あなたは子どもの頃どんな大人になりたかったですか?この国でなりたい大人といえばこんな男たち。
その名もサプール。
オシャレをとことん楽しみどんな時も優雅に振る舞う。
人呼んで世界一エレガントな男たち。
たかがオシャレとお思いでしょうが格好いい大人は今国の未来を変えようとしています。
今夜は世界一オシャレで世界一見栄っ張りな男たちの言い分を聞いてみちゃあもらえませんか?世界的デザイナーポール・スミスのロンドンコレクション。
実はある男たちのファッションがモチーフ。
それはサプールと呼ばれるアフリカコンゴの紳士たち。
色鮮やかな着こなしが注目の的です。
そんなエレガントな男たちに会いたい。
名乗りを上げたのがこの方。
ピンクのスーツがトレードマークの…スーツで勝負をかけるもの同士聞いてみたい事があるとか。
俺アフリカ行くのよコンゴ。
コンゴ?これコンゴの人なんだけどああそうなんですね。
めちゃくちゃオシャレですね。
すんげえオシャレなの。
オシャレする理由意味自分たちを着飾る意味をすごい知りたいですよね。
何か決意があるのかもしれないですもんね。
ところで皆さんコンゴ共和国ってご存じですか?飛行機を乗り継ぎ30時間。
アフリカ中部にある日本と同じくらいの広さの国です。
国民の1か月の平均所得はおよそ2万5,000円。
3割の人々は一日130円以下で暮らす貧困層だといいます。
大地さんサプールを探し始めたのですが…。
これえらい事ですよ。
人人人。
わ〜すごい。
ここは市場って考えていいのかな?何で「市場」で教えてくれたんだ?えっ?本当にいる?ここサプール。
いるのかな?聞き込みを進めたいのですが次から次へといろんなものを薦められます。
うわ〜これ虫?これ虫ですか?まずは溶け込まないとね。
あ〜!セボン。
あっ!おや?もしかして…。
サプール?サプールじゃない?これ。
どこで会える?どこで会える?ようやく手がかりが…。
何かいいですね。
踊ってる。
ヘイボーイ!サプール?サプールは歩くだけなの?しゃべるんだ?しゃべったり歩いたり?毎日きれいな服着てるのかね?分かんないな。
サンキュー。
スーツをオーダーできる感じの所っぽいです。
何だかエレガントなにおいが…。
わっ格好いい!これサップだサップ。
サップ?これ?見ていい?本当だ。
あっ会えた。
残念!サプールは写真の中。
サプール見てきたけどいなかった。
今日はいない?今日の僕どう?趣味悪い?全然駄目だったよ〜。
ゼンゼンダメダッタ。
・「全然駄目だったよ」オシャレで優雅なサプール探し初日は全然駄目だったよ〜。
(子どもたち)ゼンゼンダメダッタヨ!わ〜すげえ!2日後サプールが現れるという土曜日がやって来ました。
箱乗りしてる。
すると…。
みんな葉巻くわえたりとかしてる。
わ〜!あれサプールじゃない?いましたいました。
舗装もされていない道端にばっちり決めた男たちがずらり。
こっちも…すごい至る所にサプール出てきた。
昨日まで全然いなかったのに今日すごい出てきた。
向こうにもすごいいるよ。
昨日まで全然会えなかったんだよ。
ケンゾーのスーツだ。
サプールやっと会えたんだけどサプールって一体何なんですか?サプールっていう職業なの?彼らこそ世界一エレガントな男たちサプールだ。
フランス語でオシャレで優雅な紳士たちその頭文字をとってこう呼ばれています。
派手な色を使いながらも品よく見せる。
3色以内が最もエレガントなんだとか。
そしてとにかく気取って歩く。
やっぱ歩くんだねとにかく。
「歩く」と「ステップ踏む」のと…。
ブランド物と分かるようにタグを見せびらかすのも彼らの流儀です。
プラダ。
随分高そうですがどのくらいお金をかけているんでしょうか?平均すると支出の4割が衣服代。
なんと最も多く使う国の4倍。
奥さんには怒られないんでしょうか?世界一服にお金をかける男たちは妻の理解があってこそ。
サプールはコンゴで90年も受け継がれているというから驚きです。
街と全然違う…ちょっと何だったら浮いてるぐらいの人いますよ。
格好よすぎるでしょ。
仕事は何やってるの?仕事。
大体の月給いくらかって聞ける?3万!?それ…サプールになってお金いっぱい使うのって苦じゃないの?彼はサプール歴15年というジョン・バレタ。
彼が言う「暗闇を照らす明かり」とはどういう事なんだろうか?翌朝ジョンの家を訪ねる事にしました。
