ハートネットTV シリーズ変わる障害者支援 第2回▽あなたの決断を支えたい 2014.12.10


もしあなたが自分のことを自分で決められなくなったらどうしますか?知的障害のあるアンディさんです。
判断力が不十分であるとして子どもの頃から親に決められたとおりの人生を歩んできました。
しかし2年前周囲に支えられながら…今は自分らしく生きる事の喜びをかみしめています。
誰もが自分で自分のことを決められる社会を目指して。
障害者権利条約が採択されて8年。
世界の国々がその理念の実現に向け取り組んできました。
日本の障害者支援の現場でも模索が始まっています。
重い障害で言葉を話せない男性を支援してきた女性。
何度も意思を確認する事で男性自ら納得のいく医療を選択してもらいました。
「シリーズ変わる障害者支援」。
第2回は自分自身で決められる社会を目指した模索を見つめます。
こんばんは。
「ハートネットTV」です。
今週は国が定めた障害者週間です。
番組では昨日から3回のシリーズで今大きく変わろうとしている障害者支援について考えています。
ゲストは昨日に引き続きタレントの奥山佳恵さんです。
よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
昨日は自分で自分のことを決める権利を尊重していこうという動きについてお伝えしましたがどんな事を感じましたか?自分で自分のことを決めるという事がその人の人生を自分で生きていくっていう事につながるんだなって感じました。
イギリスの例も見ましたけどもね笑顔が本当にすてきでしたよね。
自信を持って輝いているように見えましたよね。
そうですよね。
こうした中なんですが日本の障害者支援の現場でも自己決定を支援しようという模索が始まっています。
愛知県日進市にある尾張東部成年後見センターです。
地域に暮らす知的障害者や認知症のお年寄りに代わり財産管理や介護サービスの契約などを担っています。
代表の住田敦子さんです。
たとえ判断力が不十分であってもできるだけ自分で自分のことを決められるよう支援したいと考えています。
自分自身で決める事で人生が変わり始める。
住田さんがその大切さに気付かされた出来事があります。
正和さんこんにちは。
後見人を務めている…脳性まひと知的障害があり言葉を話す事ができません。
ちょっとラベンダーの…。
指原さん?
(笑い声)分かんない。
何か今うれしそうな表情が…。
まゆゆがいいとか言うてたでしょう。
いい?これ。
施設の中で一日中過ごしている池田さんにとって何よりの楽しみが食事です。
おいしい?どう?おいしそうだね。
うん。
ちょっと苦かったんだね?
(笑い声)うん。
ああ「うん」って。
そんな池田さんに食べる楽しみが失われかねない出来事がありました。
かつて池田さんは別の介護施設に入所していました。
風邪をこじらせ高熱を出したのは2年前。
病院に急きょ搬送される事になりました。
状態が落ち着いたあとこの際だからと医師から強く勧められたのが直接胃に栄養を注入する…池田さんは食べ物を飲み込む機能に障害があります。
食べ物が誤って気道に入れば命に関わる事もあるため医師は胃ろうにすべきだと判断したのです。
これまで暮らしてきた介護施設も胃ろうにしなければこれ以上の受け入れは難しいと考えました。
池田さん自身は言葉を話せないため親戚が胃ろうに同意し手術する事が決まりました。
(住田)胃ろう造設手術の説明と同意書ですね。
胃ろうにしても介助さえあれば口から食事をとり続ける事は可能です。
しかし施設からは「難しい」と言われました。
本当に胃ろうにしてよいのか。
住田さんは池田さんの意思を確認しました。
伝わってきたのは迷いでした。
人生を左右する大切な選択。
たとえ迷っても自分自身で決めるべきだ。
手術の4日前。
住田さんは関係者に声をかけました。
主治医や施設の職員が見守る中胃ろうのメリットとデメリットを説明し改めてどうしたいか確認しました。
やっぱり自分の口で食事がしたい。
迷った末に自分自身で下した決断でした。
池田さんは今これまで食べる事が難しかったメニューに積極的に挑戦しています。
食べるの!?
