木曜時代劇 ぼんくら(8)「飛べ!官九郎」 2014.12.04


八百富の太助殺しから始まった鉄瓶長屋での一連の出来事。
太助の妹お露が長屋にいられなくなり父親と共に出ていった。
更に桶職人権吉の娘お律が博打の借金のかたに岡場所へ売られそうになり父親に愛想を尽かして出奔。
その後櫛の歯が欠けるように次々と店子が出ていった。
それが湊屋の企てである事までは分かったが果たしてその裏に何が隠されているのかは謎のまま。
だが失踪した久兵衛が長屋の心であるお徳に対して佐吉を嫌うようにしむけていた事を知った平四郎は怒り心頭。
岡っ引きの政五郎を仲間に引き入れ事の発端となったお露の動きを探らせていた。
さて湊屋の思惑はいかに
(烏の鳴き声)
(平四郎)ああ〜!
(鳴き声)ああっ!あああっあっ!ああ…おいおいおい…。
ああああ…。
(弓之助)叔父上…。
あ〜!ああ〜!うわ〜!
(志乃)弓之助!大丈夫ですか?うん?どうした?「どうした?」ではございません。
あなたがうなされていたので心配した弓之助が起こそうとしたのをいきなり突き飛ばしたのでございます。
え〜?夢でも見ていたのでございますか?すまん。
早く起きてお顔を洗って下さいまし。
弓之助。
はい?来てたのか…ああ〜。
…でどのような夢をご覧になっていたのですか?ああ〜お徳のうちにな。
はい。
血だらけの太助の死骸があるんだよ。
え…。
まあ夢だからなしかたねえんだが。
まあとにかくそんなこっちゃお徳が仕事できねえ。
でだその死骸を片づけようとして太助の腕をつかもうとしたら急に太助がふわ〜っと起き上がってきて両手で俺の体につかみかかってきやがるんだ。
もう目はあさっての方向を向いてこう口はカ〜カ〜ッと開いて舌がはみ出ちまってる。
バア〜!払っても払っても冷たくてぶよぶよぶよぶよした太助の体が離れようとしねえ。
「あ〜お前はもう死んでるんだ成仏してくれ。
動くんじゃねえ」と言ってももうぶよぶよぶよぶよしたのがこう乗っかって…。
ああ〜!ぶよぶよぶよぶよ…。
ぶよぶよ攻めだぶよぶよ…。
ああ〜!ぶよぶよ…。
あっ!な…何ですか。
申し訳ありません。
あっああ…。
あっ!岡っ引きの政五郎親分の手下という方が見えています。
おでこか?いいえ。
うん?旦那様は岡っ引きがお嫌いなはずでしょう?私は存じません。
うん?存じません。
ありがとよ。
へい。
それじゃごめんなすって。
政五郎が気を利かしてお律の様子を見に行ったら長屋から姿をくらましてたらしい。
瀬戸物屋も辞めちまってる。
(弓之助)苦みばしった番頭さんに因果を含められたんでしょうね。
うん…。
まあいい。
父親の権吉はまだ鉄瓶長屋にいる事だしお律も政五郎に捜してもらう事にした。
叔父上。
ああ?前から考えていた事なのですが少々測ってみたい事がありまして。
測る?何を?八百富の太助殺しの時…。

(足音)
(弓之助)お徳さんは長屋の裏を走る足音で目覚め久兵衛お露ご両人の待ち受ける場に足を踏み入れた。
(お徳)お露ちゃん本当かい?ですが目覚めなくてもお徳さんは大芝居に巻き込まれる手はずだった。
そうですよね?そん時は久兵衛がお徳を起こしに行っただろうよ。
お徳は長屋のツボだ。
そのツボを押すためにも巻き込まなきゃしょうがねえ。
