プロフェッショナル 仕事の流儀▽大事なものは、足元にある〜ポール・スミザー 2014.12.05


そういう人たちに、どう対応していくべきなのかですね。
そういう人たちの再犯を防ぐために何ができるのか。
それを自分の問題として、みんなで一緒に考えていくということが必要なんだろうというふうに思います。
ありがとうございました。
(鳥のさえずり)その庭園は息をのむほど美しい。
春の到来を告げるオオマツユキソウ。
オシダは夏の木陰で凛とたたずむ。
四季折々に草木がその命を躍動させる庭。
手がけたのはイギリスからやって来た一人のガーデンデザイナー。
山に分け入りその土地に合った植生を一から調査。
農薬や化学肥料を一切使わない常識破りの庭を造り上げる。
年を重ねるごとに美しさが増し「自然より自然らしい理想の庭」と評される。
来日25年。
日本人より日本の草木を知り尽くすユーモアあふれる男。
見向きもされなかった日本の草木に光を当てこの国のガーデニングに旋風を巻き起こす。
日本と草木をこよなく愛す。
それが今夜のプロフェッショナル。
冬の眠りから草木が目を覚ます春。
(取材者)お疲れさまです。
お疲れさまです。
ガーデンデザイナーポール・スミザーは全国各地の現場を忙しく飛び回っていた。
冬に種をまき芽吹いた苗。
根が活発に成長し始めるこの時期は植え付けに最適だ。
トレードマークはこの山登りのいでたち。
スミザーは庭の設計のみならず植え込みまで全てを手がける。
この日の仕事は八ヶ岳の麓にあるテーマパーク。
3年前に依頼を受け定期的に庭のリニューアルを行っている。
まず歩道脇の砂利に菊の仲間マツムシソウを植える。
もともとこの地に自生する日本固有の野草だ。
砂利は乾燥し養分も乏しいため植物にとって極めて過酷な環境だ。
だがスミザーは肥料すら与えない。
農薬や化学肥料は一切なし。
必要以上に手を差し伸べる事はしない。
いつ誰が植えたか分からないアスパラガスが芽を出していた。
ここにガーデンデザイナーポール・スミザーが理想とする草木の姿がある。
人の力を借りる事なく自ら育つ草木はたくましく美しい。
その最高の教本となるのは身近にある野山だ。
(シャッター音)バラ科のミツバツチグリを見つけた。
一般的には日当たりを好むとされるが日の当たりにくい木陰でかれんな花を咲かせていた。
八ヶ岳の麓で手がけるリニューアルには懸案となっている場所があった。
入り口のすぐそばにもかかわらず人通りが全くない一角。
木が生い茂って光がさし込まず一日中薄暗い。
しかも傾斜がきつく土が流れてしまうため庭にするには不向きな場所だ。
施設のオーナーもさまざまな手を打ってきたが効果なく抜本的な対応を求められていた。
枝ぶりが美しいカエデを生かしつつ陰をつくっている他の木の枝を伐採する事にした。
イギリスの名門王立園芸協会で修得したツリークライミングの技術。
他の草木を傷つけないよう慎重に枝を落としていく。
薄暗かった斜面に日光がさし込んだ。
ここからがスミザーの真骨頂。
どんな庭に仕立てるか。
5日後打ち合わせの日が来た。
こんにちは。
こんにちは。
斜面に石垣を築いて土が流れるのを防ぎ大きな花壇を造る。
そこに葉の色や形が変化に富んだ植物を植え明るい印象にして人を呼び込む。
(笑い声)いよいよ苗を植えていく。
話し好きのスミザーもこの時ばかりは無口になる。
最も慎重になるのが陰の見極めだ。
一日中日が当たらない「日陰」。
時間によっては木の間からまばらに日がさし込む「木陰」。
植物にとってはその微妙な陰の差が命取りとなる。
揺るぎない哲学がある。
日がささない小屋の陰には…日陰でも育つ優等生。
同じ擬宝珠でも木漏れ日のもとで美しく育つフランシスウィリアムズは若干日が当たりやすい花壇中央。
直射日光が注ぎ乾燥しやすい花壇の端には…我慢強くへたらない。
それから1か月。
かつてひっそり静まり返っていた道に人が行き交うようになった。
ただ花壇に人が目を向けるようになるのはまだ少し先の事。
(虫の鳴き声)自然ならではの美しさを表現したスミザーさんの庭。
そこは鳥や虫などさまざまな生き物が訪れる楽園だ。
庭の石垣に野鳥が巣を作り卵を産んでいた。
日が落ちればホタルも飛び交う。
だがこの庭を実現するまでには膨大な試行錯誤があった。
ここは18年前自宅のそばに設けた秘密の実験場だ。
水を張った湿地や日陰乾燥地などを再現し300種類の植物の植生を調査している。
この区画ではどこまで乾燥に耐えられるかを試す。
シートの上に2センチの砂利を敷き詰め雨水以外水は全く与えない。
こうしてスミザーさんが選び抜いた植物には大きな特徴がある。
それは街なかの花壇でよく用いられる一年草をほとんど使わない事だ。
品種改良で生み出され見た目はきれいだがその命は1年ともたない。
スミザーさんが多く用いるのはより原種に近い多年草。
派手さはないものの冬を越して何年も成長し続けるため年を重ねるごとに美しさが増していく。
秋スミザーさんには毎年欠かさず行う作業がある。
収穫した種の殻を取り直接水分が行き渡るようにして発芽率を上げる。
6月下旬。
新たなプロジェクトが始まろうとしていた。
どうもこんにちは。
よろしくお願いします。
舞台は鳥取県のフラワーパーク。
客足が落ちる秋目玉となる庭を造ってほしいという。
まずは庭を造る場所を探す。
意外にもスミザーが選んだのは薄暗く人けのない広場。
秋の代名詞モミジもなければ何の変哲もない。
突然施設で育てている草木を見回りだした。
モミジ以外の紅葉している草木に目をつけた。
山梨の事務所に戻るとスミザーは設計に着手した。
モミジに頼らずとも「涙が出るほど美しい庭」を造れないか。
描き始めたのは秋になると真っ赤に色づくカシワバアジサイの木。
更に日本の多年草の中から秋に色づく品種を探っていく。
2日後スミザーは鳥取に赴いた。
いよいよプレゼンに臨む。
早速完成予想図を見せる。
足元には紅葉する草木たち。
一面を秋の色で埋め尽くす大胆なアイデアだった。
スミザーはこの庭の更なる楽しみ方を考えていた。
紅葉した庭を吹き抜ける秋の風。
それを感じるためにススキの仲間を配置する。
しなやかに穂を揺らすその姿もまた日本の秋に欠かせない光景だ。
日本の風土を知り尽くした庭づくりで全国各地から依頼が寄せられるスミザーさん。
大の苦手とするものがあるという。
現場がどれだけ遠くても移動は電車。
田舎の風景を眺めながらのんびり向かう。
憧れを抱きやって来た日本。
だが待っていたのは誰にも相手にされず疎まれ続ける苦悩の日々だった。
スミザーさんは1970年イギリス南東部の田舎町で生まれた。
遊び場はテムズ川のほとりにある緑豊かな森。
ドングリを拾ったり花や小動物に触れたり。
毎日泥んこになって遊んだ。
そんなスミザーさんに父と母はあるプレゼントを贈った。
それは一冊の本。
野生の生き物が住み着く庭をどうやって造るか詳しく解説した専門書だった。
スミザーさんが16歳の時自宅に初めて造った庭が今も大切に残されている。
17歳の時イギリス王室直轄の名門王立園芸協会の実習生に合格。
園芸の基礎を学ぶ中で運命的な出会いをする。
それは日本生まれの草木たち。
変化に富んだ葉の形に印象的な色。
イギリスにはないその姿に一目で虜になった。
19歳の時思い切って来日。
山を歩けば他では見られない日本固有の草木が至る所に自生していた。
その数2,500種。
日本は世界有数の豊かさを誇る緑の国だった。
だがその後庭師として働き始めたスミザーさんを待っていたのは思いも寄らない現実だった。
当時日本は空前のイングリッシュガーデンブーム。
依頼される現場は鮮やかな花をつける海外の植物ばかり。
夏暑く冬寒い日本の気候に適応できず病気に侵されていた。
大量の農薬と肥料で何とか花を保ち枯れたらすぐ新しい苗を植え替えるという繰り返し。
スミザーさんは「この植物は日本の気候に合っていない」と依頼主に訴え続けた。
しかし受け入れられる事はなかった。
ふるさとを離れる決心をするほどほれ込んだ日本の草木。
だがそれを庭に使ってほしいという依頼は来ない。
気付けば足は野山に向かっていた。
目の前には誰からも目を向けられる事のない草木たち。
与えられた場所でしっかり根を張って生きていた。
スミザーさんは仕事の合間を見つけてはデッサンを描き始める。
日本の草木を生かして庭を造りたい。
来る日も来る日も山に通ってはこの国に自生する草木の植生を一から学んだ。
実験場を設けどの植物がどんな環境に適しているのか育てては観察した。
そして誰に見せるわけでもないデッサンを描き続けた。
周囲から変わり者と思われようともその手を止める事はなかった。
5年後。
東京で開催された大規模なガーデニングショーに出展。
小川の恵みを受けまっすぐと伸びる水辺の植物。
岩陰で青々とした葉を広げるシダ。
日本の原風景を表現した庭は最優秀賞に選ばれた。
来日から25年。
公園から個人宅まで数多くの依頼が舞い込む。
スミザーさんが光を当てた日本の草木たち。
今各地の庭で輝きを放っている。
6月下旬。
スミザーは鳥取に向かっていた。
4年前から鳥取市と組んで全国的に珍しい試みを続けている。
それは地元に自生する多年草を用いた新たな都市緑化。
都市緑化は温暖化を緩和するため各地で行われているが画一的で魅力に欠けるという。
そしてこの夏更に困難なプロジェクトに挑もうとしていた。
その場所はかつて海だった所に砂が堆積して出来た「海跡湖」の砂地。
一面砂で覆われているため植物が生きるには適さない極端に過酷な環境だ。
砂地は都市を覆うコンクリートと乾燥や日照の条件が酷似している。
スミザーはこのプロジェクトを新たな都市緑化の試金石と捉えていた。
この日現地の下見を進めるにつれある深刻な問題が浮かび上がってきた。
かつて緑化イベントを開催した名残で繁殖力が極めて強い外来種がはびこっていた。
その時だった。
スミザーが足元に目を留めた。
鳥取で自生してきたハマゼリだ。
注意深く観察すると絶滅が危惧される希少な土地の植物が数多く見つかった。
この地に自生する植物の中でも希少種を中心に植えた庭を造りそれらを守れないか。
スミザーには1年前庭づくりに臨む姿勢を問い直さざるをえない大きな出来事があった。
自身の代表作とも言われた庭園が開業10年にして経営不振で閉園に追い込まれたのだ。
街の中心部にありながら1,500種類もの植物が育つ理想の庭。
だがそれも跡形もなくなった。
緑を守り維持していくこれまでにない知恵を模索していた。
3か月後。
スミザーは再び鳥取を訪れた。
向こうでしょ言ってるのは。
しばらく見ないうちに外来種が生育範囲を広げていた。
このままではこの地に自生する貴重な植物が駆逐されかねない。
一人黙々と雑草を抜き始めた。
ガーデンデザイナーとしてこの国の自然を見つめ続けてきた。
だがその豊かさに目を向けようとする人はまだまだ少ない。
訴えたい一つの思いがあった。
10月初め。
プロジェクトは節目を迎えた。
スミザーが行政に働きかけ募った市民と一緒に苗を植える。
大学生から主婦まで70人が集まった。
まずは外来種を取り除いていく。
(笑い声)残すべき植物と抜かなければならない植物。
その見分けは容易ではない。
スミザーは粘り強く一人一人に教えていく。
最後にこの地に自生する希少種の苗を植えてもらう。
1か月後。
強風と日照りにさらされながら苗はしっかり根を張っていた。
庭が目指す形になるのは2年後。
小さな苗にスミザーの希望が託されている。

(主題歌)それではどうぞよろしくお願いいたします。
(拍手)拍手でお迎え下さいませ。
一人でも多くの人に足元の自然に目を向けてもらいたい。
スミザーは今日も語りかける。
来日から25年。
スミザーと日本の草木との歩みに終わりはない。
一生懸命やる事は当たり前な話だと思うしいい仕事をするのも当たり前な話だと思うよね。
だから新しい事をやってみるとか挑戦してみるとかそれでその結果を人に伝える事がプロフェッショナルのやる事だと思うんです。
20年以上にわたり2014/12/05(金) 00:41〜01:30
NHK総合1・神戸
プロフェッショナル 仕事の流儀▽大事なものは、足元にある〜ポール・スミザー[解][字][再]

日本の草木を知り尽くすイギリス人ポール・スミザーに密着。彼の手にかかれば“雑草”も庭の主役に早変わり。「自然よりも自然らしい」と称される美しい庭の秘密を探る。

詳細情報
番組内容
人気沸騰のイギリス人ガーデンデザイナー、ポール・スミザーに長期密着。農薬や化学肥料を使うことなく植物本来の力を引き出した庭は「自然より自然らしい」と称される。名門・王立園芸協会で技術を学び、来日して25年。日本の草木を知り尽くすスミザーの手にかかれば、ススキも庭の主役に生まれ変わる。この夏、困難な依頼が持ち込まれた。木が生い茂る日陰の急斜面を明るい庭にして欲しいという。スミザーが下した決断は?
出演者
【出演】園芸研究家…ポール・スミザー,【語り】橋本さとし,貫地谷しほり

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
趣味/教育 – 園芸・ペット・手芸

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
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