《よせ。
やめろ》
（刺す音）
（男性）《ああっ！》
（由紀子）はっ！ハァー。
・
（受刑者）何？またうなされたの？
（受刑者）あんたもうすぐ出所だろ？うわ言言って前科ありバレないように。
しゃばに出たらせいぜい気を付けな。
・
（ラジオ体操の音楽）
（所長）第１９４番石神由紀子。
（所長）本日をもって仮釈放とする。
もう二度と戻ってくるんじゃないぞ。
（由紀子）はい。
（刑務官）《作業報奨金です》
（刑務官）《長い間ご苦労さま》《ありがとうございます》３０万か…。
・
（大将）だいたいなそのださい格好。
（大将）家出人みたいなこの荷物。
えっ？化粧っ気のないその顔。
今お前塀の中から出てきたってすぐ分かるんだからな！
（みのり）だったら何だっていうのよ！？たった５年…。
たったじゃないけどたった５年いただけでじじいにそんなふうに言われたくないんだからね！何！？じじい！？前科者のくせに何言ってんだこの野郎！？うちはな前科者に食べさせるような飯はねえんだよ。
出ていけこの野郎！何よ！？ちんけな食堂のくせにお客選ぶっていうの？販売拒否！？だったらねこっちにだって考えがある！訴えてやるんだから！「客を選んじゃいけない」っていう法律はない。
すいません。
おまかせ弁当テークアウトできますか？
（大将）テ…テ…。
持ち帰りたいんですけど。
あっ持ち帰り。
おいお持ち帰り一丁。
おまかせ弁当１つ。
・
（女性）はーい。
フン！・あんた！エヘヘ。
やっぱりあんたも前科ありじゃん。
ノーブラ。
お互いいっちゃん最初にブラ買おうね〜。
・おーい！あーやっぱ定食屋のお弁当はおいしそうだわ。
この香り。
食べたかったんだよね。
くそあのじじい！いつか見返してやるんだから。
ねえ。
どっかで会った気がすんだけどさどこで会った？さあ。
私はさ清掃作業してたからいろんなとこ…。
あっ！縫製作業員だ！アハハ。
いっつもしかめっ面しながらさミシンかけてたでしょ？私逢坂みのり。
よろしくね。
ハァー。
チッホントはさ計算とか得意なんだけど…。
さすがに経理でやらかした人間そっちの作業には回してくんなくてさ。
うーん！うん？あんた名前は？第１９４番。
ちょっと…。
名前聞いてるんでしょ！？ちゃんと名前で答えてよ！何で？「何で？」って名前知らなきゃこれから不便でしょうがないじゃん！コーラコーラ！ちょっと！どこ…。
あっ！５年ぶりのカルボナーラ。
あんたみたいなうるさいのお断り。
これ残り物だけどあげるからこれ以上私に付きまとわないでよ。
つ…付きまとうって何よ！？「袖振り合うも多生の縁」っていうじゃん！つうかあんた何やらかしたの！？ねえ？イーッ！うまーい！あー！やっぱり田舎の空気はうめえな！こんにちは！
（男性）こんにちは。
あの子は確か…。
こんにちは。
（女性）はいこんにちは…。
みのりちゃんいつ帰ったの？ああ今日です。
（男性）いつまでいるの？さあ。
ちょっと決めてねくて。
ふ〜ん。
それだばお母さんたちは大変だ。
（女性）あんた余計なこと言って〜。
ただいま！
（芳恵）みのり。
ただいま。
庭の柿の木切っちゃったんだね。
一瞬分かんなかったよ。
隣の敷地さ掛かってらったからね５年前に。
隣の敷地ってそんなのずっと前から…。
ああ５年前ね…。
なるほど。
おばあちゃん！
（サキ）みのり。
んだよ！みのりだよ。
帰ってきたんだよ。
（サキ）みのり。
（サキ）みのりこんなに痩せちまって。
おばあちゃん。
あーえがったえがった。
えがったよ。
便利になったな。
（洋子）開店は５時よ。
出直してきてね。
何の用？夫の居場所ご存じですか？夫？あんたに夫なんかいたっけ？元夫です。
ああそうか。
あの人のことか。
どこにいますか？さあ知らない。
今でもここに飲みに来てるでしょ？関わり合いになりたくないのよ！分かるでしょ？そうでなくても亡くなった花巻さんあんたの旦那に連れられてよくここに飲みに来てたってことが分かってしかもその花巻さん殺したあんたまでここで働いてたことがあるって分かって警察にしつこく聞かれたんだから。
ホントいい迷惑よ。
あれからあちこち転々としてるよ。
だからホントに分からない。
ママこんなこと言いたくないけど今でもやってんでしょ？あれ。
何なら税務署に言ったっていいんですよ。
あんたね！ハァー。
仕方ないわね。
今はこの女の所にいるらしいよ。
もう一つ聞きたいんですけど。
何？あの人俊を…息子を施設に預けたってホントですか？俊。
（職員）俊君ちょっとお話があるの。
相談室来てもらっていい？
（俊）はい。
だからな栄養管理がしっかりされててメタボで入った人も出所するころにはすっきりした体形さなっちゃってね。
うんだのう。
私なんかウエストもしっかりくびれちゃって。
うんだのう。
（久志）姉ちゃんよそんな話して楽しいわけ？バッカじゃねえの。
刑務所の武勇伝なんか聞いて家族が喜ぶでも思ってるわけ？
（芳恵）久志。
だって５年もいたから他に話すことねえし。
（久志）…にしたってデリカシーに欠けるべ！？姉ちゃんのせいで俺たちどんな…。
久志。
（久志）いいべ！言ってやるべ！言わねばこんな能天気なバカ姉貴何も分かりゃしねえんだから。
近所の人からも学校の友達からも俺たちがいったいどんな目に遭ってきたか。
（男性）《村の恥さらし！》
（男性）《犯罪者は村から出てけ！》《おい出てこい！》・
（村人たちの怒鳴り声）《わー！》・
（村人たちの怒鳴り声）