(笑い声)かつては飲み込みやすい流動食ばかりでしたが今はごはんやお肉にもチャレンジ。
自分の人生を自分で選んだ自信が新たな生きる意欲につながっています。
おいしかったですか?ちょっと辛かった?うん。
(笑い声)味が…ちょっと辛かった?オムライス。
うん。
(笑い声)オムライスがきれいに完食ですよ。
完食ですね。
きれいでした。
スタジオには昨日に引き続き2人のゲストにお越し頂いています。
まずは障害者権利条約の批准に関わった尾上浩二さん。
そして障害者の権利を擁護する活動に取り組んでいらっしゃいます佐藤彰一さんです。
まずは尾上さん今の映像ですがどうご覧になりました?どちらの選択がよかったのかっていうのはいろんなケースがあったりするのかも分かりませんが何よりもやっぱりご本人の納得感というのがやっぱり一番大事だなっていうのがよく伝わるビデオだったなという感じがしています。
ご本人以外の方々はやはり誤飲とかのリスクを考えたらまあやはり胃ろうの方がいいのかなみたいな感じになってた雰囲気が伝わってくるんですがでも胃ろう自身がいい悪いとかっていうよりは池田さん本人がじゃあ納得が得れるかといったらやっぱり得れなかっただろうなと思うんです。
やはりそういう意味では住田さんが池田さんを中心に置いてその池田さんの意見をしっかり周りの支援者が受け止めるというそういう会議を持ったというのがすごく大事なターニングポイントだったのかなという感じがします。
障害のある方に心から寄り添ってらっしゃるからその方の意向が分かった気持ちがくめたって事ですよね。
そうですね。
やはり大事なのは本人自身の意思決定支援という時にいろんな情報提供やいろんな支援をしていきますけどもその際本人自身がやはり中心だしそこに寄り添いながらというその寄り添うという感じがすごく大事なのかなというふうに思いますね。
こういった例はほかにもたくさん今日本ではあるんでしょうか?ここまでの例といわれるとそうは多くないですね。
大体まあこれもう周りで胃ろうをつけるという事を決めたようなケースをご本人の意向を確認しながら確認しながらこうひっくり返していってる訳ですけれども。
ただ現場ではここまでやるのはそうはなくてご本人が納得いかないまんまもう無理でしょみたいな感じでこう押しつけてるケースの方が多いようには思いますけどね。
でもねこういう現場がある。
住田さんのような人がいたからって…。
でもそれじゃあいけないような気がするんですよね。
そうですね。
もっと仕組みとして社会の…何て言いますか…意識として高めていかないとここだけは特別っていうふうな形にはしたくないと思うんですけども。
やはりそういった支援に今切り替えていこうというのが障害者権利条約がいってます全ての人が法の前で平等でありいわば自己決定する権利があるという事をうたってる。
それが追い風になって今のような実践があちこちに広がっていくというかそれが本来当たり前だよというふうになっていくべき時期に来てるんじゃないでしょうか。
時間もかかるしお金がかかる場合もあるし人の数が足りないっていう事もあると思うんですけどやっぱりご本人の意思は一番尊重される形であってほしいですよね。
やっぱりご本人が最後に笑顔を持たれる。
それ見るともうそれはうれしいですよね。
大変かもしれないけどあのオムライスを完食された顔を見ると頑張ってよかったなって住田さんも思われるかもしれない。
そのように自分で自分のことを決めるための支援なんですが中には対応が難しいケースもあります。
こちらご覧下さい。
この日住田さんは特別養護老人ホームを訪ねました。
(ノック)
(住田)まさゑさんごめんね。
お待たせしました。
はい。
後見人を務めている女性と面会するためです。
今年2月自宅で衰弱しているところを保護されました。
認知症が進みなぜこの施設にいるのかいまだに理解できていません。
じゃあ急がんといかんね。
今住田さんが頭を悩ませているのは「家に帰りたい」というまさゑさんの訴えです。
築50年が経過したまさゑさんの自宅です。
老朽化が進み手を入れなければ住める環境ではありません。
本人自身の意思決定を尊重したいとはいえそのまま受け入れてしまっていいのか…。
