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(熊取源太)瞳先生どないですか?
(小室瞳)動かないで。
左上を見て。
はい次左。
はい。
はい左下。
はい。
はい下。
はい。
右下。
は〜い。
異常なし。
えっ?もうおしまいですか?うん。
最近近くで診るやつ全然やってくれへんやないですか。
よう診てくださいよ。
こうやって…。
ああ…。
最近眼科ばっかりで内科のほうには全然行ってないようですね。
万歩計。
はい?万歩計!あっ…。
1万歩以上歩いてますか?ああっ…。
ええっ!?800歩!熊取さん。
はい?千歩計に替えたらいかがですかね。
ははは…。
いくら血糖コントロールがよくても糖尿病を甘くみると本当に糖尿病網膜症になって失明してしまいますよ。
はあ…。
そしたら当然刑事も引退ですね。
ああ…内科いってきます。
はいいってらっしゃい。
次の方。
勤務中やぞちゃっちゃっとせえーよ。
ちゃっちゃっと。
ねっ。
はい。
ええ詩村君どうしたの?
(詩村清人)署の健康診断で眼底の再検査をしてもらえって。
ああそう。
診ましょう。
はい顎のせて額付けて。
はい。
ねえねえ最近おもしろい事件ないの?
(詩村)えっ?ああそうですね…。
(咳払い)詩村君上司に殴られたりしてへん?今日はまだ…。
はい結構です。
人聞きの悪い事言うな!わしがいつ殴った?殴ってるじゃないですか!詩村君もうちょっとよく診ましょね。
はい。
ああああ…。
わしにはこんな事してくれへんのに〜!特に異常はないみたいね。
ああああ…。
(携帯電話)はい熊取。
なんやお前か。
あの…ああ…。
病院内では電源は切ってください。
ああすいません。
事件ですか?いやいや毎月給料半分持ってく女が…。
ああ逃げられた奥さんか…。
余計な事言うな余計な事…。
そういう非常識だから奥さんに逃げられるんです。
ああすいません。
もうわかってくださいよ瞳先生。
私先生一筋なんですから。
バカな事言ってないで内科に行く!ああああ…。
じゃあ内科いってきます。
はいいってらっしゃい。
(アナウンス)「本日は環境クリエーター…」
(猿田康夫)「天誅」
(猿田)ふんうははは…!うははは…!
(アナウンス)「…環境クリエーター猿田康夫先生講演の『21世紀リサイクル社会を考える』はまもなく開演いたします」
(カメラのシャッター音)
(水木亜由美)スクープ!眼科医小室瞳おにぎりをほおばる。
やめてよ亜由美さん。
うふふ…。
どうしたんですか?今日は。
うん?うちの病院のリサイクル委員になってしもうたんよ。
でお勉強って訳。
そっちは新聞の取材?相変わらず家庭欄ですけどね。
最近ドライアイは?名医のお陰で絶好調です。
でもたまには検査に来ないとね。
はい。
そやけどね…。
ちょっと!?しゃべりながら食べるからですよ。
大丈夫ですか?大丈夫…えっ?お茶!お茶?慌てん坊なんだからもう…。
おいしそうなおにぎり。
(北島)受付はこっちです。
パンフレット持ってない方どうぞ。
(北島)パンフレットこっちにありますんで。
はい。
大丈夫ですか?自動販売…。
えっえっ何ですか?お茶!お茶。
お茶?ああそこのエレベーターの横ですわ。
ありがとう。
はい。
ごめん。
あああっ。
あっちゃー!ちょっちょっと待てー!待ってよもう…。
(氷川雪乃)あっ!?ああっ!ああすいませんごめん…。
(咳込み)すいません。
大丈夫ですか?すいません。
(咳込み)
(北島)まもなく講演会始まります。
受け付けお済みでない人急いでください。
ペットボトルの回収もこちらで受け付けております。
受付はこちらです。
どうしたの?僕。
(稲本隆一)落とし物です。
どこに落ちてたん?はあっ変な子やなぁ。

(稲本時子)隆一!
(時子)どこ行ってたの?捜してたのに。
行こう。
始まるよ。
ああ死ぬかと思った。
大丈夫ですか?もう心配しちゃった。
食べたでしょ!?ツナマヨ食べたでしょ!あっ先生は好きなもの最後に残しておくタイプですか?ごまかさんといて。
のり付いてるよ。
ふん引っ掛かった!
(女の悲鳴)先生。
うん?今悲鳴聞こえませんでした?まだごまかそう思ってるの?ええ根性してはんねぇ。
(女達の悲鳴)聞こえた!でしょ!
(小野)この中にお医者様はいらっしゃいませんか?お医者様はいらっしゃいませんか?はい。
ここにいます。
いやあの…眼科医ですけど。
こっちです。
お願いします。
急病人ですか?とにかく見てください。
はい。
脳卒中ですか?大丈夫ですか?はっ!いやあー!あかんあかん。
私ちょっと専門違う。
(カメラのシャッター音)
(パトカーのサイレン)
(カメラのシャッター音)ああ死因は頭蓋骨陥没骨折か…。
凶器は直径6〜7センチくらいの棒状の鈍器のようですね。
床が濡れてるな。
このグラスの水か?ガイシャが倒れた時に落としたんやないですか。
で事件発生後この建物から出た者は?1人もおりません。
よーし。
ほな全員をホールに集めんかい。
はい。
熊取さん。
おおっ。
ガイシャの身元が割れました。
猿田康夫45歳。
環境クリエーターっていう肩書きで最近いろんなところで環境問題に関して発言をして注目されていた男ですよ。
今日はここでリサイクルについて講演する予定でした。
ふう〜ん。
有名人かいな。
ええ。
よっしゃー!一発でホシを挙げて派手に記者会見といこか!好きですねぇ。
うん。
熊取さん。
おっ。
ゴミ箱にこんなものが。
てん…。
ちゅう。
わかっとるわい。
てんちゅうやろ。
天が下した罰って事ですよ。
ううん…。
でこれか?ぶるぶるぶる…。
ほらまだ手震えてるわ。
ミステリーマニアのくせにいざとなるとだらしないんだから。
あなたこそよく平気であんな写真撮れるわね。
私だって必死なんですよ。
殺しの現場もちゃんと取材できますってとこアピールしないと社会部に移れないんですから。
ああお待たせしました。
あああ…。
私京都東署刑事熊取源太でございます。
ええ犯人はまだこの会場内におります。
(会場内のどよめき)従って皆さん方の身元確認と持ち物検査させてもらいます。
(会場内のどよめき)あのまあお急ぎのところ誠に申し訳ございませんがどうか犯人逮捕にご協力ください。
ほなかかれ。
(会場内のざわめき)いやあ大変でしたな瞳先生。
先生お疲れでしょうからもうお引き取りください。
どうぞ。
じゃあ私も。
あかん。
亜由美ちゃんはダメ。
せっかくのスクープなのに夕刊の締め切りに間に合わないじゃないですか。
捜査優先!ケチ!バッグの中身見せてもらえますか?詩村さんなら身体検査もOKよ。
ああそうですかじゃあポケットから。
は〜い。
何考えてんだこの野郎!ありがとうございます。
すいません。
バッグのほういいですか?えっカバンは?いやあのカバンはひっ控え室に。
ただいま。