（生徒）《おい泥棒の弟！》
（生徒）《犯罪者はこの村から出ていけ！》《村の恥さらし！》
（生徒）《お前の顔見てるだけでむしずが走るんだよ！》
（生徒）《早くこの村から出ていけ！》
（生徒）《出ていけ！》
（久志）刑務所さ入った姉ちゃんより俺たちの方がずっとつらかったんだ。
分かってんのかよ！？迷惑なんだよ！いまさら帰ってこられたって迷惑なんだよ！
（芳恵）久志。
ごめんね。
悪いって思ってねえわけじゃねえんだよ。
だけんど他に行くとこもねえし。
あの子も気が立ってるんだよ。
最近付き合い始めた子のお父さんがお前のこと知って。
せめてお金だけでも返すことができたら…。
ハァー。
２，０００万なんて大金…。
何して横領なんかしたんだか。
（孝典）よいしょ。
あー。
あー。
あー。
（信子）あーもう。
大丈夫？
（孝典）えっ？
（信子）飲み過ぎたんじゃないの？
（孝典）飲み過ぎたんじゃねえの。
（信子）はいはいはい。
部屋に入ってからゆっくり。
ちょっと…。
ちゃんと歩いて。
（孝典）さあ行くぞ。
（信子）行くからほら。
（孝典）よいしょ。
（俊の泣き声）
（孝典）《いつまで泣いてんだ！？てめえは》《ちょっとやめて！》《ギャーギャーうるせえんだよ！》《子供には手を上げないで！》
（俊の泣き声）《やめて！それだけはお願い。
ねえやめてよ！》
（孝典）《うるせえ！》《犯罪者の娘なのにもらってやったんだぞ》《何か文句あんのか！》
（孝典）おっ…頑張るぞ。
（芳恵）みのりいつまで寝てるの？いいかげんにご飯食べないと。
「お母さんおばあちゃん久志ごめんね」「いくら魔が差したとはいえ会社のお金になんか手を付けた私がバカでした」「５年間の刑務所生活で罪を償ったような気になってたけど本当の償いはこれからなんだね」「これからはもうお母さん達に迷惑をかけないように何とか頑張ってみます」「新しい柿の木隣にはみ出したりしないようにもうちょっとうち寄りに植えといて」「今度帰ったとき目印になるように」「いつ帰れるか分かんないけどおっきくなった柿の木を楽しみに毎日を頑張ります」「いろいろありがとう」「そしてごめんなさい」「あっそれと久々に食べたお母さんのご飯おいしかった」「みのり」みのり。
あっここだ。
（生徒）えっ嘘！？
（生徒）あいつそんなことツイってるの！？マジマジ。
（生徒）へぇ〜マジ！？ってかもう最近ツイるの…。
ツイる？
（生徒）私なんてもうＬＩＮＥ専門。
ライン？何？これ。
何だ？これ。
ハァー。
５年のブランクは大きい。
ごめんください。
（柿沼）ここなんだけど。
なかなか理解のある経営者でね受刑者の再犯を何とか防ぎたいと協力を申し出ておられる方なんだよ。
はい。
（柿沼）ヘヘッ。
まあお世辞にも広いとは言い難いけど寮もあるし出所したばかりの君にはいい働き口だと思うんだけどね。
仕出し弁当屋さんですよね？
（柿沼）うん。
１つ聞きたいんですけど勤務時間は？
（柿沼）おいおい。
ぜいたくを言っちゃいけないよ。
そりゃ朝の４時からってそう楽ではないけど昼すぎには終わるんだし。
結構です。
その方がありがたいです。
こちらで働かせてください。
お願いします。
（保護司）頑張れば絶対報われる。
仮釈放の間は問題起こしちゃいけないよ。
はい。
ありがとうございました。
ここだ。
（九十九）見てのとおり難しい作業は一つもない。
誰でもその日から働けるよ。
あっ衛生管理は気を付けてね。
えーっと寮はこの近くだから。
はい。
（九十九）石神さん！あんた！
（九十九）２人知り合い？いいえ。
（九十九）えーこちら石神由紀子さん。
こっちは逢坂みのりさん。
初めまして。
初めまして。
（九十九）２人同室だから仲良くやってね。
何か？あっいえ何でもありません。
（九十九）で今日は…。
・
（女性）社長。
（九十九）何？
（女性）発注書できました。
（九十九）ちょっとごめんなさい。
付きまとってるわけじゃありませんから。
これ偶然ですから。
あっでもお弁当ありがとう。
おいしかった。
・
（九十九）あっごめんごめん。
（九十九）えーっとえー今日はこの仕事の流れを覚えてあしたの朝２人とも２時ってことでお願いします。
２時！？何か都合の悪いことでもある？え…都合は悪くないけどでも２時ってそんな…。
大丈夫です。
じゃあよろしく。
ねっ！ちょっと勝手に…。
何？あれ。
何この部屋！寮だっていうからもうちょっとましな部屋だと思ったのに。
今どき１つ口こんろなんてあるんだ。
げっ！トイレ和式！あー！お風呂にシャワーがない！刑務所よりましじゃない。
違う？そうだけどさ出勤時間だって２時って。
保護司さんからは４時からって聞いてたのにこれって詐欺でしょ詐欺！詐欺でムショに入ってた人間が偉そうに。
それとこれとは別じゃん！保護司さんに訴えてやる！文句言ってやるんだから！私たちが２時からだって言われた途端パートさんたちが目配せしてた。
それが？「あーこの人たち前科ありだ」って。
そういうことになってんのよ以前からずっと。
前科ありの待遇は。
くそっ！どうしたの？文句言いに行かないの？言っても無駄なんでしょ？結局足元見られてんだ。
バカな私にだってそれぐらい分かる。
何だ。
行かないんだ。
じゃあ…。
キャー！な…何！？それ。
そこの隅にあったゴキブリコロコロ。
それはいいけど何でそんなもん！だって行かないんでしょ。
なら私はこっち。
あんたはそっち。
お互いプライベートには干渉しない。
