ縁ってやつ。
幼なじみのあの3人の関係はどうだったんですか?最近。
うん…。
中学の頃と変わんなかったんじゃない?
(相田)休みなのになんで今から仕事行くんだよ?クロ!お前ほんと要領悪いな!クロちゃんは真面目なのよ。
ねぇクロちゃん。
クロ!終わったらすぐ来いよ!おわびに裸踊りでも見せてくれよな!クロちゃんがかわいそうよ。
(相田)暑いなアイスでも食うか?
(晴美)うん!あっそうだ。
最近クロちゃんよくリュウちゃんに誘われて競馬とか競艇に行ってたらしいわ。
時々ハルちゃんも一緒だったみたいだし。
でもリュウちゃんの事が好きでクロちゃんはくっついてたわけじゃないわ。
クロちゃんがいつも見てたのはハルちゃんよ。
昔からずーっと。
クロちゃん元気にしてます?ええ。
(客)こんにちは。
(田宮)いらっしゃいませ!
(田宮)どうぞどうぞ。
はいこっちね。
こんにちは。
こんにちは!弁護士の伊丹です。
理沙さんかな?はい。
お母さんは?多分買い物です。
すぐ戻ると思います。
あっちょっといいですか?お父さんがこんな事になってしまってまだ気持ちの整理はついてないと思うけど…。
いえ。
せいせいしてます。
えっ…?父が死んでくれてせいせいしてます。
どうしてそう思うのかな?嫌いでしたから。
どうして?働かないし全部がいい加減だったから。
でもお父さん心臓が悪かったから…。
そんなの言い訳です。
まともに働いてたのなんて私と2人で暮らしてた2年ぐらいです。
(いびき)
(いびき)
(いびき)
(理沙の声)あとはお酒とギャンブル。
私の大学入学資金稼いでやるって言って私のバイト代まで持ち出して…。
お母さんは働き者でしょう。
理沙さんとも仲がいいのかな?どっちのですか?いやもちろん今のお母さん。
あの人はうざいだけです。
学校で私に何かあるとすぐ乗り込んできて…。
そりゃあ母親としたら当然でしょう。
親によります。
大阪弁がなかなか抜けなくてからかわれた時なんかその子の家まで乗り込んでいって大騒ぎになって…。
いいお母さんだと思うよ。
冗談じゃないわ。
あの人が学校に来るたび私どれだけ恥ずかしい思いしたか…。
この家からも早く出たいんです。
…もういいですか?
(佐久間義郎)お母さんは?買い物です。
当分戻りません。
なんだ?てめえは!おい…!じゃあ佐久間が来たって伝えといてよ。
おい。
今の人は?借金取りです。
よく来るの?しょっちゅう…。
お邪魔してます。
ああ先生!
(ため息)さっき来た男たち何か言ってましたか?佐久間が来たと伝えといてくれって…。
借金取りなんですって?ええ主人のなんですけどね。
失礼ですけどどれぐらい…?さあ…。
わからないんですか?あっちこっちから借りてるんではっきりした額は…。
(大下)うちの会社で飲酒運転で摘発されたのは黒沢君が初めてです。
いつも営業で車を使っているからその点は厳しく指導していたわけですね?そうです。
つまりこれまでは黒沢さんも飲酒運転をした事がなかった。
私の知る限りではありません。
まあ私が知らないところでも黒沢君に限って飲酒運転をしていたとは思えません。
…だとすれば今回黒沢さんはなぜ飲酒運転をしてしまったと思いますか?きっと見るに見かねてしてしまったんだと思います。
黒沢君はそういう優しいところがある男なんです。
(木島検察官)あなたは被告人と個人的に酒をよく飲みますか?あいえ…。
彼はいつもは飲みませんから。
だったら被告人が普段どのような酒の飲み方をしているかわかりませんよね?それはまあ…。
被告人が普段日常的に飲酒運転をしていたとしてもあなたにはわからないわけですよね?
(晴美)裁判どうなりそうですか?飲酒運転が初めてだったっていう事を裁判官に印象づけられればと思ったんですがね…。
(石川)ハルちゃん。
ほんとにまだ保険金出ないの?だからまだ出てないって!
(石川)隠す事ないじゃない。
(三須)だから隠してないって!なんで隠す必要があんだよなあ?そういう事をさズケズケと聞くかね?普通。
ほんとだよねぇ。
ねぇ!手続きはねもうビシーッとやってあるからね。
すみません。
ごちそうさま。
つけといて。
うんわかった。
おやすみなさーい。
帰っちゃうの?
