2014-12-25
■enchantMOONを物理的にパワーアップさせるアップグレードサービスを開始しました
enchantMOONの新しいバージョンも発売されて、ユーザの皆様からも新機種について聞かれることが多くなってきました。
が、うちのような零細企業にとってAppleやSAMSUNGみたいに新機種をバカスカ投入する資金はありません。
それに実際のところ、新機種に搭載されるべき機能はいかなるものなのか、ただ薄く軽く速くなればいいのかというと、以前にも書いたように、これはAndroid端末のような汎用機ではないので、そもそも処理速度が速くなったら売れるとしたら、一体どのくらい速くなればいいのか、というところがまだ決めきれておらず、ついでに速いCPUは最小ロットも桁違い(100万台生産するなら売ってあげるよ、と某チップメーカーに言われてしまったり)なので100万台ぶんの製造コストは数十から数百億になってしまうのでちょっと今の会社の体力では夢のまた夢です。となると、生産しなおしても1万台ペースで考えるといいところCortex-A17あたりのクワッドコアが限界。しかも値段はハイスペックタブレット並で、それほど速くないという矛盾を引き起こしてしまうのです。とりあえず今のところは。
大金をかけてしょぼい新ハードを出すよりは、今のハードでできることの限界までとりあえずはやっておきたいという思いから、地道にソフトウェアのバージョンアップを続けているわけですが、ソフトの力だけでは限界も見えてきました。
特にWiFi。ソフトを改良することでなんとかかんとか多少はつながりやすくなったりなりましたが、それには限界があって、要するにマグネシウムボディと当初計画していた基板と実際に量産した基板の相性の問題があります。
要するにマグネシウムの筐体とWiFiモジュールの相性が悪いのです。でもモジュールを取り替えればなんとかなるというものでもなくて、このサイズに収まるモジュールは製造当時はこれしかありませんでした。
それと重量。マグネシウムは非常に軽くて丈夫なのですが、プラスチックに比べると重量があるのは否めません。しかし、プラスチックの筐体にしてしまうと、ハンドルのヒンジを支えきれず、ヒンジ部分が割れてしまいます。自立するハンドルを実現するにはマグネシウムが不可欠だったのです。
しかしプラスチック筐体にしてハンドルをとれば、少なくとも通信速度は3倍程度(僕が実測した値なので個体差はあると思いますが)、重量は120g程度軽量化できます。また、ハンドルがないことでカバンに入りやすくなります。
この半年間、アクリル樹脂でハンドルをつけた状態で使っていたのですがやはりヒンジ部分が壊れてしまい、否応なしにハンドル無しの状態で持ち歩くことになりましたが、まあこれはこれでMOONらしくないかもしれないけど実用品としてはアリかな、と。
すると取引先の方や親しい方から、「オレのMOONもプラスチックでハンドルなしにしてくれ」という依頼をいくつか頂くようになってその都度対応していたのですが、そういうニーズもあるのかなと思い、せめて魔改造しなくてもハード的な性能を向上できる選択肢を提示するべきかと思い、今回のアップグレードサービスの開始に踏み切りました。
自社のハードを自社で改造するサービスを開始するというのは奇妙な気もしますが、未だに愛用していただいてくださるユーザ様が、さらにMOONを活用していただけるように、今、我々にできることはなにか、ということを考えた上での結論です。
ただ、表面の質感が3Dプリンタなので滑らかとはいかないのが悩みどころです。
ポリアミドの出力はザラザラしていて好みがわかれます。「落としにくくていい」という人もいますが、MOONの持っていたひんやりした高級な質感は失われてしまいます。
3Dプリントのため、ペンホルダーをつけることができるので、これが意外と便利です。
これは私が実際に使っているものですが、こんな具合にパチンとはめ込むことができます。
ツライチになるのでカバンに入れてもペンが無くなりません。こういう成形ができるのは3Dプリントならではかなと思っています。マグネシウムの場合はこういう形状は鋳型で作るのが難しいのでありえないでしょうね。
アクリル樹脂にするととたんに滑らかになりますが、アクリル樹脂の出力だけで2万円近くのコストがかかるので今回はメーカー品としてはポリアミドのみを正式サポートとさせていただくことにします。ユーザの方がご自分でDMM.makeの3Dプリントサービスなどで制作されたものについての取り付けサービスも提供させていただきますが、DMM.makeで発注する前に一度UEIのサポートの方にどういう形状と質感で作りたいか、お問い合わせ頂くようお願い致します。その際、素材ごとの注意事項などをお伝えします。
また、バックパネルの3Dデータを公開し、手元の3D CADソフトで加工して、完全にオリジナルのバックパネルを3Dプリンタなどで作り、それを取り付けるというサービスも開始します。これは「世界にひとつだけの自分のMOONにカスタムしたい」というハイエンドなユーザ様のためのサービスで、自分のタブレットが自分のデザインで世界に一つだけになったら、楽しいと感じてくださる方もいらっしゃるだろうという思いでスタートします。
ただし、あまり極端な形状で法的に問題がありそうなものや、根本的に取り付けが困難な素材についてはお断りさせていただくことがあります。
本当は前ちゃんの前職のタミヤのラジコンのように、ポリカーボネート製のボディだけ販売して自分で塗装して自分で取り付ける・・・というようにしたかったのですが、バッテリーと法律の関係でそれは無理でした。あくまでセンドバックでこちらで取り付けるというサービスになります。
また、同時に以前やろうとして一時中断していた、バッテリー交換と16GB→32GBのアップグレードサービスも開始しました。
アップグレードサービス/アカデミック版販売開始について | enchantMOON News- enchantMOON; The Hypertext Authoring Tablet
同時にアカデミックパックもスタートしました。
学生さんや学校の先生は、通常よりもかなり安い金額でenchantMOONをお買い求め頂くことができるようになりました。
これは成蹊大学や品川女子学院での授業を通じて、やはりMOONは若い学生さんや学校でまず使ってみてほしいという思いから決めました。
ここで多少赤字が出ようとも次の可能性を切り開くためにやろうということでこの価格設定です。特に32GB版は2万円のディスカウントになるのでかなりお得です。
enchantMOON販売窓口一覧 | enchantMOON News- enchantMOON; The Hypertext Authoring Tablet
enchantMOON、次世代機はひょっとするとまだ何年か先になるかもしれません。
来年発表できたらいいなと思っていましたが、もう少し先になる可能性もあります。
ゲーム機でさえ五年おきにしかバージョンアップしないことを考えると、ひょっとすると次のバージョンは2018年になるかもしれません。この円安の状況では、ちょっとまだいつ製造できそうか、ハッキリしたことは申し上げられません。いろいろな思惑や状況がうまくマッチしたタイミングで次世代機を発表したいと思います。
その間も、MOONPhaseを地道に改善し続けるつもりです。
それだけの覚悟をもってやっています。
けれどもひとつ言えるのは、私達は常に次世代機のことを念頭に置いているということです。
それは今発売されているenchantMOONとは全く異なる姿になるかもしれません。
2014年、いろいろな思惑でいろいろなことをやってきましたが、enchantMOONとその先にある手書きコンピュータの未来像を常に頭の中に置いています。
今年も幾度も試作を繰り返し、挫折し、立ち上がり、また試作し、を繰り返し、転びながらも前に進んでいます。
ただ、以前と違い、自社単独での開発ではなく、複数のメーカーを交えた大掛かりなプロジェクトに発展しているので、実際に我々がどのようなプロトタイプを作り、どのような意図を持って戦略を進めているのか、僕が自由に発言できる機会は非常に限られてしまっています。
今回のアップグレードサービスは、そういう中で、少しでもMOONを使っていただいているユーザ様に、これかも愛着を持ってこのマシンを使っていただきたいという我々の思いが込められています。
我ながら拙く、不格好なやり方だと思いますが、我々はこれからもMOONへの旅を続けていくつもりです。
今後ともenchantMOONをよろしくお願いいたします。
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