趣味Do楽 いただきます お寺のごはん〜心と体が潤うレシピ〜 第2回「煮物」 2014.12.10


味わい深い一品です。

日本古来の食とお寺には深い関わりがあります
お寺に受け継がれてきた無駄のない食の中に心と体を豊かにする知恵が詰まっています。
そんな各地の「お寺のごはん」を私とよた真帆が訪ねました。
「お寺のごはん」から日々の暮らし自分自身を見つめ直すヒントがきっと見つかるはず
京都・了徳寺におよそ750年前から伝わる師走の風物詩大根焚を通して煮物の奥深さを学んでいきます。
今日も料理僧のお二人からおいしくてためになるどんなレシピを教えて頂けるんでしょうか
こんにちは。
とよた真帆です。
「趣味Do楽お寺のごはん〜心と体が潤うレシピ〜」。
教えて下さるのは料理僧の青江覚峰さんと吉村昇洋さんです。
(3人)よろしくお願いいたします。
料理僧として食を切り口にお寺を身近に感じてもらおうとユニットを組む2人に8回にわたり取って置きのレシピを教わります。
吉村昇洋さんは福井の永平寺で修行。
現在はお寺で精進料理塾を開く他大学の講師や書籍の執筆など幅広く活動しています。
青江覚峰さんはアメリカの大学で学びビジネスマンを経て僧侶となり食と仏教に関するユニークな試みを各地で行っています。
今日は青江さんが教えて下さる。
はい。
「お寺のごはん」と「煮物」というのはやはり切っても切れないものという感じなんでしょうか?そうですね。
やはりお寺ですと催し事行事行事にたくさんの方がお寺に見えるんですね。
その時に大量に一つの鍋で作る事ができる煮物というのは本当に重宝いたします。
そうですね。
そう言われてみれば。
例えば私のお寺では年間行事の一番大きいものに報恩講というものが秋口に行われるんですね。
その時には本当に大勢のお檀家さんご門徒さんという方がお見えになるのでそういった法要の時のお料理をお寺では「お斎」というんですね。
この「お斎」という席の中でやはり煮物というのは非常によく使われているものです。
「お斎」とは仏教における正式な食事の事。
一般的には法要など仏事の際の会食を通じて交流を深める場の事も指します。
そうなんですよね。
私もちょっと初めてに近いぐらい伺った言葉です。
「お斎」っていうのは。
今回はですねお斎を大根焚として振る舞っている京都・了徳寺さんを取材してきたんですね。
はい。
了徳寺さんの大根焚ですね。
ちょっとご覧頂けますでしょうか。
(2人)はい。
了徳寺は京都の北西部の山裾鳴滝の地にあります。
お寺のすぐ近くには鳴滝の地名の由来となった滝が現存していて風情を醸し出しています。
その鳴滝にある了徳寺。
別名「大根焚寺」とも呼ばれています
毎年12月に行われる大根焚
京都では親しみを込め「だいこだき」と呼びますがその元祖がこちらの了徳寺と言われています
大根焚きは他の地域のお寺でも行われています
その由来などはそれぞれのお寺ごとに異なるそうです。
共通するのは冬の恵みである大根の煮物を人々に振る舞い無病息災を祈願する事なんです
あっこちらがお寺ですかね。
煙突がある。
了徳寺の大根焚にはどんないわれがあるのでしょう
よろしくお願いいたします。
遠いところわざわざお越し頂きましてありがとうございます。
了徳寺でございます。
すてきなお寺ですね。
大根焚の行事があるという事を伺ってそれを是非お話を伺いに来たんですけれども。
それはわざわざ…。
こちらにお参り頂いた方々にお斎として大根を差し上げております。
お斎というのは?法要が寺で勤まりますとそのあと皆さんとご一緒に精進料理をお食べ頂くんですがそれがうちでは大根という事になっております。
それは意味合いといいますかそれを頂く事によってどういうような意味があるという。
(滋賀)皆さんと一緒に当時ですと親鸞聖人の教えを頂戴するという事かと思います。
毎年12月の9日と10日に催しております。
そのころに親鸞聖人がお立ち寄り頂いたという事で始まったかと思うんですが。
そもそも了徳寺のお斎大根焚はどのように始まったのでしょうか。
逸話によると1252年鎌倉時代。
浄土真宗の開祖・親鸞は冬の寒い日鳴滝の村に立ち寄り人々に仏教の教えを語って聞かせたそうです。
そして村人は山深い村で教えを説いてくれた事にいたく感謝し何かもてなすものはないかと考えました。
思いついたのは畑にあった大根を塩炊きにしたもの。
親鸞は村人のもてなしに感激しました。
すると親鸞はその辺りに生えていたすすきの穂を束にして筆代わりとし墨の代わりに大根を焚いたかまどのすすをつけて一気呵成にある言葉を一筆したためました。
その書は現在でも了徳寺に大切な宝物として受け継がれています。
阿弥陀如来に身を委ねる事の大切さを説いた言葉を村人に残したのです。
鳴滝の人々は親鸞の形見として「すすき塚」を建て大切に伝えてきました。