(三須)男は帰る。
(石川)なんで…。
(鼻歌)すいません。
はい?ちょっとよろしいでしょうか?はい…。
どうぞ。
ねぇねぇ…。
(和美)先生?どうしたんですか?生命保険の事でちょっとね…。
先生入ってるじゃないですか。
いや私じゃないよ。
亡くなった相田隆二さんだよ。
死亡時に3000万円の生命保険に入ってたんだ。
3000万!?結構な額ですね。
保険の代理人がちょっと気になる事を言ったんだよ。
それは晴美ちゃんから頼まれたんですよ。
晴美さんも入ったんですか?いや入ったのはご主人だけ。
保険金の受取人は?そりゃ晴美ちゃんですよ。
頼まれたのはいつです?うーん…1年近く前かなあ。
(和美)先生まさか保険金殺人疑ってるんですか?いやそういうわけじゃないんだが…。
それはないよ。
計画的な保険金殺人だとしたら黒沢さんにとってリスクが大きすぎますよ。
(和美)どうして?危険運転致死罪が適用されれば最長で20年の懲役になる事もあるんですよ?
(加瀬)しかも飲酒運転をして車ごと海に落ちるんだから下手したら自分も死ぬでしょ。
(和美)確かに。
そこまでして保険金殺人するメリットないわねぇ。
ママまたね〜。
はいありがとうございました。
まっすぐね帰ってよ。
三須さん今日も来ますかね?ぼちぼちじゃないかな。
…ああれですか?先生も保険の勧誘されたんですか?いやあそういうんじゃないんですけど…。
そうですか。
石川さんそれクロちゃんのボトルよ。
いつでも飲んでもいいってあの人が言ったんだ。
あらそう?私聞いてないわよ。
新しいボトル出すから戻しといて。
また人のボトルかよ…。
いいんだよ!俺はこれが飲みたいの!ダメダメ。
私がクロちゃんに怒られちゃう。
いいんだって。
いいって言ったんだから。
私がサービスで1本出すから…。
いやいいって。
(晴美)ああ…!ああ…。
ダメだよママに迷惑かけたらばよ!
(晴美)ごめんなさい。
(石川)だって飲んでもいいって言ったんだよ…。
(岡野)ごめんねママ。
(岡野)何やって…もう…。
先生いいですよ。
手切りますから。
すいません。
先生いいんですよ。
手切りますから。
すいません。
(石川の声)ほんとにまだ保険金出ないの?
(高木検察事務官)お待たせしました。
検察事務官の高木と申します。
伊丹です。
押収品の件なんですが…。
木島検事から許可が出ました。
ありがとうございます。
あの余計な事かもしれませんけどどうして押収品をご覧になりたいのですか?警察では交通事故として処理してるんですが果たしてそれでよかったのか…。
(高木)黒沢さんがお酒に弱いという事確かに引っかかりますね。
横浜本牧署に出頭してきた時呼気中アルコール濃度が0.25ミリグラムもあった黒沢さんが果たしてまともに運転出来たのか?お酒を飲むとすぐ眠くなるという供述もしてますからね。
警察ではその辺はまったく問題にしなかったんでしょうかね?実際本人が酔った状態で自首してきましたから…。
(メールの着信音)すいません戻らないと。
鑑定をお願いした先生の予定を確認してまたご連絡します。
お忙しいところ申し訳ありませんいえ…。
私も真実を知りたいので。
生命保険あなたが入るように勧めたんじゃないんですね?違いますよ。
主人が突然入りたいって言い出したんで三須さんに…。
ご主人どうして突然入りたいって言い出したんですかね?さあ…。
いつも気まぐれな人でしたから。
でも何か理由がないと生命保険に入りたいとご主人が言い出せるかなあ…。
何がおっしゃりたいんですか?主人が入りたくて入ったんです。
それなのに掛け金は私に払わせて…。
そういう勝手な人なんですよ。
黒沢さん…こういう言い方はなんだけどご主人とはまったく正反対の人ですね。
ええ。
クロちゃんはとってもいい人。
昔っからクロちゃんには助けてもらっているわ。
そうらしいですね。
あなたにとって黒沢さんはただのいい人なんですか?いやその…。
私とクロちゃんが出来てるんじゃないかって…?先生今日はおかしいですよ。
さっきから何が言いたいんですか?クロちゃんとは出来てなんかいません。
確かにいつもありがたいとは思ってますよ。
だからって…。
