鴨、京都へ行く。−老舗旅館の女将日記− #09【松下奈緒 椎名桔平】 2014.11.17


し取った疑いで起訴されています。
調べに対し松山容疑者は「5人はすべて患者であると認識しています」と容疑を否認しています。
(大塚)仲代大臣に隠し子疑惑!?
(玉山)超美人女将が大臣の隠し子?
(大塚)鴨スケが美人女将ってどうなん?
(寺石)もっと美人他にいるわな。
(紗江)ねえー。
(大塚)さすがヒデさん。
分かってはるわ。
(八木)大塚さんのことちゃいますよ。
(大塚)はっ?何なん?あんた。
(鴨)皆さんで集まって何してんですか?
(一同)あっ。
(鴨)ハァ。
(玉山)あっ。
(鴨)超美人女将が大臣の隠し子。
(大塚)まさかホンマに隠し子…。
(寺石)そんなわけないやろ。
(寺石)女将のどこに仲代先生の品性がある?知性がある?
(紗江)みじんもありません。
(鴨)失礼な。
(鴨)まっ確かにこれはデマです。
父のことははっきり覚えてますし母との夫婦関係も良好でした。
はい。
この話はもう終わり。
(倉田)火曜日がこれです。
(鞠子)その数はちょっと異常やね。
(峰岸)どないしはったんです?
(倉田)予約が殺到したんです。
この3日で62件。
(鞠子)いつもの3倍です。
(衣川)女将グッジョブ。
あの記事宣伝効果抜群ですわ。