住田さんはまさゑさんの帰宅について話し合うため関係者に集まってもらいました。
会議には市の職員や民生委員のほかまさゑさんの長女も参加しました。
本人抜きで大切な事を決めるべきではないという住田さんの意向でまさゑさんにも加わってもらう事になりました。
議論の焦点になったのは仮に自宅を修理し住める状態になったとしてもまさゑさん一人で暮らしていけるかという問題でした。
長女は体調を崩しているため「毎日様子を見に行く事は難しい」と言います。
しかしそれでもまさゑさんの気持ちは揺らぎません。
じゃあ聞いてみて下さい。
話し合いは2時間近くに及びましたが結論を出すには至りませんでした。
2週間後住田さんはまさゑさんを連れてある場所を訪ねました。
やって来たのは「帰りたい」と繰り返していた懐かしの我が家。
家に戻るのは8か月ぶりです。
まさゑさんに自宅の厳しい状況を見せ改めて判断してもらおうと考えたのです。
すぐには住めない状況を見てもまさゑさんは「ここで暮らしたい」と言います。
(木魚の音)
(読経)お経の本がなきにゃ分からん。
(鈴の音)よかったね。
ちょっとほっとした?うん。
1回見に来て。
そうだね。
そうだね。
だけど今何にもないからちょっと暮らすに不便だね。
兵隊で…召集で行ってね…。
周囲から見て合理的とは思えない本人の決断をどのように受け止めたらいいのか。
住田さんは研究会に参加して出席者に意見を求めました。
参加者から「本人が決めた事をそのまま受け入れるだけが支援ではない」という意見が出されました。
住田さんは家を修理したいというまさゑさんの希望を受け入れました。
(住田)こんにちは。
すみません。
すごいですね。
本人の意思決定を尊重するだけでなくそれを実現できるよう支援する事も大切だ。
住田さんは今関係者と一緒にまさゑさんが独りで暮らしていけるよう支援態勢の整備を進めています。
じゃあまあありがとうございます。
それでよろしくお願いします。
住田さんの支援についてなんですが佐藤さんどうご覧になりました?ご高齢の方で自分のうちに住み続けたい住んでそこで死にたいという方は非常に多いんですね。
同じようなケースというのは日本中いくらでもある訳ですけれどもその方々の支援に当たってる人って大体同じような悩みを抱えているというふうに言ってよろしいかと思います。
このケースの場合はもうご本人が言葉で言う自分の思いとしてはもう明確な訳ですけれどもなかなか周りの方がそれをじゃあいいですよっていうふうに言えないという。
そういうところで葛藤が生じてる訳ですが。
果たしてそれでご本人の意向だけでいけるかっていうところを残すかどうかってのはもう世界的に今議論が分かれてるとこなんですが今そういう大きな議論はともかくとしてこういうケースでこの人本当に判断できてるのかできてないのかっていうのを現場の人にみんな委ねられているんです。
それでもその意思を優先しろというふうに言うかいやそうじゃなくてそこはもう第三者が「この人はもし…もし本当に判断できたらこういう判断するでしょ」という代行決定するかという事についてはもっと多くの議論を重ねないと駄目だと思うんですね。
だから時間がかかるんですね。
答えがないし。
その事を国を挙げて議論したのがイギリスなんですけども。
日本はそういうところの悩みがあるっていう事すら知られてない訳です。
なかなかね尾上さん難しいケースだと思うんですけども。
市川さんというその方が実家へ…実家というかおうちへ戻られて仏壇の前に立たれた時のもうすごく集中して仏壇の前…。
木魚をたたいておられる姿がすごく印象的で。
あっやっぱりあの方にとってはこの家を守ってる。
そこに自分の人生や歴史があるんだなというのがすごく印象的に映ってるシーンだなというふうに思いました。
もちろんあの方自身のある意味で意思ははっきりしてる訳だからそれを実現するためには何が困難になってるのかというのをもう少し順番に洗い出していくというかその人自身の意思決定とそれを実現をしていくプロセスの中で何が課題になってくるかみたいなのをもう少し分けて議論ができるような事が必要なのかなと思うんですね。
