私は、仙台に行くたび大衆食堂「半田屋」で飯を食う。
牛タン、辛味噌ラーメン、生牡蠣……
次々と襲いかかる、魅力的な食材を払いのけ、ひたすら「半田屋」で飯を食う。
仙台に本社をおき、宮城・岩手を中心に30店舗以上のチェーン展開をする、定食屋「半田屋」で1日3食飯を食う。なにをもって、半田屋はここまで私の心を魅了するのか。まずは半田屋のスゴイ点を3つご紹介しよう。
半田屋のココがスゴイ!
その1:おかずの選択肢が無限大
半田屋は、セルフサービス方式で好きなおかずを好きなだけ選ぶことができる。常時、数十種類のおかずが用意され、そのジャンルも煮物からスイーツまでと幅広い。その組み合わせは無限大だ。
その2:飯の量が半端ない
ご飯は
ごはん(ちょい盛り)→めし(ミニ)→ごはん(並)→めし(小)→めし(中)
と、5つのサイズに分かれている。
めしとごはんが入り乱れる謎のランク付けだ。
サンプルを見れば一目瞭然。僕らの知ってるミニ・小・中の概念ではない。ミニで茶碗1杯、小でどんぶり1杯、中でどんぶり大盛りだ! ミニってなんだ、小ってなんだ。僕らが信じたパラダイムが転換する。いまこそ、覚醒せよ。
その3:常軌を逸した安さ
一括大量仕入れ・独自の流通システムで、安い、とにかく安い。
肉じゃが140円、かぼちゃの煮物は90円!!
うどんもそばも190円!
安い、安すぎる。貨幣経済の理屈がこの空間では通用しない。食の治外法権。
関東にも半田屋がある!
かくも至高の大衆食堂「半田屋」であるが、関東住まいの人間には残念なことに、東北地方での出店がメイン。
半田屋食いたさに東北移住まで視野に入れていたが、公式サイトを目を皿のようにして読み込んでいると、驚くべき事実を発見した。なんと、東北の虎「半田屋」は、埼玉県にも進出していたのだ。北越谷と川越に2店舗あるという。取るものも取り敢えず、大急ぎで2軒をハシゴしてきた。このときの私をマンガ化すれば、足はうずまき状になっていたに違いない。
北越谷店は国道沿いにある。
デカデカと描かれた「大衆食堂」の文字が、いつもいつでも半田屋は、われわれ大衆の味方であることを宣言している。
コンクリートジャングルに咲いた一輪のひまわりのようである。
ビュッフェはコの字型になっていて、最後にレジがある。考え抜かれた無駄のない動線だ。
必ずトレーを利用しよう。
1品2品のつもりで入店しても、淫美なオカズの誘い香に、あれよあれよと両手に持ちきれないほど小鉢を取ってしまうのだから。
1本でさえ尊いというのに、12本もウインナーがあった。「トッピングに最適」だそうだ。
卓上には醤油が置かれている。酸化を防ぐ密封ボトルでいつでも新鮮、しぼりたて。
アンケートも用意されている。すでに最高の地位、満点の地位にいながら、フィードバックを繰り返し、さらなる研鑽に励んでいる。ますます頭が上がらない。
突然ですが、半田屋クイズのお時間です。
チャーハン、ハンバーグシチュー、かぼちゃの煮物、マカロニサラダ、チョコレートケーキの5点セットでいくらでしょうか??
正解は
チャーハン194円、ハンバーグシチュー216円、マカロニサラダ140円、かぼちゃ97円、チョコレートケーキ151円の計798円!!
シチューには大きなハンバーグが丸ごと1個入っているというのに
かぼちゃ煮は中まで味が染みこんで、甘くてホクホク旨いというのに
すべて合わせて800円切り!
奇跡の価格に腰を抜かしつつ、ご飯を食べていると、店員さんが慌てて席にやってきた。
「すみません!値段、間違えてました!!」
と言う。
そりゃ、そうだ。
いくらなんでも、798円は安すぎる。
なんかの間違いかと思ったら、本当に間違いだったのだ。
「すみません、ハンバーグシチュー216円じゃなくて、194円でした!」
と差額の22円を返金してくれたのだ。
なんとさらに安くなった! 総額776円になってしまった!
信じがたい驚愕の展開に頭は真っ白。映画『シックスセンス』を見たとき以来の衝撃だ。
衝撃の余韻をひきずったまま、北越谷店を後にし、矢継ぎ早に川越店へと向かう。車でほんの1時間程度の距離だ。
電信柱に阻まれて、なお、半田屋と判別できるド派手な黄色いカラーリング。
迷い俯きがちなわれわれ人類を照らす、偉大なる太陽のようである。
コの字型のビュッフェはこちらでも健在だ。理を突き詰めたデザインは、いつの時代どこの場所でも通用する。
もちろんウインナーもたくさんある。
どうせ北越谷店と同じだろうと侮ってはいけない。「プリプリの食感をお楽しみください」とキャッチコピーが異なっているのだ。
ラックにはSPA!やフライデーを完備。
食欲のみならず知識欲まで満たせる仕様だ。
さて、最後は半田屋クイズをもって、締めさせていただこう。
めしミニ、ウインナー、イカリング、豚肉と大根のうま煮、ひじき煮の5点でいくらだろうか?
600円?
あなたは半田屋のことが何も分かってない。
500円?
もっと、いける、半田屋を信じて。
正解は
めしミニ86円、ウインナー97円、イカリング32円、豚肉と大根の旨煮162円、ひじき煮97円、計474円
なのだ! どうだ、まいったか!
大衆食堂半田屋は年末年始も営業している。長期連休にはじめての半田屋体験というのもオツなものだ。そのとき、あなたに、新しい食の世界が訪れるだろう。
取材したお店
作者:松澤茂信(まつざわしげのぶ)
東京別視点ガイド編集長。
るるぶとか東京ウォーカーが積極的に載せないようなとこばっかし巡ってます。
そういう人生です。けっこー楽しいです。
(編集:編集プロダクション studio woofoo)
東京別視点ガイド:http://www.another-tokyo.com/
Twitter:https://twitter.com/matsuzawa_s