<山田線移管>駅前開発が利用促進の鍵
東日本大震災で被災したJR山田線宮古−釜石間の三陸鉄道移管による鉄路復旧が決まったことで、沿線の宮古、釜石、山田、大槌4市町は駅前周辺のまちづくりを加速させる。震災前から低迷する鉄道の利用促進を図る上で駅前機能は重要な鍵を握るが、検討の熟度は市町によって差があるのが実態だ。
釜石市は鵜住居駅前周辺にメモリアルパーク、体育館、交流施設などを配置する。市は学識者、施工業者とともに「公共空間形成指針検討会」を設置。地区の顔づくりの指針策定に乗り出した。
鵜住居地区の盛り土工事は本格化するが、街の将来像が見えない現状に地区を離れる住民は少なくない。市総合政策課の佐々木勝課長は「鉄路復旧で駅前のまちづくりがより具体的になる。住民の再建意欲の維持につなげたい」と言う。
山田町は、陸中山田駅周辺でスーパーや被災商業者らが入る共同店舗の整備を計画。町中心部の商業地と位置付け2016年3月の着工を目指す。町復興推進課の沼崎弘明課長は「鉄道復旧がいつになるか分からない中、バス高速輸送システム(BRT)との両にらみで進めてきた」と話す。
駅前の整備構想が白紙なのが大槌町。当初は大槌駅前に商店街を集約する案を地元商工会がまとめた。中心商店街の計画が別の場所に移った後、駅前の議論は停滞した。
町総合政策部の内城仁部長は「人が集まる駅前はまちづくりの重要な要素。新たな中心街とどう連動させるか、検討を急ぐ」と説明する。
新駅設置を目指す動きもある。宮古市は災害公営住宅建設や宅地造成が進む八木沢地区に開設を検討。設置費用は自治体負担を伴うが「住民の利便性のため」(企画課)と鉄道の利用促進につなげたい考えだ。大槌町議会には町唯一のショッピングセンターへの新設を望む声がある。
山田線の復旧方針の遅れは、復興の先行きの不安要素にもなった。釜石市鵜住居地区地権者連絡会の古川愛明会長は「時間がたつほど住民の焦りは濃くなる。駅中心の新たな街の姿を早く示してほしい」と指摘する。
2014年12月25日木曜日