いよいよ来年10月から海外ネット配信事業者への消費税課税が実現するようです

山本 一郎 | 個人投資家

山本一郎です。まあまあ財政タカ派です。

ところで、これまでも規定路線を匂わせる形で何度か報道されてきましたが、いよいよ海外事業者によるネット配信への消費税課税が2015年10月から開始される方針が定まったとのことです。

海外ネット配信に消費税課税へ…電子書籍など(読売新聞 14/12/19)

米アマゾンや楽天のカナダ子会社「コボ」など海外に本店を置くインターネット業者から日本国内に配信された電子書籍や音楽データの取引に、2015年10月から消費税が課税されることになった。

出典:読売新聞

ネット配信の海外企業にも消費税へ(NHKニュース 14/12/19)

具体的には、消費税の課税対象となる年間の売り上げが1000万円を超える海外企業を対象に、来年10月から日本の税務署への申告納税を義務付けるとしています。自民党税制調査会は、今月30日に取りまとめる来年度の税制改正大綱にこうした方針を盛り込むことにしており、方針に沿って制度が変更されると、日本の消費者がインターネットで配信された音楽などを海外企業から購入した場合、来年10月から消費税を上乗せした金額を支払うことになります。

出典:NHKニュース

そうですか。

面白かったのは、日経が11月30日といういつものように他社に先んじるような微妙に飛ばしたタイミングで関連記事を掲載していたところでして、さすが話題作りが上手いなと感心しました。

電子書籍の消費税、海外も課税へ 不公平是正(日本経済新聞 14/11/30)

この記事で良かったと思うのは、何が問題となっているのかを具体的な事例で紹介している点でした。これは分かりやすいですね。

例えば人気作家、池井戸潤氏の半沢直樹シリーズ最新作「銀翼のイカロス」の価格は国内電子書店では紙の本と同じで消費税込み1620円だ。一方、米アマゾンの電子書店や、楽天の「kobo」では1500円で、消費税8%がかからない分、安い。商品内容が同じなら、消費者は安い方に流れやすい。

出典:日本経済新聞

さて、この新しい新しい海外配信事業者への消費税課税が導入されることで、国内事業者にとって一方的に不公平な競争環境が一気に解消されるのかどうか、それは実際に来年になって課税が実施されてみなければ分かりません。いったいどうなるのでしょうか。エンドユーザーの立場からすればどのサービスを選ぶかは、価格が大きな影響を与えるのは当然ながら、それと同等もしくはそれ以上に重要なのが提供されるサービス内容そのものが対価に見合うかどうかです。たとえば、利用するための環境が特定端末だけかどうか、DRM(著作権管理機能)の制限はどうか、用意されている書籍ラインアップの多寡はどうか、そういった諸々が他よりも優れていなければいくら消費税分程度の料金が安くても利用したいとは考えないでしょう。

また、電子書籍というフォーマット自体もまだ完成の域にはかなり遠いようです。

なんちゃって電子書籍を撲滅せよ(PC Watch 14/12/19)

一体いつまで続くのかというくらいの電子書籍元年だが、それなりにコンテンツは揃ってきたようにも思う。でも、その質はどうかというとまだまだではないか。自炊の域を出ないなんちゃって電子書籍が暮らしを豊かにしてくれるようになるまで、あとどのくらいかかるのだろうか。

出典:PC Watch

ぶっちゃけた話、今回の消費税課税の話は「Amazon税」的なものを実現するためのダシに国内事業者との不公平感が口実として使われたという印象は拭えません。国税的にはそれ相応の成果を見込めそうですが、じゃあ実際にAmazon税を設けて恩恵を受けるはずの国内事業者は市場競争で今後有利に戦えるようになるのかというと、今のところそれは楽観的すぎる見方なのかなと感じなくもありません。なぜなら、Amazon税は「いままでamazonが海賊的に有利だったのが、今回の措置でイーブンになっただけ」ですんで、競争環境を整備しても国内事業者が恩恵を蒙るどころか一掃されてしまうことだって考えられるわけですよ。

なかなかむつかしいですが、一番大変なのは「どうやって消費税を海外業者に遺漏なく納めさせるのだろうか?」という点です。そのあたりに踏み込んだ追加記事があまりなく、結局のところ言うだけ言ってみたけど消費税分の値上げのところだけ口実に使われて国庫に納税されないという可能性だってあります。

電子書籍事業においては、楽天グループのkoboもあり、ようやく追撃の体制が整ったところですが、結局はこの手のサービス大手はグローバル展開をしているところしか生き残れないという寂しいオチになってしまうのでしょうか。

山本 一郎

個人投資家

投資業務とコンテンツ開発が仕事のメイン、独立17年め。イレギュラーズアンドパートナーズ株式会社代表取締役。仕事と家庭を両立させながら、40歳になんなんとする人生の節目を感じつつ一歩ずつ坂道を登って生きたいと思います。

山本 一郎の最近の記事

  1. いよいよ来年10月から海外ネット配信事業者への消費税課税が実現するようです

※本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対してヤフー株式会社は一切の責任を負いません。

PR

個人アクセスランキング(国内)

  1. 1

    クリスマスケーキの強制買い取りは違法?

  2. 2

    小保方晴子氏STAP論文問題:彼女はなぜ嘘をつき続けるのか:心の闇と論文ねつ造

  3. 3

    自販機の裏で暖を取り眠る子ども、車上生活のすえ座席でミイラ化し消えた子どもたちの声が届かない日本社会

  4. 4

    生活保護利用者が休日に急病になるということ

  5. 5

    駅前トイレで寝泊まりするトリプルワークの女子高生らの貧困を深刻化させ格差拡大し経済成長損なう安倍政権

  6. 6

    720万円のクルマは買えなくても520万円なら買えるヒトに国が200万円タダであげるという話

  7. 7

    朝日と安倍首相・産経に往復ビンタされる日本人の痛み 慰安婦報道・第三者委報告

  8. 8

    「クリぼっち」は幸せか:今や常識?若者が一人で過ごすクリスマス

  9. 9

    ファミマのTwitterを利用したキャンペーンが想定外の荒らしに遭遇したようです

  10. 10

    人々の関心が高過ぎた「東京駅開業100周年記念Suica」

  1. 11

    地方営業No.1芸人! テツandトモの実力を見た

  2. 12

    民主党と維新の党の衆院選後の対照的な姿勢

  3. 13

    ユニクロだけではない「恫喝訴訟」

  4. 14

    丸田みわ子さんという野菜ソムリエが他人の画像を勝手に加工して掲載して炎上そして他サイトに延焼

  5. 15

    子どもを車上生活や路上生活に陥らせ白骨化し遺棄する日本社会-貧困なくす公的支出が欧州の半分もない日本

  6. 16

    「下から目線のプロ素人」の原理

  7. 17

    生活保護利用者の問題行動に「だから生活保護は!」は有効か?

  8. 18

    総選挙「唯一の敗者」とは?「次世代の党」壊滅の意味とその分析

  9. 19

    有料誰が週刊新潮を動かして小渕大臣の政治資金を追及させたか

  10. 20

    18歳選挙権を導入していたらもっと自民党が勝っていたという衝撃データ

個人の書き手も有料ニュースを配信中

プライバシーポリシー - 利用規約 - 著作権 - 特定商取引法の表示 - ご意見・ご要望 - ヘルプ・お問い合わせ
Copyright (C) 2014 山本 一郎. All Rights Reserved.
Copyright (C) 2014 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.