2014年は「スポーティーシック」や「エフォートレス」といったトレンドが盛り上がりましたが、実はそれらの裏で目に見えないビッグトレンドが台頭していました。それは「トレンドフリー(=トレンドの消失)」。近頃は流行が長期化する傾向にあります。かつてのようにシーズンごとに目まぐるしく流行が入れ替わるのではなく、あるムーブメントが少しずつ変質しながら、長く続く傾向が強まっています。スポーティーテイストやリラクシングスタイルのロングトレンド化もその例と言えるでしょう。(文:ファッションジャーナリスト 宮田理江)
2014年ファッションの裏トレンドは「トレンドの消失」
「トレンドの消失」はノームコアやシーズンレス、ジェンダーフリーなどの流れとも連動しています。共通する方向感は、「ない」という意味の「レス」「フリー」といった言葉が示すような、旧来の約束事からの解放です。この傾向は15年に加速し、さらに様々な制約からファッションを解き放つ力となっていきそうです。
■「スポーツシック」がベーストレンド化
個別に見ていきましょう。まずは「スポーティーシック」から。このトレンドはスポーツテイストをアーバンルックに写し取り、アスレティックな雰囲気を備えながらも、きれい目の装いに整えるスタイリングとして浸透しました。「おしゃれに見せたい。でも、窮屈や面倒は嫌」という現代の消費者マインドを反映しただけあって、広く支持を受け、ロングトレンド化しつつあります。
と言うよりも、もはや当たり前の着こなしテクニックとして定着し、キャップやニット帽、フーディー、スウェット、ショートパンツ、スニーカーなどはトレンドを超えた基本アイテムになってきました。来シーズン以降はもはやトレンドとは認識されなくなっていきそうですが、それは勢いが衰えるということではなく、むしろトレンドのレベルを「卒業」して、当たり前の存在に近づいていくという「ベーストレンド化」を意味します。
この「ベーストレンド化」という現象こそが、ここで言う「トレンドの消失」に当たります。目先のブームは静まったように見えるが、実は下火になるわけではなく、幅広い支持を受けて定着していくという流れです。スポーティーシックの場合、2015年春夏はこれまでよりも「運動着」感が薄れ、しなやかなエレガンス色が濃くなっていきます。従来以上にシーンフリーに着やすい雰囲気になっていき、裾野は一段と広がりそうです。
■現代女性のニーズに合致した「エフォートレス」
「エフォートレス」も同様の変容と深化を重ねています。力みを遠ざけたイージーリュクスの基本軸はそのままに、当初よりも着こなしの幅が広がってきました。14年秋冬ではリッチ感や官能美の要素が強まり、イージーとリュクスの濃度はリュクス寄りに傾きつつあります。
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