そういう意味で意思決定支援という事と加えて意思決定をしたその決定を実現をしていくような社会資源とかサポートを併せて考えないといけないかなと思います。
サポートされる側の方の気持ちをくんであげて周りでその方のサポートに回れる態勢が必要という事ですかね。
とはいえでも本人が決めた事が実は本人にとって不利益になるかもしれないという判断も出てくると思うんですがそういった時は…?障害者支援では建て前というか言われていたのはその人の利益を考えたら…。
あるいはリスクを考えたらやっぱりこうすべきだみたいな事は先走って言われて。
つまりリスクを避けるためにという事が何でもかんでも大手を振ってきた時代があったと思うんです。
それに対して当事者はやっぱりリスクを冒す権利もあるんだ。
むしろリスクがあるからあれ駄目これ駄目と言われる事に対してリスクを冒してでもやっぱりやりたい事あるんだという事をやっぱり言い続けてきた歴史があるんですね。
リスクを冒す権利ですか。
はい。
そうです。
あと意思決定支援を議論する時に一番注意しないといけないのは意思決定支援というのは意思決定を強要してはいけないといつも思ってるんです。
情報提供しましたよ。
こういう環境整いましたよ。
さあ決断して下さいって言って迫られるとやっぱり我々だってなかなか難しい事は決断できないですから決断するのをじ〜っと待ってるという強要はしないという。
そういう事が非常に重要だと思いますね。
あなた決断したでしょうと。
失敗したらあなた自己責任でしょうとかそういう事にならない。
そうなんです。
そうなってはいけないと思うんですね。
2日間を通して今変わろうとしている障害者支援について考えてきました。
一番今求めたい事って何ですか?
(尾上)そうですね…。
障害のない人だったら当たり前にやってる事が障害があるが故にできないという事でずっと作られてきた歴史があってそしてそれは障害者分野だけじゃなくて広く大きな日本社会全体がしっかりと受け止めていってほしい。
受け止めていかなければならない課題なんだなという思いを新たにしました。
奥山さんは?相手のためを思ってよかれと思ってっていう気持ちはあんまり大きくし過ぎない方がいいんだなって感じます。
人生って選択の連続じゃないですか。
洋服を何を着るからハンカチはどの色にするとかどの電車に乗っていくとか全部選択選択だと思うんですけど自分で選択する事でその人の人生がある訳ですよね。
選択は人生なんだなって改めて実感しています。
選択は人生…。
選んでいかなくちゃいけないんですよね。
そうですよね。
皆さんはどう感じましたでしょうか?皆さん今日はどうもありがとうございました。
2014/12/10(水) 13:05〜13:35
NHKEテレ1大阪
ハートネットTV シリーズ変わる障害者支援 第2回▽あなたの決断を支えたい[解][字][再]

今年1月に日本政府が批准した障害者権利条約。中でも注目されている理念の一つが、誰もが自分のことを自分で決められる社会の実現だ。自己決定をどう支えるべきか考える。

詳細情報
番組内容
今年1月に日本政府が批准した障害者権利条約。中でも注目されている理念の一つが、“誰もが自分のことを自分で決められる社会”の実現だ。シリーズ「変わる障害者支援」。第2回は、知的障害や精神障害、認知症などによって、自分の力だけでは、自分のことを決められない人たちに対して、どのような支援を行えば、自己決定を実現できるかについて考える。
出演者
【ゲスト】奥山佳恵,國學院大學教授…佐藤彰一,DPI日本会議副議長…尾上浩二,【司会】山田賢治

ジャンル :
福祉 – その他
福祉 – 高齢者
福祉 – 障害者

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
サンプリングレート : 48kHz

OriginalNetworkID:32721(0x7FD1)
TransportStreamID:32721(0x7FD1)
ServiceID:2056(0x0808)
EventID:24376(0x5F38)

カテゴリー: 未分類 | 投稿日: | 投稿者: