白川方明(まさあき)前日銀総裁が13日、米ダートマス大学タック・スクール・オブ・ビジネスでの講義で、「金融政策の効果はかなり限られている」「デフレは極めて低い失業率の裏返しだ」などと話したことが報じられた。
くしくも15日には、黒田東彦(はるひこ)現総裁が米コロンビア大学ビジネススクール主催の東京コンファレンスで講演しており、米国の大学を舞台に新旧の日銀総裁が対立する意見を述べた形となった。
ダートマス大はコロンビア大と同様に米国で歴史ある有名大学の一つで、白川氏は現在の日銀の金融政策に異を唱える場にふさわしいという趣向があったとみられる。
白川氏の講義は「金融政策の効果はかなり限られている」「デフレは極めて低い失業率の裏返しだ」などと、白川日銀時代に金融政策を積極的に発動しなかったことを正当化している。かつて、白川氏は、「マネタリーベース(中央銀行が供給する通貨)と物価の相関関係は断ち切られている」と述べていたが、今でも自説を変えていないというわけだ。
白川日銀では、在任5年間でマネタリーベースを1・5倍しか増やさず、その結果、デフレ脱却ができなかった。インフレ率を消費者物価指数上昇率でみると、世界的にみて合格圏といえる1〜3%を達成したのは60カ月中わずか7カ月、「打率」にして1割2分しかない。
一方、黒田日銀は、わずか1年間でマネタリーベースを白川日銀の5年間と同じ1・5倍にし、インフレ率については、当初の5カ月は合格圏でなかったが、その後の7カ月は合格で、打率は既に5割8分を記録している。