北極海航路:温暖化で利用拡大、国際ルール整備
毎日新聞 2014年12月25日 12時02分(最終更新 12月25日 17時56分)
【ロンドン坂井隆之】温暖化で氷が減少している北極海について、航海ルートとして利用するための国際ルールの整備が進んでいる。国連の専門機関である国際海事機関(本部・ロンドン)は11月の海上安全委員会で、北極海を航行する船舶の特別な安全基準を定めた条約改正案を採択。環境基準と合わせて2017年の発効を目指す。日本や欧州は、沿岸国のロシアが一方的に規則を定めている現状から透明性の面で前進すると見ており、新たな資源輸送路として利用拡大に弾みを付けたい考えだ。
◇17年の条約発効目指す
北極海は、氷に衝突する危険や、低温のため汚染物質が分解されずに海洋汚染が深刻化する恐れもあるため、航行には特別な装備が必要となる。だが、現在は国際法上の正式な規則が存在せず、沿岸の大半を占めるロシアが「氷に覆われた海域は、沿岸国が排他的経済水域の範囲で環境基準を適用できる」と定めた国連海洋法条約を根拠に、独自の規則を定めている。
同規則は航行する船舶にロシア当局への申請や、ロシアの原子力砕氷船による先導を義務付けており、海運業者らから「砕氷船の利用料の算定基準が曖昧」といった不満も出ていた。
今回新たに定める国際ルールは、海上人命安全条約を改正し、北極海を航行する船舶が備えるべき船体の強度や、氷の位置を把握するレーダーなどの設備を明確化する。来年5月には、北極海での油の排出禁止などを定めた海洋汚染防止条約改正案も採択する。
日欧などは国際ルールが明確化することで、船舶の建造や海上保険契約などが進めやすくなることを期待している。また、日本政府の外交関係者は「ロシアが北極海航路の航行許可を新たな権益や安全保障のカードにする可能性があり、国際ルールの整備は重要だ」と指摘する。日本政府は関係省庁や海運業者らでつくる協議会を今年5月に設置しており、今後も行政手続きの円滑化や航路のインフラ整備をロシアに求めていく方針だ。