生字幕放送でお伝えします岩渕⇒こんにちは「くらしきらり解説」激しい内戦が続くシリアは本格的な冬を迎えています。
戦火を逃れた大勢の難民や避難民は食料にも事欠くなど命の危険にさらされています。
担当は出川展恒解説委員です。
出川さん、今シリア難民は命の危険にさらされているということですね。
出川⇒はい。
2011年に始まったシリアの内戦ですけれども、難民や避難民の人たちにとってはことしで4回目の冬になるわけですが、今まで以上に厳しい状況に追い込まれています。
きょうは、その問題の背景を探り日本から何ができるかについても考えます。
ポイントは食料支援、寒さ対策そして子どもたちの保護です。
この3つですね。
今シリアの内戦というのはより一層、複雑に激しくなっているわけですよね。
ことし、みずからをイスラム国と呼ぶ過激派組織が一気に勢力を拡大し、国境を越え隣のイラクにまたがる広い地域を支配するようになりました。
アサド政権、反政府勢力、イスラム国による三つどもえの戦いです。
アメリカ軍などによる空爆作戦も始まりました。
これまでに少なくとも、20万人以上が犠牲になりその3割以上が一般市民です。
そして大勢の難民や避難民が出ているというわけですね。
戦火を逃れて周辺国に逃れたシリア難民はこの地図のとおりです。
現在5か国で合わせて330万人以上これに加えましてシリア国内で避難民となっている人たちが650万人以上。
つまりシリアの人口のおよそ半数が住んでいた家を追われた計算になります。
そんなに多いんですね。
難民や国内避難民の多くは国連や国際援助団体の支援によって避難生活を送っているんですが本格的な冬を迎えて非常に厳しい状況に追い込まれています。
具体的にはどういう状況なんでしょうか。
まず食料が十分に届かなくなっています。
難民に食料支援を行っている国連のWFP世界食糧計画が、極めて深刻な財政難、つまり資金不足に陥っているからです。
WFPは今月1日、シリア難民のおよそ半数を上回る170万人に対する食料支援を中止せざるをえなくなったと発表しました。
支援を中止、非常にショッキングですけれどもこれはどういうことなんでしょうか。
WFPはシリア難民に対し初めのうちは食料そのものを配っていたんですけれども、今では食料引き換え用の電子カードをまず配布し難民各人がスーパーマーケットで必要な食料を選んで購入する仕組みが主流となりました。
自分で買うわけですね。
選択の幅が出てきたわけですね。
レバノンやヨルダンの町なかではこの方式を採用しているんです。
そしてWFPは電子カードに毎月1人当たり日本円に直すと3500円程度を振り込んできたんですけれどもそのための資金が底をついてしまって送金できなくなったわけです。
電子カードを使っている難民はおよそ170万人。
その支援がストップしてしまいました。
どうしてこういうことになってしまったんでしょうか。
アフリカのエボラ出血熱など新しい緊急事態が起きましてその対応で予算が底をついてしまったんですね。
ほかにも支援が必要になったということですね。
WFPとしては緊急に、全世界に向けて資金を提供してほしいと呼びかけたんです。
今、その問い合わせ先が出ていますね。
こちらですね。
これに応じて各国の政府や企業そして個人などからほぼ1か月分の資金が集まったということで食料支援もなんとか再開できるめどが立ったということなんです。
しかしシリア難民への食料支援は毎週およそ40億円かかるということでして来月以降も再び中止に追い込まれる可能性があるということです。
すべての難民が無事にこの冬を乗り切れるよう、資金がとにかく必要なんです。
まだ足りないということなんですね。
そういうことです。
次に寒さ対策も問題ということですが、冬はこの地域は相当寒いんですよね。
標高の高いところでは氷点下まで気温が下がります。
平野部でも、防寒具がなければ生活できませんが燃料や防寒具が不足しているのです。
どうしてですか?過激派組織のイスラム国がシリアの油田地帯を支配し石油を密売して活動資金としているため灯油などが不足し値段も高騰しています。
まきや廃材を燃やして暖を取っていますが着の身着のままで避難してきた人たちは衣服や毛布を十分に持っていません。
