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珠玉の「国産ウイスキー」生んだ名ブレンダー引退 「受け継いだものを未来に託したい」

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珠玉の「国産ウイスキー」生んだ名ブレンダー引退 「受け継いだものを未来に託したい」

世界的に高く評価される国産ウイスキーを手がけた元チーフブレンダーの輿水精一さん=大阪府島本町のサントリー山崎蒸溜所

 淡い黄色から暗褐色までグラデーションを描く小さなボトル。何百ある原酒をブレンドし、一つのウイスキーを作り出す-。NHK朝の連続テレビ小説「マッサン」が人気を集めた今年、ウイスキー世界一に何度も輝いた「サントリー酒類」(東京)のチーフブレンダー、輿水(こしみず)精一さん(65)が一線を退いた。低迷期からハイボールブームまでウイスキー業界の消長を知る名ブレンダー。「受け継いだものを後進に託したい」と静かに身を引いた。

 輿水さんがブレンダーを命じられたのは、入社19年目の平成3年。同社山崎蒸溜所(大阪府島本町)で原酒の貯蔵・管理の仕事はしていたが、ブレンダーの経験はまったくなかった。

 不安は大きかったが、同僚ができばえを確かめるテイスティングで味や香りをどう表現するかをつぶさに観察したり、自主的にブレンドしたりして特訓。もともとあまり飲むタイプではないが、1カ月間で3千回以上も酒を味見したこともあったという。

 転機は数年後。「和食に合う一歩進んだ商品を」と新ブランド開発を任された。1年の試行錯誤で完成させたが、社内会議で「サントリーの味ではない」と却下。レシピを決めないと発売に間に合わない時期だったが、「念のため」とかばんに入れていた予備を提出し、採用された。

 こうして発売されたのがピュアモルトウイスキー「膳」。半年で500万本以上を売り上げるヒット商品に。そして平成11年、ブレンダーの中でも、商品の最終評価を行う「チーフ」に就任すると、めざましい結果を残す。

 イギリスの権威ある国際品評会「インターナショナルスピリッツチャレンジ(ISC)」で2003年、輿水さんがブレンドした「山崎12年」が金賞を受賞すると、翌年は「響30年」がさらに上位の最高賞を獲得。その後も世界的な品評会での受賞は続いたほか、2004年からは10人いるISCの審査員の1人にも選ばれた。

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