無い袖はノースリーブ Twitter

2014-12-25

2014往く映画・観た映画

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「クリスマスか……」
 仕事納めの目処がまったく立たないままやけくそ気味にパソコンをシャットダウンし、私はイルミネーションきらめく街を見つめた。こんな夜は、あの店に行くしかない。今年も一人で――。

「大将、やってる?」
「お久しぶりです。どうぞ、いつもの席ございますよ」
「いやあ、また随分ご無沙汰しちゃったね。大将どう、最近は」
「おかげ様で何とかやらせていただいてます。今日はどうしましょうか」
「じゃあ、おまかせで行こうかな。去年と同じコースで」
「はい、コースで。ありがとうございます」

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー
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「まずはこちらからどうぞ」
「おっ、アメコミだね……んっ。大将、これ何かの毛が入ってるんだけど」
「アライグマです。具です」
「なんかの枝も入ってる……」
「具です」
「すごい具だね?!」
「一見珍味ですが、味の方はちゃんとしてますんで」
「あ、ほんとだ。けっこう王道」
「意外と最近無かったでしょ、こういうスペオペ」

「音楽もいいねえ」
「追加でサントラお出ししましょうか」

Guardians of the Galaxy

Guardians of the Galaxy

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エクスペンダブルズ3 ワールドミッション
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「メインは肉かあ」
「いえ、こちらは箸休めの甘味です」
「甘味? いやいや、このメンツで甘味はないだろ」
「まあ、召し上がってみてください」
「……甘い!」
「甘いんですよ」
「しかもこの甘さは……」
「ええ、これはですね」
「いや、待って大将、当ててみせるから。これはアレだろ、大将の得意な……やおい!」
「いえ、違うんですよ」
「えっ」
「こちら、ホモソーシャルのソーシャル抜きです」

「具体的にはどこがどう違うの?」
「妄想の余地がないくらいデキあがっているものは、ソーシャル抜きになります」
「いろいろあんだねえ……」

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イントゥ・ザ・ストーム
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「2014年にもなって竜巻映画とか、今更感があるなあ。もう何十本作られてるのよ。コレは何か新味はあるの?」
「車です」
「車ぁ?」

「タイタス!」
「タイタス!」
「タイタス!!」
「タイタス!!!」

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ドラッグ・ウォー/毒戦
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「おっ、香港映画だね」
「正確には香港・中国合作映画です」
「……そんなに、味に違いを感じないんだけど。ちょっと暗いけど」
「けっこう面倒なんですよ。公安の捜査官は正義の味方のヒーローにしなくちゃいけないし」
「でもスン・ホンレイだしヒドいことになってるよ?」
「死人や弾丸の数も中国側から規制が入って」
「いっぱい撃ってるし死んでるよ?」

ドラッグ・ウォー / 毒戦 [DVD]

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「そこは監督の腕の見せ所ってやつでしょうねえ」
「ルイス・クーもひときわ黒いしね」

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ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!
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「ビールだ!」
「ぐっとお呑りになってください」
「………………苦っ!!!!!!」
「苦いんですよ」
「苦すぎない?! 青春リユニオン甘酢っぱコメディだと思ったのに!」
「青春リユニオン甘酢っぱコメディです」
「甘くないよ?! 苦い! 苦い通り越して、辛い!!」
「こちら、お客さんによって苦さがだいぶ変わるようで」
「いやいやいや無理! 我が身を振り返って死にたくなる苦さだよこれは!!」

「お客さん、だいぶロクでもない青春過ごされたんですね」
「うるせえ! もう一杯!!」

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チェイス!
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「おっ、インド映画か。華やかだし賑やかだしクリスマス気分にピッタリだね。歌って踊って楽しさいっぱい!」
「こちら、各国で歴代インド映画興収No.1という謳い文句が付いております」
「そりゃ楽しみだ。さぞハッピーなボリウッドムービーなんだろうなあ」

「うっ……ううっ……」
「お客さん、紙ナプキンどうぞ」
「何これ?! 香辛料感ぜんぜん無いけど眼に沁みまくるよ?!」
「カレー的なものが一回も出てきませんので」
「なんていうか凄いナニがアレなんだけど……なぜアレなのか言いにくい!!」
「当店一応ネタバレ禁止店となっておりますので」
「こんなインド映画あるの?!」
「こちら、JUNEなんですよ」
「また新しいジャンルが出てきた……」

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テロ,ライブ
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「お、懐かしいなあ。局アナ時代の福澤朗か」
「いえ、こちらハ・ジョンウです」
「あっほんとだ。……おお、いいね、この身だしなみ整えるシーン」
「エロいんですよ」
「身も蓋もないけどエロいね。いやしかし、食いごたえあるなあ」
「ランタイムは98分なんですけどね」
「韓国映画にしちゃボリュームはかなり少ないんだね。でも凄いよ、このストレートな辛さ」
「パンチ効いてますでしょ」

テロ, ライブ [DVD]

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「はー、一気に食っちゃった。社会派だけど社会派(笑)みたいな斜に構えた味ぜんぜんしないね」
「このネタにトップスターが出るのも今の韓国映画ならではかもしれませんね」
「ますます目が離せないね。ハ・ジョンウ、エロいし」
「エロいんですよ」

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なんちゃって家族
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「うーん……家族モノかあ。苦手なんだよなあコメディでも」
「こちら、家族モノが苦手なお客様にぜひお召し上がりいただきたい一品でして」
「そうなのお? じゃあ一口……」

「いかがですか」
「好き! これ、好き!」
「お口に合いましたか」
「いい! 家族モノなのに観終わったあと『実家に電話しないと……』とかシケた気持ちにぜんぜんならない! 家庭の味がまったくしない!」
「けど、家族モノなんですよ」
「うん、家族モノだ」

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ジャッジ・アーチャー
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「何これ?」
「実はアタシにもよく分からないんですが、たぶん武侠映画ですね」
「去年も同じような話をした気が」
「同じ監督・主演ですので。いかがですか、こちらの方は」
「相変わらず何がなんだかぜんっぜん分からないけど、むちゃくちゃ美味い」
「こちらは予告編見ていただいた方が喉越しがよろしいかもしれませんね」
D
「いや、やっぱわかんねえよ!」
「でもいい味でしょ」
「メチャクチャ美味い。この監督、一生追っかけたい」

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「さて、ではそろそろラストのひと品まいりましょうか」
「楽しみだなあ。大将の今年の自信作か」
「では、ちょっとこちら咥えていただきますか」
「何これ、ロウト?」
「ええ、それを咥えて……そうそう、それで、ちょっと上を向いていただけますか」
「ふぉう(こう)?」
「はい、よろしいです。では参ります」





 薄れゆく意識の中、私は喉奥に流し込まれたセメント様の何かに確かな『味』を感じていた。これは、この店に長年通って幾度と無く食べてきた味……大将のお得意の「あれ」だ。しかし、今まで食べたどの「あれ」より濃く、切なく、狂おしく、甘く、苦く、熱く、官能的な「あれ」だ。この味は何と言えばいいのだろう。

 視界が暗くなる瞬間、私は大将の笑顔を確かに見た気がした。いつもの温厚な微笑みとは違う、満面の笑顔だ。

『そうか……これが……この味が……”凄いやおい”……』

 息絶える寸前、私は確かにその新しき世界に到達した気がした――。

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 来年も宜しくお願いいたします。

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