ではお徳さんが聞いた足音は一体誰なのでしょうか?全てが湊屋の筋書きで動いてるとするならば太助さんを殺したのはお露さんではなくて湊屋の手の者である。
つまり第三の人物。
そいつは八百富から逃げるところだった。
どこへ?久兵衛の所か。
はい。
久兵衛さんがその男をかくまった。
夜明けとともに逃がすために。
つまりその辺の事を確かめるためにも測りたいのです。
お徳さんを目覚めさせた足音の主の重さや歩幅も分かるかもしれません。
更には背丈だって。
やめとけ。
そんなもん測らなくてもお前の言うとおり第三の人物が太助を手にかけた。
だがなそいつの背丈だの目方だの歩幅だのなんて知ってもしょうがねえや。
どのみち江戸の男の背丈と歩幅を測って歩く暇なんぞねえ。
きっと湊屋さんの奉公人の中におります。
お徳の耳に入れたくねえんだそんな話。
お前の言うとおりにしたらお徳に事情を話さなきゃならねえ。
だができるならあいつには何も知らせたくねえ。
そっとしておいてやりてえんだ。
分かるか?…はい。
怒ってる訳じゃねえ。
妙な夢を見たせいだ。
勘弁しろ。
あ〜びっくりした。
うわあ。
朝餉の支度ができました。
どうかなさったのですか?どだい俺は人殺しを捕まえるだの隠し事を暴くだのには向いちゃいないとそう思ってさ。
何のお話でございましょう?知らない事は知らないまんま。
聞かない事は聞かないまんま。
分からない事は分からないまんま。
そいつが一番なんだが世の中ままならねえ。
何だ?何やらおつらそうです。
そんな事はない。
(友兵衛)お見回りご苦労さんでございやす。
旦那鉄瓶長屋はどうなるんでござんしょうかねえ。
ヒッヒッヒッヒッヒッ!大変だ〜あの長屋も。
なあ?カッ。
カッ。
クワッ。
あっあ〜旦那。
豆腐屋のあとの店子が決まったって訳じゃねえのにムキになって掃除してたぜ佐吉のやつ。
気の毒にねえ佐吉さんも。
全くだ。
(臭いを嗅ぐ音)何だ?この臭い。
あっ臭うかい?旦那。
いやお前かよ。
ごめんなさいね。
あ〜臭い!あっ臭い!まだ治んねえのかあせも。
そんな事より近頃じゃあっちこっちで言われますよ。
鉄瓶長屋は人殺しと久兵衛さんの事であやがついてもう駄目なんじゃないかってね。
駄目って人間じゃねえんだ。
長屋に寿命なんかあるまいよ。
いんやあるんだよ旦那。
・ごめんよ!
(おくめ)あいよ!お店や長屋は人が集まって住む場所だろ?運が尽きる時があるんだよ。
夜逃げが続いて店子が少なくなったり火事でみんな死んじまう事もある。
はやり病で店子が根こそぎやられてそれっきりって事だって,うん…。
久兵衛さんがいなくなって急に寿命が来たんだよ。
ここはもう終わりだよ。
だがなここは火事にやられた訳じゃねえ。
疫病も出てねえ。
夜逃げしなくちゃならねえほど困った店子だっていなかった。
第一ここは出来てまだ10年だ。
寿命にしちゃあ早すぎる。
どうかね。
もともと験のよくない土地だったかもしれないよ。
何でえそりゃ?だってさ旦那ここはもともとそこそこ大きな提灯屋だったんだ。
結構はやってて細工場もある大きな家でね。
それがあるじがおかしくなった途端いっぺんに傾いちまって。
聞いてる。
借金がかさんで家と地所を手放す事になったんで湊屋が買い取ったそしてここを建てたんだよな。
だからさここははなからそんなよくない思い出が染みついたとこなんだ。
私たちが愉快に暮らしていい土地じゃなかったんだよ旦那。
お徳よう。
夢見るんだよ太助さんの。
ああ〜!お前もかい〜!恨めしそうな顔でじ〜っと私の顔を見てんだよ。
もう私ゃ拝んで一生懸命頼むんだ。
(2人)成仏しておくれよ〜!あんたには気の毒だったけどお露ちゃんだってやむにやまれず…。
あっ…。
あっ!だけどさ私もうこの長屋にはいたくないんだよ。
箕さんやお絹さんたちともそんな話しょっちゅうしてんだ。
ねえそうだよねえ箕さんお絹さん。
(箕吉)ああこんなスカスカになった長屋誰も住んでたくないもんな。
(お絹)旦那どうしたらいいんですかねえ。
どうしたらってよ…。
弓之助。
提灯屋…。
おい元の八百富の家に何があるってんだ?うん?何やってんだ?弓之助。
おいどうした?叔父上はここに以前建っていたその…提灯屋の素性をご存じですか?詳しくは知らねえが何で?提灯屋は湊屋ゆかりの者だったのではないでしょうか。
…へっ?あるいはお内儀のおふじの実家と関わりがある者かもしれない。
どちらにしろ湊屋とはつながりがあったはずです。
うん熱はねえな。
叔父上提灯屋の素性なんとか調べられませんか?けど何だってそんな事…。
旦那〜!うわ〜!あ〜びっくりした。
大変です!何だいきなり。
また来ました。
誰が?お嬢さん押しかけ女房が板に着いてるぜ。
(みすず)まあおからかいになって嫌ですわ旦那ったら。
こりゃあいい。
いきなり女っぽいぜ。
(佐吉)旦那…。
けなげなもんじゃねえか。
やらせといてやりゃあいいんだ。
長坊だってあのおねえさんなら怖くねえよな。
(長助)ない。
(佐吉)笑うな。
それにしてもお嬢さんよく湊屋さんで出してくれたね。
番頭を足蹴にしてやると言ったんです。
えっ?「いい?私を引き止めたらここで大暴れしてやるんだから。
ご近所さんに対して湊屋の恥になったって知らないから!」。
そう脅したら許してもらえました。
ハッハッハッそいつはいいや。
みんな気楽なもんだ。
やじ馬だからな俺は。
ハッハッハッ。
聞いたぜ北町の差配の寄り合いで嫌み言われたんだってな。
これだけ次々と店子をしくじりゃお小言頂戴してもしかたありません。
昨日会った大番頭さんの話じゃあ湊屋の旦那は長屋にはケチがついたからいっその事店子をみんなよそに移して湊屋の寮でも建てようかとおっしゃってるそうです。
ケッしらっとよく言いやがる。
けど長屋が本当に無くなったらどうするんだ?元の植木職人にでも戻ります。
親方は喜んで使ってくれると思いますから。
ならどうだ?あの子と一緒になっちゃあ。
いい娘だぜぇ。
飯を作る腕前はまだ分からねえけどな。
旦那その話はもう…。
あの娘はお前にほれてる。
間違いねえよ。
いや旦那…。
いや俺は…。
いや俺は…。
(長助)官九郎〜。
(烏の鳴き声)おっ。
(烏の鳴き声)おい佐吉。
(はじける音)
(弓之助)うわ〜!
(みすず)ごめんなさい!
(佐吉)坊ちゃん坊ちゃん!ごめんなさい!坊ちゃん。
大丈夫ですか?はいありがとうございます。
ごめんなさい。
蒸し過ぎて蓋を取ったらはぜちゃって。
弓之助大丈夫か?平気です。
お嬢さん料理残念だったな。
ああびっくりした。
ああ権吉。
下帯洗いに来たのか。
えっ?何だよ。
え…。
(権吉)旦那…。
どうした?