うん?ああジョン!?全然分からなかった。
ジョン!びっくりした!あれ?昨日と全然違う。
ここ?あれ?弟?息子!?ジョン子どもいるの?ジョンは今シングルファーザー。
ボンジュール。
家は?家これ?電気工事の仕事をしながら実家暮らしで子どもを養っています。
全然イメージと違う。
もっと大きい家かと思った。
うわ〜!いやいやいやいやちょっと待ってジョン。
案内されたのは4畳半の部屋。
だってもう全然ないよ。
スペースここだけだからね。
立てるスペース。
ちょっとスーツ開けていい?これ。
ウイ。
うわ〜入ってる入ってる。
これ何着ぐらいある?はあ〜全部ブランドだろ?うわもう何か…。
ネクタイいやいやいやいや…。
ジョンがこの15年で服に注いだお金は総額で300万円。
給料の8年分です。
すごい数だよ。
僕のイメージもっとでっかい家でもう部屋もいくつかあって両親がお金持ちでその実家に住んでるのかなと思った。
サプールの華麗なイメージとは打って変わってジョンの日常は至って質素です。
水くみ行くのは毎日の日課?へえ〜それはもうジョンの仕事なんだな。
子どもの頃からの日課。
しかしこの毎日の中での出会いがジョンをサプールの道へと導きました。
ああこれでくむの?ジョンジョンジョン待って待って。
ちょっと待って…。
腰痛い!ふだんこれジョン2つ持つの?まじで?すごいな!17歳の時通りを闊歩するサプールに強烈に心を奪われ服への情熱が芽生えました。
でも好きな洋服だからこうやって手洗いするのもいいよね。
ハハハハハ!そうか。
洗うのはしんどいよね。
ジョンには今つきあっている彼女がいるそうですが結婚資金がたまらず再婚は当分先。
それでもサプールはやめられないといいます。
そういう時だけはこういうつらい現実とかからも解放されるんですね。
あ〜ジョン終わったよ。
洗濯を終えここからがサプールの時間。
毎週日曜日は着飾って街へと繰り出します。
組み合わせは無限大。
どうコーディネートするかサプールの腕の見せどころです。
黄色は?黄色。
合わない?室内の温度は35度。
真剣勝負は続きます。
ジョンがこだわるのは流行にとらわれず色で遊ぶ事。
無難にまとめるのではなくあえて柄物も上手に組み合わせそれでいてエレガントにまとめます。
服は自分自身を映す鏡。
その人の内面までが透けて見えるとジョンは言います。
格好いい!格好よくなった!もう出来上がり?すごい…。
いや格好いい!やっとだよ。
何時間かかった?準備から。
そんな訳ねえ。
洗濯物が全部乾いちゃったよ。
触ってごらん。
ほら。
どう思う?お父さん。
お父さんどう思う?格好いいって?ジョン俺着替えてくるね。
待ってて待ってて待ってて。
ここで大地さんも一張羅に変身。
いい?ここか。
なるほどね。
いざ街へ。
ジョン・バレタジョン・バレタみんな言ってるよ。
ジョンが通るって聞いただけでそこ家族出てきてるよ。
通りにはジョンを一目見ようという人たちが。
ジョンも素通りはしません。
全然分かんない。
ステップを踏み街の人々を楽しませます。
これはスコンテンという技だそうです。
(歓声)何これ?イエ〜イ!イエ〜イ!すごいね。
映画館もないこの街でサプールはエンターテイナーとしての役割も担っているのです。
歌舞伎役者のごとく次々と見得を切ります。
すごい!期待値すげえ上がるよ。
あんなもうみんなが行け行け行けって言ってんだから。
ここ何ていう…?夜7時。
やって来たのはサプールの聖地マンブルーです。
土…この舗装されてない道トタン屋根そこにこういう音楽とこういうサプールという存在がいるというこの…何だろう?この異空間というかバランス。
うわ〜全然違う!すげえいっぱいいる!各地区を代表するサプールが集まっていました。
ここは美意識を競い磨く場です。
ここで認められてこそ真のサプールの仲間入りができるといいます。
着飾る事で品位が身につき心も豊かになる。
そして人々の喜びとなれる。
サプールはそんな暗闇を照らす明かりでした。
翌日ジョンは再び日常へと戻っていきました。
週末また輝くために。
大統領の前を行進する名誉ある集団の中にサプールの姿がありました。
1960年までフランスの植民地だったその歴史がサプールの文化を生みました。
当時西洋の服が持つ気品と清潔感に憧れた人々はそれに独自の色彩感覚を加え楽しむようになったのです。