(小室菊枝)瞳!ああただいま。
なんやろ?お母ちゃん。
忙しいねん。
ちょっと手伝うてくれるか。
はいはい。
はい。
お待ちどおさん。
ありがとう。
ああお腹空いた。
(菊枝)何しまひょ?塩ラーメンおくれ。
俺味噌ラーメン。
(菊枝)塩1丁。
味噌1丁。
はいよ。
うまいわ!瞳ちゃんの麺の茹で具合は絶品やな。
おおきにおっちゃん。
チャーシュー1枚サービスしますわ。
(客)ありがとう。
けどおっちゃんは堪忍してぇな。
べっぴんやから許すけど…。
おおきに。
褒められていちいちサービスしてたら破産するがな。
相変わらずお母ちゃん渋ちんやな。
それを言うならシビアな経営者言うてくれるか。
はいチャーシューととんこつできあがり!あいよー!お待っとおさん。
(熊取・詩村)見た!?はい。
確か開場するちょっと前やったと思います。
ええどんな女でした?ええ…。

(猿田)ふざけるな!
(北島)顔はよう見えへんかったんですけど確か赤紫色の服を着てたと思うんです。
赤紫色の服…?はい。
おかえり。
ああ…ただいま。
今日また横浜のお母さんからシュウマイ送ってもろて。
ああすいません。
ここでもシュウマイ売ってるからやめろって言ってんですけど。
ええのええの。
気持ちがうれしいんやから。
ねえねえねえ…。
今日の事件どうなった?ごちそうさまでした。
ちょっちょっと待ってよ。
凶器は見つかったん?犯人の目星は?何で逃げんの?こらっ!詩村君!いつも言ってますけど瞳先生がどんな推理しようと先生の勝手ですよ。
捜査情報は一切漏らせませんでしょう。
わかってるけど詩村君と私の仲やないの。
どんな仲ですか?私は大家よ。
10年間家賃据え置きは誰のお陰よ。
おやすみなさい。
何で逃げるんだよー!いや逃げてませんって。
瞳先生が追いかけて来るんでしょう。
だけどね…。
・おお〜い詩村!・わしやちょっと開けて。
熊よ何でこんな時間に?知りませんよ。
詩村君がうちのマンションに住んでるってわかったらあいつアホやから大騒ぎするよ。
黙ってた事がばれたら殺されかねませんからね。
隠れましょう。
うんそう…。
えいっ。
えいっ。
あの熊また飲んでるね。
あんたまで隠れてどうするのよ。
適当にあしらってらっしゃい。
はいはい。
・何しとんやお前。
警察やで警察!
(ノック)あらっ!?なんやここ開いてたんかぁ。
早う報告せんかいな。
もうそんな事ではなわしみたいな有能な刑事にはなれへんで。
おお喉渇いたな喉渇いた。
うんずぐ…おお!なんやビールやないか。
生意気にこんなもん飲みよってもう…。
なんや暗いなぁ。
お前の性格と一緒や。
ああー!あらっ!?
(匂いを嗅ぐ)なんや女の匂いするな!
(詩村)ええっ!?ドキッ!あはは…!お前に限ってそらないなぁ。
あはは…!
(ため息)おっ!ポテチがあるやん。
わしの大好物や〜!ああしかしなぁ詩村なんで凶器が出てこんのや凶器が!自分も必死に探してるんですけど…。
うん…。
ちょっと熊取さん。
糖尿病の食事療法中じゃ…。
カロリーの高いもんは食べるなか?ふん!どっかの眼科医みたいな事言うたらあかん。
うう〜ん!あの熊憎っ…。
けどなどなんしても瞳先生取り調べなあかんのか…。
私を…?わしにはできんわしにはできん。
お前かてそやろ?ああそれはそうですね。
ああああ…。
そやけどまさか瞳先生が容疑者になるなんてなぁ。
どういう事…。
どういう事なんやろねぇ。
何してんの?お前。
いや中に女を隠してるんですよ。
アホ!あははは…!おもしろいなその冗談!お前も結構冗談言えるやん。
誰かおんのかな?
(匂いを嗅ぐ)・
(チャイム)うん?まさかホンマに女が来たんとちゃうやろな!?まさか…。
うん誰や?うん誰や?はい。
「あたし!」女だ!?亜由美ちゃんの声やん。
えっ?詩村お前一体どないなってんねん。
ええっ?どないもなってませんよ。
なってへん事ないやろ。
あたし!言うてたやん。
ええっ?どないなってんや?
(詩村)知りませんよ知りませんて。
どないなってんやって!どないもなってませんよ。
入っちゃいますよ。
おじゃましま〜す。
げっ!何で熊取さんがここにいるんですか?亜由美ちゃんこそなんでここに来たんや?いやそんな野暮な事訊かないでくださいよ。
おいおい詩村。
お前いつから亜由美ちゃんとできてたんや?いやできてませんよ。
ううんできてるやんか…。
今夜泊ってっちゃおうかなぁ〜!ああああああ…!最近の若いもん…。
もうわし帰る!ふん!熊取さん!もう帰りたい人は帰ればいいじゃない。
ねっ!
(障子を破る音)瞳先生!どういう事?あの熊頭きた!いやあ〜言えん言えん。
わしにはやっぱり言えんなぁ。
そんな事してたら万歩計の意味ないじゃないですか。
ああこれか…瞳先生に会う時は1万歩以上にしとかなグズ悪いしなぁ。
お待ちしてました!私の事警察に連行して取り調べするんでしょ!?ええっ!?あっいやいや…私はそんな…。
一応主治医として言わせていただきますけどあれだけビール飲んでカロリーの高いもんバリバリバリバリ食べてたら間違いなく糖尿病は悪化します。
そうなったら確実に糖尿病網膜症で失明しますからね!何で知ってんのや?瞳先生!先生!先生!目撃証言?私が猿田っていう人を殺してるところを誰かが見てたとでも言うの?まさかまさかまさか!ただ瞳先生が殺される直前のガイシャと話をしてるのを目撃したっちゅう人間がおっただけですわ。
私猿田って人に会った事ないのよ。
死体が初対面なのよ。
ねえ!ほらみてみぃ。
いやあの…猿田さんと言い争っていた女性が赤紫色の服を着ていたんですよ。
そら確かに昨日は赤紫色の服は着てましたよ。
でもそんな色の服着た人他にもいたでしょう?それがあの会場では瞳先生だけだったんですよ。
そんな事言うでも会うてないものは会うてません。
会うてません!やっぱりガセネタやもう…。
あの野球帽の男のほう当たるのが正解やな。
なあせやろ。
えっちょっと。
他にも目撃証言あったの?いやそれがねあのホールの警備員が講演会の開演直前にガイシャの控え室から出て来た男目撃してるんですわ。
(詩村)その男は野球帽を被ってたって言うんですけどあの会場にはそんな男いなかったんですよね。
ただ受付に落とし物のアポロキャップが届いてましたんや。
まあ恐らくホシが顔を隠すためにこう被って会場で捨てたもんでっしゃろ。
このアホが!もうったくもう!先生に対して失礼な事ばっかり言うてホンマ失礼しました。
すいません。
野球帽の男か…。
小野さんが猿田さんの死体を発見された時の状況をもう少し詳しく訊きたいんですけど。
はい。
あの…。
最後やしよう見てやおっちゃん。
あの男が野球帽被って黒っぽい服着てたとしたらどや?どうや?
(楢崎)この男や。
間違いおまへん。
ホンマか!はい。
ホンマにこの男がガイシャの控え室から出て来たんやな。
間違いおまへん。
この男が野球帽被ってたら…うん間違いない。
そうか。
小野さんは殺された猿田さんのスタッフやったそうですな。
主にどんなお仕事なさってました?猿田さんの事務所の経理です。
経理…という事は金庫番ですなぁ。
まあそうです。
ええ最後に会うたのは?多分殺される5分ぐらい前だと思います。
5分前!?で場所は?殺されたあの控え室です。
控え室!間違いなく小野で決まりや。
動機は金!恐らく横領でもやっとったんやろ。
それで猿田とトラブった。
うん間違いない。
でき過ぎなんだよなぁ。
何?いやそれにあの「天誅」はどう説明するんですか?もし小野がホシだとしたらガイシャにあんなものを送り付けますかね。
もうこれだから一流大学出は嫌やちゅうねん。
何でもっと物事を単純に考えられへんの?うん?余計な事考えんでええからさっさと凶器探して来んかい!えっ?もうええて。
それは俺が食うて。
早う行け早う!これは?
(隆一)わかりません。
じゃあこれは?わかりません。
じゃあこれはどうかな?わかりません。
今度は視野検査やろうかね。
もうちょっと頑張ろうね。
行こう。
さあ行こう。
こんなふうに見えづらくなったのはいつから?2日前の夜からです。
目が見えにくいからフリースクールには行きたくないって言い出して。
2日前…。
市民プラザであの事件があった日やね。
そういうたら隆一君お母さんと一緒に講演会に来てたねぇ。
驚いたよね。
あの先生。
これ特別な病気なんでしょうか?病気っていう訳じゃありません。
恐らく一時的な視力低下やと思います。
隆一君目薬出すからお母さんに毎日点してもらってね。
そうすれば元どおりに見えるようになるから。
恐らく心因性視力障害やと思います。
(時子)心因性視力障害ですか…。
そうです。
精密検査の結果隆一君の目そのものには異常はありませんでした。
でも先生いつも1.2あった視力が今は0.1しかないんですよ。
確かにそうです。
でも隆一君を見てください。
目を近づけたりせずにゲームをしてますね。
視力が0.1とはとても思えないくらい自然でしょ。
それは仮病っていう事ですか?いえこういうふうに行動と視力検査の結果に矛盾を生じるのがこの心因性視力障害の特徴の1つなんです。
心因性っていう事は心の病気っていう事ですか?まあ主に学校や家庭での様々なストレスが原因になる事が多いですね。
何か心当たりでも?今4年生なんですけど3年生の時から学校に行けなくなって今フリースクールに通ってるんです。
そうですか…。