(泣き声)おいおい…。
(泣き声)えっ?えっ?いやお嬢さん…権吉さん。
旦那…。
頑張れ佐吉。
(せきこみ)
(虫の羽音)汚えなそれにしてもおい。
しかたねえでしょう旦那。
俺も伜が欲しかったよ旦那。
いやいや甥っ子だよ。
娘なんぞは役立たずだ。
俺をほったらかしにしてもう5日も音沙汰なしだ。
俺を捨てていったんだよ旦那。
まあまあ…。
娘なんて薄情なもんだ。
色ができやがったらそっち夢中になりやがって…。
ああ〜!分かった分かった。
泣くな泣くな。
叔父上やはり例の渋い番頭さんに会うなと言い含められてるんでしょうねお律さんは。
俺たちの動きに用心してんだろう。
おい権吉。
お律に男がいるってのは本当か?あっしはうそは言いません。
あいつがそう言って引き合わせたんだから…。
どこで?瀬戸物町のお律の住まいでね。
(はなをかむ音)あっちに奉公先ができたもんで。
お律の男ってのはどんな野郎だ?お店者でさあ。
様子のいい男なんだろうなお律のこれじゃあ。
そうりゃあもう金持ってますし。
ところでお前を博打に誘った男はどんな野郎か覚えてねえか?覚えてねえなあ。
博打で当たった事は覚えてるんですけどね。
昔は八王子まで足延ばしてねもうけがうんとあった事があってさ。
そうだ。
思い出したか?誰が誘った?そうじゃなくてね。
何だよ…。
ほら何だっけ?ええ?先の差配さんに遺恨があったとかでとどのつまり八百富の太助をやっちまった男ああ…何ていいましたっけ?昔勝元の板場で働いてた正次郎だろう?
(権吉)そうそうそうその正次郎。
あっしねあいつを八王子の賭場で見かけましたよ。
何だと?えっいつの事ですか?ついこの間。
あっしがね借金こさえてお律を…。
待て。
八王子に出張ったのは昔の事じゃねえのか?ヘヘヘヘッあっちは本場ですからね。
夢よもう一度ってな具合でさあ。
でも何であなたが正次郎さんの顔を知ってるんです?何でってほらおととしにさあいつが久兵衛さんの所に意趣返しにやって来て太助が助けに行った時…いやこいつは洒落じゃねえよ旦那。
いいから先急げ。
だからあん時あっしも太助の助太刀をしたんだからさ。
ヘヘヘヘッ最も向こうはあっしの顔なんぞ覚えてないけどね。
どんな様子だった?正次郎は。
こぎれいでしたよ。
八王子で働いてるらしくてね仲間と一緒に小博打打って楽しんでましたよ。
ヘヘヘッ。
何でこんな大事な事今まで…。
大事だとは思ってねえんだろうよ。
なあ権吉?へっ?何のお話で。
なっ?太助を殺して次は久兵衛だといきまいていた正次郎が八王子で結構身持ちよく暮らしていると来たもんだ。
やはり太助殺しは第三の人物の仕業…。
弓之助。
はい?人間どんな事をやるんでもしくじりってもんがついてくる。
たくらみどおりにゃあうまくはいかねえ。
えっ?おととしの正次郎が久兵衛を襲ったという一件。
実際は太助という邪魔が入って正次郎は捕まり俺にこんこんと説教を食らって追い立てられ久兵衛は逃げる口実を失った。
そうでした叔父上。
みすずさんから面白いお話をお聞きしたのです。
何だ?鉄瓶長屋の由来です。
それはあれだろ?井戸替えをしたら真っ赤にさびた鉄瓶が2つ出てきたっていうんだろう?その鉄瓶ですが勝元で使っていたものだそうです。
湊屋がやってる料理屋か。
はいみすずさんは女中頭から聞いたそうです。
そりゃあ初耳だ。
となると…。
やはり提灯屋があった頃からあの土地は湊屋さんとつながりがあった事になるのではありませんか?
