共産党:衆院選で議席増 84歳の元「プリンス」に聞く

毎日新聞 2014年12月24日 17時29分(最終更新 12月24日 19時55分)

「安倍さんは祖父、岸信介元首相のDNAを意識しているね。長寿ということらしいが、政治的な意味でしょう」=東京都渋谷区の共産党本部で、丸山博撮影
「安倍さんは祖父、岸信介元首相のDNAを意識しているね。長寿ということらしいが、政治的な意味でしょう」=東京都渋谷区の共産党本部で、丸山博撮影

 次世代の党の石原慎太郎さんが、引退会見で、民意は何を示したか、と問われ、こう答えた。「共産党の躍進だと思う。共産党への支持は、自分たちを囲んでいる社会的な現実に対する、漠として感じている現況への不満の社会心理学的なリアクションだ」。石原さんなりの皮肉交じりかもしれないが、共産党大嫌い人間の弁だけに不破さん、まんざらでもなさそう。「うふふふ、辞めるとき、共産党のことを言ったとは聞きましたけど……。彼とはね、1回だけ共闘した。首都移転構想に反対する集会だったなあ」

 いつしか不破節、往年の国会論戦のごとくエンジン全開である。安倍さんが「この道しかない」と訴えたアベノミクスは「日本の資本主義の前途を暗くする」、沖縄の米軍基地移設問題は「海兵隊は遠征軍。出撃基地を貸している国など日本しかない」と一刀両断。さらにアメリカとキューバの国交正常化の動きは「遅すぎた」とぴしゃり。熱のこもった解説が続く。湯飲みに手を伸ばし、ちょっと一服を、とサインを送っても気づいてくれないほど。選挙中、メディアの話題をさらった高倉健さんの死。健さん好きでした?と尋ねたら「ほとんど見てないんです。論評しにくいな」。

 がっかりしたが、そこが実直さか。いまどきの政治家なら2、3本の映画をみただけで、ぺらぺらしゃべるだろうな、と思ったりした。くだんの四条河原町で、私は京都ゆかりの作家、水上勉さん(2004年死去)のことを思い浮かべていた。晩年、長野の山里で、太陽のにおいのするキュウリでもてなしてくれ、あほうな国になった、と日本を憂えていた。若狭の原発を心配していた。そんな水上さんと不破さんとは心筋梗塞(こうそく)を患った者同士の「心友」だった。かつて京都市長選挙で推薦文も寄せた。「ええ。水上さんの戦争にまつわる作品を私が編集して出したこともありました。痛烈な戦争体験があるんです。いまいらしたら……」

 1月には85歳になる。「誕生日を祝ったことなどありません。共産党は躍進しましたが、めでたさも中くらいなりおらが春じゃなく、小くらいなりですよ」。まだ老け込むわけにはいかないようだ。

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