いいわね？プ…プライベートってこのくそ狭い部屋で…。
分かったからこれどけてよ。
ちょっと嫌だ！やめてってもう！何？これ。
ねえ１つ聞いてもいい？あんた何でムショ入ったの？何やらかした？もしかして…。
殺し。
私人殺したの。
動かない…。
重い…。
よいしょ。
熱いもう。
熱い。
はねる！はねるから気を付けて！おはようございます。
下ごしらえ終わった？もうすぐです。
あーあーあー。
何？これ。
葉っぱまだ残ってるじゃない？下手くそ。
ったく使えないんだから。
あー疲れた。
（竜二）《ごめんな。
俺のせいで》《俺が無理させたばっかりにこんなこと》《ううん。
竜二のせいじゃないよ》《私が勝手に…》《竜二のこと誰にも言ってないからね》《誰にも》《ああ》《あと１つ聞いてもいい？》《何？》《私竜二のこと信じていいよね？》《信じてもいいんだよね？》《ハァー》・
（受刑者）《どうしたの？》《最近あんたのいい人全然面会に来ないから心配で眠れないんだろう？》私。
分かるの？私のこと覚えてたの？うん。
分かった。
あしたの３時いつもの所ね。
うん。
・
（男性）《おいこっち逃げたぞ！》・
（男性）《いたぞ！こっちだ！》あっおかえりなさい。
ちょっとどこ行ってきたの？汚れてるけど。
どこだっていいでしょ。
もしかして何か埋めてきた？ううん。
掘り出してきた。
何？「こんな狭い部屋プライバシーもくそもない」ってあんたが。
何？もしかしてカーテン？何もそこまでしなくてもさ。
だったらそんなの…服とか靴とか見られて。
ついでに男とか聞かれていいわけ？経理でやらかしたって言ってたよね。
もしかしてその男に貢いだの？ちょっと人聞きの悪いこと言わないでよ。
投資したの。
投資。
彼ってさビジネスの才能があると思うんだよね。
だから投資。
人のお金で投資も何もないでしょ。
すぐ埋められると思ったんだもん。
すぐ返せばバレないって。
ちょっと借りるだけだって。
大丈夫だと思ったんだもん。
それにさ好きな人と同じ夢を見るっていうかそういうのちょっとしてみたくなってさ。
同じ夢？お金を出すことで振り向いてもらいたかっただけなんじゃないの？最初は面会にも来てくれてたんだけどだんだん来てくれなくなって正直ちょっと不安になった。
けどね彼忘れてなかった。
で会いたいって。
何か仕事もうまくいってるみたいだしさ。
もしかしたら私に手伝えることがあるかもしれない。
そしたらさお金も会社に返すことができるかもしれないよね。
ねっ！うーん！《石神さん１人でこんな所にいないでお弁当ぐらいみんなと一緒に食べたら？》《１人で平気です》《聞いたよ》《お父さんのことで苦労してるんだって？》《俺でよかったら相談乗るよ》《犯罪者の娘なのにもらってやったんだぞ》《何か文句あんのか！》・フフフ。
・
（鼻歌）
（竜二）少し痩せた？あっうん。
（竜二）座って座って。
いやー何かすごくかわいくなって見違えたよ。
あっありがとう。
フフッ。
（ウエートレス）いらっしゃいませ。
お待たせしました。
（竜二）何飲む？
（ウエートレス）メニューになります。
（バイブレーターの音）えーっと…。
あっちょっとごめん。
ああ敦子。
うん。
ごめん。
今商談中。
うん。
ちょっと面倒な相手で。
うまく処理しないと後々面倒くさいことになりそうなんだよね。
うん。
分かった。
後で連絡するよ。
うん。
はいじゃあね。
ハァー。
（竜二）ごめん。
お待たせ。
ちょっと仕事の話でさ。
このご時世だからなかなか大変だけど何とかやってるよ。
これも全てみのりのおかげだよ。
そんなことないよ。
フフッ。
（信子）誰だろう？《いいか？花巻さんの隙を見てロシア土産の何とかって人形を…》《マトリョーシカ？》《そう。
それだ》《それを持って帰ってこい》《どうして？》《何でも！》《ホントはな１個ずつ取りに行く約束になってんだ》《けどいっぺんに全部持ってこい》《だからどうして？》《つべこべ言うな！》《その方がお前のためなんだよ》・ただいま。
あー何か久々に気分いい。
ねっ一緒に飲まない？会ってきたんだ？うん。
彼全然変わってなかった。
「仕事は山あり谷ありだけど何とかやってる」って。
私のことは「申し訳なかった」って。
「２人の罪だから２人で償っていこう」って。
彼そう言ってくれた。
フフッ。
言うだけなら何とでも言える。
口だけの男って世の中に…。
竜二はそうじゃない。
彼はそんな人じゃないよ！由紀子さんが思ってるような人じゃない。
勝手にすれば。
あんたが今よりももっともっと大きな後悔しないことを祈るわ。
もっと大きな後悔って何？私が竜二を殺すって？由紀子さんと一緒にしないでよ。
私はいくらさみしいからって人を殺したりしない。
由紀子さんが殺したの男なんでしょう？だからそんなこと言うんでしょう！フフッ。
確かに私があんたにああだこうだ言える資格ないわね。
フフッ。
しかも間違ってるんだもん。
私殺す相手間違えた。
えっ？
（孝典）よいしょ。
こんばんは。
ったく。
たまにはまともに仕事したらどうなの？毎日飲み歩いていい気なもんね。
そんな固いこと言わないでさ。
さあ信ちゃん水割りを１杯だけちょうだい。
１杯。
あー。
（信子）あっそうそう。
マンションに届いてたんだけど。
えっ？
（信子）誰？それ。
名前も書かないで。
どうした？いや…いやいや。
・
（男性）ママお代わり。
（信子）はい。
まさかあいつ…。