とにかくしばらく様子を見てみましょう。
ストレスさえ取り除けば視力は必ず戻りますから。
「あーよかったなあなたがいて」「あーよかったなあなたといて」雪ちゃん早く早く。
はーい。
どうしたの?すいません。
はい。
あの氷川雪乃先生は?ああ私ですけど。
あっ!待ってよもう…。
ちょっちょっと待てー!うふふ…ごめん。
(咳込み)すいません。
ああどうも…。
心因性っていうぐらいですから隆一君の視力低下は悩みとかストレスとかが原因なんでしょうか?そうだと思います。
あのひどくなると失明したりとかそういう事もあるんですか?いやそれはありません。
原因さえわかってそれを取り除けばすぐ元の視力に戻ります。
氷川先生何か心当たりはありませんか?さあ…隆一君はとても感受性が強くて壊れそうなくらい繊細な子なんです。
学校での友達や先生の何気ない一言に傷ついたり威圧するような学校の空気に耐えられなくなって去年フリースクールに来たんです。
隆一君のお母さんも言ってました。
氷川先生がいなかったらフリースクールにも通えなかったって…。
隆一君にすごく信頼されてるんですね。
いえ…。
でもどこか私の弟に似てるんです隆一君。
へえ。
今一緒に弟さんと暮らしてるんですか?いえ今の隆一君の歳で亡くなったんです。
ああそうなんですか…。
あっすいません。
隆一君の事話してる時に…。
隆一君の事よろしくお願いします。
わかりました。
菜の花がきれいねぇ。
何でや!何で丸2日経つのに凶器が見つからへんねん!絶対あのホールの中にまだあるはずや。
直径6〜7センチの棒状の鈍器や!もう早う探して来んかい!ほら早う行け!
(一同)はい。
早う行け!熊取さん!どいつもこいつも…何や!大変なんですよ。
おお見つけたか!いや凶器じゃなくてこのアポロキャップなんですけど。
うん?ここから採取された髪の毛が女の髪の毛だったんです。
女!?どういう事や?それやったら小野がホンボシやないっちゅう事か…。
やっぱりホンボシは女だったんですよ。
つまり女が変装するためにこのアポロキャップを被ってた。
女…?ええ。
警備員はホシは黒っぽい服を着てたって言ってましたよね。
赤紫色が光線の加減で黒っぽく見えたって事はないでしょうか?ええっ…?ちょっちょっと待て!お前まさかまた瞳先生の事を疑ってんのとちゃうやろな?いや客観的な事実を並べていくとどうしても瞳先生に行き着くんですよ。
それやったら瞳先生の髪の毛とこのアポロキャップから採れた髪の毛を比べてみりゃええやん。
自分もそう思います。
だから今から採ってきます。
ちょっちょっと待て!どこ行くんや?病院です。
アホやなぁお前。
こんな時間に病院やってるか?ですよね。
一流大学出てもアホはアホやなもうホンマ…。
瞳先生の髪の毛…!?動かないで。
真っ直ぐ見てね。
はい。
禁酒禁煙守ってない割には異常なし。
ああどうも…。
内科には行ったんでしょうねぇ?ええ…まあそれは…。
これか…。
例の事件の凶器なんやけど見つかっ…?おっ!?きゃーっ!!どうしました?この熊が抱きついたー!いやいや…ちゃうちゃう!誤解や誤解!現職刑事女医にわいせつ行為!いやいや…いややめて。
やめて!いやいや…。
いいわよ!そこまで疑うんやったら髪の毛好きなだけ持ってって調べてよ。
さっどうぞ!とんでもありません!私は先生の事疑うた事なんかこれっぽっちもありません!このアホや!このアホがなぁ!先生僕はあの…熊取さんじゃないですかいつも!ここでごちゃごちゃ言ってないで!犯人を目撃したっていう警備員さんに瞳先生の面通しをしてもらえばすぐにわかる事じゃないですか。
そうや!ほら行きますよ。
ほら行くで!ほらアホ!お願いします…。
ああ…みんな行儀が悪いなぁ。
おっちゃん!おっちゃーん!あっ俺や俺!俺やて。
わからんのかいな…こないだの刑事やて!ああ刑事さん!やっぱりこの前の男犯人やったでしょ?ああそれがなぁ…まだちょっと面通ししてほしいんや。
ええ?ああこの人なんやけどな。
えっ?全然ちゃいますよ!この前の最後の男が犯人や言うたでしょ!ああわかったわかった。
仕事中悪かったねぇ。
しっかりしておくんなはれや刑事さん。
もう。
おおきに。
サンキューな。
ほれ見てみ!瞳先生が犯人な訳ないやろ!あの警備員さんの目撃証言は…。
ああ!全然あてになれへんわね。
うん。
うん!?どういう事ですか?嘘ついたって事ですか?とにかく今すぐあの人を病院に連れてきて。
病院!?左上下…わかりません。
わかりません。
はい次はあちらです。
ああ…。
(楢崎)何でこんな事せなあかんねん!いきなり連れて来られて妙な検査あれこれやって。
俺が一体何した言うんですか!楢崎さん白内障ですねぇ。
いや…何言うてはるんですか?俺は目なんかどこも悪くないですよ。
今日はねぇたまたま目が調子悪かっただけです。
このままほっとくと症状はどんどん進行しますよ。
早めに手術受けられたほうがいいんじゃないですか?えっ…ああ…。
白内障は手術を受ければよくなるんですよ。
ああ…手術したら前みたいに見えるようになるんですか?ええ。
私が精一杯の手術をさせていただきます。
先生がそう言いはんのやったらよろしくお願いします!わかりました。
ならおっちゃん犯人の顔は見えてなかった言うんか?帽子被ってた事ぐらいしか…。
ああ…。
男か女かもですか?ええさっぱり…。
服の色もですか?それも眩しいて…。
何でそんなええ加減な事言うたんや?目の事がばれたら警備員クビになるんですよ。
すいませんでした。
ああ…。
いやぁさすが瞳先生。
この熊取源太ますます惚れ直しちゃいましたよ。
それはええからここおごってね。
ええもちろんです。
おっお前な!何で自分なんですか?おお〜熱熱…。
でも先生どうして診察もしてないのにホールの表で白内障だってわかったんですか?おおそうだよ。
あの警備員さんの場合ね瞳孔の真ん中に白内障の濁りがあるのよ。
うんうん。
ねっ。
だからその明るいところでは光が乱反射して…。
おおその濁りが?そうそう。
だからすっごく眩しく感じるの。
さっきホールの表で会った時…。
おっちゃん!おっちゃーん!すっごく眩しそうで熊さんの顔がはっきり見えないみたいやったのよ。
それでピンときたの。
おお〜。
そういえば事件の起こった日も天気がよくてあの控え室の前はすごく明るかったわ。
そう。
だからあの警備員さんが言ってたように眩しくて帽子を被ってる事ぐらいしかわからなかったはずよ。
うん…。
あの警備員が犯人だって言ってた小野って男にも完璧なアリバイがありました。
アポロキャップの線も行き詰まったしこれでまた捜査は振り出しか…。
そうでもないかもよ?えっ?うわっアチッ!アチチ…!殺された猿田康夫は今でこそ環境クリエーターっていう肩書きで有名だったけど数年前まではボランティアのプロとして時の人になった事があるらしいの。
ボランティアのプロ?うん。
そのくらいボランティアで金儲けしてたらしいのよ。
いやボランティアが金儲けしたらあかんやろ!だから良心的なボランティアの人達からはかなり非難されてたらしいわ。
そらそうや。
あっ思い出した!
(詩村)九州南部の大水害とか東海沖の重油流出事故で駆けつけたボランティアを組織化してすごい成果をあげて一躍注目を浴びたあの男だ。
そう。
そのあたりまではよかったんだけど裏で寄付金とかを横領してたらしいって噂があるのよ。
けしからんやっちゃなぁ。
そうなると相当恨みも買ってるし敵も大勢いそうね。
(時子)すいません。
わざわざ先生に来ていただいたのに会いたくないやなんて…。
いえ。
フリースクールのほうも無理に来させるような事はしないでください。
隆一君がその気になったらで結構ですから。
どうもすいません。
(雪乃)それと目のほうはどうですか?
(時子)ええ。
まだ相変わらずみたいで。
そうですか…。
じゃあいつでも待ってるよって隆一君に伝えてください。
ホントにすいませんでした。
ありがとうございました。
いえ。
隆一雪乃先生がせっかく来てくれはったのに…。
明日お母さんがフリースクールまで送ってあげるから一緒に行こ?ねっ隆一。
どうしたん隆一…?ああ腹減ったなぁ。
ラーメンでも食いまひょか?先生。
やばいやばいやばい…。
熊さんにここがうちの家ってばれたら面倒臭いでしょ。
面倒臭い面倒臭い…。
大丈夫ですよ。
何とかごまかしますから。
ねっ行こ行こ!おかえり!ただいま…!おばちゃんビールちょうだい。
ビール?えっ?ああいや…ほらみんな飲むでしょう?
(3人)いいえ?あっそう…ほなお茶。
瞳お茶お願い。
瞳?あの僕やりますから…はは…。
何や気安くない?このおばちゃん。
熊取さんもう一度事件の事ねえ整理してみません?ああええよ。
結局犯人と直接つながる情報としては野球帽を被っていたって事だけなんですよね。
うん。
あのホールで野球帽を被ってた人は…。
いなかった。
恐らく受付に届けられたアポロキャップが犯人が被っていた野球帽だと思って間違いないと思う。
う〜んその帽子には女性の髪の毛しか付いてなかったんでしょ?ああ…。
って事は犯人は女性なんですかね?そのアポロキャップは落とし物やって言ってたわよね。
誰が届けてきたの?子供が受付に届けに来たんですよ。
子供が…名前は?ちょっと待ってください。
稲本隆一君って子です。
稲本隆一…?あの子やん。
知ってはるんですか先生!?私の患者よ。