こういう商売してるからってねそう簡単に誰とでも寝るような安い女じゃ…。
おかえり。

(電話)はい伊丹です。
(高木)ご紹介します。
鑑定していただいた樋口先生です。
伊丹です。
(樋口教授)転落してから15秒程度は海面に浮いていたものと思われます。
じゃあ普通にドアを開けて脱出しようと思えば出来ましたね?理屈としては可能ですが転落した時の体へのダメージシートベルトを外す時間それらを考えると実際は無理でしょう。
いざ出ようとした時には水圧でドアが開かなくなっていたはずです。
そうなった時脱出する方法は…?今回のようにガラスをたたき割って脱出するしかありません。
ですからすべての車にハンマーを置いておく事を勧めているんです。
黒沢っていう人は珍しく持っていたようですね。
珍しく…ですか?あなたは置いていますか?ああいや…。
あなたに限らず車に置いてある人はほとんどいないでしょう。
たかがハンマーですがあるかないかで生死を分けます。
(高木)伊丹先生。
車内で押収されたものです。
危険運転致死罪の起訴で必要なかった証拠品です。
これを使わず素手でもガラスは割れるもんですか?まず無理でしょう。
黒沢さんは珍しく持っていた…。
本当に私に隠している事はありませんか?別にありませんけど。
黒沢さんは事故を起こしその足でこの店に戻ってきた。
しかしその時はまだアルコールは一滴も飲んでなかったんじゃないんですか?この店に戻ってきて初めてアルコールを飲んだんじゃないんですか?そんな事ありませんよ。
クロちゃんは先生がいらっしゃるとこに座って運転する前から水割りを飲んでました。
どのぐらい?3杯か4杯か…。
飲んでいたのはなんの水割りですか?ウイスキーですよ。
あそこの棚にキープしてあったボトルの…?そうですよ。
嘘だ…。
どうしてそんな嘘をつく必要があるんですか?嘘なんかついてませんよ。
先生こそなんでそんな事を言うんですか?この前からおかしいですよ。
おかしいのはあなただ。
黒沢さんのボトルが床に落ちて割れた時の事を覚えていますね?
(伊丹の声)あの時私はある事に気づいた。
床にはかなりのウイスキーがこぼれたはずなのにアルコールのにおいがまったくしなかった。
あれはウーロン茶だったんじゃないんですか?酒に弱い黒沢さんはいつもウーロン茶の水割りを飲んでいた。
だからあの日あなたは気軽に運転を頼めた。
違いますか?先生は誰の味方なんですか?先生は私たちの味方じゃないんですか?クロちゃんの味方じゃないんですか?先生は私たちの味方じゃないんですか?クロちゃんの味方じゃないんですか?弁護士には2つの義務があるといわれています。
1つは誠実義務。
依頼された被告人に対して誠実に弁護をする。
もう1つは真実発見義務。
被告人の罪における真実を発見する。
どちらの義務も…。
私には難しい事はわかりませんけど最初の義務だけ果たしてくれればいいですから。
もし先生がこれ以上変な事を言うんだったら他の弁護士さんにお願いしますから。
理沙2階へ行ってなさい。
(理沙)私…聞きました。
この人と黒沢さんが父を殺す相談してるの。
なんでそんな事言うの?そんなに私の事が嫌い?私が…。
お母さん心配してるよ。
さっき言った事は本当なの?どうしてああいう嘘を言うのかな?父は…。
殺されたんですか?黒沢さんの事なんだが…加瀬君ならどうする?先生はやっぱり黒沢さんが殺人を犯していると?僕なら弁護人を辞任します。
ちょっと待ってよ…。
そんな簡単に辞任しちゃっていいわけ?弁護士には弁護を依頼された被告人に対して誠実に弁護をする義務が…。
誠実義務ぐらい知ってます。
だから被告人が起訴されている罪状よりも重い罪を犯していると知ったらば被告人の不利益にならないように辞任すべきだっていうんでしょ?でもねそれでいいわけ?黒沢さんの殺人の疑惑はどうなっちゃうわけ?
(加瀬)弁護士としては黙っているしか…。
(和美)闇から闇へと葬ってしまうの?でも元々は警察が交通事故だって決めつけてずさんな捜査をしたのが悪かったわけだから…。
だったら私が匿名で警察に通報してあげる。
それはまずいでしょ。
知ってて黙ってるほうがもっとまずいでしょ。
(ノック)もう…!