これは昭和30年ごろの貴重な映像。
了徳寺の大根焚は地域の営みの一つとして鳴滝の人々に代々受け継がれてきました。
それは今も昔も変わりません。
親鸞聖人がこの地を訪れて以来750年以上もの間鳴滝の人々が絶やす事なく守ってきた伝統なのです
前総代の田辺さんです。
とよた真帆です。
よろしくお願いします。
いつも大根焚を…。
(滋賀)取りしきって頂いてます。
これ薪がありますけど薪で…。
そうです。
この薪で昔からの焚き方でこういう薪で約2時間ぐらい焚くんです。
そやから火力がすごくきついんですね。
それがここの焚き方というんですかね。
昔からの焚き方で。
皮が一番栄養ありますもんね。
(田辺)そうですね。
全部で何本ぐらいの大根ですか?
(田辺)今3,000本農家に発注してるんです。
うわ〜。
(田辺)焚き方としてはこういう釜に大根を入れる。
それで火力がきついから吹きこぼれる。
吹きこぼれるという事はそれだけ灰汁が抜ける。
灰汁が抜けるから普通の家庭ではそういう事は…一回湯がかれてまた味をつけられるんですけどここはもうそのままじか焚きですわ。
じか焚きでこの大根を焚く。
そやけどその焚き方も昔は塩だけで焚いたんですね。
だけど今現在おしょうゆもちょっと入れるようになった。
ただ塩としょうゆだけでおだしは一切使っておりません。
ですからほんとの歴史の焚き方をやっておるんですね。
皮付きのまま焚かれる了徳寺の大根焚。
使われている大根は京野菜の名産地・篠町で了徳寺だけのために特別に栽培しているものなんです。
地野菜として知られる篠大根という貴重な大根です
この篠大根は葉付きのまま出荷され葉っぱも当日からしあえのお浸しとして出されます。
まさに大根1本を丸ごと無駄なく頂くお斎料理。
それが了徳寺の大根焚なのです
また了徳寺にはもう一つお寺に伝わる大根焚があるというので住職のお母様に作り方を見せてもらいました。
親鸞聖人にお供えする塩味だけの特別な大根焚です
(道子)親鸞聖人様にお供えするのがね格好もうちのおばあちゃんがされてたのをそのまま真似してこういうふうに…。
どなたから習った?ずっと先代からですね。
おばあちゃんから。
おばあちゃんがこういうふうな格好でね…。
美しい。
昔ながらの言い伝えですのでねこれを絶やさないようにしたいかなあって今次の代にいくようにね。
お母様がこれを作られて何年ぐらい?もう30年近くなりますかね。
そうですか。
じゃあ次にお嫁さんに教えている。
そうです。
簡単な事ですけどやっぱりね。
毎年こういうのができるのはありがたい事だなと思ってますよね。
ちょっと様子見ます。
あ〜すごいいい香りですね。
甘い香りがします。
そうですね。
はいもう大丈夫です。
大丈夫ですか。
お塩入れます。
この段階でお塩なんですね。
量はスプーン大さじ1杯。
適当…。
適当アハハハハ。
こんなもんでどうでしょう?これでしばらく…。
ちょっと蓋して火を入れる。
何かこれを頂くと風邪をひかないとかそういう皆さんおまじないのように。
お供えしたのを夕方に下げましてそれからやっぱりお下がりをね喜んで頂いてひと切れずつね。
ちょっとこう体に元気が。
(道子)体に…アハハハハ。
おかげがあるとか何とか言われてますよね。
やっぱり自分の気持ちですよね感謝のね。
ありがたい事ですよね。
出来上がった塩味の大根焚はこちら。
何ともほっこりしておいしそうな煮物です
いただきます。
どうぞどうぞ。
うん!いかがでした?うんおいしい!ありがとうございます。
まずお塩だけっておっしゃられていたからどんなお味なんだろうと思ったら大根そのものの甘みがすごく引き立つんですね。
でもこれは大根そのものの味が甘みが…。
(滋賀)素材を生かした味になってますね。
へえ〜私これからおうちで炊く時も塩だけにします。
皆さんうちの大根をお召し上がりになって750年の時を超えて親鸞聖人に出会うて頂くと。
そのご縁を大切にしていきたいと思っております。
箸袋には…
実は了徳寺の大根焚は俳句の季語として辞書に載っているほどなんです
という事で私が頂いたのはお供えする大根だったのでだしを使わず塩のみ。
それも最後に入れたぐらいで。
でね私も実はだしを使って煮物をするのでその味に慣れてたんですけれども塩だけで焚いたのがまあおいしく。
そして大根の味があっこういう味だったなって思い出させるという感じだったんですよ。
ほんとに甘くておいしかったです。
やはりね大根素材そのものの滋味あふれる味というのがいいんでしょうね。
そうですね。
現代ですとやっぱりいろんなだしを使って料理してまた奥行きのあるお料理たくさんありますけど「お寺のごはん」として煮物ではどんなだしを使われるんですか?「お寺のごはん」で普段使うだしを今日はお持ちしました。