(遠藤陽介)ええこの症例は外傷性網脈絡膜破裂の27歳の女性でええ左眼視神経乳頭の情報に網脈絡膜破裂による瘢痕を認め視力もかなり低下しております。
ええそれではビデオをお願いします。
ええ…えっ?あっこれはカラーバーです。
ええ…送ってください。
ああだからもっと…送って!この症例の蛍光眼底撮影の結果を供覧します。
ええ網脈絡膜破裂部では脈絡膜から…。
(遠藤)もう一度ご覧いただきます。
もしかして…!オーライオーライ。
何してんのや?う〜ん…遅いなぁ。
あっ瞳先生。
緑色の服着て来いってどういう事なんですか?今にわかるわ。
頼んでおいたライトも用意してもらえました?はい。
事件当日とまったく同じ照明を仕込んでもらいました。
念のために目撃者の北島さんにも来てもろてます。
これがブラックライトね。
瞳先生はよく知ってますね。
このライトは主にディスプレイなんかで使われる特殊なライトらしいんですよ。
こういった白いものをより際立たせる効果があるらしいんです。
亜由美さんちょっとこっち来て。
はい。
おっ。
あっ…赤紫色になってる。
うわぁすごい…。
まるで手品みたいやな。
ブラックライトにはこういう効果があったんだ。
ねえ詩村君は向こう亜由美さんはそこ。
(2人)はい。
北島さんこんな感じで見えたんと違います?そうです!あの時と同じです。

