【社説】患者の命を奪った無分別な美容整形、法で規制を
今月19日、ソウル市瑞草区のある整形外科で、4時間にわたり顎を削る手術を受けた21歳の女子大生が、手術後も意識を回復することなく死亡した。正確な死亡の経緯や原因に関しては、今後警察の捜査などを通じて明らかになるだろう。しかしまるで「手術工場」のように変質した韓国の美容整形産業で、また新たな犠牲者が発生したことについては複雑な思いを禁じ得ない。
関係する医師らの証言によると、ソウル市江南周辺の大手美容整形外科では、工場なのか病院なのか区別ができない状況となっているのが実情だという。その現状はこうだ。まず数十人の医師が患者の部位ごとに手術の時間と1日当たりの手術の回数が割り当てられる。手術室にはタイマーが設置され、例えば二重まぶたの手術は30分、目を大きくする手術は1時間、鼻の手術は2時間以内に手術を終わらせることが求められる。ひどい場合はより多くの患者を受け入れるために、複数の患者を同時に手術するケースや、最初から診察室で手術までやってしまうようなこともあるという。
工場式に多くの患者に手術を施すには、まずはそれに見合った多くの顧客を呼び込まなければならない。そのため地下鉄やバスの車内には整形手術を宣伝する広告があふれている。このように無秩序な宣伝の影響で、韓国における美容整形市場の規模は年間5兆ウォン(約5400億円)にまで膨れ上がっている。世界の同市場の規模は21兆ウォン(約2兆3000億円)ほどとされているため、韓国だけで世界の4分の1規模の市場が形成されているわけだ。また韓国における人口1万人当たりの美容整形件数は131件で、これも世界1位だ。非常にいびつな形で市場が拡大したと言わざるを得ない。
患者の安全を最優先としない医療行為は医療と呼ぶことができない。大韓整形外科医師会は今年4月、地下鉄など公共の場所での誇大広告の自制など、自浄活動に取り組むことを決めた。しかし今のところ目に見える効果は出ていない。患者が死んでいく状況を目の当たりにしながら、医師団体にただ整形手術の自制ばかりを期待してはいられない。今後は整形手術を行う病院に対し、まずは法律で基本的な施設から医師の資格まで、全てを厳格に整えるよう求め、さらに手術で後遺症が発生した場合の賠償義務をより強く、また明確にしておかねばならない。