(鞠子)もしもし。
上羽やでございます。
あっ。
園田さま。
(峰岸)えっ?園田さま?
(衣川)その園田さまというお客さまが何か?
(峰岸)へえ。
もう40年近う毎年必ずお越しやったんです。
それが3年ほど前からぱったりといらっしゃらなくなって。
(衣川)隠し子騒動で女将の顔が見たなったんちゃいますか?
(峰岸)お待っとさん。
(矢沢)はい。
(メールの着信音)
(衣川)国宝知恩院三門。
(高瀬)うん。
この団子うまいね。
(衣川)確かに。
後を引きますね。
(高瀬)旅館の支配人っていう仕事も後引くの?
(衣川)はい?梅垣屋の女将に聞いたんだよ。
(鈴風)《衣川さんのことでお話が》君のおじいさん上羽やの番頭だったらしいね。
しかも先々代の女将に相当の恩があったとか?まさかミイラ取りがミイラになるなんてことは…。
(衣川)あり得ません。
過去は過去。
祖父の思いと私の思いはまったくの別物です。
ハハッ。
安心したよ。
というのもね。
梅垣屋さんからある提案があった。
お聞かせ願えますか?フフフ。
(石原)森永さまお着きです。
お越しやす。
森永さま。
(森永)あんたが女将が?女将の上羽鴨です。
(森永)いやいや。
ここさ来んの初めてなんだ。
へえー。
(森永)あんたが女将か?何か?
(森永)いやいや。
ああ。
部屋さ案内してけろ。
(紗江)かしこまりました。
宇多の間お願いします。
(森永)はい。
どうもどうも。
(紗江)女将目当てのようですね。
えっ?
(倉田)女将目当ては他にもちらほら。
(紗江)こちらでございます。
(玉山)あっ。
女将は接客しはらへん方が。
ちょっとちょっと。
そういうわけにはいきません。
人前に出はったら騒ぎが広がります。
お願い。
(玉山)はい。
女将。
後は私らが何とかします。
(寺石)そや。
お紗江ちゃんに任せた方がええ。
(大塚)私もいますけど!冷やかして分かるご予約もこれからは断りましょ。
いや。
勝手に断るのはやめてください。
これはお客さまを増やすチャンスなんです。
アホなこと言わんといてください。
(鞠子)女将の好きにさしてあげたらええやないですか。
(紗江)鞠子さんまで!?
(鞠子)それよりそろそろ園田さまのいらっしゃる時間です。
行きましょ。
(峰岸)あっ。
園田さまご到着です。
お越しやす。
どうも。
お越しやす。
園田さま。
(孝司)お世話になります。
(鞠子)お越しやす。
お元気そうで何よりです。
(芳子)ことしもお世話になります。
薫さん。
あのう薫さん。
兄初めてですよね?白河の間。
(鞠子)お願いします。
こちらです。
あのう。
(孝司)家内の言うとおりにしてください。
(孝司)先ほどは失礼しました。
いいえ。
(孝司)実は妻のことなんですが3年前に脳梗塞で倒れまして。
その後遺症で軽いまひと記憶障害が。
それで私のことも母だと。
(孝司)ええ。
私のことは妻の兄だと思ってるんです。
もう10年以上も前に亡くなったのに。
(芳子)あのう。
朝食のことなんだけど。
(鞠子)ご要望があれば。
(芳子)ううん。
いつもどおりで。
(鞠子)湯豆腐でございますね。
ご夕食よりも先にご朝食を確かめられるお客さまは園田さまだけです。
(孝司)でも初めて上羽やにお世話になってからもう40年。
(孝司)私たち夫婦も年を取るはずですよ。
初めてお越しやしたのは新婚旅行でしたね?ええ。
ええ。
それ以来毎年結婚記念日には。
妻にとってあなたのお母さんは大切な友人でもありました。
そうだったんですか。
ここには私たち夫婦の思いがいっぱい詰まっています。
少しでもそれを思い出してくれればと。
(玉山)幸楽屋の金魚鉢とお抹茶でございます。
ありがとう。
(孝司)ああ。
(芳子)はあー。
フフッ。
ほっとする。
変わらない味。
ありがとうございます。
(芳子)ねえ。
初めて来たときからずっとこのお部屋なのよ。
掛け軸も私のお気に入り。
(孝司)そうか。
(芳子)お花もねこの掛け軸に合わせてキンギョソウなの。
(孝司)ああ。
見事だね。
このお部屋に入ってくるとね「おかえりなさい」って言われてるような気がするの。
ありがとうございます。
兄さんをここに連れてきたかった訳分かった?
(孝司)分かった。
(芳子)フフッ。
いただきます。
(芳子)うーん。
うーん!おはよう。
おはよう。
『ボンバー体操』の時間です。
じゃあ右手を大きく振り乱しましょう。
回ります。
爽やかな朝が来た。
上上。
ハァ。
しんどっ。
最後に不時着。
不時着。
ハァ。
不時着ですか。
今日も元気に頑張っていきましょう。
やっぱり2人でやると楽しいですな。
そうですね。
履中の間上がったで。
(大塚・柴田)はい。
んっ。
白河の間お願いします。
・失礼いたします。
(孝司)はい。
おはようございます。
(鞠子)ご朝食お持ちしました。
(孝司)さあ。
ほのかな木の香り。
これを兄さんにね食べさせたかったの。
おネギ入れた?
(孝司)入れた入れた。
(孝司)うん。
おいしい。
(芳子)でしょう!では何かありましたらお呼びください。
(鞠子)ごゆっくり。
(孝司)ありがとう。
(芳子)違う。
(孝司)うん?
(芳子)こんなの上羽やのお豆腐じゃない。
(孝司)何を言うんだ?前のと同じだよ。
(芳子)何で兄さんに分かんの?初めて来たんでしょ?何でここの湯豆腐の味が分かんの?薫さんどうしたの?あのうそんなはずは。
(芳子)味変わった。
私は40年以上毎年ここのお豆腐を頂いてきたの。
間違いない。
味が落ちた!
(孝司)やめなさい。
だってこれが楽しみに来たのに。
芳子。
(八木)はっ!?そんなんあり得ませんよ。
でも実際豆腐の味が落ちたっておっしゃってるんです。
(柴田)冨家さんのお豆腐のことですか?
(大塚)創業200年の名店やで。
超老舗やで。
(八木)そうなんすよ。
うちとも140年の付き合いがあるんすよ。
でも奥さまは冨家さんのお豆腐を楽しみにうちにいらしてくださったんです。
(八木)はあ?
(鞠子)ヒデさん。
味見てもらえますか?
(八木)鞠子さんまで!?お客さんの言うこと真に受けんといてください。
相手は素人っすよ。
ねえ?大将。
(キッチンバットを置く音)
(八木)ほら。
大将怒ってしもうたやないっすか。
申し訳ありません。
(八木)えっ!?どういうことですか?寺石さん。
確かに少し青臭ぁ感じる。
(鞠子)何で気付かへんかったんですか?長い付き合いの老舗という看板が味の保証になるわけやないでしょう。
返す言葉もありません。
私ちょっと冨家さんに行ってきます。
(寺石)待て。
行ってどないすんねん?おいしかったころの豆腐に戻してもらうんです。
まさか味が落ちたなんて。
もちろん伝えます。
(寺石)あかん!女将には任せられへん。
(八木)えっ?えっ?
(寺石)冨家の主人はプライドが高うて有名や。
女将は何も言わんといてください。
あんたの口はトラブル工場や。
失礼な。
で何であなたもいるんですか?そりゃ交渉はコンサルタントの専売特許です。
何かありましたらこの私が。
それは口実でしょ。
ホントは私が問題起こすとこ楽しみにしてるんじゃないんですか?ハハッ。
バレました?
(寺石)おい!遊びに行くん違うぞ。
(寺石)ごめんください。
(寺石)あっ。
上羽やの寺石です。
(静夫)おう。
ヒデか。
(寺石)女将と支配人です。
(寺石)突然お邪魔してすんません。
あっ。
これよかったら。
ジュヴァンセルのさがの路か。
(寺石)ええ。
よう俺の好物知っとったな?
(寺石)食べ過ぎにはご注意してください。
畳屋のご主人に聞きました。
糖尿の気があるて。
(静夫)余計なお世話や。
それより何やな?土産物があるいうことは悪い話か?いえ。
そういうわけや。
(静夫)ヒデとは長い付き合いや。
お前の師匠もそのまた師匠も知ってる。
言うたら家族も同然や。
遠慮すんな。
何や話の分かる人やないですか。
がつんと言ってください。
がつんと。
(寺石)ええ。
支配人。
えっ…。
お任せください。
ちょっと失礼します。
(静夫)何なんや?いったい。
いやいや。
簡単な話なんです。
冨家さんのお豆腐はいっつも評判よくてホンマに。
ありがとうございます。
ありがたい思てるんですよ。
それでね日ごろの感謝を込めてこうやってご挨拶に参ったというしだいです。
うまいのは当然や。
こっちは代々味を守ってきた。
妙なもん出したらご先祖さまに顔向けできひん。
ごもっともです。
それで一つだけお聞きしたいんですけども最近になってちょっとだけお味を変えられました?
(静夫)どういう意味や?いえいえいえ。
お客さまからそういったお声をちょうだいしたもんですから。
ちょっと失礼します。
そのお客さまは冨家さんのお豆腐を楽しみに3年ぶりにうちにいらしたんです。
すいません。
できれば元の味に。
(静夫)元の味?味は同じや。
200年ずっとな。
でもそのお客さまは…。
(静夫)ほっとけ。
その客の舌がおかしい。
正直に言います。
(寺石)女将!そのお客さまはおっしゃったんです。
冨家さんのお豆腐は味が落ちたと。
(寺石)女将!お願いします。
作り直していただけないでしょうか?そのお豆腐の味はお客さまにとって大切な味なんです。
(寺石)もうやめろ!女将。
寺石さんだって豆腐の味が落ちたって認めたじゃないですか。
俺はそのう。
(静夫)ヒデ。
お前の舌も落ちたな。
ちょっと。
うちの板長にそんな言い方…。
ふざけんな!俺の豆腐に文句あるんやったら金輪際うちとの付き合いをやめてもらって結構!あっ。
あのちょっと待って…。
(静夫)出ていけ!行こう行こう行こう…。
(静夫)出ていけ!痛てて…。
出ていけ!
(矢沢)おかえりやす。
ただいま。
(石原)おかえりやす。
(峰岸・倉田)おかえりやす。
ただいま。

(芳子)薫さん。
うん?
(芳子)あそこ何て言ったかしら?あのう。
ほら。
一緒に行ったじゃないよく。
えっと。
お庭とかお堂なんかがあって。
ああー度忘れ。
嫌んなる。
えっと。
(孝司)ああすいません。
分かりませんよね?大丈夫ですから。
いや分かるわよ。
だって薫さんが教えてくれたんですもの。
あのう。
鹿王院と違いますか?
(芳子)そう!そこ。
(峰岸)ご案内しましょう。
鹿王院。
(芳子)この時間が一番好き。
確かにそうですね。
人がいなくて静かで。
(芳子)おかしいわ薫さん。
えっ?
(芳子)薫さんが教えてくれたんじゃない。
ここはこの時間が一番すてきだって。
ああ。
(芳子)薫さん。
ドラマ見る?アメリカのドラマ。
ええ。
たまに。
お好きなんですか?
(芳子)気になっちゃうのよね。
続きが。
ずっと見ちゃうの。
どんどん続くでしょ。
終わらない。
でもそこがいいのよね。
娘が家を出て一人の時間が長くなったでしょ。
ちょうどいいのよ。
どんなドラマお好きなんですか?兄さん。
東京雨なんじゃない?天気予報で言ってた。
洗濯物干したままでしょ?
(孝司)洗濯物は取り込んだ。
大丈夫だよ。
(芳子)ワイシャツ干してきたのよ。
うちの人の。
フフフ。
何で兄さんが京都にいるの?うちの人は?フフッ。
奥さま。
あちらのお堂にも行ってみませんか?
(芳子)はい。
(峰岸)さあさあ。
さあさあ。
(孝司)罰が当たったんでしょうきっと。
えっ?
(孝司)商社に勤めて40年。
1年の半分は海外でした。
必死でした。
でも仕事は楽しかった。
その間妻はほっぽりっ放しで。
子供のことも家のことも任せっきりで。
でも結婚記念日は上羽やにいらしてくださってたんですよね?実は私覚えていないんですよ。
湯豆腐の味。
妻があんなに好きな上羽やの湯豆腐を覚えていないんです。
ここに来ていてもずっと仕事のことが頭を離れず。
結局妻を一人っきりにしてきたんです。
だから忘れられてもしかたがないんです。
でもいつかきっと…。
東京に戻ったら妻を施設で預かってもらうつもりです。
3年間一人で面倒を見てきました。
娘も家を出て家庭を持っています。
私の力ではもう妻を支えていくことはできない。
悔しいが受け入れなければならないんです。
だからせめて上羽やの湯豆腐を食べさせたかった。
(京介)そりゃ無理やろ。
(京介)冨家さん京都タワーよりプライド高いいうて有名やし。
京介が説得してきて。
お願い。
ああー。
無理無理無理。
俺冨家さんと面識ないし。
つまんない男。
すぐ諦める。
ちょちょちょ…。
無茶振りはやめて。
じゃあ青年会でバラす。
高校時代28人に振られたこと。
26人やし!歴史を捏造すんな。
どっちでもいいし。
ちっさい男。
はあー。
話を聞いた俺がアホやったわ。
あのな俺も暇やないんですよ。
今度青年会の会合で…。
(京介)ちょっと待って。
鴨。
鴨。
いけるかも。
フッ。
つまんない駄じゃれとかいいから。
(京介)いやいやいやいや。
そやなくてこれ見てこれ。
(素子)《うちの豆腐屋豆腐ブラマンジェいうの作ろう思てるんや》
(素子)確かに微妙にダイズ独特の青臭いえぐ味がある。
ホンマにこれ冨家さんのお豆腐ですか?うーん。
板長とおんなじことおっしゃってますね。
(素子)そやけどそれで私に何を?失礼を承知でお願いします。
冨家さんのお豆腐。
以前の味を再現することはできないでしょうか?はい?
(京介)前に素子さん言うてはったよね?冨家さんの豆腐が好きやいうて。
ほら。
今でも味覚えてるいうて。
(素子)ちょっと待って。
冨家さんのお豆腐を食べたいっていうご夫婦が今うちにいらしてるんです。
お二人にとって思い出の豆腐なんです。
もう一緒にいられなくなるんです。
だから最後の思い出に豆腐を食べていただきたいんです。
でも冨家さんは豆腐の味が変わったことを認めません。
他に頼る人もいないんです。
だからお願いします。
(京介)お願いします。
空気の風味。
(素子)深呼吸したときに空気がおいしいて感じたことありませんか?それに似てます。
口に入れた瞬間は主張がなく淡泊。
けど後味にダイズの深みがはっきり残る。
内に秘めた深み。
私にはまだ出せへん味です。
(素子)考えてみてください。
簡単に再現できる味やったら200年も名店なんていわれたと思いますか?
(素子)力になれへんでごめんなさい。
いえ。
とんでもないです。
無理を言ったのは私ですから。
(京介)悪いな。
ほなまた連絡するわ。
ありがとう。
(倉田)女将。
ヘルプ。
ヘルプミー。
助けて。

