(テーマ音楽)
(江守徹)人が「母なる大河」とよぶドナウの河。
黒海にそそぐドナウ・デルタはヨーロッパ最大の湿地帯なんだ。
見渡すかぎりの葦の原。
世界最大の葦の群生地と言われる。
私の名はイワン。
先祖が迫害され人が近寄れないこの地に逃げてきたという。
ちょっと失礼して水をもらうよ。
ここの水は葦がろ過してくれるからきれいなんだ。
私たちリポバ人は今から300年前ロシア皇帝ピョートルから迫害された。
彼は古いロシア正教の風習を否定し信仰の証しであるヒゲを落とすよう命じたんだ。
しかし先祖たちはそれを拒みここに逃れて伝統を守ろうとしたんだ。
村では昔から垣根や家を葦で造ってきた。
葦の家は通気性がよく断熱効果が高いから夏は涼しくて冬は暖かい。
この立派なかまどを見てほしい。
刻んだ葦を川の泥に練りこんだ伝統のかまどだ。
かまどの熱は部屋全体を暖めてもくれる。
しかしドナウ・デルタの本当の主は鳥たちだ。
何しろ320種類以上の野鳥がいるという。
ヘラサギはくちばしがヘラのような形をしている。
羽がブロンズのような光沢をもっているブロンズトキ。
とにかくここは鳥たちにとってパラダイスだった。
デルタの奥深く進むのは環境保護官の船。
彼らは人間の開発を拒んできたこの大自然を守ろうとしている。
この日は野鳥の調査に行くところだが葦の原に道なんかない。
こうして進むしかないんだ。
どこに沼があるか分からないのでボートは手放せないよ。
目的地までは3kmの距離だが簡単には行けない。
人間を拒絶する葦。
こんな場所だからこそ繁殖する特別な鳥がこの先にいる。
やっとたどりついた。
ドナウ・デルタのシンボルともいえる渡り鳥モモイロペリカンだ。
毎年春になると遠くアフリカから生まれ故郷のこのデルタに帰ってくる。
ペリカンの食事がおもしろい。
彼らは集団で漁をするんだ。
魚の群れを見つけるとこうして大きな円陣を組み網のように魚を囲いこんでいる。
円陣が岸に向かっている。
魚の群れを浅瀬へと追い込んでいるんだ。
そして斉に首をつっこむペリカン。
くちばしの下にある大きな袋が網の役目をして網打尽というわけだ。
水は吐き出し魚だけを上手に飲み込んでいる。
地球は狭くなったというがドナウ・デルタを見ればまだまだ不思議な世界があるだろう。
私はちょっと誇らしい気持だ。
2014/11/27(木) 04:15〜04:20
NHK総合1・神戸
シリーズ世界遺産100「ドナウ・デルタ〜ルーマニア〜」[字]
ヨーロッパ最後の秘境 ▽自然遺産 1991年登録 【語り】江守徹 【テーマ音楽】久石譲
詳細情報
番組内容
ヨーロッパ最後の秘境 ▽自然遺産 1991年登録 【語り】江守徹 【テーマ音楽】久石譲
出演者
【語り】江守徹
音楽
【テーマ音楽】久石譲
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
OriginalNetworkID:32080(0x7D50)
TransportStreamID:32080(0x7D50)
ServiceID:43008(0xA800)
EventID:14246(0x37A6)