手作り避難所の実話をデジタル絵本で出版
東日本大震災の際に津波から住民の命を守った東松島市の高台を舞台とした、昔話風のデジタル絵本が出版された。筆者は京都市の大学院生藤枝雅博さん。絵本を通じて「津波の恐ろしさや高台避難の重要性を全国に広めたい」と願っている。
「おさとうやま」と題するデジタル絵本で全11ページ。今月上旬に発売した。防災の心得は時代を超えた普遍的課題であるといった思いから、舞台を江戸時代に設定した。
津波の襲来に備え、一生をかけて平地に小高い山を築いた男の生涯を、おとぎ話風に仕上げた。
モデルは、東日本大震災の十数年前から、東松島市野蒜の自宅近くの岩山に避難所をこつこつと整備してきた佐藤善文さん(80)。
佐藤さんは「備えあれば憂いなし」と退職金を元手に避難路なども設けていた。震災発生後に押し寄せた津波では、約70人がこの避難路を上って助かった。
藤枝さんはこのエピソードをウェブ上の記事で知り、低コストで制作できる電子書籍での出版を思い立った。題名は、岩山の地元での通称「佐藤山」から名付けた。制作に当たり、東松島市などから事実関係を聞き取った。絵の得意な知人の協力を得て、絵本の絵を描いてもらった。
藤枝さんは「避難ビル建設などの津波対策が全国的に進むよう、後押ししたい」と話す。
アップル社の電子書店「アイブックスストア」で購入できる。税込み5ドル、日本円で500〜600円(当日の為替レートで変動)。経費を除く売上金は震災遺児のための基金に寄付する予定。
2014年12月25日木曜日