(鈴の音)ここにいろ。
えっあ…。
(小銭の音)叔父上は信心をなさらないのではありませんでしたか?こいつはちょいと違う信心でな。
(弓之助)黒豆。
まるで親子のようですなあ平四郎殿。
英之介の手紙によると5〜6年前湊屋のおふじが信心に凝った時期があったという。
どこからか連れてきた唐渡りの算木を使う占い師を湊屋に引き入れたり霊験あらたかな神社をあちこち渡り歩いたらしい。
そのあげく…
神通力を持つ巫女と出会ってこれも家に引き入れたそうだ。
まあ信心好きのおふじがそういう輩にとってはネギしょった鴨だからな。
自然に集まってくるんだろうよ。
信心は大事です。
しかしよう神さんも仏さんもみんなの願いをかなえる訳にはいかねえ。
熱心に拝んでるのに通じなくて悪いやつらに味方する時だってある。
だとしてもです。
心のよりどころなんです信心は。
うまくいったら信心のおかげ。
まずい時は信心が足りなかったんだとするんです。
そうすりゃ世渡りはうまくいきます。
お前信心の事になると語るなあ。
うへぇ〜。
ですが今の問題はおふじがそういう拝み屋や巫女を家に入れて一体何を拝んでもらっていたのかという事です。
うん。
どうやら例のみすずに関わりがある事らしいと書いてある。
となると…顔ですね。
…顔?みすずさんが誰かに似ているという。
葵か。
おふじと葵の間に何かがあった。
ふぶきというんだそうだ。
へっ?その巫女の名前だ。
(弓之助)ああ…。
金を盗んで今は小伝馬町の女牢につながれてるらしい。
この巫女に会えば当て推量を続けるまでもねえ。
おふじが頼んだ事はすぐに分かる。
…何だって?佐吉には好いた女がいるらしい。
総右衛門もその縁組みには乗り気だそうだ。
なるほどそういう事か。
えっ?えっえっ?いや実はな佐吉んとこでな。
回想
(烏の鳴き声)官九郎がまるで伝書鳩ですね。
みすずの佐吉への思い込みを取り去るためにも総右衛門はその女と所帯を持たせたいんだろうよ。
でなきゃあおふじが夜叉になり湊屋に血の雨が降るかもしれねえからな。
ヒッヒッヒッヒ!あっあ…。
夜叉〜!あっ!ああっあ〜!小平次子どもってのはいいもんだな。
へい。
(長助)カ〜…。
カ〜…。
どうだい?うんうまい。
これいけるよ。
だろう?若い時にねひいきにしてもらった呉服屋の若旦那に食べさせてもらったの思い出してさ。
うん?何でもないよ。
うんうまい。

(蝉の鳴き声)
(弓之助)叔父上。
うん?ああおでこ。
政五郎親分が八百富のお露さんが意外な人物と会っている事を突き止めたそうです。
(おでこ)さようでござんす。
さて誰と会っていたでしょうか?当てたらところてんをおごれ。
外したら葛切りって上方の菓子をごちそうしてやる。
湊屋の苦みばしった番頭。
いいえ!えっ?元差配人の久兵衛さんです。
あ〜そっちかい!わ〜い葛切りでござんす!よし!
(2人)葛切り葛切り!
(政五郎)お露は近所の一人所帯の男の所や小商いをしていて忙しい家の家事を何軒も引き受けて暮らしを立てているようですが富平の具合はこの夏を境にひどく弱り果てているそうです。
2日に一度お露は日本橋の先にある薬種問屋まで医者に言われた薬を買いに行くんですが1度目は3日前。
2度目は昨日。
久兵衛とひっそりと会い何か包みを預かり別れてます。
包み?包みの様子から見て1度目は金。
2度目は食べ物とか着物の類いだろうと。
どうしましょう?久兵衛の居所を突き止めましょうか?それはいいだろう。
いつだって分かる事だ。
それよりお前さん牢屋敷に何かつてはねえか?
平四郎はふぶきという小伝馬町の女牢に入っている巫女の事を話した
という訳なんだ。
俺もな何度か牢屋敷の吟味に立ち会った事はあるが鼻歌歌いながら弾んで出かけるような場所じゃあねえ。
あすこは大勢の人間をひとっところに閉じ込めていながら日当たりは悪いし風通しもよくなきゃあ湿気もひどい。
すえた臭いに吐き気はするしで病の巣みてえなとこですからね。
うへぇ〜。
盗みのとがで捕まったんならお調べは終わってると見込んで間違いねえ。
だが引っ張り出すには口実がいる。
同僚に頭下げたり吟味役人の顔色をうかがったりあ〜面倒くせえ事この上ない。
それよりも旦那が顔を出すのはまずいと思います。
ああ?牢屋敷には仁平の目が光ってます。
仁平?
(政五郎)やつは牢屋同心の旦那方にすっかり取り入ってましてね。
いいように牢屋敷に出入りしていい顔になってると専らの評判でして。
じゃあ俺どころかお前も。
へえ。
うかうかとそのふぶきって女を呼び出したりすると一体何やってんだとやっこさんをその気にさせるだけじゃござんせんかね。
はあ…うへぇ〜。
う〜。
うう〜。
(小平次)旦那どうかなすったんですか?えっ…。
戻ってきてからずっと何か考え事なすってるようですから。
ああ〜実は…。
本当かい?へい作次といいましてね昔なじみで今でもつるんで飲みに行く男なんですが牢屋敷の下男をしてるんです。
そりゃあ助かる。
おいおいおいなんとかなるか?そりゃもう。
旦那そんな事なら岡っ引きなんかに相談せずにはなからこの私に言って下さればよかったんですよ。
ん?ん?狭い世間大概の事はなんとかなるもんです。
そうでなきゃ町方のお役人の中間を代々務めていく意味がありやせんや。
ああそりゃそうだ。
本当悪かった。
これから一っ走り行って作次に会ってまいりやす。
頼まぁ!へい!よっ小平次!小平次!
だが事はそう簡単ではなかった
何でえ?女ってのは妬みそねみが強いんだそうで。
旦那がふぶきを呼び出すと裁きに何らかの手心を加えるんじゃねえかとほかの囚人たちが疑うに決まってると言うんです。
ああ面倒くせえなあ。
じゃあどうする?作次が言うには呼び出したい囚人を病にかかってる事にして1人にさせてこっそり会うのが一番だと。
牢屋敷には2人の医者がいて年寄りの方はすっかり仁平に丸め込まれてるそうですが若い先生の方は気性もまっすぐで頼りにはなるんだそうです。
ふ〜ん…いやだがなどちらにしろ俺もお前ものこのこ出かける訳にはいかん。
どうしたもんかな〜。
叔父上。
官九郎を使ってみてはいかがでしょう?うん?あっ。
牢屋敷に手紙…ですか。
詳しい事は言えないが頼まれちゃくれねえか。
あすこは仁平がにらみを利かしてる。
気付かれちゃならねえ。
仁平ってあの…。
ああ。
牢屋敷についちゃ弓之助が絵図を描いてくれた。
頼むこのとおりだ。
まあ御用の筋じゃしかたありません。
けど旦那官九郎にさあ行けと言っておいそれとは行けないんですよ。
今まで行った事がない場所には何度か通って俺が教え込まないといけません。
そりゃそうだ。
今も言ったが仁平の目が光ってる。
やつに気付かれねえように夜更けに行った方がいい。
旦那。
官九郎は烏です。
鳥目なので夜は飛べませんよ。
そりゃそうだ。
駄目じゃねえか。
何だよおい。
なんとかなんねえのかよ?なんとかと言われましても…。
治んねえのか鳥目は。
治らねえと思います。
平四郎たちは若先生に届ける手紙の文案を練った
いいか?この場所を覚えるんだ。
その手紙を官九郎が牢屋敷に届け…
ふぶきの答えを若先生が聞き取り翌朝官九郎を通して平四郎に届ける。
そういう手はずになった
ああ〜!う〜!ああ〜!
数日後の事
頼むぜ官九郎。
イテテテ…。
官九郎。
じゃあ行きます。
(烏の鳴き声)
(長助)官九郎〜。
何だこりゃ?魚のすり身を固めたんだ。
つなぎに卵使ってんだよ。
豪勢だろう?うめえなこりゃ。
おくめさんが思いついたのさ。
私みたいな根っからの貧乏じゃこういう口のおごったものは考えつかないよ。
そのおくめはいねえのかい?お医者だよ。
ねえ旦那。
あせもってのはあんなにひどくなるもんかねえ?まだ治らねえのかい?朝晩はめっきり涼しくなってきたじゃねえか。
医者は何て言ってるんだ?あんな町医者当てになんかなるもんか。
私たちみたいな貧乏人の事なんかもう目ぇつむってちょっと触っていい加減に見立てるだけで目ぇ開けんのはおあしを数える時だけさ。
随分な言われようだな。
旦那私思うんだけどさあれ悪い病じゃないかねえ。
何だい?そりゃ。
だからさ春をひさいでた時に客にうつされたんじゃないのかねえ。
けどよおくめはついこの間までしゃんとしてた。
あの手の病は何年かたってからひょっこり顔を出すもんだよ。
はたからもそれと分かるようになった頃には手遅れなんだよ。
そんなにひどいのかい?腫れ物が崩れて皮がむけた所なんて骨が見えそうなんだよ。
あれはあせもなんかじゃないよ。
もうねえ旦那どうしたらいいんだい?お前そんなにおくめを気に入ってたのか。
やっ…何言ってんのさ!お人よしなんだからさ旦那は。
私があの女の事なんか本気で心配なんかすると思うのかい?私が心配なのは商いの事なんだよ!もし本当に悪い病だったらこの店で働かせる訳にはいかないだろ!分かった分かった。
御番所にその手の病に詳しい者がいる。
ちょいと聞いといてやる。
本当かい?頼むよね旦那。
ああ。
旦那!ああ〜どうしたい?どどど…土左衛門が揚がりました。
ああ珍しいこっちゃねえだろう。
ままままま…。
まままま…こういう時は落ち着け何だ?正次郎なんですよ簀巻きにされて大川に放り込まれて開けてみたら体中火傷と打ち身だらけで。
誰?だから太助殺しの正次郎です!それを早く言えよ!そっちじゃねえです一ツ目橋の方です。
旦那旦那おくめさんの事頼んだよ〜!これは親分ご苦労さまでございます。
おう。
(烏の鳴き声)
(鳴き声)あの烏は確か…。
ああごめんよごめんよ。
ごめんよ。
旦那こっち。
牢屋敷からの返事ですね。
「くさればばあ」。
あいつがきっと湊屋と懇ろになったその女を殺めているんだ。
出ていけ〜!床下の地べたを掘って埋めちまった。
知っていたら手ずから長屋なんぞは建てねえってか?何がいけないんだろうねえ…!必ずここにいるのです!どうやら17年の間鉄瓶長屋の地べたの下でぐっすり眠ってる女を掘り起こさなきゃならねえらしい。
2014/12/04(木) 20:00〜20:43
NHK総合1・神戸
木曜時代劇 ぼんくら(8)「飛べ!官九郎」[解][字]

宮部みゆきの傑作時代劇人情ミステリーをドラマ化。江戸深川の鉄瓶長屋から次々と店子が姿を消してゆく。この不可解な事件を、“ぼんくら”同心・井筒平四郎が暴いてゆく。

詳細情報
番組内容
鉄瓶長屋での一連の出来事を陰で操る湊屋総右衛門(鶴見辰吾)の女房おふじ(遊井亮子)が、いっとき信心に凝っていたことを探り出した平四郎(岸谷五朗)。盗みのとがめで裁きを待つ「ふぶき」というみこの話を聞きだすべく、ろう屋敷に目を光らせている岡っ引きの仁平(六平直政)の目をかすめて、烏(からす)の官九郎を使っての連絡方法を思いついた。だが、ちょうどその頃、太助殺しの正次郎が死体となって発見されたのだった
出演者
【出演】岸谷五朗,奥貫薫,風間俊介,加部亜門,秋野太作,志賀廣太郎,松坂慶子,六平直政,須藤理彩,大杉漣,音尾琢真,鶴見辰吾,佐藤江梨子,【語り】寺田農
原作・脚本
【原作】宮部みゆき,【脚本】尾西兼一
音楽
【音楽】沢田完

ジャンル :
ドラマ – 時代劇
ドラマ – 国内ドラマ

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
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