現役の大臣だってサプールです。
しかし1997年サプールの文化が危機にさらされます。
与野党の対立が激化し内戦へと発展したのです。
首都ブラザビルが戦場となり市民を巻き込んで推定1万人もの犠牲者が出ます。
エレガントな男たちが闊歩していた通りは戦場へと変わりサプールは街から姿を消しました。
すごい激流だな。
それでも細々とサプールの火を守り抜いてきた人たちがいました。
ボンジュール大地です。
マイネームイズオオチ。
お〜!セブランさん?セブラン。
アイムセブラン。
ボンジュール。
その一人59歳のセブランさん。
父親の影響でサプールとなり服に込められた魂を受け継いでいます。
サプールは平和主義を貫く者。
服こそが己を主張する武器である。
内戦が起こってもなおその教えを守ろうとしました。
サプールの命である服を埋めて隠し家族で避難しました。
3日のつもりが戻ってこられたのは1年後でした。
脈々とつないだ文化の墓場。
街にはいまだに内戦の跡が生々しく残っています。
しかしサプールたちはそこから再びはい上がってきました。
「武器を捨てエレガントに生きる」その信念と共に。
復興が進む街。
しかし職にも就けず希望を見いだせない若者たちも多くいます。
そんな中「サプールには国の未来を切り開く力がある」そう考える男がいます。
この地区を代表するサプールピヴォさんです。
スタイリストとして生計を立てながら自宅の庭で無償でサプールの心得を伝えています。
彼を慕い12人が教えを受けています。
近所の子どもも飛び入り参加。
格好いい大人への憧れが自然と育っていきます。
1時間遅れて一人の生徒がやって来ました。
テッド22歳です。
厳しさは期待の表れ。
テッドは3年前街の有名人だったピヴォさんに憧れて入門した一番弟子です。
ピヴォさんはテッドを本格的にデビューさせる事を考えていました。
先輩サプールが一堂に会する華やかなパーティーへの参加です。
サプールたる者紳士であれ。
伝えたのは人を敬う心でした。
テッドはピヴォさんに入門するまで4年間無職でした。
「服を買いたい」。
その一心で仕事を見つけました。
パーティーは明日。
最後の特訓が待っていました。
これは人にエレガンスを感じさせる所作。
目線から歩き方に至るまで全ての動きに神経をとがらせます。
人を敬うのがサプールの教え。
それは自分も人から尊敬される存在でなくてはなりません。
着飾るだけでは駄目。
美しい所作があってこそ人を引き付けます。
座る時も何か格好つけた方がいいですか?もう無視してんだ。
先生洋服を着るだけじゃなく何でこういう動きとか行動が必要なんですか?自分に…自信満々に見せるための行動という事?気持ちは常に誇らしげにするという事でいいですか?人に見られているのを意識して。
「人を敬い自分を信じ誇りを持って生きよ」。
サプールの教えは人としてどう生きるかそのものです。
ここね。
テッドは兄の家に居候をしています。
思ったより洋服本当少ないし…。
これは?これはもう新品じゃん。
これは働いて自分で買ったの?こうやってネクタイとかからどんどん給料をためて買っていくのか…。
隣で暮らす親戚が昔のテッドについて話してくれました。
暴力振るわなくなった?暴力振るってたの?昔。
でもサップは駄目だもんね暴力は。
人生変わったよ。
人間が変わったよね。
パーティー当日テッドの衣装を選びにピヴォさん行きつけの店へと向かいます。
店内にはヨーロッパ製のスーツが所狭しと並んでいます。
今までは借りたスーツを着ていたテッド。
デビューを控え初めて自分のスーツを選びます。
テッド顔が緊張してるんだよ。
テッドが選ぶんじゃなくてチャンピオンが選ぶの?一番弟子のデビュー。
ピヴォさんにはある思いがありました。
選んだのはドレッシーな1つボタンのスーツ。
イタリア製で値段は4万円です。
買ってあげなきゃいけないの?え?これピヴォさんが買うんですか?いやピヴォさん何でそこまでしてあげるんです?若い人に情熱を何でそこまで注げるんですか?何でそこまでできるんですか?そういう事ができるのがサップなんですか?ひいてはサップとして国をも考えているという事でしょ?ちょっと鳥肌立っちゃった何か俺…。
外では近所の子どもたちがテッドの晴れ姿を心待ちにしていました。
イエ〜イ格好いい!