(森永)女将どこや?
(英語)・
(森永)あっいた。
女将。
女将いた。
おい女将。
(柴田)お部屋にお戻りください。
(紗江)私がお付き合いさせていただきます。
どうしたの?
(柴田)相当酔うてらっしゃるみたいで。
私が行く。
(柴田)紗江さんが女将は呼んだらあかんて。
えっ?
(柴田)ああ!?ちょっと。
女将。
はい。
どうもどうも。
・失礼いたします。
はーい。
いらっしゃい。
来た来た。
あっ。
女将の上羽鴨です。
(森永)はいはい。
(紗江)女将。
(森永)座って座って。
失礼いたします。
ご夕食はいかがでしたか?
(森永)たまげてうめがった。
ありがとうございます。
(森永)でよ今日女将と話しでくてなぁ。
あっ。
これだけどもよ。
どうなの?この記事。
ホントなの?
(紗江)森永さま。
これは根も葉もない噂です。
だよなぁ。
簡単には認めねわなぁ。
ハハハ。
いやぁ。
こういう老舗旅館も大変でしょう。
経営不振であっちこちつぶれてるって話も聞くしさ。
で…。
(せきばらい)
(森永)ここだけの話よ。
(紗江)森永さま。
(森永)上羽や続いでんのこれ大臣のサポート受けてるからだべ?
(紗江)森永さま。
(森永)だってこげな美人の隠し子だもの。
俺もしてやっか?
(紗江)女将。
後は私が。
実は森永さまのおっしゃるとおりなんです。
何?ホントに援助受けてんの?いいえ。
うちが経営難だという話です。
本当に大臣の援助があれば願ったりかなったりなんですが。
ハハッ。
何だよ。
気ぃ持たせて。
でもちょっと思いましたよ。
(森永)うん?いっそ大臣の隠し子だったらよかったのにって。
フフッ。
浅ましいんです私。
ハハハ。
うまくはぐらがされたな。

