クローズアップ現代「はやぶさ2 生命の起源を探る旅」 2014.11.28


私たち生命はどこからやって来たのか。
人類最大の謎に日本の探査機が挑みます。
4年前、日本中に感動を巻き起こしたはやぶさ。
数々のトラブルを乗り越え地球に帰還しました。

見えた!
その後継機、はやぶさ2が3日後、宇宙へと旅立ちます。
目指すのは、生命の源となる有機物が存在する小惑星。
そこから砂や石を持ち帰るのです。

成功の鍵を握るのは世界で初めての取り組み。
弾丸を撃ち込んで小惑星内部を探るのです。
世界の注目を集めています。

生命の起源を探るはやぶさ2の旅が始まります。

こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
絶体絶命のピンチに何度も見舞われた小惑星探査機はやぶさ。
4年前、地球に帰り、大気圏に突入して、燃え尽きる様子をご記憶の方も多いと思います。
世界で初めて、小惑星に着陸し、そして地球と小惑星を往復したはやぶさ。
日本は小惑星探査で、世界のトップランナーに躍り出たわけですけれども、残念だったのは、ごく僅かな微粒子しか、小惑星から持ち帰ることができなかったことです。
その量が少なかったため、十分な科学的分析を行うことができませんでした。
3日後の11月30日、はやぶさの後継機、はやぶさ2が打ち上げられます。
最大のミッションは、今度こそ小惑星から岩石や砂を持ち帰ってくることです。
目指す小惑星はまだ名前が付いていない、直径900メートル、地球から3億キロほどの所にあります1999JU3という小惑星です。
初代はやぶさが着陸した小惑星イトカワは、岩石だけしかありませんでしたけれども、はやぶさ2が目指している小惑星には、岩石の中に、有機物や水が含まれていると見られていまして、その有機物を分析することによって、生命の起源に迫ることができると期待されています。
小惑星に到着するのが3年半後、2018年の6月です。
広大な宇宙空間の中で、直径1キロにも満たない小惑星に、いかに正確に近づき、着陸し、そして確実に岩石を採取して、地球に戻ってくるのか。
世界中が注目する新たな挑戦に挑む科学者たち。
さまざまなトラブルに見舞われた前回の教訓を、今回のミッションにどのように生かそうとしているのか、ご覧ください。

打ち上げが行われる種子島宇宙センターです。
組み立てが終わったはやぶさ2。
ロケットに搭載され3日後の打ち上げに向けて最終の準備作業が行われています。
プロジェクトの総額は280億円。
数多くの大学や企業が協力して進めてきました。
リーダーの國中均さんです。

はやぶさ2が向かうのは地球から3億キロ。
直径900メートルの小惑星1999JU3です。
この小惑星は、主に地球と火星の間の軌道を回っています。
はやぶさ2は打ち上げられたあと地球の引力を利用して加速し軌道を変えながら3年半かけてたどりつきます。
1999JU3には生命の源となる有機物が存在するとされています。
46億年前、地球が誕生した当時生命は存在しませんでした。
その後、小惑星が衝突したとき有機物がもたらされ地球に生命が誕生したというのが一つの有力な説です。
今回、はやぶさ2はそうした小惑星の有機物を地球に持ち帰る計画です。

この目的を達成するため國中さんたちは世界で初めての取り組みを行います。
小惑星の表面は、太陽光や放射線にさらされて風化し成分が変質しています。
そのため表面を削り取って内部から石や砂を持ち帰る必要があります。
そこで今回考え出されたのがこの装置。
インパクタと呼ばれる弾丸の発射装置です。

インパクタは小惑星の上空で切り離されて、弾丸を発射。
表面に直径数メートルのクレーターを作り、小惑星内部をむき出しにするのです。
狙った場所に命中させることができるよう繰り返し実験を行いました。
火薬の力で押し出された銅の板が弾丸となり衝撃波とともに進んでいきます。
新たな挑戦に乗り出す一方國中さんたちは、はやぶさ1の教訓をどう生かすのかに心を砕いてきました。
はやぶさ1で國中さんが開発を担当したのが、エンジンでした。
そのエンジン、一時4つすべてが停止するという予想外の事態に陥りました。
そのとき、念のために組み込んでおいた予備の回路を使って1つのエンジンが復旧。
地球への帰還につながりました。
國中さんは今回エンジンの性能を大幅に高めるとともに予備の装置も各所に組み込みました。

とりわけ注意を払ったのが前回うまく機能しなかった石や砂を採取する細長いこの装置。
クレーターに着地したときに小さな玉を落とし舞い上がった石や砂をカプセルに取り込む仕組みです。
前回は、その玉がシステムの不具合で出ませんでした。
着地の衝撃で舞い上がった1ミリに満たない微粒子を採取しただけでした。

いいよ。
3、2、1。

今回は失敗は許されないと國中さんたちはシステムを改良。
ぎりぎりまで試験を続けました。

その分析担当の橘さんは万が一、玉が出なくても砂を採取できるように奥の手を考えていました。

注目したのが筒のような装置の先端部分。

爪の長さや傾きを細かく変えながらテストを繰り返しました。

打ち上げ準備を終えた今月半ば。

おはようございます。

國中さんが訪れたのは種子島にある神社でした。

打ち上げに成功…。

打ち上げの成功を祈願する恒例の行事です。

今夜は今のVTRに登場していただきました、國中さんと共に、はやぶさ2のプロジェクトの中心メンバーのお一人でいらっしゃいます、吉川真さんをお迎えしています。
初代はやぶさのプロジェクトにも関わられました。
今度こそ、科学的分析ができるだけの十分な量のサンプルを、この地球に持って帰らなくてはいけないというのが、最大のミッションなわけですけれども、まずは、3億キロ離れた、この1キロに満たない小惑星に、探査機を持っていけるかどうかですね。
そうですね。
打ち上げのあと、3年半かかってしまうんですけれども、まずは、最初の一番大きな関門は、とにかく900メートルという、小さな小惑星に、地球から3億キロのかなたの所で、きちんと到着すると、これが最初の大きな仕事になります。

本体は1メートル×1.5メートルという、本当に小さい探査機なんですけれども、最大の心配されること、リスクってなんですか?
そうですね、まず、実際に打ち上げたあと、小さな天体までたどりつけるかということが、まず最初のポイントなんですが、そのあとですね、着陸がやはり、かなりリスクを伴いますので、無事に着陸をして、サンプルを採ってほしいと思います。
その着陸ですけれども、3回試みるということですけども、着陸をするうえでの難しさはなんですか?
着陸するときは、地上から命令を送ったのだと間に合わないんですね。
3億キロかなただと、地上から電波を送ると、大体15、6分かかって到着するというわけですから、全然間に合わない。
そこで探査機が自分で考えて、自分で判断をして着陸をするということが必要なので、そこが難しいのと、問題は、小惑星の表面ですね、表面が凸凹してるか、平らか、これも非常に重要な点で、あんまり凸凹しすぎてるとちょっと危険なので、着陸できないということになります。
はやぶさの初代の冒険といいますか、探査では、イトカワの表面が、想定とは違っていたことに驚かれたそうですね?
イトカワに行く前までは、小惑星というと、表面はわりと平らで、クレーターがあいている程度だと思っていたので、われわれ、どこでもたくさん降りられる場所があると思っていたんですが、行ってみたら、本当に凸凹だらけだったので、まず最初に見たときにびっくりしたのと、これだと着陸する場所がないというのが、最初の印象でした。
あまり凸凹した所に降りてしまうと、どんな危険があるんですか?
探査機は、本体は確かに1メートル×1.6メートルぐらいの箱なんですけれども、太陽電池のパドルが付いてるんですね。
これが端から端まで6メートルぐらいあるんですが、そのパドルに大きな岩がぶつかってしまうとまずいので、できるだけ平らな場所を選んで着陸したいと思っています。
故障のおそれが出てくるわけですよね?
そうですね。
そうなりますと、どうやって3年半かけて、小惑星まで行くということですけれども、どうやってその着陸の場所を決めるんですか?
到着したあと、いきなり着陸はしないで、まずは数か月かけて、じっくりと、小惑星全体を調べるんですね。
それでまずは、危険でない場所を選ぶというのと、それから実は、カメラとか、赤外線のカメラがあって、表面の物質も調べて、なるべく科学的におもしろい物質がありそうな所に着陸するということになります。
そして、今回の最大のヤマ場ともいえるのが、表面の岩石などは風化しているおそれがあるので、その地中の中のものを取り出したいということですよね。
これの難しさは?
先ほどのビデオにもありましたけれども、インパクタという装置を使うんですが、これはですね、装置そのものが爆発しちゃうんですね。
2キログラムの銅の塊が飛び出すんですけれども、装置が爆発してしまうので、破片が探査機に当たったらまずいですね。
なので、探査機がいったん、小惑星の陰に隠れるということをします。
隠れてしまうと、衝突した瞬間の撮影ができないので、実は隠れる前に、小さなカメラを切り離して、浮かしておくんですね。
それ、分離カメラというんですが、その一連の運用が非常に難しいので、それから爆発を伴いますから、ちょっと危険でもあるということで、かなり難しい、高度なミッションということになります。
しかし、どれぐらいの深さの穴が予想されますか?
そうですね、これは現地の小惑星の表面の材質によっても違うんですが、一応、深さが50センチぐらい、直径が2、3メートルぐらいの、小さな穴が出来るだろうとは考えてます。
そこのサンプルが採れたら、非常に注目されると。
そうですね、これは地下の物質を採るということで、非常に科学的にも意義が大きいということになります。
はやぶさ1で、日本が小惑星に行って帰ってきたということで、今、小惑星探査に向けた動きが、世界中で加速していまして、協力体制が作られながら、より壮大な計画に向けて動き出そうとしています。

今月、ヨーロッパ宇宙機関が人類初の宇宙探査に成功しました。
小惑星同様、未知の部分が多いすい星への探査機着陸です。
すい星の幅はおよそ4キロ。
探査機はヨーロッパ各国の協力で開発されました。
着陸後はすい星表面の写真を撮影。
宇宙に浮かぶ小さな天体に降り立つ技術力を示しました。