こういったものを使います。
美しい。
例えば一般的によく使われる昆布のおだしですね。
しいたけのおだし。
この辺りは普段の日常でも使うと思いますけども例えばわかめを戻した…。
これおだしになる?わかめも結局乾燥わかめのものを戻すと戻したおつゆがわかめの香りと味がついて非常においしいのでこれもわかめだしです。
ちょっと塩も利いてるという事ですか?乾燥したものだと。
そしてこれが大豆だしですね。
大豆をいってよ〜くいった大豆をお湯に入れて一晩かけて戻したものです。
大豆だし?はい。
すごいんだ。
青江さん今日は素材の持つだしを生かす煮物という事でどんなレシピを教えて下さいますでしょうか?今日はですねほんとに先ほどの了徳寺さんのように塩炊きの塩だけで作った大根炊きもすごくおいしそうだったのでそこをちょっとオマージュをさせて頂いてだしを使った「大根の山椒炊き」というのはいかがでしょうか?お〜山椒炊き?うわあ頂きたいです。
おいしそうですね。
ねえ。
今日作るのは…面取りした大根を薄味のだし汁で炊いた煮物です。
材料はこちら。
では大根を切っていきましょう。
輪切りにしていきます。
そんなに厚くやっちゃいますか?はい。
厚くむいてもこの皮も後で使ってまいりますので。
あ〜そうですか。
なので皮は捨てないで下さいね。
(とよた吉村)はい。
大根は一口サイズにカットして面取りをしていきます。
お野菜も口に入れた時に角があるのとないのではほんとに舌触りも違います。
青江さんそれではむいた皮と葉っぱを無駄なく頂く心得をひとつお願いいたします。
このように面取りした部分もこちらにありますけれども全部が食材になるという事ですよね。
全部使っていきたいと思います。
ではこちらの今日葉っぱですとか皮ですとか面取りをしたあとの部分はこれ使って吉村さんに何か作って頂いてもいいでしょうか?はい分かりました。
じゃ何かお願いいたします。
何か用意いたします。
そしてこちらは?大根をこれから炊いていこうと思います。
まずお鍋に大根を入れていきます。
鍋に大根を入れて米のとぎ汁をヒタヒタになるまで注ぎ強火にかけます。
初めは強火で結構ですので沸騰してきたら弱火にしてあとはじっくりと30分ほど大根に串がスッと入るまで煮ていきたいと思います。
はい。
楽しみだ。
下ゆでが終わったら流水で大根が透き通るまで冷やします。
随分透明感出てきましたね。
ほんとにきれいになってきましたね。
それでは煮物の心得をお願いいたします。
おだしは素材の持ち味を生かすように薄味にひいた昆布だしとしいたけだしを使用し薄口しょうゆと塩だけで味を調えます。
今日は乾燥した山椒を使いますが手に入らない場合は粉山椒でもOKです。
これを弱火で煮ていきます。
煮汁が2/3くらいになったら炊き上がりです。
うんいい塩梅ですね。
いい塩梅?よかった。
青江さん真帆さん。
吉村さん。
お疲れさまです。
おいしそうなおみそ汁が。
先ほどの大根の皮とあと面取りした残りのもの。
おみそ汁を作りました。
ありがとうございます。
わ〜おいしそうだな。
素材の味をとことん引き出した「大根の山椒炊き」。
ほっこり温かな一品です。
大根の葉はだしをとった昆布と一緒に炒めてふりかけに。
みそ汁も添えて大根1本を丸ごと無駄なく使ったお膳の完成です。
おいしそう!ですね!
(3人)いただきます。
うんおいしい。
山椒の香りがほのかに。
ほのかにする。
大根の皮がねこんなにせん切りになっておいしそうです。
おいしい。
あとは昆布。
だしをとったあとの昆布を混ぜて炒めております。
おいしいぞ。
おっアハハハハ。
吉村さんおいしい。
よかったです。
おいしい!最初に了徳寺さんにお邪魔してこの大根焚の由来を伺った時にまず村人がお礼で大根を焚いたものを差し上げた。
そしてそのあと何百年後かにお寺が出来て大根焚が名物といいますかそれが行事になったという事を聞いてお寺が先とかではなく人の真心みたいなものが先というところにすごく感動して。
やはりそういうところから何か文化的なものとか伝わるものというのが生まれるんだなと思って大感激したんですね。
大根1本ですけどやっぱり人の力とかすごいなと思いました。
思いとか。
ここの目の前にここにある食事全部大根が入ってるわけですよね。
大根1本が全て表現されている。
余す事なくこうやって使うという事ができる。
そのように行うという事がすごく大切な事だなと。
青江さん今日はいかがでした?今日はほんとに煮物というお話をさせて頂いて大根焚も何百年と繰り返してきて1年も欠かさず続けてきた事に感謝と感動も感じえますしこのシンプルで素材の持つ力。
これが何よりも人の心を動かすんだなと思います。
今日もおいしく頂きました
ごちそうさまでした。
(青江吉村)ごちそうさまでした。