(孝司)眠れないのか?初めて来たときのこと思い出したの。
(孝司)ああ。
新婚旅行か。
私ねホントはハワイに行きたかったの。
でもうちの人のお母さんがどうしてもここにしろって。
断れなかった。
(孝司)知らなかったよ。
来る前はあんなに嫌だったのにいつの間にか好きになってた。
薫さんがいたからかな。
うちの人ねすぐどっかへ行っちゃうのよ。
出張。
転勤。
単身赴任。
結局結婚記念日だけだった。
結婚して40年必ず一緒にいられた日って。
私は待ってるだけ。
私を待っててくれたのは薫さんだけ。
ここが私の帰る場所だったのかな?何でこんな人生なんだろう?
(静夫)・「僕は僕はいつもいつも」畳屋さんからお借りしました。
(静夫)ああー。
去年の忘年会か。
それがどうした?ご主人は木屋町のスナック銀狐のママがお気に入りなんですってね?そのママのタイプは鶴田浩二と藤竜也を足して2で割った無口でクールでニヒルな二枚目。
その情報も畳屋か。
ママの理想のタイプとこの写真のご主人は懸け離れてますね。
ママに見せる気か?お豆腐作り直してもらえませんやろか。
断る。
ある人がこんなこと言うたんですよ。
目の前のお客さまを満足させたい。
そしたらきっとまた来てくれる。
はっ?私はねお客さまにおいしいものを食べていただきたい。
ただそれだけです。
冨家さんも200年間ずっとそうしてきたからこそ今の名店の看板があるんと違いますやろか。
あなたからその気持ちはなくなったんでしょうか?・女将。
はい。
夜分失礼します。
明朝4時に冨家さんに行きます。
一緒に来てください。
4時?夢?うん?何でこの2人が?いやいやいや。
西のやさんは呼ぶように言われたんですけど。
(京介)まあ青年会としては見届けんわけにはいかんでしょう。
老舗とニューウエーブのコラボですからね。
コラボ?
(静夫)揃てるな。
西野さんにうちの豆腐を作ってもらう。
俺から頼んで来てもろた。
どうして?この男に弱み握られた。
無理やりや。
弱み?ホンマに私なんかでええんですか?あんたの作った豆腐は食わせてもろた。
腕を認めな初めから頼まへん。
(静夫)うちで使てるダイズや。
山崎の水に漬けてあった。
これで豆乳から作ってくれ。
(素子)はい。
(静夫)にがりはこれや。
打つタイミングは俺が指示する。
(素子)分かりました。
あっ。
あのう何か私にできることは。
ちょちょ…。
邪魔邪魔邪魔。
(京介)待っとこう。
(静夫)よいしょ。
(静夫)よし。
ようかき混ぜぇ。
(素子)はい。
(静夫)ダイズが泡立ってんのが見えるか?
(素子)ええ。
(静夫)全部すくいとれ。
(素子)はい。
俺にはもうその泡がよう見えへん。
えっ?視力が弱った。
泡を残したら味が変わる。
腰を悪うしてから腕にも力が入らへん。
大きな鍋を混ぜる。
さらしを絞る。
その力加減でまた味が変わる。
味が落ちてることは分かってた。

