世界最長ニカラグア運河、中国企業が建設へ 住民の反対押し切る工事に、現地紙疑問
- 更新日:2014年12月22日
- カテゴリー:国際
中米ニカラグアにおいて、カリブ海と太平洋を結ぶ巨大運河が、22日に着工される。ニカラグア運河は全長278km、幅230-520m、水深30m。パナマ運河の3倍以上の長さだ。5年間の運河造成期間で、5万人以上の雇用が見込まれている。空港、人口湖、商業施設、ホテルなども建設予定であり、建設に必要な費用は500億ドル(約6兆円)とされる。
工事建設は、香港ニカラグア運河開発投資有限公司(HKND)が請け負う。中国企業の工事計画について、現地住民からは反発の声もあがっている。現地紙などの報道から、背景と今後を整理する。
◆ 背後に中国政府がいる
工事を請け負うHKNDの資産は29億5000万ドルで、中国の国営企業Datangグループと無線電話器を生産している(BBCムンド紙)。チャイナ・ファイルは、HKNDは中国の軍部(ネット・衛星部門)と関係をもっている、という国恭君証券レポートを紹介した。
オーナーはWang Jing(王靖)という人物で41才。彼は21社からなる企業グループを経営している。レポートには、王靖は中国の八代元老のひとり王震の孫ではないか、との噂も記されているという。
彼の背後には中国政府が存在していることは明らかである。しかし、彼はその関係を逸らすかのように、数社の海外企業に、プロジェクトを実現させるための調査を依頼している。また、600-700名の技師が既に働いている、とメキシコのエコノミスタ経済紙の質問に答えている。
◆ 住民は建設に反対している
このプロジェクトのチーフエンジニアでオーストラリア人のビル・ワイルド氏は、工事規模の巨大さよりも、地理的な位置に不安を抱いている。地震、水害、ハリケーン、旱魃などの自然災害を受けやすい地域なのである。しかも、休火山が12km先にある。
周辺地域の住民は、環境への影響についての調査が行なわれていない、などと訴え、運河の建設に反対している。特に、国の主要な水源であるニカラグア湖が、運河のルートにあるため、汚染の危険がある。さらに、住居が立退かなければならなくなると、政府はその土地を減額評価するのが常であるのも、反対の理由になっている(以上、ニカラグアのラ・プレンサ紙)。10日には首都マナグアで大規模なデモも行われた。
一方政府は、このプロジェクトは経済的にも社会的にも国に恩恵をもたらし、住民の生活向上に繋がるとしている。運河に使う水も60%は再生利用される、と語る。カリブ地方の雨量の多い地域から水を引くので、湖や川が汚染されることはない、と反対する住民に説明しているという。
さらに、政府は調査・建設に一銭も使わない。しかし運河完成の暁には、10年ごとに取得する株が増え、30年後には30%、50年後には50%の事業株を取得することができ、歳入増にもつながるという。ニカラグア政府は、運河の建設企業に、50年間の管理運営の権利を与えているのである(以上、ニカラグアのラ・ボス・デル・サンディニスタ紙)。
◆ ニカラグア運河の採算性
ただし、運河の採算性には疑問の声もある。ニカラグアのコンフィデンシアル紙で、クライトン博士が次のような点を指摘している。
・ パナマ運河とニカラグア運河の二つが商業的に採算ベースに乗ることは不可能
・ 中国の、中南米からの資源輸入取引を視野に入れた、地政学的(ゲオポリティカル)な計画である可能性
・ 米国は、船が中国の管理下に置かれないという安全面での保障がないと、運河を利用しないであろう
・ ニカラグア運河の建設費用は当初400億ドルと言われていたが、500億ドルに膨らんだ。1000億ドルになる可能性も否定できない。正確な試算に必要な調査資料は公開されていない
・ 将来的にはカナダの北を回っての航路の方が距離的に1000マイル短縮出来る。その場合はこの二つの運河に影響を与えることになる
今日から開始されるこの大プロジェクトへの疑問は、今も解消されないままである。
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