(猿田)ふざけるな!という事は北島さんが目撃した女性は実際には緑色の洋服を着ていた。
はい!うん!緑色の服の女だ!緑色緑色緑色…。
ここにはいませんね。
こっちにもいないです。
ああこっちにもおらんなぁ。
おいまだか?いたいたいた…!事件当日緑色の服を着ていた女性はたった一人です。
誰や!稲本時子。
稲本?
(詩村)例のアポロキャップを届けてきた稲本隆一の母親ですよ。
あっあれか!よしすぐに任意同行や。
あっおおきにおおきに。
ご苦労はんご苦労はん!おおきにおおきに!先生の患者の母親って事ですか?ええ。
でもまさか…。
ほなあの展示ブースで猿田はんと会うてたのは認めるんですね?はい…。
会うてどんな話してたんですか?目撃した人の話によると猿田はんと言い争うてたように見えたいうんですけど…。
どうなんですか?今度こそあの女で決まりやなぁ。
動機は恐らく金がらみの痴情のもつれや。
自分も今度こそホンボシだと思います。
あの女とガイシャの関係徹底的に洗うぞ!はい。
隆一君。
そこにいるんでしょう?答えなくてもいいから私の話聞いてくれる?
(雪乃)目はどう?この間隆一君が通ってる病院の先生が訪ねてきてねすぐによくなるって言ってた。
フリースクールのほうはどうかな?まだ出てくる気になれない?ほらみんなで遠足の計画立ててたでしょ。
隆一君にはしおりを作ってもらおうと思って。
隆一君の得意なイラストいっぱい入れて。
(雪乃)あのね家で作ってくれてもいいの。
作ってくれる?作ってもいいな〜って思ったらドアをノックしてくれるかな?どう?隆一君。

(ノック)ありがとう!じゃあまた明日材料持ってくるね!おやすみなさい。
はい結構です。
ありがとうございました。
お大事に。
次の方どうぞ。
先生次稲本隆一君なんですけどまだ見えてません。
あっそう。
じゃあ次の人入れて。
はい。
石川さん。
あっは〜い。
どうぞ。
(チャイム)
(雪乃)こんにちは。
あっ先生。
留守なんですか?ええ。
本当は今日病院に来るはずやったんですけど来なかったから。
ああ…すいません。
(ノック)隆一君先生よ。
いたらまたドアノックしてくれるかな?隆一君。
隆一君?稲本さんやったら今朝出かけはりましたで。
隆一君も一緒でした?ええ。
ちょっと温泉に行ってくる言うてはったけど。
温泉?どこの温泉かわかりますか?場所は聞かなんだけどその温泉の近くに目にいい滝があるとか言うてはった。
目にいい滝がある温泉?和歌山県?ええ。
確か昔和歌山県に住んではったそうです。
おお…。
それであの昔の事は?ああ稲本さんほとんど自分の事話されへんからねぇ。
ほな最近の話稲本さんお金に困ってはるとか言うてませんでした?いや私そんなしゃべりちゃいますよ!私!人の事いちいちそんな事…!まあまあまあまあ…。
ここだけの話ですけどね。
おお?クレジットカードを焦げ付かしてしもうて困ってるって言うてはったけど。
ホンマ〜。
だったら結構借金してはったんやね〜。
稲本さん。
稲本さん何かやらはったん?やったんちゃうん?いや〜私そんなしゃべりと違いますから…。
(携帯電話)おお〜ごめんねおばちゃん。
誰がおばちゃんやの!いや昔のおねえちゃん。
どっちもおばちゃんや!はいもしもし熊取。
おっ瞳先生!いや〜感激ですなぁ!先生からお電話いただけるなんて。
えっ何でっか?えっ?いやデートのお誘いやったらエニタイムOKですわ。
うん。
何をお気楽な事言うてんのよ。
ねえ目にいい滝がある温泉知ってる?「目にいい滝がある温泉?」そう。
「何でっか?それ」いや稲本さん親子がいなくなっちゃったのよ。
えっ!?それ早う言うてくださいよ!おい詩村!はい!何イチャイチャしてんねん。
ホシが逃げた!えっ!?こんにちは。
ああこんにちは〜。
何デレデレしてんですか!かわいい〜。
熊取さん!そやそや…!何でまたここに集まんのよ。
亜由美さんがここで待っててって…。
要するに目にいい滝がある温泉を探せばいいんですよね?んな簡単に言うてくれるけどなぁ…。
昼間さんざん探しても見つからなかったんやで〜。
なあ。
えっええ…。
5分くらい時間もらえます?何すんの?インターネットで検索してみます。
最近は何かっていうとインターネットや。
ハッ。
そんなもんで見つかんのかいな。
はいお待っとおさん。
味噌ラーメンの方?おお〜こっちこっち!はいはい。
はい。
はいはい…。
「ラー油に〜お酢〜…」ちょっと熊さん。
ええ?せやけどここのラーメン味全然ないんやもん。
おばちゃん!味噌ラーメンはねもっと味が濃〜くないとダメダメダメよ〜。
ほな他の店行かはったら。
ちょうどいい味になっとるわ。
塩まいたろか。
あった!うん?ここじゃない?どこだ?龍神温泉?あっここ和歌山県ですよ。
おばちゃん昔和歌山県に住んどった言うとったな!はい。
ここにある曼陀羅の滝は中里介山の小説大菩薩峠の机龍之助が失明寸前にこの滝で洗顔治療した事で有名になった滝。
それがきっと目にいい滝って事よ。
うん。
いやえらいやっちゃな〜!このインターネットっちゅうのは。
それにこの温泉の近くに幕末に勤王の志士達が幽閉されてた天誅倉っていう倉もあるわ。
(詩村)天誅でもつながった!これや!こんなまずいラーメン食ってる場合やない!おいすぐに龍神温泉や!はい。
おいわしが見つけたんやで!
(詩村)何言ってんですか!二度と来るな!いってらっしゃいませ。
今走ってる高野龍神スカイラインを下ったらすぐに龍神温泉ですよ。
あっ龍神村に入る。
ふ〜ん。
龍神っていう村もあるのね。
正確に言うと和歌山県日高郡龍神村。
そもそも龍神っていう名前の由来はその昔弘法大師が難陀龍王っていう竜の神様のお告げで温泉を開いた事から龍神温泉の名前が付いたらしいんですよ。
温泉自体はもう1300年の歴史があるんですって。
ふ〜ん。
みんなインターネットからの受け売りでしょ。
もういいじゃないですか。
龍神温泉が見つかったのもインターネットのお陰だしナビゲーションだって見れるんですから。
これが天誅倉ね。
天に代わって罰を与える…。
そんな動機時子さんにあるのかしらね。
うわ〜ひなびた感じのええ温泉やねぇ。
ここの温泉の売りは何といっても泉質なんですよ。
皮膚をきれいにして美人を作る湯って事でね超有名なんですって。
群馬の川中温泉島根の湯ノ川温泉に並んで日本三美人の湯って言われてるんですよ。
へえ〜!これ以上美人になったらどないしましょ。
(2人)へへへへっ!ちょっと言い過ぎたやろか。
ハッ!?
(急ブレーキの音)うわー!大丈夫ですか!?ちょっと…お巡りさん!?お巡りさん!瞳先生…。
駐在さん!駐在さん!聞こえますか?わかりますか?ギャッ!?おおっ!どないしたんや!?大丈夫や。
この駐在さんが私のお尻…!お尻?どこや。
うん?いや〜ちぃっとのあいさつやがよ。
それにしても2人共や〜にこうべっぴんさんやの。
熊取さんの知り合いか?あはは。
ほなようこそ龍神温泉へ。
もう死んじゃったかと思ったんですから。
もうお前びっくりしたわ〜。
熊取さん。
うん?隆一君達は?おっそれがな…。
手がかりなしや。
アホ。

(女将)下御殿にようこそおいでくださいました。
お世話になります。
どうぞごゆっくり。
うわ〜何か気持ちいい。
お湯が軟らかくて本当に肌にいいって感じですね。
うん。
隆一君達もこの温泉に入ったのかな。
本当に隆一君のお母さんが犯人なんやろか。
状況的にはその線が濃いですよね。
ここに来たのだって…。
いやっそれは隆一君の目を治したい一心で来たんじゃないの?曼陀羅の滝の水の事ですか?あれは小説の中のお話ですよ。
眼科医が何言ってんですか。

(駐在)この上御殿には昔紀州の殿さんが使うてた部屋があるんですわ。
こちらです。
おお〜ほおほお…。
いや別にこんないい部屋とってくれへんでもよかったんになぁ。
はははっ。
熊取さん。
ああ?ここは見せてるだけ。
えっ?部屋はあっちです。
何やそれ。
出張旅費がそんなにある訳ないでしょ。
ああ〜そやろなぁ。
どうもおかしい思たわ〜。
けどよ入る湯は殿さんと同じです。
おお〜露天風呂か。
はい。
うん…混浴かな?ふふっ。
熊取さん!
(女将)さっ。
うわぁすっごいごちそう!どうぞごゆっくり。
いただきます。
瞳先生。
気持ちはわかりますけどそれはそれ。
ごちそうはごちそうですよ。
うん。
おいしい!早く瞳先生も食べて。
うん。
(駐在)見たんは昨日の宵の口6時頃やったそうですわ。
この山の上からそれらしき親子連れが下りて来た言うとったでしてよ。
(詩村)確かこの奥に曼陀羅の滝がありましたよね?おうよ。
じき奥ですわ。
滝の水で目を洗いに来たんじゃ…。
おおっ。
その可能性あるな!こっからその曼陀羅の滝まではどれくらいや?ほんそこです。
案内しましょ。
すぐそこや。
いや〜朝風呂って気持ちいいですね。
うん!ここのお湯ってお湯入った後にあれなんですよ。
化粧水つけちゃいけないんですよ。
ええっダメなの!?つけちゃったよ。
えっ!美人の湯っていうのは保湿効果が高いって事なんですよ。
だから別名化粧水いらずのお湯って言われてるんです。
そんなん早う言ってくれな…。
もう先生何にも知らないですね。
ええ〜?先生…あれ。
隆一君や!はい。
ふう…。
ああこっちです。
ああ…はあ…。
大丈夫ですか?はあ〜大丈夫や。
はあ…ああ…。
はあ…はあ…よいしょ…。
ちょちょ…!ちょっとまだかいな?ほんそこほんそこ。
どこがそこなんや…。
ちょうどいい運動じゃないですか。
糖尿病には。
えっ!行きますよ。
うるせぇ!ったくもう〜。
はあ…。
ああ〜はあ…。
・隆一君!隆一君1人?お母さんは?フリースクールの氷川先生も心配してたんよ。

(電話のプッシュ音)
(電話の呼び出し音)あっあの小室です。
隆一君見つかりました。
どこにいたんですか?「和歌山県の龍神温泉です」龍神温泉…。
私もこれから行きます。

(滝の音)熊取さん。
ああ〜?滝の音が聞こえてきよったろ。
何も聞こえへんわ。
ほんそこほんそこ!ええ〜?何がほんそこや…。
はあ…。

(詩村)熊取さん!何やて…。
・ホシでーす!何っ!?稲本さん!捜しまし…!おい詩村!はい!おい早く捕まえろ!稲本さん。
目の調子どう?先生それが心配で隆一君の事捜してたんよ。
どうぞ。
はい。
(携帯電話)はい小室です。
見つかりました?ええ。
いやこれから駐在所で話聞くとこですわ。
うん。
隆一君は今私達と一緒です。
ええ。
お母さんに隆一君の事は大丈夫と伝えてください。
はい。
坊やは瞳先生と一緒や。
心配せんでもええよ。
この水をあの子に届けてもらえませんでしょうか?この水で目を洗うように言ってください。
いや急に視力が落ちたからいうてこの水で洗うても治らんやろ。
大菩薩峠やないんやから。
まあ瞳先生に任しときゃ大丈夫や。
そんな事ありません。
私は昔この水で目の病気を治した事があるんです!毎日洗えば必ず治ります。
ちょっと待ち。
あんたこの村に住んでた事があんのか?今そういう口ぶりやったやろ?ああよ思い出した。
何やねん?あんた10年ほど前に下御殿で働いとった事のあるろ。
ああ〜稲本っちゅう名字やったさかいわからなんだんや。
あの頃は確か…そう猿田。
猿田時子さんやな!猿田!?猿田ってまさか…。
先生と一緒に京都に帰ろ?大丈夫よ。
お母さんもご用が済んだらすぐに京都に戻るから。
ねっ。
はい。
じゃあ荷物持って。
はい。
じゃあお願いします。
気をつけて。
はい。
お母さんの事は心配しなくて大丈夫よ。
じゃあ失礼します。
隆一君かわいそうだな。
まだお母さんが犯人やって決まった訳やないでしょ。

(クラクション)ああ〜先生。
取り調べ終わったんですか?いやまだ途中ですわ。
なかなか口を割ってくれへんで困っとんですわ。
で坊やは?今ちょうどフリースクールの先生の車で京都に戻ったとこです。
うわ〜遅かったなぁ。
いやこれ母親から預かってきたんですわ。
何ですか?それ。
曼陀羅の滝で取った水です。
いやこの水でね坊やの目洗うてやってくれて何度も何度も母親から頼まれましてん。
まあ親心いうんですかねぇ。
話のほうは何か聞き出せました?まあ意外な事実はわかったんですけどね。
稲本時子と猿田康夫は昔夫婦やった。
夫婦?うん。
実際には婚姻届は出してなかったらしいんやけどちょうど10年前までこの村に住んどったらしいんですわ。
龍神村に?うん。
時子のほうは今自分先生が泊まっとったあの下御殿で働いてたそうなんですわ。
今その裏もちゃんと取ってきました。
ちょっと待って。
という事は隆一君は…。
そうなんや。
猿田との間に生まれた子供です。
まあその事は本人も認めました。

(雪乃)お腹空いてない?眠くなったら寝ててもいいのよ。
どうして最近先生にも口きいてくれなくなっちゃったのかな?ほら前は先生に何でも話してくれたじゃない。
まっしゃべらんのはあんたの勝手やけどなぁしゃべらなんだらいつまで経っても京都には帰れへんよ。
ずっと坊やの事ほっとくの心配やろ?
(ため息)また今夜も泊まりか…。
脅迫してました。
何ちゅうた今!猿田の事を脅迫していました。
あんたが猿田の事脅迫しとったんやな?ほんで脅迫ってその…具体的には?クレジットの借金払いきれんのよ。
100万円用意してくれへん?今のあんたやったらはした金でしょ。
俺を脅すつもりか?ふざけるな!ふざけてへん!私は本気よ!もし出してくれへんのやったらねあんたの過去洗いざらいぶちまけてやるわ!やれるもんならやってみろ。
そんな事したら隆一がどうなっても知らんぞ。
何て事言うの?あんた隆一の父親でしょ。
ふっ…人を脅迫しといてよく言うぜ。
二度と俺の前に現れんな!それで悔しいて猿田を殺ってもうた訳か?それは違います。
私は猿田を殺してなんかいません!それは信じてください!私は…私は殺してません!殺してません!殺してません…。
(詩村)稲本時子が精神的不安定なんで京都に戻る事にしました。
お2人はどうしますか?あっだったら私も戻ります。
さっきデスクから電話があって早く帰って来いって怒鳴られちゃったから。
亜由美さんが帰るんやったら私も。
じゃあ上で待ってます。
(2人)はい。
(万歩計を振る音)先生達も帰るそうです。
おお〜そうか。
ほな一緒に帰ろう。
はい。
やっと7000や…。
またいらしてくださいね。
今度はゆっくり女を磨きに来ますから。
ありがとうございました。
お世話になりました。
瞳先生行きますよ。
あっ…私やっぱり泊まっていくわ。
ええ?何言ってんですか急に。
えっ…ほらせっかく美人のお湯に来たんやしもうちょっと美人になって帰らな損でしょ。
わかりました。
せいぜいゆっくり美人に磨きをかけてください。
ありがと。
先生は?ほっときなさい。
美人は気まぐれなの。
(電話)はい稲本です。
ああ先生。
もう着いた頃かと思って。
(雪乃)「ちょうど隆一君寝付いたところです」あっそう。
ご苦労さまです。
あのさっきお母さんも京都に向かいましたから。
そうですか。
じゃあ私は隆一君のそばにおります。
ええ。
あの隆一君お願いします。
はい。
おやすみなさい。
どうぞごゆっくり。
どうも。
あのお話してもいいですか?ええ。
(女将)12〜13年前ですかねぇ。
時子さんがこの温泉に流れてお出でたのは…。
ほいでしばらくして男の子を産んで…。
ご主人の猿田さんもこちらの旅館で働いておられたんですか?いいえ。
あの人は自分で経営コンサルタントって名乗ってたようですよ。
さあ。
ああ…。
実際龍神村でどんなコンサルタントしてはったんですか?村興しの企画をいっぱい考えてたみたいやね。
具体的には?ええ。
ここの温泉の泉質がいいのに目を付けて温泉の宅配をする事業を始めようとしてたみたいですよ。
温泉の宅配?タンクローリー車って言うんですか?あれを何台も使うて…。
大阪とか京都まで温泉のお湯を運んで売ろうとしてたんですよ。
成功しはったんですか?いいえ。
あっああ…。
こんな時間まで遅うなってしもうた。
やすみましょうか。
あっもう1つだけ。
ええ…。
玄関のところに中学生が描いた防火ポスターが貼ってありますね。
あのポスター描いた子の事ご存知ありません?いいえ。
おやすみなさい。
《さっきポスターを描いた中学生の事を訊いた時明らかに女将は動揺していた。
どうして…?》
(あくび)
(ノック)もうええ加減に吐いて楽になり。
発作的に猿田はんを撲殺したんやね?
(携帯電話)誰やねんな…。
おっ瞳先生や。
あっもしもし。
おお先生。
どうでっか?温泉でゆっくりしてはりますか?「ちょっと時子さんと話させてもらえない?」ああそりゃまあええですけど…。
ああ瞳先生や。
失礼します。
あっ何やまだ龍神温泉おった…。
稲本さん隆一君の目の事でもう一度確認させてください。
隆一君の視力が急に低下したのは今回の事件が起こった日の夜からですね?そうです。
あの事件以前にはそういう事は一切なかった?ええありませんでした。
やっぱりそうかもしれない。
何がやっぱりですか?これ以上稲本さんを取り調べても無駄ですよ。
うん?真犯人はこの人じゃありません。
えっ!?他にいます。
ええっ!?ちょっちょっ…ごめんごめん…。
温泉に遊びに行ってた訳じゃないのに何でこんな原稿書かなきゃ…。
もう超ムカツクもう…。
ああもう落ちんのよ…。
もう…スクープだと思ったのに。
何これ…。
この間の講演会の時隆一君これと同じアポロキャップ落とし物や言うて受付に届けたわよね?落とし物です。
あのアポロキャップ本当は誰の物か知ってるんやないの?やっぱり知ってるんやね。
誰のもんやの?言うのが怖いんよね。
でもね隆一君これは黙ってたらいけない事なの。
さあ勇気を出して先生に話して。
ねっ?隆一…。
あっわかったのわかったの!凶器がわかったの!何わかった!?こっちはな真犯人がわかったんや!バイバーイ!先生さようなら。
はいたっちゃん帰ろう。
気をつけてね。