これで氷点下を乗り切るというのは、かなりつらいことですよね。
こちらの映像はレバノンに逃れたシリア難民で2週間前に撮影されたものです。
はだしや薄着の子どもが多く冬を乗り切れるとは思えません。
衣食住、いずれもせっぱ詰まった状況だということですけれどもまた次に子どもたちの問題もあるということでしたが、これはどういうことですか?実際のところ内戦でいちばん深刻な影響を受けているのは子どもたちです。
ユニセフ国連児童基金によりますと、シリアではことし1月から9月までの間に学校への攻撃が少なくとも35回も確認されました。
105人の子どもたちが犠牲になりました。
学校も狙われるんですか?そうなんです、学校や病院も攻撃の対象となっているんですね。
ひどいですね。
絶え間ない戦闘の恐怖にさらされます。
そして家族や友達の死を目の当たりにするということで精神的なダメージにさいなまれる子どもたちが増えておりまして精神的なケアが必要です。
また過激派組織が10代半ばの少年たちに武器を与えて戦闘に参加させている例も報告されています。
それも問題ですね。
さらにシリア難民の少女たちに、今非常に深刻な問題が広がっているんです。
それはどういうことですか?10代前半の少女たちの早すぎる結婚が急増しているんです。
10代前半で?シリア難民というのは父親が不在だったり仕事がなかったりで食費にも事欠くほど生活が苦しい家庭が多いんです。
そうした家庭に裕福なアラブの男性が近づいていってお宅の娘と私を結婚させれば一家を経済的に支えようなどと持ちかけるんだそうです。
親は生活の助けになればと、まだ10代前半の娘を嫁がせてしまいます。
ところが結婚生活、ほんの僅かの間で男性が突然姿をくらまして少女の中には望まない妊娠をしたケースもあるんです。
だますケースもあるんですね。
ユニセフによりますとシリア難民のうち金銭的な援助と引き換えに結婚を強いられるケース18歳未満の少女が実に3人に1人に上るということなんです。
3人に1人もいるんですか、これはちょっと恐ろしい話ですね。
そんな目に遭いますと、保守的なアラブ社会のことです、将来再び結婚をする機会も失われてしまうんです。
一度、結婚、出産をしてしまうと難しくなるんですね。
一方これとは別にこの写真のように家計を支えるため、働かされている子どもたちが大勢います。
児童労働ですね。
ですから男女を問わず学校教育を受けられない子どもたちが増えているんです。
国連はこのままではシリアの子どもたちが、いわゆる失われた世代となりシリアという国の未来が失われてしまうと警告しています。
どの問題も本当に深刻ですけれども日本にいる私たちができることはないでしょうか。
食料、燃料、衣服の支援、適切な医療、そして心のケア教育の機会必要とされていることは限りなくあります。
しかし激しい戦闘が続いているシリアはもちろん、その周辺国も外国人が支援のために簡単に入れる状況ではありません。
ですから国連の機関例えばWFPやユニセフUNHCRなどですね。
そして赤十字国際援助団体の活動を資金の面で支えるということが非常に大切だと思います。
NHKの海外たすけあいもその一翼を担っています。
ことしはシリア難民の支援を重視していまして先月それをテーマにしたシンポジウムも開かれました。
WFPのケースで見ましたように資金さえ十分に集まれば大勢の命を助けることができます。
皆さんの心のこもった志が求められています。
出川展恒解説委員でした。
(テーマ音楽)2014/12/11(木) 10:05〜10:15
NHK総合1・神戸
くらし☆解説「厳冬迎えたシリア難民を救おう!」[字]
NHK解説委員…出川展恒,【司会】岩渕梢
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出演者
【出演】NHK解説委員…出川展恒,【司会】岩渕梢
ジャンル :
ニュース/報道 – 解説
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい
情報/ワイドショー – 健康・医療
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