(テーマ音楽)2014/12/10(水) 21:30〜21:55
NHKEテレ1大阪
趣味Do楽 いただきます お寺のごはん〜心と体が潤うレシピ〜 第2回「煮物」[解][字]

冬の風物詩「大根だき」の寺として知られる京都・了徳寺。毎年12月9、10日に行われる伝統の行事を通して、大勢が集うお寺に欠かせない煮物の極意、おいしさに迫る。

詳細情報
番組内容
京都・了徳寺の「大根だき」は、地元に伝わる篠大根を、だしを使わず、わずかなしょうゆ味だけで大鍋で炊いた煮物で、毎年多くの参拝客にふるまわれる。この行事のもととなったのが、750年前、村人が親鸞聖人に向けてふるまったとされる塩味だけの「大根だき」。地元に代々受け継がれてきた伝統の味を、住職のお母さんに教わる。また料理僧の青江覚峰さんが「大根のさんしょう炊き」と大根をむだなく使いきる知恵も伝える。
出演者
【出演】とよた真帆,【出演】京都・了徳寺住職…滋賀俊正,曹洞宗普門寺副住職/臨床心理士…吉村昇洋,浄土真宗緑泉寺住職…青江覚峰,【語り】青井実

ジャンル :
情報/ワイドショー – グルメ・料理
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行

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音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
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日本語(解説)
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