トップページ科学・医療ニュース一覧原子力事業の在り方などで中間報告
ニュース詳細

原子力事業の在り方などで中間報告
12月24日 17時23分

福島第一原発事故後の原子力事業の在り方などについて議論してきた経済産業省の有識者会議が、24日中間報告をまとめ、電力会社が廃炉を判断しやすくするための会計上の特例措置を拡大することなどが盛り込まれました。
これを受けて電力各社は、老朽化した原発5基の廃炉を、今年度中に表明する検討に入ります。

この有識者会議は、ことし4月に閣議決定された「エネルギー基本計画」に基づき、経済産業省が原子力事業の在り方や原発政策について議論し、必要な措置を講じるために設けたもので、24日半年間の議論をまとめた中間報告を発表しました。
それによりますと、電力会社が廃炉を判断しやすくするため使われなくなった設備の会計処理について、電力会社の負担を減らす特例措置を拡大するべきだとしています。
また原発がある自治体には、運転を停止していても国から特例として交付金が支払われていますが、額が高すぎるとして減らすよう求める一方、廃炉によって交付金収入がなくなると地方財政や地域経済に悪影響が及ぶとして、必要な支援策を検討するべきだとしています。
原発に関する国の考え方が示されたことを受けて、電力各社は、運転開始からおおむね40年たつ5基の老朽化した原発の廃炉を、今年度中に表明する検討に入ります。
検討の対象となるのは、日本原子力発電の敦賀原発1号機、関西電力の美浜原発1、2号機、中国電力の島根原発1号機、九州電力の玄海原発1号機の5基の原発です。
経済産業省は、年明けから始まる原発や火力発電、再生可能エネルギーなど電源ごとの導入目標を示すエネルギーミックスの議論と合わせて、原発に必要な措置を決めることにしています。

中間報告「可能な限り依存度を低減」

有識者会議の中間報告では、政府は多層的なエネルギー供給構造を実現する必要があることから原発を「重要なベースロード電源」とする一方で、「可能な限り依存度を低減する」としており、これはこれまでの原子力政策からの大きな方向転換だと指摘し、対応策をまとめることが急務だとしています。
中間報告では電力会社が原発を廃炉にしたときの対応策が重点的に示されています。
電力会社は廃炉を決めた場合、従来の会計制度では使われなくなった発電機や核燃料などを一括して費用として計上しなければなりませんでした。
去年10月からは費用を分割して処理する会計上の特例措置を導入していますが、核燃料などは分割の対象外となっています。
このままだと200億円余りの費用計上をしなければならないため今回その適用対象範囲をこれら核燃料や発電機などにも拡大し、電力会社の負担を減らすべきだとしています。
また原発がある自治体には国から交付金が支払われています。
廃炉によって交付金収入がなくなると地方財政や地域経済に悪影響が及ぶとして必要な支援策を検討するべきだとしています。
一方で、交付金の額そのものにはメスが入りました。
交付金は原発の運転が停止していても原発の稼働率が81%あるとみなして自治体に交付金が支払われています。
こうした前提は高すぎるとして交付金の水準を引き下げるべきだと指摘しています。
原発から出る使用済み核燃料を再利用する核燃料サイクル事業については、事業を担う日本原燃が民間企業であることから電力自由化後に経営が立ち行かなくなり、事業から撤退するような事態を招かないよう事業主体の在り方を検討すべきとしています。
一方、原発の新規の建設や増設については触れられませんでした。
原発の将来像が明らかになっていなければ電力会社が廃炉を判断したり、自治体が廃炉を受け入れるのは難しいとの意見が盛り込まれ、原発の建て替えについて議論の余地を残す形となりました。

廃炉検討は5基

電力各社が廃炉を検討するのは、▽日本原子力発電の敦賀原発1号機▽関西電力の美浜原発1、2号機▽中国電力の島根原発1号機▽九州電力の玄海原発1号機の5基の原発です。
一方、発電量が大きい関西電力の高浜原発の1号機と2号機については、運転期間の延長に向けて特別点検を始めています。
運転継続か廃炉かの判断が分かれるポイントは、原発の発電規模の大きさです。
関西電力高浜原発の1号機と2号機の出力はそれぞれ82万6千キロワットで、この2基が稼働すれば経常利益を年間2000億円余り押し上げると会社では試算しています。
関西電力は、今月1日から運転期間の延長を目指して特別点検を行っていますが、再稼働できれば1000億円以上かかるとされる安全対策や特別点検の費用を回収できると判断しています。
これに対し、廃炉検討の対象となっている▽美浜原発1号機は34万キロワット▽2号機の出力は50万キロワットしかありません。
▽日本原子力発電の敦賀原発1号機は35万7千キロワット▽中国電力の島根原発1号機は46万キロワット▽九州電力の玄海原発1号機は55万9千キロワットと、他の原発に比べて比較的規模が小さいため、運転を継続しても安全対策の費用を回収できないおそれがあると判断する可能性があります。

有識者会議委員「廃炉は経済性で判断」

国の有識者会議の委員で、SMBC日興証券調査本部長補佐の圓尾雅則さんは、運転継続か廃炉かの判断について「電力の自由化によって電力会社は競争にさらされることになり、運転を続けるためにかかる費用を踏まえ、経済性を考えて決めることになる。ただ、40年を超えて長期間稼働させるつもりで設備投資をしても、原子力規制委員会の審査の結果、運転できないとなると経営へのダメージが大きく、電力会社はリスクを考慮しながら決断していくことになる」と述べました。
また、今後の議論の方向性として「国は原発を重要なベースロード電源としているが、いずれ新設や建て替えをしなければ原発はなくなる。日本でどのくらいの原子力を使うべきなのか、いつまで使うべきなのか、しっかりと具体的に決めないといけない」と述べました。

関連ニュース

k10014245331000.html

関連ニュース[自動検索]

このページの先頭へ