つばさ愛育園？・
（生徒）おい！そこのはくじょうの人。
お前だよおい。
聞いたんだけどさお前の母ちゃん人殺したんだってな？
（生徒）人殺して刑務所入ってんだってな？
（俊）お母さんは死んだと聞いてます。
（生徒）そんなの嘘に決まってんだろ。
お前の目が見えないからごまかしてんだよ。
嘘をついてるに決まってんだろ。
（生徒）お前の母ちゃんは人殺して刑務所入ってんだよ。
（俊）そんなの嘘だ！お母さんが生きてるなら僕に会いに来てくれるはずだ。
（生徒）ハハハ。
（俊）絶対！絶対。
（生徒）お前さバカじゃねえの？刑務所入ってんのにどうやって会いに来るんだよ？おい人殺しの息子。
（生徒）人殺しの息子。
（生徒）人殺しの息子。
（生徒）立てよ。
（生徒）人殺しの息子。
（生徒）人殺しの息子。
（生徒）おい…。
（生徒）おい人殺しの息子。
ちょっとあんたたち！
（生徒）立てよ。
あんたたち何やってんのよ！寄ってたかってひきょうでしょ！もし仮に万が一この子の母親が犯罪者だとしてもそんなのこの子には何の責任も関係もないでしょうが！あんたの親だってねあんたの親だってあした痴漢で捕まるかもしれない。
何か責任あんの？自分は何もやってないのに何で痴漢の息子って言われなきゃいけないのよ！そんなの嫌でしょ？ふざけんなって思うでしょ！？ハァー。
何だよこのばばあ。
ばばあ？
（生徒たち）ブス。
ブスってバカ！二度と来るな！
（俊）あの…ありがとうございました。
（俊）例えが何かおかしかったけど助かりました。
ううん。
気にしないで。
大丈夫？
（俊）大丈夫です。
すいません。
あの…。
お母さん？えっ？なわけないですよね。
でも何か懐かしい感じがする。
においかな？ってそんなわけないですね。
お母さんは死んだんだしそれも僕が３歳のときだったから何も覚えてないし。
（俊）誰ですか？ううん。
何でもない。
あっ今度また何かあったらさおば…。
お姉さん呼んで。
はい。
携帯持ってる？僕のは音声携帯なんです。
音声携帯？どうやってメール打つの？びっくりした。
由紀子さんにあんな大きい子がいたなんて。
旦那さんは？今どうしてるの？私の父親ね窃盗で捕まったことあるのよ。
おかげで私は就職も恋愛も全部パー。
さすがに大学辞めさせられるようなことはなかったけど結局居づらくなってそれもね…。
親が犯罪者でもいいっていう男とすがるように結婚して。
揚げ句がこれ。
あんな男さっさと見切りつけて息子を一人で守っていけばよかった。
どうしてそうしなかったんだろう。
あんな男…。
あっごめん。
あんたは信じてるんだったよね。
悪い悪い。
竜二は大丈夫。
竜二は違う。
・
（女性）あれ竜二？
（竜二）おお。
何してんだよ？こんなとこで。
（女性）えっ竜二こそ。
今日仕事の打ち合わせじゃなかったの？ああ。
今待ち合わせ中。
（女性）竜二ごめんね。
お金用意できてなくて。
今度の金曜までには何とかするからね。
いいんだよ。
安月給のお前には無理させらんない。
《ごめんね。
私竜二の力になれなくて》
（竜二）《いいんだよ》《俺お前には無理させたくない》
（竜二）何とかしなくちゃな。
２人の将来のためにも。
《俺頑張るよ。
２人の将来のためにも》
（竜二）式はどこで挙げようか？
（女性）ええっ！どこがいい？どこ行こうか？
（女性）えー。
ハワイじゃないやっぱり。
（竜二）ハワイか。
（女性）でも高いかな。
（竜二）大丈夫だよ。
お代わり。
（男性）はいよ。
・撃沈？何で分かるのよ。
そりゃ分かるわよ。
昼間まであんなるんるんしてたのに急にこれだもん。
私も。
（男性）はい。
都会に憧れて…。
高校卒業してすぐ東京に出てきて。
「田舎者」って陰で散々笑われて。
笑わない人初めてだったんだ。
「今のまんまでいい」って。
「それがカワイイ」って。
そう言ってくれたの…。
あの人が初めてだった。
だから…。
しょうがないじゃない。
だまされたってしょうがないでしょ。
ついに認めたか。
だって認めるしかないじゃない。
あんなとこ見せつけられて。
認められただけ立派なものよ。
偉い偉い。
もう泣かない。
何よ！人のことバカにして。
もっと真剣に慰めてよ。
泣くな。
もう！こんにちは。
（後藤）ああこっちこっち。
悪いね朝早くから仕事だって分かってんのに呼び出しちゃって。
いいえ。
町内会長さんに呼んでいただけて光栄です。
こないだのあんたの鮮やかな打ち筋が忘れられなくてね。
いったいどこで腕磨いたの？さあどこでしょう？
（受刑者）《珍しいね。
ここへ入って打ち始めるなんて》《できることは何でも勉強しときたいんです》《外に出て何が役に立つか分かりませんから》あのうところで…。
ああそうだ花巻さんのことね。
あの人の鹿沼の別荘の場所だよね。
はいこれ。
栃木県？
（後藤）あの人があんなことになって今ごろはどうなってることやら。
何しろあの人が殺されてからもう１０年だからね。
そういえば花巻さんを殺したっていうあの人奇麗な人だったよね。
（後藤）何やってんの？あんたの番だよ。
あっはい。
竜二。
お待たせ。
何だよ。
約束すっぽかしたと思ったら急にまた呼び出して。
ごめん。
でもすっぽかしたわけじゃないの。
何ていうか気を利かせたの。
何だかとってもお取り込み中に見えたから。
あっ…。
まあそんなことはどうでもいいや。
単刀直入に言います。
私の渡したお金返してちょうだい。