(拍手)やべえ!これはやばい!むちゃくちゃ格好いいじゃん!似合いそう似合いそうだと思ってたけどこんな格好よくなる?まっすぐパーティーへと向かうかと思いきやピヴォさんわざわざある場所へ立ち寄りました。
うわ〜みんなにすげえ声かけられてる。
市場の中を通っていくんだ。
サプールは地域のみんなから認められてこそ。
ご近所にテッドのお披露目です。
我が街のサプールが名を上げる事は地元の人々にとっても誇り。
すごい。
もう周りのみんなのヒーローになってる。
スターが来たみたいになってる。
興奮してる。
確かにこれだけ歓迎されたら格好悪くは生きられないよなテッド。
(拍手と歓声)普通じゃないよこれ。
(歓声)みんなの街のヒーローになってるわ。
パーティー会場へ到着。
テッドにとってはデビューの場。
おめでとうございます。
20人以上の先輩サプールが集まっていました。
その前でどう振る舞えるか真価が問われます。
サプールが集まればこれが始まります。
エレガントさを競い合うパフォーマンスです。
いきなり始まった。
まずは1人目走りました。
ああ見せてる見せてる。
先輩たちを見届けたテッド。
あっテッド!テッドだテッド!敬意を込め最後に歩きだしました。
(拍手)以前は仕事もせずケンカに明け暮れる毎日でした。
しかしピヴォさんと出会い偉大なサプールになるという夢が出来ました。
(拍手と歓声)すげえ沸いてる!師匠からのスーツに恥じない堂々たる振る舞い。
すげえ!暗闇を照らす明かりがまた一つここにともりました。
旅の最終日。
大地さんはサプールへの敬意を服で表そうとしていました。
たかが服されど服。
ただ服を格好よく着るというだけじゃなくてそれに伴って外見をよくするという事は…気持ちとか内面だから結局外見と内面が一つというか一つにつながっているんだなというのはすごい何か感じましたね。
おはようございますボンジュール。
お待たせしました。
着飾る事で伝える感謝。
向かったのはあの聖地マンブルー。
あ〜!セブランさん!うれしい出会いが待っていました。
内戦の悲劇を乗り越えたセブランさん。
平和を願い生涯サプールであり続ける事を誓います。
テッド。
この場所で先輩たちに磨かれ次の世代をしょって立つと意気込んでいます。
自分の…着飾る事によってさ理想の自分に近づく訳じゃん。
そしたら周りのみんながその自分を認めてくれる訳でしょ。
そうすると自分に自信がつくし自分の生き方をこのままでいいって思うしその自信の先にはさテッドもそうだけど夢があったり希望があったりするじゃん。
洋服は希望であり平和の象徴なんじゃない?ありがとうございました。
あなたは子どもの頃どんな大人になりたかったですか?
(一之瀬)道は一つじゃない。
2014/12/11(木) 02:15〜03:05
NHK総合1・神戸
地球イチバン「世界一服にお金をかける男たち」[字][再]
ポール・スミスも刺激を受けたコンゴの紳士たち・サプール。道をかっ歩すれば街中が歓声に沸く子供たちの憧れの存在。給料の半分を服に注ぐその情熱はどこから来るのか!?
詳細情報
番組内容
あのポール・スミスも刺激を受け、コレクションに反映させたというコンゴの紳士たち。土煙舞う道端を、色鮮やかなスーツに身を包みかっ歩する。彼らはサプールと呼ばれ、ひとたび現れると、人々が家々から飛び出し、喝采を送る街のヒーローだ。しかし、その正体は平均所得月2万5千円の一般の人たち。給料の半分以上を衣服につぎ込む、その情熱の正体とは!?漫才師のダイノジ・大地さんが、「着飾る」意味を探る。語り:役所広司
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【ナビゲーター】役所広司,【旅人】大地洋輔
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