世代論、若者論のくだらなさを指摘する一冊

面白かった。(統計的な意見だけでもダメだと断りつつ)定量的な見方なしの若者論が多すぎる、という主張だ。

60年代以降の、若者論の変遷(A)と若者論が含む問題点(B)を指摘している。

(A)団塊の世代から、しらけ世代、消費社会、ニューアカ宮崎勤事件、宮台真司、オウム、ニート、ロスジェネ、ポストロスジェネに関する若者論史をカバーしている。

(B)

  • 自分の得意分野にひきつける論者
  • 社会の病理を表していると盲目的に決めつける
  • 若者は劣化しているという前提の言説orアイデンティティ付与で肯定させる言説
  • マーケットが求めていて売れるからそのように書くと発言する論者

この著書の中では、人間力のような抽象的な啓発や、心理主義、勝手な決めつけを前提とした主張を次々と一刀両断にしている。

ロスジェネは被害者性を、ポストロスジェネは欠落をアイデンティティとして付与されている、というまとめ方は言われてみればなるほど、という感覚。

世代論や社会について、定性的に語ったり読んだりするのは楽しいとは思う。ただ、その一方でそれが前提にすり替わっていると危うい。もちろん、社会科学においては、仮説で議論や行動を進めなければならない時もある。その際に、仮説は仮説でしかなく、教義ではないと、強く意識しなければならない。

この本を読んで、なんのデータが必要か、と認識しつつ書く場合が増えている。ブログにそこまで調査時間はかけられなくとも、○○の指標によって反証可能性がある、という状態にしておけるかどうかは、自省のためのチェックポイントのひとつになる。