今まで竜二を信じて何があっても自分の責任だって耐えてきたけどもうおしまい。
私償いたいの。
自分の勝手で迷惑を掛けた全部の人に。
あのお金返したい。
だからお願い。
そんな金ねえよ。
てかお前知らねぇの？俺がしたことが詐欺だって立証できなきゃ警察は俺に手出せねぇんだぜ。
金だって返す義務はない。
だから答えはノーだ。
竜二…。
田舎者のくせに。
無理して背伸びして格好つけようとするからそういうことになんだよ。
いいかげん気付け。
竜二あんた良心のかけらもないの？自分がやったことで大変な思いをしてる人たちに申し訳ないっていう気持ちこれっぽっちもないの？ねえよ。
俺はな哀れな女たちに夢を見させてやってんだよ。
その報酬を頂いて何が悪い？お前だって俺と恋人気分でずいぶん楽しそうだった。
そうだろ？そうだ。
お前５年間男なしで寂しかっただろ。
何なら俺が慰めてやろうか？もしもし元山です。
ああ君か。
えっ都合つくの？１００万？ホント？助かる〜。
うん。
あっ今から？いいよ。
ゆっくり２人の将来について話でもしようよ。
ハハハハ。
いらっしゃい。
（孝典）あんただろあいつに俺の居場所しゃべったの。
おい。
（洋子）ちょっとちょっと…。
仕方なかったのよ。
あの子うちの内情色々知ってて。
（孝典）どこにいるんだ。
（洋子）知らないわ…。
（孝典）どこにいるんだよ！ホントに知らないんだってば。
それよりあなた気を付けた方がいいわ。
あの子のあんな怖い顔初めて見た。
あれは何でもする顔よ。
・
（口笛）フッ…。
（刺す音）
（竜二）うっ…。
あっ…てめぇ…。
痛ぇ…。
（竜二）《田舎者のくせに》
（竜二）《お前だって俺と恋人気分でずいぶん楽しそうだった。
そうだろ？》《何なら俺が慰めてやろうか？》《ハハハハ…》由紀子さん…。
何やってんの？私…。
・
（刑事）いたぞ！ちょっと…。
（刑事）待て！早く！
（刑事）待てー！
（刑事）待て！
（刑事）待て！
（刑事）どこ行った！？
（刑事）あっちは？
（刑事）ああ。
何？いったい何なの？竜二って男が刺された。
竜二が刺された！？それで警察は私を…。
私を捜してんの？ちょっと待ってよ！あの女は？あの女だって！忘れないであんたは前科ありなのよ。
そんな…。
警察ってところは何がなくてもまず前科。
で一応確認しておきたいんだけど。
あんたがやったんじゃないよね？あのねえ！
（刑事）いたぞ！
（刑事）はい！
（刑事）動くな！
（刑事）待て！
（刑事）うわっ！あの女の番号。
その番号で間違いないの？私数字覚えるの得意なの。
間違いない。
竜二の新しいかもの番号。
（呼び出し音）もしもし？あのちょっと聞きたいんだけど…。
あなた竜二のお友達？
（発車ベル）
（アナウンス）新仲森…。
（通話の切れる音）切れちゃった。
センスない。
ちょっと私警察じゃないんだからさ。
どこ行くの？駅のアナウンス聞いたでしょ？あっ新仲森駅…。
高飛び？だったらいいけど。
えっちょっ…ちょっと。
（アナウンス）間もなく２番線に電車が参ります。
危ないですから黄色い線の内側までお下がりください。
あっ切符…切符買わなきゃ。
（アナウンス）間もなく２番線を急行電車が通過いたします。
あなたなの？あなたがやったの？あんな男のせいであんたが死ぬことない。
あれ？でもあの人じゃない。
あんな男に命まで捧げる気？そんなのバカみたいじゃない。
悪いこと言わない。
やめた方がいいわ！
（敦子）そうなのバカなの。
あんな男にだまされて。
（敦子）ううんだまされてるのうすうす分かってて…。
それにすがってた自分がバカみたいで。
情けなくて。
本当に好きだったの！彼のためなら何でもできると思ってた。
できるなら最後まで信じたかった。
なのに…。
だから殺してやったの。
もうどうでもいいの！あっ！そう。
本当に死ぬのね？死ぬ覚悟はあるのね？何するの？放して！死ぬんでしょ？付き合ってあげる。
えっ？・
（警笛）
（警笛）
（敦子）放して！助けて！
（警笛）由紀子さん！由紀子さん。
まだ死にたかったら死ねば？でも…。
死ぬ意味を見つけてからにしなさい。
・
（刑事）いたぞ！こっちだ！・
（刑事）はい。
（刑事）逢坂みのり。
公務執行妨害の準現行犯で逮捕する。
えっ？えっ私！？いや…。
あなたもお話を聞かせていただきましょうか。
はい。
だから私じゃないって言ってるでしょ！お前前科があるんだろ？それとこれとは関係ないでしょ！あんた目節穴？ちゃんと調べてよ！あんた殺しやったんだって？
（刑事）何とか言えよ！ハァ…。
何だ？だってこれとそれとは関係ないとか言ったら刑事さん怒るでしょ？何だと！ハァ…。
ったく竜二のやついったい何人の女だましてんだか！ホント最悪。
あ〜悪夢だよ。
人生に２度も手錠かけられるなんてさ。
悪夢はこっちだよ。
保護観察中にこんな騒ぎを起こされるなんて。
けど私たち何にも…。
理由はともあれ自分の立場を考えてみなさい。
社長にはちゃんと説明しておいたから。
分かってるだろうけど次はないからね。
ご迷惑お掛けしました。
すいませんでした。
うん！けどさあの子何年食らうんだろうね。
竜二は一命を取り留めたっていうからさ殺人は未遂で済むんだろうけど…。
ねえ。
由紀子さんが言ってた死ぬ意味って…。
・
（美沙子）由紀子さ〜ん！あっ。
（美沙子）《ごめんね。
お金用意できてなくて》《今度の金曜までには絶対何とかするからね》あ〜！私てっきり竜二を刺したのはこの人だって。
由紀子さん知り合い？ねえ色々ありがとね。
あの男が刺されたの教えてくれたのは彼女。
えっ？ねえ何かごめんね。
私が変なこと頼んじゃったから余計なことに巻き込まれちゃって。
いえいえ。
私もその後すぐ消えちゃってすいません。
（美沙子）実はね私も前科ありなの。
えっ？えっ！？だけどこの子に見せつけるだけでいいって言ったのに。
頼んでもないことまでしたでしょ？
（美沙子）だって悔しいじゃないですか。
女をたぶらかしてお金をだまし取る男なんて。
だからつい気合入っちゃって。
カバンの１個ぐらいいいですよね？変なこと頼んだって見せつけるだけってあれ全部由紀子さんがやらせたの？お芝居だったの？あの男軽くだまされてた。
いつもだましてる男だまし返すの気持ちいいよ〜。
ちょっと！私をだましたの！？
１０年前悲劇はなぜ起こったのか
そしてマトリョーシカに隠された鍵の謎とは
前科ありの女の壮絶な覚悟が明かされる
（美沙子）由紀子さんさ大学も出ててすごい頭いいんだよ。
私の知らないこととかたくさん知っててさ。
あっありがと。
でもまだまだ知りたいことたくさんあるからしゃばに出たら絶対連絡してって。
私ができることあったら何でもするからって。
ほら前科者同士持ちつ持たれつってやつ？私には付きまとうなとか言ったくせに。
ハァー。
んっ？ねえ。
前科ありってさあんた何やったの？あー…。
ほら私もさ昔はこう見えて純情だったからさ男にだまされて悔しくてさグサって。
その男は死ななかったんだけどさ私ムショに入ってもやけになっててさ。
出たら絶対殺してやるってそう思ってた。
そしたら由紀子さんに言われたんだ。
（美沙子）相手が死ななくてよかったって。
人を殺す罪は他の罪とは全然違う。
一生かけても償えないものなんだって。
（美沙子）そんなくだらない男のためにあんたが苦しむ必要ないって。
ホントに殺しちゃった人の言葉だもんね。
重いよ。
（美沙子）あっおかえりなさーい。
はい。
はい。
あ〜！食べたら行くよ。
どこに？たっぷり脅してやったら？今度は殺されるって。
フフフ。
ムショってとこもさいってみれば悪いことばっかりじゃないよね。
こんなに心強い後ろ盾ができるんだから。
いつまでもぐずぐずなめたこと言ってたら承知しないよ。
もうしません。
あっ…。
痛っ…。
これお返しします。
これで許してください。
お願いします。
５００万！？たったの！？私が渡したのは２，０００万。
それ以上ないんです。
全部使っちゃいました。
ごめんなさい。
このっふざけんなよ！わあっ！うわ…。
ああ…。
ただのいたずら。
間違っても脅迫じゃないからね。
ハァ…。
あ〜あ自分が情けないよ。
あんな男のこと一瞬でも好きだと思ってたなんて。
一瞬じゃないでしょ。
２，０００万貢ぐ間…。
もう！言葉のあやでしょ！ほっといてよ。
でも５００万だなんて全然足りない。
やっぱりお弁当屋のパートで一生こつこつ働くしかないのかな。
きちんと計画立てて骨身を惜しまず働いたら２，０００万返すのも夢じゃないと思う。
ホント？２，０００万返済できる？それがバカなことをした自分への落としまえって思えるんだったらきっとできると思う。
そんな覚悟があれば…。
覚悟…。
私さ一晩中考えて覚悟決めた。
でもねきちんとした計画っていうのが何も思い付かなくてさ。
だからね由紀子さん一緒に考えてくんない？仕事終わったら知恵貸してよ。
何でも食べたいものおごるからさ。
無理。
えっ？悪いけど私にはやることがあるの。
やることって？だからあんたに付き合ってる暇はないの。
じゃあ私もそれ付き合うよ。
あなたと私は他人。
それ以上でもそれ以下でもないから。
・
（ドアの開く音）おはようございます。
（従業員）おはよう。
（従業員）おはよう。
空き巣？
（受刑者）《大事なのは右手の力加減だよ》《指に神経を集中させて》ビデオテープ？そういうことか…。
（店員）お客さまダビング完了しました。
ＳＤカードでよかったですね？こんにちは。
（洋子）はい。
どなた？あっ面接？従業員は間に合ってるからね。
違います。
さっきの人。
さっき？あああの人。
そうその…由紀子さんお知り合いですか？別に。
それが何か？あっ私今彼女と同室でお弁当工場の従業員やってて逢坂みのりっていいます。
あんたももしかして前科あり？だったらなおさら迷惑。
出てってちょうだい。
由紀子さん何しに来たんですか！？だからあなたには関係ないでしょ！いつまでもぐずぐず言ってると承知しないよ！前科持ちなめんじゃねえ！わ…分かったからちょっと…。
さっさと知ってること言いやがれ！分かったから！秋山さんが来たらこれを渡してくれって。
血！これ見たら連絡しないではいられなくなるはずだからって。
気味悪いったらありゃしない。
開けて。
えっ？ああ…。
これどういうこと？由紀子さんにいったい何があったの？ああっ分かった…分かったから！由紀子の旦那の秋山さんは当時花巻さんが経営してる花巻えんぴつの出入り業者だったの。
秋山さん接待だつってよく花巻さん連れてきてたわ。
私聞いたのよ。
そこで殺された花巻さんと秋山さんが密談してるの。
・
（客たちの歌声）
（孝典）《それって由紀子を社長に差し出せってことですか？》
（花巻）《何もとって食おうってわけじゃない》《何回かその…抱かせてくれりゃいいんだよ》《あんたの女房ありゃいい女だもんな》《これで１回》《中に例のテープを保管した金庫の鍵が入ってる》《ハハハハ…！》《慌てんな慌てんな》《中身は工場だ》《１回につき１つ渡してやる》《どうだ？》《お百度参りみたいで楽しいだろ？んっ？》《あんたも刑務所には入りたくないんだよな》《ホントに渡してくれるんですね？》《もちろん》《俺だって面倒なことに巻き込まれたくないってのが本音だ》《約束する》《きっと渡してやる》
（洋子）由紀子が花巻さんを殺したって聞いたのはそのすぐ後だった。
あの人乱暴されそうになってきっと…。
（花巻）《おい》《旦那とはもう話がついてんだよ》《やめて》《逃げると困ったことになるよ》《えっ？うん？》《やめて…》《ああっ！》
（刺す音）《ぐあっ…ああっ！》そんな…。
そんなの正当防衛も同然じゃない！何で黙ってたの！？何で証言しなかったのよ！？本人が殺したっつうもの何で私が証言しなきゃいけないのよ！もう。
まあたぶん由紀子のことだから母親が人殺してそう仕向けたのが父親で。
それだけでも悲惨だっていうのにその罪をなすり付けあって両親が泥沼の戦いするなんて息子に見せたくなかったんでしょうよ。
まあ私に言わせりゃお人よしもいいとこ。
結局いい目見たのは旦那だけなんだから。
ったく。
やらなきゃいけないことって…。
由紀子さんもしかして…。
うわー！おもちゃ…？まったく人をバカにして！もう！じゃあ私行くよ。
薬出しといたからね。
いってらっしゃい。
うん。
痛たた…。
あった。
（九十九）ったくこないだ騒ぎ起こしたばっかりでまたこれだ！腹痛で休むなんて子供じゃないんだから。
これだから前科者は！《まだ死にたかったら死ねば？》《でも…》《死ぬ意味を見つけてからにしなさい》死ぬ意味…。
死ぬ意味…！由紀子さん！由紀子さん！
（九十九）何だ？就業時間終わった途端に元気になったのか！？ったく一人は今日付で辞めるし！一人は仮病使うし！これだから前科者は！今日付で辞めるって！？
（九十九）ああ。
由紀子さんが辞めるって…。
もしもし。
もしもし？由紀子さん？私みのり。
今どこ？仕事辞めるってどういうこと？何でこの番号知ってるの？由紀子さんが番号残した所に行ったから。
ママに話も聞いた。
死ぬことの意味ってそういうことだったの？ねえ早まらないで。
お願い！
（通話の切れる音）
（不通音）
（操作音）
（不通音）くそっ！出ない！
（信子）どうしたの？こんな早く。
（孝典）ビール。
（信子）最近何か変よ。
イライラしちゃってさ〜。
どうしたの？はい。
ああそういえばさっき変な女が来て置いてった。
どうしたの？
（信子）ちょっと。
（孝典）あいつから預かったものを出せ。
早く！はい。
お前どういうつもりだ。
話は会ってからにします。
また変な手段取られたら困るから。
工場の裏山に来てください。
（物音）
（孝典）花巻えんぴつの工場。
花巻えんぴつ？来ない…。
事件の後どんなにあなたに聞かれても知らん顔しててよかった。
それね逃げる途中でこの木の根元に埋めたの。
何かあるんじゃないかと思って。
まさかこんな物のために自分が人身御供になっていたなんて思いもしなかったけどね。
あっごめん。
それ誰でもすぐ見られるようにＳＤカードにダビングしたから。
十年一昔っていうけど便利な世の中になったものよね。
見る人が見たら襲ったのがあなただってすぐ分かる。
襲う？とぼけないでよ。
１０年前私があの人を殺す直前にあなたが工場の前で起こしたあの事件のことよ。
あなたがこれを全部取ってこいって言った意味が分かった。
どこまでもひきょうな人。
あんな事件もう１０年たってんだ。
誰も覚えちゃいないさ。
でもあなたが襲ったのあのときあなたにしつこく借金の返済を迫ってた借金取りでしょ？ああいう人たちってしつこいのよね。
ずっと昔のことも覚えてて仕返しの手段だって選ばないでしょ。
１０年たった今だってあの事件があなたの仕業だって分かったら…。
金か。
金が欲しいのか？ううん。
私が欲しいのはあなたの命。
死になさい。
あんたみたいな汚い人間死ねばいいのよ。
死んで息子に目をやればいい！・待って！そんなこと思ってないでしょ！？由紀子さんホントは旦那に復讐して死刑になってそれで自分の目を息子にって。
それで…。
そんなに死にたきゃ俺が殺してやるよ。
殺してやる！やめて！由紀子さん…。
ああ…。
由紀子さん！望みどおり死ねよ。
であいつにお前の目やりゃいいんだ。
私も見たよ！このデータあんたが襲った闇金のところに送ってやった！これであんたもおしまいだ。
ざまあ見ろ！逃げて…。
逃げて。
ちょっと由紀子さん！あなたはこれで殺人犯よ。
一生逃げ回って…。
あなたの罪はこれで一生消えないのよ。
ああっ…。
由紀子さん死んじゃ駄目死んじゃ駄目！ホントはこれが目的だったの？旦那殺人犯にして復讐果たして自分の目を息子にって？うん…。
バカ！そんなことして見えるようになって俊君喜ぶわけないじゃん！駄目死んじゃ駄目…。
死んだら…。
ドナーカード破いちゃうんだからね！俊…。
由紀子さん。
由紀子さん！由紀子さん！由紀子さん！由紀子さん！
（美沙子）駆け付けたときはもう絶対無理だと思った。
死んだと思っちゃった。
この人ホントにしぶといんだよね。
根性曲がってるし。
あっよく知ってるか。
うん。
アハハハ。
ここの先生懇意にしてるから。
難しいこと言わないから安心して世話になってくださいね。
社長には何とかとりなそうと思ったんだけどさ無理だった。