(静夫)もっともっと。
(素子)はい。
(静夫)よし。
(静夫)まだやな。
年には勝てへんかった。
気付いたとき引退すべきやった。
そやけど俺には後継ぎがいいひんかった。
うちの息子は出来が良過ぎた。
今では東京で弁護士先生や。
俺の5倍稼いでる。
豆腐なんか作らへん。
珍しいことやない。
畳屋もそうや。
あいつも後継ぎがおらん。
そやから痛風でも店を畳めへん。
どこも後継者不足で大変な時代ですわ。
高齢化は深刻な問題やなぁ。
(静夫)上羽やの先代は運が良かったんや。
看板を下ろしたら冨家は消える。
俺が一生を捧げてきた。
いや。
俺だけやない。
先人たちが積み上げてきた200年の歴史が消えてなくなる。
女将。
俺はどうすればよかった?冨家の看板を下ろしたらご先祖さまに顔向けできひん。
かといって味の落ちた豆腐を作り続けたら顔向けできひん。
八方ふさがりやった。
(静夫)分かってたんや。
現実を受け入れるしかないことは。
そやけどしがみついた。
諦めたなかった。
味見てくれ。
(素子)はい。
何も味せえへん。
おいしい。
冨家の味や。
冨家の看板は下ろす。
西野さん。
この味覚えておいてくれるか?
(素子)はい。