(和美)はーい!先生やっぱり辞任したほうが…。
(和美)先生相田晴美さんがいらっしゃいました。
(相田の声)「私に万が一のことがあった場合借金の形として生命保険金を受け取って下さい」「相田隆二」ご主人の書いたものに間違いありませんか?間違いありません。
主人の字です。
先生これですか?ありがとう。
(和美)どうぞ。
すみません。
ああこれだ。
昭和62年10月29日最高裁で出た判決です。
この時は金融業者が勝ってます。
つまり保険金は金融業者が受け取っています。
ご主人のケースもこれと同じですからおそらく…。
でも保険金の受取人は私のままで変更されてないんですよ。
三須さんにもそれは確認してきました。
いやこの最高裁の判例でも受取人は変更されていません。
(ため息)ご主人がこういうものを金融業者に書いていた事をあなたはご存じなかったんですか?先生裁判してもダメなんですか?うん…勝ち目はないだろうね。
ハァ…当てが外れちゃった。
とらぬ狸のなんとかですね。
保険金でご主人の借金を返済するつもりだったんですか?
(晴美)借金なんかどうでもいいんですよ。
理沙の大学の入学金どうしよう…。
ああ理沙さんの…。
理沙ね医学部狙ってるんです。
進学塾の先生も今の調子だったら大丈夫だって言ってくれてて…。
だからなんとかしてやりたいんですよ。
すごい…。
それはなんとかしてあげたいですね。
でも私のやる事なす事あの子は気に入らないみたいで…。
奨学金もらうからいいって…。
あの子にどうやって接したらいいかいまだにわからないんですよ。
まあ私も母親とはダメでしたからね…。
母親と暮らし始めたのも私が中学に入ってからなんです。
横浜で。
それまで長野の祖父母に育てられてて…。
だから母親とどう向き合っていいかずっとわからなくてね…。
理沙はかわいいと思うんですよ。
自分が子供が産めない体だから余計理沙の事がかわいいのかもしれません。
だけどダメなんですよ。
なんとかうまく理沙とやろうと思えば思うほどどんどんダメになっていくんですよ。
理沙には私みたいな人生を送らせたくないんです。
だからなんとか医学部に行かせてあげたいんです。
あ…ごめんなさい。
先生方にこんな愚痴…いや…。
あの相談料おいくらですか?ああ結構です。
いやそうはいきません。
おいくらですか?本当に…結構なんですよ。
(五十嵐達彦)昭和62年に最高裁で出た判例に…。
もう調べてあります。
失礼しました。
釈迦に説法でしたね。
五十嵐さんあなたいい判例を見つけたもんですね。
ありがとうございます。
何か問題がありますか?いや…さすが東大法学部出身だけあって目の付けどころが違う。
ただこれで今回の事件の裏に何かあるという確信を得ましたよ。
私のほうこそ礼を言います。

(高木)伊丹先生の思っていたとおりでした。
ポートファイナンス暴力団清瀬組の企業舎弟でした。
やっぱり。
(高木)五十嵐はカジノクラブの社長も兼ねていました。
しかしその実態は違法カジノらしく神奈川県警もマークしているそうです。
でそのカジノで負けた客に貸し付けるのがそのファイナンスの主な仕事のようです。
うまく出来てるなぁ…。
死んだ相田隆二もそのカジノに頻繁に出入りしていたそうです。
その揚げ句があの念書か…。
(男性客)やっぱり35だな。
(男性客)本命ですね。
競馬好きなんですか?あ…はい。
G1レースは必ず買うんです。
へぇー!意外だなぁ!女友達何人かで競馬場まで行くんです。
気合入ってますね。
でも勝ち負けは二の次なんです。
自分の好きな馬を大声で応援するのがいいんですよね。
なるほど。
(男性客)君はね穴ばっかり狙うからダメなんだよ。
やっぱりねこういうのはね堅くいかなきゃダメ。
最近クロちゃんよくリュウちゃんに誘われて競馬とか競艇に行ってたらしいわ。
これで失礼いたします。
加瀬君。
忙しいか?
(加瀬)いえ大丈夫です。
悪いけどちょっと頼まれてくれないか?いいですよ。
(磯部)借金してましたよ黒沢さん。
どのぐらいしてたかわかりますか?俺は大して貸してないですけど社長は50万貸したって聞いてますよ。
今でもその借金は残ってるんですかね?いえサラ金も含めて全部返したって聞いてますけど。
全部?
(磯部)俺たちにもいっぺんに返してくれて…。
半年ぐらい前だったかな。
今日は大事な話があって来ました。
他の弁護士ならこんな話をあなたにする前に自分のほうから弁護人を辞任してるでしょう。
今回控訴審に臨むにあたってあなたの事をもう一度調べ直させてもらいました。
調べているうちに今回の事件がまったく別な事件に見えてきたんです。
あなたは相田隆二さんを殺したのではないですか?つまりあれは事故ではなかった。
そんな疑問を今私は持ってます。
どうなんですか?黒沢さん。
あれは事故です。
僕が飲酒運転して起こしてしまった事故です。
あなたは私を解任する事も出来ます。
このまま私があなたの弁護人を続ければあなたにとって不利な裁判になる事もありえます。
次の公判までまだ日にちがあります。
よく考えてみてください。
じゃあ…。
先生!今までどおり弁護人をお願いします。
あれは事故ですから。
(理沙)あの数学の問題難しくなかった?うん難しかった。
また明日ね。
うんバイバイ!ちょっと話せるかな?この前の事まだ気にしているのかな?
(理沙の声)父は…。
殺されたんですか?気になって受験勉強が手に付かないようだと困ると思ってね。
(理沙)そんな事はありません。
そうそれならいいんだけど。
もういいですか?それとお母さんの事なんだけど。
あの人に何か頼まれて来たんですか?いやそういうのじゃないんだ。
だったら余計な事はしないでください。
東京高裁も傍聴って出来るんですか?もちろん出来るよ。
傍聴したいの?私人が本当は何考えてるのか見抜くの得意なんです。
(ドアの開閉音)
(足音)借金の額も答えられませんか?こちらで調べたおおよその額ですがある金融会社から200万円勤務先の社長さん同僚から100万円。
計300万円。
その300万円をあなたは半年前一度にすべて返済しています。
300万円はどうやって都合したんですか?答えられないような方法で都合したんですか?
(木島)異議あり!弁護人は先ほどから事件に関係ない質問を繰り返しております。
(鴨志田裁判長)異議を認めます。
弁護人は被告人から何を聞き出そうとしているのですか?弁護人は被告人への質問で今回の事件の真相に迫ろうとしております。
もうしばらく質問を続けさせていただけませんか?
(鴨志田)弁護人は質問を続けてください。
ただし簡潔に。
では単刀直入に聞きます。
黒沢さんあなたは300万円の報酬と引き換えにわざと今回の事故を起こしたんじゃないんですか?つまり事故に見せかけて相田隆二さんを殺害する事をあなたは請け負ったんじゃないんですか?あなたも借りていた金融会社が生前相田隆二さんに念書を書かせていました。
その念書には「私に万が一のことがあった場合借金の形として生命保険金を受け取って下さい」と相田隆二さんの直筆で書かれていました。
あなたはその金融会社から相田隆二さん殺害の話を持ちかけられていたんじゃないんですか?そして飲酒運転による事故に見せかけ相田隆二さんを殺害した。
どうなんですか?黒沢さん。
あれは事故です。
僕が飲酒運転して起こした事故です。
あなたの店には黒沢さんのボトルがキープされていましたね?はい。
そのボトルにいつも入っていた液体はなんでしたか?ウイスキーです。
ウイスキーで間違いありませんか?間違いありません。
先ほど裁判長から説明があったように嘘の証言をすると偽証罪に問われる事もあるんですよ。
私はこんなふうに考えています。
黒沢さんのボトルに入っていたのは本当はウイスキーじゃなくてウーロン茶だった。
おそらく酒に弱い黒沢さんがあなたに頼んでそうしてもらったんでしょう。
あの晩黒沢さんはいつもと同じようにウーロン茶の水割りを飲んでいた。
だからあなたはなんの抵抗もなく黒沢さんに車でご主人を送ってほしいと頼めた。
しかししばらく経って事態は一変した。
ずぶ濡れになった黒沢さんが1人で歩いて店に戻ってきた。
(ドアの開閉音)その時あなたは黒沢さんから思いもかけない事を告げられた。
たった今ご主人を殺してきたと。
黒沢さんはあなたのためにご主人を殺してきたと言ったはずだ。
ろくに働きもせずギャンブルで借金を作りしかもあなたに暴力まで振るうそんなご主人からあなたを救いたくて殺してきた。
あなたは黒沢さんからそう言われたんじゃないんですか?そして黒沢さんに言われるままにウイスキーを差し出した。
その時あなたは黒沢さんの借金もご主人の念書の事も知らなかった。
だが黒沢さんがご主人を殺してきた事は知っていた。
つまりあなたは黒沢さんの手伝いをしたんです。
たった今犯してきた殺人をあたかも飲酒運転による事故であるかのように偽装する手伝いを。
違います!手伝うつもりなんてありませんでした!あの時は何がなんだかわからなくてクロちゃんに言われるままウイスキーを出したんです!
(晴美)クロちゃんが自分の借金のために主人を殺したなんてわかってたらウイスキーなんか出しませんでした!本当です!信じてください!手伝うつもりなんてこれっぽっちもなかったんです!
(晴美のすすり泣き)裁判長。
もう一度被告人質問をさせてください。
相田隆二さんを計画的に殺害した事は認めるんですね?認めます。
300万円の借金を清算するために殺害する事を引き受けたんですね?それは違います。
借金返済のために殺したんじゃありません。
だったらなぜ殺したんですか?僕は…。
あいつの奴隷でした。
奴隷?
(黒沢)そうです。
子供の頃からずっと奴隷でした。
あいつと一緒にいる時はいつも楽しそうにヘラヘラ笑っていたけどそんなの全部嘘っぱちです。
そんなに嫌だったら離れる事も出来たんじゃないんですか?きっと先生みたいな人にはわかりませんよ。
実際そんな事は出来ませんでした。
だからヘラヘラ笑って心の中で思っていたんです。
いつか必ず殺してやるって。
そう思い始めたのはいつぐらいからですか?はっきりそう意識したのは高校2年の時。
あいつがハルちゃんの事を妊娠させたってわかった時です。
自分で妊娠させておいてあいつはハルちゃんを捨てて逃げました。
今度あいつがハルちゃんに近づいたら絶対に殺してやるって思ったんです。
それから25年ずっとそう思い続けていたんですか?よりによってあいつはまたハルちゃんの前に現れました。
しかもハルちゃんとヨリを戻して再婚までして。
あいつはハルちゃんを働かせて自分は好き勝手やってました。
ハルちゃんは僕の目の前でどんどん不幸になっていきました。
僕はハルちゃんの事が心配で毎日店に通いました。
このままじゃハルちゃんは幸せになれない。
あいつがいる限りハルちゃんは一生幸せになれない。
あいつさえいなくなればハルちゃんはきっと幸せになれる。
これはやるしかない。
やるなら今しかない。
僕はそう思ってハルちゃんのために…!
(晴美)やめて!私のせいにしないで!
(鴨志田)傍聴人は静粛に!
(晴美)どうしてそんな目で見るの?お母さんクロちゃんがあんな事考えてるなんて知らなかったのよ。
ほんとよ。
ほんとに知らなかったのよ。
ねぇ理沙。
なんとか言ってよ。
どうしようもない人だったけどあんな人でも私の父親よ!先生…。
晴美さん。
あなた黒沢さんからご主人を乗せた車を海に落としてきたと聞いた時どんな事を思いました?それは…もちろん助けに行かなきゃって。
本当にそう思いましたか?もちろん思いましたよ。
だったらなぜ助けに行かなかったんですか?それは…クロちゃんがもう無理だ助からないって。
みんな黒沢さんのせいですか?黒沢さんになんと言われようと本当に助けるつもりだったらすぐ海に駆けつけるべきだったんじゃないんですか?あなたは実際の行為としてご主人を殺したりはしていない。
しかし心の中であなたはご主人を殺していた。
理沙さんがうまく言葉に出来ない思いはそういう事だと思います。
すいませんちょっと失礼します。
今日の事を受け止められるかな?大丈夫です多分。
お母さん…お父さんの念書の事でこの前私のところに訪ねてきたんだ。
お母さんはお父さんの保険金を君の大学の入学金にするつもりだった。
なのにあんな念書が出てきてしまって「なんとかならないか?」という相談だった。
お母さんこうも言ってた。
「理沙には私と同じような人生は送らせたくないんです」「だからなんとしてでも医学部に行かせてあげたいんです」と。
あの時お母さんは真剣だった。
本当のお母さんの顔をしていた。

(加瀬)黒沢さん殺人罪に訴因変更されたそうですね。
うん。
ポートファイナンスは?警察が任意で事情を調べてるらしい。
吐くわけないか…。
黒沢さんに殺人を教唆したのは間違いないんですよね?そう思う。
黒沢さんなんでその事黙ってるんだろう。
それがわからないんだよ。
何か弱みを握られているのか…。
(足音)加瀬君!どういうつもり?は?「は?」じゃないでしょう!毎日毎日こんな豪華なお弁当ばっかり食べて。
でも自分のお金で買ったんですけど…。
頂いたお給料を少しは貯蓄にまわしなさい!明日からは先生見習ってお弁当自分で作ってくる事。
(和美)いいわね?
(加瀬)先生はだって奥さんに…。
だったら早く奥さんもらいなさい。
あっでもその前に弁護士として一人前にならなきゃね。
それにはあとどれくらいかかりますかね?先生。
(晴美)やめて!私のせいにしないで!どうかしましたか?いや…ちょっと意外だったんで。
何がですか?この前の公判の時の表情とはまったく違ったもんだから。
ああ…。
多分この前の公判で今まで言えなかった事が全部吐き出せたからです。
本当に全部吐き出せたんですか?まだ何か隠している事があるんじゃないんですか?いえ…もう何もありません。
(晴美)今日はお休みなんですよ。
すみませんね…。
1杯だけ飲ませてもらえませんか?理沙さんは?京都。
修学旅行ですか?向こうのお母さん京都なんです。
ああ…。
私が電話して頼んだんですよ。
そしたら大学の事も考えてくれるって。
やっぱり生みの母親ね。
私なんかよりよっぽど頼りになるわ。
理沙は受かる事だけを考えていればいいんですよ。
事件の事も横浜の事もすっかり忘れてね。
どうぞ。
すみません。
先生今晩は付き合ってもらいますからね。
ほどほどに。
ダメダメ。
クロちゃん本当にうちの人殺したんですかね?クロちゃんとは中学の時からの付き合いだけどそんなクロちゃんどうしても想像出来ないんですよ。
昔から「ビビりのクロ」って呼ばれてたんですよ。
見ててもかわいそうなぐらい気が小さくてねぇ。
もしかしたら自分だって死んでたかもしれないわけでしょ。
そりゃうちの人の事憎んでたかもしれないけどそれでもクロちゃんが人を殺すなんて…。
私がそう思いたいだけなのかもしれませんけど。
あ〜。
気を悪くしないで聞いてください。
あなたから黒沢さんに…ご主人の殺害を持ちかけたような事は?ハッハッハッハッハ!頼むんだったらもっと強い人に頼みますよ。
ビビりのクロちゃんじゃ返り討ちに遭いそうだもの。
や〜だ先生ったら!私…子供おろしたの一度じゃないんですよ。
最後におろした時心から思ったんですよ。
もうどんな事があっても人の命を奪うのは嫌だって…。

(相田)理沙新しいお母さんだよ。
理沙ちゃんこんにちは…。
あ…アハハ!よろしくね。

(ノック)
(晴美)理沙入るわよ。
さすがにないか…。
殺人教唆を裏づけるような証拠がないかと思ったんだが…。
ポートファイナンスを家宅捜索出来れば一番いいんですが…。
ありがとうございました。
何度もすみません。
いえ。
力不足で…。
すみません。
大丈夫です。
どうしました?どういう事だ…?申し訳ないがもう1つだけ頼まれてくれませんか?はい。
本日は最終弁論を行う予定でしたが…。
もう一度被告人質問をさせていただけないでしょうか。
そういう事でしたら。
検察官もよろしいでしょうか?わかりました。
ありがとうございます。
あなたの視力はいくつですか?わかりませんか?多分0.01くらいです。
かなり強い近視ですね。
はい。
いつも眼鏡は使っていましたか?はい。
コンタクトレンズを使う事は?ありません。
過去にもありませんでしたか?ありません。
もし眼鏡なしで日常生活を送るとしたらどうです?例えば車の運転とか。
まず出来ません。
これは海に転落したあなたの車の運転席から回収されたサングラスです。
誰のものですか?僕のです。
あなたはこのサングラスをかけて運転する事もありましたか?はい。
黒沢さん…どうしてそんな嘘をつくんですか。
このサングラスには度が入っていないんですよ。
コンタクトを使わないあなたが度の入っていないサングラスをかけてどうやって運転出来るんですか。
このサングラスをかけていた人間はあの夜あなたの車を運転して横浜港に飛び込んだ人間だ。
おそらく着水の衝撃で顔面を打ち眼鏡はゆがみそのまま車に残された。
つまり車を運転して海に飛び込んだのはあなたじゃない。
あなたは相田隆二さんを殺したりはしていない。
違いますか?そんな事はない。
僕がやりました。
僕があいつを殺したんです。
だったら脱出の時に使ったこのハンマーの柄にどうしてあなたの指紋が残っていなかったんですか?この柄から完全な形で採取された指紋はポートファイナンスの社員佐久間義郎のものだけでしたよ。
黒沢さん。
あなたいざという時に飛び込めなかったんでしょ?相田晴美さんはその事を見抜いていましたよ。
あなたは人を殺せるような人間じゃないって。
あなたがこれまでその事を黙っていたのはポートファイナンスの五十嵐社長から何度も言い聞かされていたからじゃないですか?相田隆二さんの殺害の計画は相田晴美さんから持ちかけられたものだと。
相田晴美さんを警察に捕まらせたくなかったらすべてお前一人でやった事にするんだとそう脅されていたからじゃないですか?冷静になって考えてみてください。
あなたが中学から知っていた晴美さんはそんな人ですか?ひどい人間だからってご主人を殺そうと考えるような人ですか?ましてやあなたにそれをやらせておいて平気でいられるような人ですか?傍聴席の相田晴美さんを見なさい。
見なさい!相田晴美さんはご主人を殺すような人ですか?あなたに人殺しをさせるような人ですか?違う!!ハルちゃんはそんな人じゃない…!そう思うなら…今度こそ本当の事を言ってください。

(すすり泣き)僕には…リュウちゃんは殺せませんでした。

(ノック)どうした?さっさとやれよ。
出来ません。
てめえも一緒に沈めるぞ!早くやれ!勘弁して…!