由紀子さんは復職できない。
私も首だって。
まあしょうがないよね。
（美沙子）あっ！もうこんな時間。
行かなきゃ。
ああごめん。
ホントありがとう。
（美沙子）ううん。
頑張ってね。
はい。
今日も真面目に元気に働いてきまーす。
まったくさ由紀子さんのやることには驚かされるよ。
あっ。
ドナーカード破いてないよ。
約束だもん。
命を懸けて復讐して自分の目を息子にだなんて…。
私にはとうていできないな。
きっと考えもしない。
そんなことできるなんてホントにすごいよ。
すごいと思うけどさ…。
私はまだ由紀子さんに生きててほしいな。
生きててほしいよ。
由紀子さん私に言ったよね。
バカなことした落としまえつけろって。
息子のために死ぬくらいの覚悟があるならさ生きて落としまえつけてよ。
生きてるからできることきっとあるはずだよ。
いいのかな。
こんな私が生きてて…。
生きててほしいに決まってんじゃん！俊君お母さんの匂い忘れてないんだよ！ちゃんと感じてたでしょ！俊…。
生きてるから間違ってしまったこともやり直せるって…。
私由紀子さんがいたからそう思えた。
だからさ。
だからさ…。
（泣き声）・
（ラジオ体操の音楽）いい感じいい感じ！でもさお店の名前ホントにみのり食堂でよかったの？私共同経営が希望だったのにさ…。
いいじゃない頑張るのはあんたなんだから。
フッそうだよね！頑張って繁盛させてお金返さなきゃ！ねえ。
うん？家族には連絡したの？ううんまだ。
そう。
一生懸命働いてさお金返してまっとうな人間として生きてるってちゃんと自信が持てるようになったら連絡しようと思って。
由紀子さんもそうでしょ？これ。
俊君の携帯番号。
前俊君のこと助けたときあったでしょ？あのときにまた何かあったらって番号交換しあったんだ。
携帯買ったんでしょ？登録しとけば？いつか話せるといいよね。
今は無理でもさ。
いつか。
あ〜！ちょっと！人の店変な目で見ないでよ！何か文句あんの！？
（大将）何言ってんだこの野郎！文句あるに決まってんだろ！人んちの店の前におんなじような店つくりやがって何考えてんだ！このバカ野郎！こっちはねちゃんと許可取ってんの。
文句なら他で言って！何！？おっ？どっかで見たような顔…。
そう？私は会ったことないけどね。
ああ開店の邪魔だから。
（大将）あっちょっとちょっと…。
ちょっと！あんたムショ帰りだろ？格好見りゃすぐ分かるんだよ。
うちはな前科者はお断りなんだよ。
帰って帰って！あの！うちでよかったらどうぞ。
あなたがお客さま第一号なんです。
せめてここで食べてる間だけは難しいことは考えずゆっくり食べてってください。
それでこれからもし何かつらいことがあったらこの食堂思い出してくださいね。
私たちいつまでもここにいておいしくてあったかい料理提供しますから。
いただきます。
おいしい…。
あっご飯何杯でもお代わりしてくださいね。
お代わりタダなんで。
フフフフ…。
いっぱい食べてください。
あっいらっしゃいませ。
いらっしゃいませ。
どうぞ。
今日のお薦めはみのりスペシャル定食です。
2014/11/28(金) 21:00〜22:52
関西テレビ１
赤と黒のゲキジョー・前科ありの女たち[字][多]
安田成美主演の特別企画サスペンス登場！共演は相武紗季！殺人犯という十字架を背負った女が自らをハメた夫に壮絶な復讐を計画する衝撃の記録！今夜私は夫を殺す
詳細情報
番組内容
１０年前に起こした殺人の罪で服役していた石神由紀子（安田成美）は、ようやく仮釈放となった。由紀子は同日仮釈放となった逢坂みのり（相武紗季）と、とある食堂で出会う。彼女は二千万円の横領を行い、５年間服役していた。なれなれしいみのりをうっとうしく感じた由紀子は、彼女のもとから逃げ去るも、就職場所の工場で再会した。
ある日、由紀子の動向が気になったみのりは、彼女の後を追った。すると、たどり着いたのは
番組内容２
養護施設の前だった。由紀子の視線の先には“人殺しの息子”といじめられている、目が見えない男子中学生の姿があった。それは、由紀子の息子の俊（今井悠貴）。助けることを戸惑っている由紀子の代わりに、みのりは俊を助けた。みのりにお礼を言った俊は懐かしい匂いを感じ、「お母さん」とつぶやくも、死んだはずの由紀子がいるはずがないと、その場を立ち去った。
別の日、由紀子は花巻鉛筆工場の裏山で、木の根元に
番組内容３
埋まっているマトリョーシカを掘り出した。それは、１０年前の事件当日に夫・孝典（渡辺いっけい）から花巻社長のもとにあるマトリョーシカを奪ってくるよう指示された由紀子が埋めたものだった。それを寮に持ち帰った由紀子は、中から“鹿沼の別荘”と書かれたメモと鍵を見つける。由紀子はこれが何を意味するのか調べ始める。そんな中、みのりが横領をするきっかけとなった元彼の竜二（竹財輝之助）が何者かに殺害され…。
出演者
安田成美
相武紗季
木南晴夏
竹財輝之助
朝加真由美
島田洋七
七瀬なつみ
渡辺いっけい
他
スタッフ
【脚本】
武田有起
【編成企画】
太田大（フジテレビ）
【プロデューサー】
千葉行利（ケイファクトリー）
宮川晶（ケイファクトリー）
【演出】
国本雅広
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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