ママさんタクシー快走 アイデアで女性雇用拡大 海老名の事業所 託児所開設
カナロコ by 神奈川新聞 12月22日(月)12時16分配信
走れ、ママさんタクシー−。海老名市の「ハートフルタクシー」が事業所に託児所を開設し、子育て中の母親をドライバーとして雇用する全国でも珍しい取り組みを始めている。乳幼児を抱え、働きたくても働けない女性に就労の場を提供し、会社側もドライバー不足を解消しようという一石二鳥の試みだ。
10月から同社が採用した「ママさんドライバー」は、現在6人。20〜30代が中心で、いずれも乳幼児を子育て中だ。午前8時半に出勤、事業所に併設の託児所に子どもを預け、午後5時半までハンドルを握る。女性特有のこまやかな心遣いなどが接客に生かされ、高齢者や女性の客に喜ばれているという。
きっかけは同社のドライバー不足だった。「募集をかけ続けていたが、こちらが望む若い人が集まらなかった」と飯田隆明社長(53)は振り返る。折しも県内では、どの自治体でも待機児童が問題となっていた。「子どもを会社で預かれば、若いお母さんの就労に結びつくのでは、と考えた」
■安心できる職場
同市在住の女性(31)は、出産を機に動物病院の仕事を辞めたが、子どもが1歳になるころ、やはり働きたいと求人情報をチェックしていた。「ただ子どもを預ける場所や時間がネックとなり、条件に合うのは飲食店のランチタイムのアルバイトぐらいしかなかった」
そこで見つけたのが同社の募集。経験はないが、運転はもともと好きだった。しかも託児所付きと、これ以上ない条件。だが夫に相談すると反対されたという。
狭い空間に他人を乗せるのが危険というのが理由だった。そうしたことから二の足を踏む女性は多く、業界全体で女性運転手はわずか2・4%にとどまる。だが同社は駅で不特定多数の客を待つ「駅付け」が少なく、乗車の9割が無線による送迎だ。「面接で乗客の大半が『顔の見える関係』だと聞き、夫もそれで安心してくれた」。タクシー乗務に必要な2種免許の教習費も同社が負担。加藤さんは12月中旬にデビューした。
■保育士も柔軟に
託児所の運営にも工夫をこらした。フルタイムでの就労が必須条件の場合が多い保育士を、午前・午後の2交代制で募集。7人の枠に対し30人もの応募があった。応募者は主に若い母親で、飯田社長は「働き方の条件を柔軟にすることで、こんなにニーズがあるのか」と驚いたという。
来年には同じ系列会社で、秦野市を拠点とする「愛鶴タクシー」にも託児所を開設し、同様の募集をする予定だ。飯田社長は「待機児童や女性の雇用の問題を解決するのは保育園の増設だけではない。うちは小さな会社だが、工夫と努力次第で民間でもやれることがある」と話していた。
最終更新:12月22日(月)12時16分