(佐久間)うわっ!勘弁してください!お願いですから!勘弁してください!勘弁してください…勘弁してください!
(佐久間)てめえ…!勘弁してください!やだ!!
(佐久間)車に戻れオラァ!勘弁してください!早く乗れ!僕には出来ません!
(五十嵐)佐久間!いいですよ黒沢さんやらなくて。
しかし…これから起こる事はあなたがやった事だ。
あなたが相田晴美さんを助けるためにすべて1人でやった事だ。
そうでないと相田晴美さんも警察に捕まる事になりますよ。
いいですね?佐久間。
ううっ!いいか?こうやるんだよ。
すぐ楽にしてやるよ。
やめろ…!よく見ておくんだ…。
飛び込む瞬間は見ていられませんでした…。

(五十嵐)自分でやった事をよく見ておくんだ。
(泣き声)さあもっと前へ出てよ〜く見るんだ。
あっ!濡れてないとおかしいだろ。
(鴨志田)被告人が今述べた事は間違いありませんか?間違いありません…。
黒沢さん。
最後に1つだけ聞かせてください。
確かにあなたは相田隆二さんの奴隷だったかもしれない。
晴美さんも相田隆二さんに虐げられていたかもしれない。
しかし娘の理沙さんにとってはたった一人のお父さんだったんですよ。
突然父親を亡くした理沙さんの気持ちをあなたは考えた事がありますか?あなた自身は寸前のところで相田隆二さんの殺害を思いとどまった。
しかしあなたの犯した罪は決して軽くはない。
どうか…自分が犯してしまった罪と真摯に向き合ってください。
それが…弁護人の心からの願いです。
(すすり泣き)本当に…申し訳ありませんでした。

(刑事)はい下がって!
(刑事)道開けて道!はい押さないで押さないで!
(記者)佐久間さんひと言お願いします!
(記者)五十嵐さん!
(記者)五十嵐さん今回の事件で佐久間さんとのご関係をお答えください!私…ひどい女ですね。
先生がこの前おっしゃっていた事がようやくわかりました。
うちの人を心の中で殺していたんですね。
もしかしたら何度も…。
それをきっとクロちゃんも感じて…。
最近よく理沙の夢を見るんです。
夢の中で理沙はあの日みたいに冷たい目で私の事を見つめるんです。
理沙にもきっと見透かされていたんですね。
いつか理沙さんもあなたの事をわかってくれる日が来ますよ。
じゃあここで。
ありがとうございました。
晴美さん。
その日がきっと来ますよ。
ただいま…。

(物音)誰かいるの?理沙…!どうしたの?どうしてここにいるの?お腹すいてるならカレー作っといたから…。
塾行ってくる。
待って!向こうのお母さんと何かあったの?頑張って国立の医学部に入るから。
奨学金もらってバイトもいっぱいすればこっちでもなんとかやっていけそうだから。
ここが…私の家だから。
理沙…!2014/12/11(木) 14:00〜15:51
ABCテレビ1
事件14[再][解][字]

横浜港に車が転落!生還した運転手と、死んだ同乗者の妻に秘密?ガラスの謎が暴いた逆転法廷

詳細情報
◇番組内容
北大路欣也が正義感あふれる弁護士・伊丹を演じる人気リーガルサスペンスの第14弾!今回、伊丹が引き受けたのは、飲酒運転によって同乗した友人を死なせ、危険運転致死罪に問われた男の国選弁護人…。ところが、調べていくと“事故”ではなく“事件”の疑いが… !?
◇出演者
北大路欣也、清水美沙、尾美としのり、加藤夏希、石橋杏奈、山下徹大、山下容莉枝、四方堂亘

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
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