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鍵は“活用力” 変わるか大学入試

12月24日 16時35分

福田和郎記者

大学入試が大きく変わるかもしれません。
文部科学省の中教審=中央教育審議会は、現在の大学入試センター試験を廃止し新たなテストを平成32年度から実施することや、高校在学中に受けるテストを新設することなどを、今月22日、下村文部科学大臣に答申しました。
見直しの鍵は、“知識の量”から、知識の“活用力”“思考力”を問う入試への転換です。
社会部・文部科学省担当の福田和郎記者が解説します。

センター試験に代わる新テスト

大学入試の在り方については、中教審がおととしから検討してきました。
今月22日の総会で示された答申では、現在の大学入試は知識を覚えることに偏りがちで1点刻みの選抜になっているとして、知識の活用や思考力、表現力などを総合的に評価するものに転換する必要があるとしています。
そのうえで、現在の大学入試センター試験を廃止して平成32年度から新しく「大学入学希望者学力評価テスト」を実施するとしています。

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このテストでは、これまでの「国語」や「数学」といった単一の教科の試験に加えて、複数の教科にまたがる「合教科・科目型」や「総合型」の問題を出題するとしています。
例えば、「国語」と「英語」を合わせて『言語』という枠組みを作ることなどを想定しているということです。
また、現在の大学入試センター試験はマークシート方式ですが、記述式で答える問題を導入するとしていて、成績は1点刻みではなく段階別に示すことなども検討していくとしています。
さらに、英語については「聞く・話す・読む・書く」の4つの技能をはかるため、外部の試験を活用することとしています。

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新たなテストは年に複数回、実施するとしていますが、回数や実施時期は高校や大学関係者を含めて今後、協議する予定です。

各大学の試験はどう変わる?

答申では、各大学が行う入試についても提言しています。
「センター試験の改革は全体の改革の一部にすぎず、何よりも重要なことは各大学の個別選抜を画一的な一斉試験から変えていくことだ」としています。
まず、入学者に求める能力やどのような基準で評価するのかを明確に示す、「アドミッション・ポリシー」と呼ばれる指針を策定すること。
そして「大学入学希望者学力評価テスト」を積極的に活用したうえで、小論文や面接、高校での活動の記録など生徒の能力を多元的に評価するよう求めています。

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高校在学中のテストも新設

さらに、もう1つ新たなテストの導入が提言されました。
「高校基礎学力テスト」の新設です。
「高校では小中学校に比べて知識伝達型の授業にとどまる傾向があり、教育の質の確保、向上に努める必要がある」として、高校在学中に学習の達成度をはかるため、新たに導入するとしています。

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テストの教科は当面、高校の必修科目の「国語総合」「数学1」「世界史」「現代社会」「物理基礎」「コミュニケ−ション英語1」などを想定しているということです。
原則マークシート方式ですが、記述式の導入も目指すということです。
希望者が高校2年生と3年生で年に2回、受験することができ、実施時期は夏から秋を基本として、今後、学校現場の意見を聞きながら決めることにしています。

今後のスケジュールは

「大学入学希望者学力評価テスト」については、文部科学省は専門家会議を立ち上げ、▽出題する教科の枠組み、▽どのような問題を作成するか、▽成績の示し方など、具体的な内容について検討を行い、1年後をめどにまとめることにしています。

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その後、サンプルのテストを作って検証し、平成28年度中に問題の例を公表して、平成31年度にかけてプレテストを行っていくとしています。
そして、平成32年度から新しいテストを実施することを目指していて、現在の小学6年生から対象になる見通しです。
答申では、複数の教科にまたがる「合教科・科目型」、「総合型」の問題を出題するとしていることから、高校の学習内容についても今後、見直しを進めていくことになります。 一方、高校在学中に学習の達成度をはかる「高校基礎学力テスト」は、平成30年度にかけてプレテストを行ったうえで、平成31年度からの実施を目指しています。
中央教育審議会の会長を務める日本学術振興会の安西祐一郎理事長は「外国の人も含めて多様な人たちと協力して生きていく、学習していく力があるのかを見るための大学入試改革だ。これに伴って今後、学校での学習の内容が変わることを意識してもらいたい」と話していました。

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一方で懸念の声も

実現すれば、昭和54年に共通一次試験が導入されて以来の抜本的な大学入試の見直しとなる、今回の答申。
ただ、学校現場からは懸念の声も聞かれます。
民間の研究機関が高校の校長を対象に行ったアンケート調査では、テストを複数回行うことについて、学校行事を大幅に組み替えたり部活動に参加する生徒が減ったりといった影響を懸念する声や、「高校生活が受験一色になってしまう」という意見もあったということです。
また、東京にある私立大学の入試担当者からも「数万人の入学希望者を一人一人丁寧に評価できる体制がない」という声が聞かれました。
答申を受けてこれから具体的な議論が進められますが、子どもたちの力を伸ばすような入試になってほしいと思います。


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