(芳子)ありがとう。
(芳子)うーん。
いつもの味。
(孝司)そっか。
(芳子)変わらない味。
ねえ?あなた。
あなたのお母さまにね教えてもらったの。
上羽やのお豆腐が一番おいしいって。
フフッ。
(孝司)そっか。
うちに戻ったら今度はどこ行くの?どこにも行かない。
どこにも行かない!ホント?
(孝司)どこにも行かない。
失礼いたします。
(芳子)娘さん継いでくれたらいいわね。
えっ?薫さん言ってたじゃない。
娘さんが上羽やを継いでくれたらこんなにうれしいことはないって。
(芳子)もう一つ。
もう一つ。
(孝司)うんうんうん。
鞠子さん。
今の話奥さまの記憶違いです。
私の母があんなこと言うはずありません。
(鞠子)女将。
母は私に言ってたんです。
(薫)《あんたには絶対無理やわ》あのときのあの言葉があったから私は上羽やを継ぎました。
あのときのあの言葉があるから今でも頑張れるんです。
私はあのときの母の顔忘れたくないんです。
(鞠子)そうですか。
だから今の話は聞かなかったことにします。

(峰岸)《もしお嬢さんが継いでくれはったら?》《あらへんわ。
あの子の性格的に》
(峰岸)《もしもですがな》
(薫)《峰岸さんには何も頼まへんわ》《どうせ甘やかすしな》
(峰岸)《わあ。
見くびられましたわ》
(笑い声)《もしホンマに継ぐ言うたら鞠子さん。
しごいてしごいてしごきまくって》《音上げるほど厳しくな。
それで十分》《あなたのしごきに耐えられたらええ女将になれるわ》咲き誇った花もいつかは枯れるっちゅうことですね。
へえ。
でもまあその後に必ず新しい芽が出てきます。
変わらへんという伝統を受け継いでこそ新しいもんが生まれます。
出ましたね。
峰岸語録。
いやいや。
これは受け売りなんですよ。
先々代の女将に仕えてはった勘兵衛さんがようおっしゃってはった。

(鞠子)ありがとうございました。
薫さんに会えてよかった。
楽しかったです。
こちらこそありがとうございました。
来年もまた来ますね。
2人でまた来ます。
心よりお待ち申し上げております。
ありがとうございました。
(芳子)うん。
はい。
(玉山)こちらです。
(森永)女将。
あのう。
昨日は騒がしくして悪かったね。
またのお越しをお待ち申し上げております。
(森永)本気?冷やかしで来たって分かってるでしょ?僕みたいな客が来たら上羽やの看板汚れるよ。
また来ていただければうちの良さを分かっていただけると信じてます。
217年かけて先人たちが築いてきた看板はそう簡単には汚れません。
先代の女将も私にとっては素晴らしい女将でした。
私が継いだ上羽やはそういう旅館です。
(森永)ゆうべあんなくだらない話をするべきではなかった。
ではぜひまたいらしてください。
ああ。
今度は女将さんに会いに来ます。
ハハッ。
ありがとうございます。
(鞠子)おおきに。
(紗江)おおきに。
おおきに。
今回も助けられました。
ありがとうございます。
お礼の言葉はいりません。
代わりに井上のしゃぶしゃぶおごってください。
感謝の気持ちは形に表すもんでしょう。
はあ?えっ!?言葉だけで済ますつもりですか?うわ。
ケチやなぁ。
なあ?ちょっと!ケチって誰がケチなんですか?女将に決まってるやんか。
ケチやわ。
せっかく…。

(柴田)女将。
梅垣屋さんがお越しです。
ああ。
(鈴風)こんにちは。
(鴨・衣川)こんにちは。
今日はどうしはったんですか?
(鈴風)あんたらホンマ仲ええなぁ。
DMC?ディスティネーションマネジメントカンパニー。
富裕層向けに旅行プランを提案する企業のことですわ。
欧米ではメジャーなビジネス形態やって聞いてます。
(鈴風)さすがよう知ってはるなぁ。
欧米のDMCでも五本の指に入るローシャンレジデンスグループから半年間の貸し切り契約の話もろてなぁ。
それってつまり半年間は黙ってても海外セレブが泊まりに来るって話ですか?お一人1泊10万以上。
10万!?さすが梅垣屋さん。
スケールがおっきい。
上羽やさんにも協力してもらえへんやろかと思て。
えっ?
(柴田)失礼します。
(鈴風)おおきに。
先方の希望する客室数はうちだけでは足りひんの。
(鈴風)いらんお世話かもしれへんけど上羽やさんまだ借金返してはんのやな?悪い話やない思うけど。
あっ。
それはそうですが。
でも…。
別に返事は急いでへんし。
考えてみてな。
ありがとうございます。
うちの女将おっきな話にぽーっとなってたわ。
(鈴風)そやったらよかったわ。
上羽やさんと京都を盛り上げていけんのやったらこんなええことないし。
見え透いてるなぁリンリン。
えっ?何え?この話が上羽やのためなんていうのは口実やろ。
君の思いどおりに事が運んだら上羽やは梅垣屋別館に成り下がる。
ハハッ。
そやとしたら?へえー。
否定せえへんの?実はもう一つ欲しいもんがあんのやけど。
何?うちあんたが欲しいんや。
その森はこの星に残された奇跡だという
わずかな面積の中に2014/11/17(月) 14:57〜15:53
関西テレビ1
鴨、京都へ行く。−老舗旅館の女将日記− #09[再][字]【松下奈緒 椎名桔平】

毎年結婚記念日に「上羽や」を訪れてきた老夫婦が来館、しかし妻は記憶障害にかかっていた…鴨は夫婦の絆を取り戻せるか?老いと向き合うとは?

詳細情報
番組内容
 「上羽鴨(松下奈緒)が財務大臣の仲代公吉(松平健)の隠し子!?」という記事が週刊誌に掲載され、「上羽や」に予約が殺到する。仲居たちから冷やかしの客は断るべきとの意見も出るが、鴨は顧客を増やすチャンスだと平然としていた。そんな中、高瀬裕次郎(伊武雅刀)が衣川周平(椎名桔平)を呼び出した。最近、「上羽や」に肩入れし過ぎてる様子の衣川の気持ちに変化がないか確認した高瀬は、梅垣鈴風(若村麻由美)から
番組内容2
ある“いい提案”をされたと話し出す…。
 「上羽や」に予約客の園田夫妻が来た。園田夫妻は、ここ数年は来ていなかったが40年来の常連客だった。出迎えた鴨は、自分を先代女将の名前で、夫である孝司(山本圭)を兄と呼ぶ芳子(いしだあゆみ)に戸惑う。孝司は鴨に、芳子が3年前にかかった病気の後遺症で記憶障害があり、記憶を思い出すきっかけになればと思い、「上羽や」に来たと説明する。
 翌朝、芳子の強い要望で
番組内容3
朝食に湯豆腐が出された。ところが、豆腐を一口食べた芳子は味が変わったと訴える。鴨と鞠子(かたせ梨乃)は寺石秀(高杉亘)に伝え、豆腐を食べた寺石が、味が落ちていることを認めると、鴨は味を戻してもらうべく、仕入れ店へ行くと言い出した。豆腐店は創業200年の老舗であり、店主の冨田静夫(六平直政)はプライドが高いため、鴨1人では心配だと寺石と衣川がついて行くことに・・・。
出演者
上羽鴨: 松下奈緒 

衣川周平: 椎名桔平 

梅垣鈴風: 若村麻由美 

間山紗江: 堀内敬子 
加茂京介: 大東駿介 
寺石秀: 高杉亘 
八木飛雄馬: 小柳友
 ・ 
峰岸鼓太郎: 笹野高史 

高瀬裕次郎: 伊武雅刀
 ・ 
仲代公吉: 松平健(特別出演) 

上羽薫: 市毛良枝 

塩見鞠子: かたせ梨乃 

園田芳子: いしだあゆみ 

園田孝司: 山本圭 

冨田静夫: 六平直政
スタッフ
【脚本】
森ハヤシ 
酒井雅秋 
岩下悠子 

【プロデューサー】
手塚治 
妹尾啓太 
中尾亜由子 

【演出】
永山耕三 

【主題歌】
「いろはにほへと」椎名林檎(EMI Records Japan) 

【制作】
フジテレビ 

【制作著作】
東映

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

OriginalNetworkID:32724(0x7FD4)
TransportStreamID:32724(0x7FD4)
ServiceID:2080(0x0820)
EventID:19917(0x4DCD)

カテゴリー: 未分類 | 投稿日: | 投稿者: