くらし☆解説 2014.12.19


こんにちは。
「くらし☆解説」。
岩渕梢です。
激しい内戦が続くシリアは本格的な冬を迎えています。
戦火を逃れた大勢の難民や避難民は食料にも事欠くなど命の危険にさらされています。
担当は出川展恒解説委員です。
出川さん今シリア難民は命の危険にさらされているという事ですね。
はい。
2011年に始まったシリアの内戦ですけれども難民や避難民の人たちにとっては今年で4回目の冬になる訳ですが今まで以上に厳しい状況に追い込まれています。
今日はその問題の背景を探り日本から何ができるかについても考えます。
ポイントはこちらです。
食料支援寒さ対策そして子どもたちの保護です。
この3つですね。
今シリアの内戦というのはより一層複雑にそして激しくなっている訳ですよね。
今年自らをイスラム国と呼ぶ過激派組織が一気に勢力を拡大し国境を越え隣のイラクにまたがる広い地域を支配するようになりました。
アサド政権反政府勢力それにイスラム国による三つどもえの戦いです。
アメリカ軍などによる空爆作戦も始まりました。
これまでに少なくとも20万人以上が犠牲になりその3割以上が一般市民です。
そして大勢の難民や避難民が出ているという訳ですね。
はい。
戦火を逃れて周辺国に逃れたシリア難民はこの地図のとおりです。
現在5か国合わせて330万人以上。
これに加えましてシリアの国内で避難民となっている人たちが650万人以上。
つまりシリアの人口のおよそ半数が住んでいた家を追われた計算になります。
そんなに多いんですね。
難民や国内避難民の多くは国連や国際援助団体の支援によって避難生活を送っているんですが本格的な冬を迎えて非常に厳しい状況に追い込まれています。
具体的にはどういう状況なんでしょうか。
まず食料が十分に届かなくなっています。
それはどうしてですか?難民に食料支援を行っている国連のWFP世界食糧計画が極めて深刻な財政難つまり資金不足に陥っているからです。
WFPは今月の1日シリア難民のおよそ半数を上回る170万人に対する食料支援を中止せざるをえなくなったと発表しました。
支援を中止。
非常にショッキングですけれどもこれはどういう事なんでしょうか。
WFPはシリア難民に対し初めのうちは食料そのものを配っていたんですけれども今では食料引き換え用の電子カードをまず配布し難民各人がスーパーマーケットで必要な食料を選んで購入する仕組みが主流になりました。
自分で買う訳ですね。
選択の幅が出てきた訳ですね。
レバノンやヨルダンの町なかではこの方式を採用しているんです。
そしてWFPは電子カードに毎月1人当たり日本円に直すと3,500円程度を振り込んできたんですけれどもそのための資金が底をついてしまって送金できなくなった訳です。
電子カードを使っている難民はおよそ170万人。
その支援がストップしてしまいました。
どうしてこういう事になってしまったんでしょう?アフリカのエボラ出血熱など新しい緊急事態が起きましてその対応で予算が底をついてしまったんですね。
ほかにも支援が必要になったという事ですね。
WFPとしては緊急に全世界に向けて資金を提供してほしいと呼びかけたんです。
今その問い合わせ先が出ていますね。
こちらですね。
これに応じて各国の政府企業そして個人などからほぼ1か月分の資金が集まったという事で食料支援をなんとか再開できるめどが立ったという事なんです。
しかしシリア難民への食料支援は毎週およそ40億円かかるという事でして来月以降も再び中止に追い込まれる可能性があるという事です。
全ての難民が無事にこの冬を乗り切れるよう資金がとにかく必要なんです。
まだ足りないという事ですね。
そういう事です。
そして次に寒さ対策もまた問題だという事ですけれども冬はこの地域相当寒いんですよね。
はい。
標高が高い所になりますと氷点下まで気温が下がります。
平野部でも防寒具がなければ生活できませんが燃料や防寒具も不足してるんです。
これはまたどうしてなんでしょう?過激派組織のイスラム国がシリアの油田地帯を支配し石油を密売して活動資金としているため灯油などが不足しているんです。
そしてその値段も高騰しています。
ですから難民たちはまきや廃材を燃やして暖をとっているんですが着の身着のままで避難してきた人たちは衣服や毛布を十分に持っていません。
これで氷点下を乗り切るというのはかなりつらい事ですよね。
そしてこちらの映像はレバノンに逃れたシリア難民で2週間前に撮影されたものです。
はだしや薄着の子どもが多く冬を乗り切れるとは思えません。
衣食住いずれもせっぱ詰まった状況だという事ですけれどもまた次に子どもたちの問題もあるという事でしたがこれはどういう事なんでしょう?実際内戦で一番深刻な影響を受けているのは子どもたちです。
ユニセフ国連児童基金によりますとシリアでは今年1月から9月までの間に学校への攻撃が少なくとも35回も確認されまして105人の子どもたちが犠牲になりました。
学校も狙われるんですか?そうなんです。
そして学校や病院も攻撃の対象となっているんですね。
ひどいですね。
絶え間のない戦闘の恐怖にさらされます。
そして家族や友達の死を目の当たりにするという事で精神的なダメージにさいなまれる子どもたちが増えていまして精神的なケアが必要です。
また過激派組織が10代半ばの少年たちに武器を与えて戦闘に参加させている例も報告されています。
これも問題ですね。
更にシリア難民の少女たちに今非常に深刻な問題が広がっているんです。
それはどういう事ですか?10代前半の少女たちの早すぎる結婚が急増しているんです。
10代前半で?はい。
シリア難民というのは父親が不在だったり仕事がなかったりで食費にも事欠くほど生活が苦しい家庭が多いんです。
そうした家庭のところに裕福なアラブの男性が近づいていって「お宅の娘と私を結婚させれば一家を経済的に支えよう」などと持ち掛けるんだそうです。
親は生活の助けになればとまだ10代前半の娘を嫁がせてしまいます。
ところが結婚生活ほんの僅かの間で男性は突然姿をくらましてそして少女の中には望まない妊娠をしたケースというのもあるんです。
だますケースもあるという事ですね。
ユニセフによりますとシリア難民のうち金銭的な援助と引き換えに結婚を強いられるケース18歳未満の少女が実に3人に1人に上るという事なんです。
3人に1人もいるんですか。
これはちょっと恐ろしい話ですね。
そんな目に遭いますと保守的なアラブ社会の事です。
将来再び結婚をする機会も失われてしまうんです。
一度結婚出産してしまうと難しくなると。
はい。
一方これとは別にこの写真のように家計を支えるため働かされている子どもたちが大勢います。
児童労働ですね。
ですから男女を問わず学校教育を受けられない子どもたちが増えているんです。
国連はこのままではシリアの子どもたちがいわゆる失われた世代になりシリアという国の未来が失われてしまうと警告しています。
どの問題も本当に深刻ですけれども日本にいる私たちができる事はないでしょうか。
食料燃料衣服の支援適切な医療そして心のケア教育の機会。
必要とされている事は限りなくあります。
しかし激しい戦闘が続いているシリアはもちろんその周辺国も外国人が支援のために簡単に入れるような状況ではありません。
ですから国連の機関例えばWFPユニセフUNHCRなどですね。
そして赤十字国際援助団体の活動を資金の面で支えるという事が非常に大切だと思います。
NHKの海外たすけあいもその一翼を担っています。
今年はシリア難民の支援を重視していまして先月それをテーマにしたシンポジウムも開かれました。
WFPのケースで見ましたように資金さえ十分に集まれば大勢の命を助ける事ができます。
皆さんの心の籠もった志が求められています。
出川展恒解説委員でした。
では今日はこの辺で失礼します。
よ〜いはい!2014/12/19(金) 10:05〜10:15
NHK総合1・神戸
くらし☆解説「厳冬迎えたシリア難民を救おう!」[字][再]

NHK解説委員…出川展恒,【司会】岩渕梢

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【出演】NHK解説委員…出川展恒,【司会】岩渕梢

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