宇宙探査の分野では今、国際協力が加速しています。
各国が小惑星探査の先に見据えているのは2030年代の火星の有人探査です。
火星は太陽系の惑星の中で環境が地球に最も似ています。
人が滞在したり資源を採掘したりできる可能性があります。
そこで今、その手前に位置する小惑星まで行く技術を確立しようとしているのです。
アメリカNASAの小惑星探査機オシリス・レックス。
火星探査を見据えて、2年後の打ち上げが計画されています。
NASAが独自に開発したロボットアーム。
先端からガスを噴射し、大量の石や砂を採取する仕組みです。
この装置は、はやぶさが集めた小惑星のデータをもとに設計されました。

9月。
そのオシリス・レックスの担当者が、はやぶさ2のメンバーをアメリカに迎えました。
はやぶさ2の進捗状況など互いの探査機について詳細な情報交換を行うためです。

NASAが特に知りたがっていたのは探査機が着陸する際に小惑星との距離をどう計測するかです。

NASAが計画しているのが小惑星を丸ごと捕らえ利用することです。
その小惑星で宇宙飛行士が火星を想定した探査技術を磨きます。
さらに資源があるかどうかも調査します。
燃料になる資源が存在すれば火星に行く際の中継地点にできると考えているのです。

アメリカのこうしたプランを見てみますと、本当に小惑星探査に今、エネルギーが注がれてきたなという印象を受けるんですけれども、これからの、その日本が一歩リードして小惑星探査の方向性、どういう方向に進むというふうに考えてらっしゃいますか?
そうですね、探査としては、大きく有人の探査と、人が行く探査と、無人の探査があるんですが、有人のほうはですね、やはり火星を目指したいということで、火星はいきなり行くと遠いですから、途中にある月とか小惑星をステップにして、火星まで行くというのがあるんですが、一方、無人の探査ですね、これは人が行けない所にも行ってですね、太陽系のことを調べるということで、これははやぶさが、小惑星を往復してきたという、世界で初めてのミッションですけれども、日本が技術的にはリードしていて、今後も、人が行けない所にどんどん探査機を飛ばして、太陽系を調べられればと思います。
例えば、どういう所ですか?
太陽系、いろんな天体あるんですけれども、やはり、木星とか土星みたいな、大きな惑星でも、周りに小さな衛星回ってるんですね。
そういう衛星すら、生物がいるかもしれないといわれてますので、できればそういう遠くまでも行きたいんですが、なかなか木星、土星の距離というのは遠すぎて、簡単にはミッションできないので、そういった天体がある一方で、やはり小惑星ですね、今回のはやぶさ2の目的地も小惑星なんですが、その小惑星で、さらに新しい科学をやったり、そのほかのいろんな目的もあるんですけれども。

資源が見つかる可能性というのも、期待されてませんか?
そうですね。
地球に鉄隕石という、ほとんど金属で出来た隕石、たくさん落ちてくるわけですよね。
そうすると、その隕石の母天体があるはずで、要するに、金属で出来た小惑星があってもおかしくないんですね。
そういったものは、鉄だけじゃなくて、レアメタルとか、資源となりうるものがあるはずですから、将来的には、資源としての利用も、可能性が高いと思います。
小惑星を知ることによって、地球の安全を守るという、そういう側面もあるというふうに聞いていますけれども?
小惑星というのは、地球にぶつかってくる可能性があって、ちょっと前に、ロシアにも、隕石がぶつかって、ずいぶん大きな被害が出ましたけれども、そのときは、たった18メートルくらいの天体だったんですが、もっと大きなものがぶつかってきたら、結構大変なことになるので、やっぱりはやぶさとか、はやぶさ2が調べている小惑星についても、そういうスペースガード的にも、重要な情報になります。
さあ、3日後の打ち上げです。
最大の、はやぶさの初代のミッションの教訓はなんですか?
いろいろとあるんですけれども、一つを言うとすると、いかに想像力を豊かにするかと。
科学にしても技術にしても、とにかくいろんなことを考えて、未知へ挑戦していくと、これが非常に重要だということが、一番大きな教訓だと思います。
ありがとうございました。
ありがとうございました。
吉川真さんと共にお伝えしてまいりました。
今夜はこれで失礼いたします。
2014/11/28(金) 00:10〜00:36
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「はやぶさ2 生命の起源を探る旅」[字][再]

打ち上げが迫る「はやぶさ2」。生命の起源の解明につながる有機物を宇宙から持ち帰る人類初のミッションに挑む。科学者たちの挑戦と激化する欧米の宇宙探査の最前線を描く

詳細情報
番組内容
【ゲスト】JAXAはやぶさ2プロジェクト・ミッションマネージャ…吉川真,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】JAXAはやぶさ2プロジェクト・ミッションマネージャ…吉川真,【キャスター】国谷裕子

ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
ドキュメンタリー/教養 – 宇宙・科学・医学

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