(足音)龍神温泉の泊まった宿でこんなポスターを見つけました。
これを描いた中学生の女の子の家は龍神温泉で代々旅館をやっていたそうです。
でも今からちょうど10年前その旅館を経営していた一家が亡くなりました。
お父さんお母さんそして当時小学校4年生の弟さん。
その時ちょうど修学旅行に行っていた中学生だけが生き残りました。
実はそれは一家心中だったんです。
その当時村興しのために温泉の宅配事業を持ちかけた男がいました。
殺された猿田康夫さんです。
以上ご説明いたしましたようにこの運搬サイクルで龍神温泉の湯を近畿地方…。
村の人達は猿田さんの計画にすぐに飛びついたけどいざ資金の事になるとみんな尻込みしました。
それを見かねたこの子のお父さんは自分の貯金をはたきさらに足りない分はあちこちで借金をして事業資金をかき集めたんです。
でも猿田さんは現金を持って村を出たまま二度と戻って来る事はありませんでした。
この子のお父さんは莫大な借金と後悔だけを抱える事になってしまったんです。
もうやめてください。
確かにそのポスターを描いたのは私です。
ええ。
ここに名前が入ってるわ。
氷川雪乃…あなたの名前よ。
まさか私があの人を殺したって言うんじゃないでしょうね?違いますか?そんな証拠もないのに…。
大体凶器だってまだ出てきてないって言うじゃないですか。
凶器だったらわかりましたよ。
私が事件直後に撮った現場写真に写ってました。
ここに映ってる氷のかけらこれが凶器の正体よ。
あなたは恐らくリサイクルに出そうとしていたペットボトルに水を入れそれをカチカチに凍らせた。
お願いします。
そして猿田さんを油断させて近づき…。
この写真に写っている氷は恐らく殴った時にペットボトルが裂けてその中から飛び散ったものじゃない?あなたは急いで氷をかき集めて湯沸しポットに放り込んで溶かしたけど焦っていて全部は拾い切れなかった。
氷で濡れた床をごまかすためにわざとコップを倒して床を濡らし…。
最後にペットボトルを回収箱に投げ入れた。
この氷のかけらが完全に溶けていたらまったく気づかなかったわ。
(詩村)自分達が駆けつけた時にはすでに溶けていた…。
あのコップの水は偽装工作やったんやねぇ。
猿田さんに「天誅」って書いた手紙を送りつけたのだってあなたが犯人だって言ってるようなもんよ。
普通の人はまず天誅っていう古い言葉は使わない。
でも龍神村で育ったあなたにとってはごく普通の聞きなれた言葉だったのよね。
天誅倉の事ね。
ええ。
優秀な眼科医は何でもお見通しなんですね。
そうです。
私が猿田を殺しました。
どうして?どうして…。
猿田は私から大事なものをすべて奪っていったの。
あいつが事業資金を持ち逃げしたせいで連帯保証人になっていたお父さんはこれだけはって残しておいた陽平の手術のお金まで全部取り上げられてしまったの。
陽平君っていうのは弟さんね?手術ってどういう事?陽平は小さい頃に目が不自由になったの。

(雪乃・陽平)「この大空に翼を広げ飛んで行きたいよ」
(雪乃)でもアメリカまで行って手術をしたらきっと見える日が来るんだって陽平も私達も信じてその日を待った。
その日はもうすぐ来るはずだった。
でももう少しっていうところで猿田がその希望を奪っていったの。
希望だけじゃない…。
家族の命まで全部奪っていったの!雪乃さんあなたの気持ちはわからなくはない。
でもあなたも隆一君に同じ事をしてしまったのよ。
隆一君に…?あなたが殺した猿田さんは隆一君の実の父親よ。
まさか…。
それだけやないわ。
あなたが変装して猿田さんの控え室に入って行くところを隆一君は見ていたのよ。
先生…。
隆一君はあなたが控え室から出て来たところも変装に使ったアポロキャップをゴミ箱に捨てたところも全部見ていたのよ。
あのアポロキャップは隆一君があなたの誕生日にプレゼントしてくれたものなんでしょ?隆一君恥ずかしくてあなたには内緒にしてたらしいんだけどあれは隆一君とおそろいだったそうよ。
ゴミ箱の中からそれを拾って落とし物として届けた隆一君の気持ちがあなたにわかる?あなたを大好きな隆一君がどんな思いであなたを見つめていたかあなたにわかる?雪乃さん!あなたが死んで済むと思うの?隆一君このままほっといていいの!?隆一君の心因性視力障害は間違いなくあなたのせいよ。
そんな隆一君を残したままであなた死ねるの!?隆一君の中に亡くなった弟さんの面影を見ていたんでしょ?死んじゃダメ。
どんなにつらくても生きるの。
生きなさい。
(嗚咽)隆一君…。
先生は罪を認めてきちんと償おうとしてるの。
それってすごく勇気ある事なんよ。
(隆一)先生!先生…。
ごめんね。
隆一君…。
ごめんなさい。
隆一君…。
ありがとう。
今度こそ…今度こそ大事にするね。

(すすり泣き)バカ刑事が泣くな!
(すすり泣き)先生ー!先生!先生ー!あんな必死な隆一見たの初めてです。
私自分が恥ずかしい。
お母さんもまた一からやり直せばいいやないですか。
氷川先生もきっとやり直せますよね?もちろん。
氷川先生も隆一君も人生ちょっと遠回りしただけよ。
(隆一)い。
はい。
右。
下!はいおしまい。
右1.2左1.2もう心配ないね。
いらっしゃい。
先生この店もう味これやから他の店行きまひょ。
熊取さん紹介しますわ。
もう知ってますがな。
うちの母です。
はは…?はっ!?いつも瞳がお世話になりまして。
それにいつもラーメン褒めてもろておおきに。
ははは…いやいやいや…。
ははははは…。
申し訳ございませんでしたー!おはようございます。
おはようございます。
どう調子。
だいぶよくなりました。
よかった。
おはようございます。
ありがとう。
ああみゆちゃん目の調子どう?先生ええもん持ってんねん。
ほら!2014/12/10(水) 14:00〜15:51
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眼科医小室瞳の推理カルテ

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