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【コラム 月刊猪瀬直樹】

GHQが天皇誕生日に込めた意味

2014年12月21日

◆祝日名の由来

 来年は戦後70年を迎える。忘れられてしまったことが多い。先月の「勤労感謝の日」に「お父さんご苦労さん、と勘違いしている人が多くなりましたが、戦前の新嘗祭(にいなめさい)、わかりやすく言うと収穫祭ですね。天皇が五穀をカミへ奉納する儀式。GHQの時代に、どう翻訳してよいかわからず、とりあえずこうなった、ぐらいは知っていて休日を楽しみましょう」とツイッターに打ったら、リツイートが2600もあった。

 奇抜なコスチュームを着た若者が渋谷や六本木でハロウィーンに繰り出したが、あれももとはといえばキリスト教系の収穫祭なのである。まあ、起源はどうでもよいといえばそれまでだが「勤労感謝の日」についてのリツイートが多かったのはやはり“意味”を知りたいという健全な欲求があるからだと思う。

 12月24日はクリスマスイブで子どもたちはサンタクロースからのプレゼントを楽しみにしている。僕の娘や息子は小学校の低学年までは親がそっと枕元に置くことを知らないでいた。

◆戦争を忘れるな

 さてその前日の12月23日は天皇誕生日で祝日なのだが、今上天皇陛下が即位する前の昭和天皇の時代は4月29日が天皇誕生日だった。いまの祝日名は「昭和の日」である。

 70年前の敗戦後、極東軍事裁判が開廷された。「平和に対する罪」を問われ28人のA級戦犯が起訴されたのが昭和21年4月29日だった。天皇誕生日を意識したものと思われる。当時、マッカーサー連合国軍最高司令官は、天皇の戦争責任を追及する戦勝国の世論に配慮せざるを得ない立場にいた。そこで新憲法で日本の武装放棄を明確にし、天皇を象徴とする新憲法をつくり、戦勝国で構成する極東委員会にはかり4月5日に天皇不起訴が決まった。

 極東軍事裁判の開廷は起訴4日後の5月3日で、翌22年5月3日は新憲法が施行され、憲法記念日として祝日となった。

 東條英機らA級戦犯7人に絞首刑が執行されたのは昭和23年12月23日、皇太子明仁(今上天皇)の15歳の誕生日である。いずれ祝日になるであろう、日本人よ、戦争を忘れるなという脅し、刻印である。しかし、ほとんどの日本人は処刑の日についてはすっかり忘れているのである。

 

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